『トコトンやさしい人工知能の本』|目覚まし前にエアコンつけといて

こんにちは。Google Home が欲しい あさよるです。Amazon Echo のレビューと読み比べていて、 コンセプトの違いがあるっぽくて、あさよるの場合は今のところ Google Home が先に欲しいかな~。

音声入力の人工知能は、今は siri ちゃんに検索やアラームをセットしてもらうくらいですが、これから対応してくれることが増えると楽しいかも。「鍵持った?」とか「お風呂焚いといたよ」「今日仕事じゃないの?」とか気を利かせて欲しいですな。おっちょこちょいの あさよるは待望しております。

と、AIに夢を膨らませていますが、AI(Artificial Intelligence/人工知能)ってなんだ? というワケで『トコトンやささしい 人工知能の本』を手に取りました。この「トコトンやさしい」シリーズお気に入りです(^^♪

人工知能ってなんだ?

人工知能という言葉の定義はなく、その時代やその人によって違った使われ方をしています。概ね「コンピュータが人間のように賢い動作をする」ことを言いますが、時代によって「賢い」の基準も変わっています。昔は数式やパズルを解くだけで「すごい!」ってなもんでしたが、近年では「コンピュータが人の仕事を奪うかも!?」なんて言われてます。近年の人工知能ブームは、コンピュータのアルゴリズムでは難しいと言われていた人間の「直感」や「感覚的」なものが、克服されつつあるからです。

どうしてコンピュータが思考ができるかというと、「論理的思考」は数式で表すことが可能だからです。こんな記述もあります。

電子回路と似ているのが神経の回路です。脳では神経細胞同士が互いに結びついて信号を送り合い、その過程で「かつ」や「または」、「ではない」といった論理的な変換をしていきます。

p.14

機械、ロボットの歴史も簡単に。古代エジプト時代には、空気の熱膨張を利用した「自動ドア」「自動販売機」がありました。18世紀にエンジンの調速機構が登場し、19世紀には複雑な模様を折れる織機が登場します。20世紀にはレーダーによって敵の飛行機の位置が分かるようになりました。20世紀後半にには、コンピュータが計算機から思考する人工知能へと主題が変わりました。ロボットの歴史が古代エジプトから始まるのもビックリですが、人工知能の歴史は超浅いんですね。

1950年代が探索や推論といった人工知能の基本的なコンセプトを提示する時代だったとすれば、60年代は実際的な問題への応用をはじめた時代、さらに70年代はその成果を知識工学として確立させた時代と言えます。

p.20

人工知能の開発は順風満帆ではなく、80年代90年代は冬の時代だったそうです。「人工知能ができないこと」がクローズアップされた時代でもあります。研究が進まなくなったのは「データ不足」。しかし、この問題はインターネットの普及で解決します。インターネット上に無数の画像やデータがあるからです。

2010年代には人工知能ブームが巻き起こります。

 第1の要因は、地道な研究の進展です。冬の時代でも研究は細々と続けられていて、1997年にはチェスで人間チャンピオンに勝つといった成果がありました。デジタルカメラが人の顔を認識できるようになったという進歩も驚異的です。
第2の要因は、インターネットが巨大なデータをもたらしたことです。機械学習を成功させるには、学習の手本となるデータの数が勝負です。SNSでの文章や写真、ネットショッピングの購買履歴、電車の乗車履歴など、多種多様で膨大かつ日常生活にまつわるデータが急に出現したのです。(中略)
第3の要因は、人工知能を必要とする巨大なネット企業の出現です。(中略)直接的な商業的価値を生み出すことが人工知能に期待されるようになりました。

p.24

人工知能の研究は、意外と人間くさい要因で発展しているんですね。人工知能の研究があり、そこにネットの普及、次いでネット巨大企業登場によって、研究が大きく進んだ。現在は商業的な人工知能に突き進んでいます。ここでは、個人情報の取り扱いという倫理的な問題も絡んできます。たとえ匿名であっても、購買傾向や発言の特徴から個人特定も可能ですから、ますますナイーブな問題もはらんでいます。

人工知能のネガティブな言説としては、「人工知能の台頭で人間の仕事が奪われてしまう」というものがありますが、その点は著者の辻井潤一さんは楽観的です。コンピュータができる仕事は人工知能に任せてしまえば、あいた手でより〈人間らしい仕事〉ができます。逆にいうと、現在は煩わしい作業に労力を奪われていますから、そこから解放されるのです。

人工知能について知る!

以上がだいたい第1章の内容です。

第2章は「人工知能を体感してみよう」という章で、人工知能がどのような方法で「思考」をするのかを、図解付きで簡単に解説したものです。人間にとっては子どもできる簡単な判断が、人工知能ではなかなか判別がつかないことも多いようです。例えば、犬と猫の写真を見せて、猫を選ぶということも。

第3章では「人工知能を支える基礎技術」として、人工知能が「思考」をするための「やり方」を紹介したものです。例えば、似ている者同士を分類したり、因果関係の確立ネットワークを組んだり、類似性を見つけ出したり、ネットワークの重要性を見つけ出したり、「傾向」を読んだり。こちらも、人間が思考するときにやっている事柄を、人工知能に当てはめています。

第4章はいよいよ「人工知能はどう応用されているのか?」です。ノイズ交じりのデータから隠れたニーズを見つけ出したり、例えば料理のレシピを読んでなんの料理か判断したり、画像を解析したり、健康管理を人工知能にお願いしたり。

第5章は「ディープラーニングはなにがすごいのか?」で、ディープラーニングの考え方が紹介されます。ディープラーニングは世界をどう変えるのか。もちろん、ディープラーニングの弊害もあるでしょう。このへんは、まだまだこれからの分野っぽいので楽しみです。

大人の事情な人工知能

人工知能の変遷や、現在の人工知能の使われ方を見ると、なんだかものすごく人間くさい。人の営みに寄り添っていると言えばそう。現在の商業的に特化している様子も、その時代その時代のニーズを反映していると思います。

また、人工知能の思考法を見てゆくことは、人間がどのように思考しているのか考えることでもありそうです。電子回路と、脳神経回路のつながり方が、具体的に似ているとは知りませんでした。

また、巷で語られるような「人工知能が人間を凌駕する」というようなターミネーターの世界は、今のところはまだ来てないみたい……? 著者の辻井潤一さんの考える人工知能は、人類を滅ぼす恐ろしいコンピュータ像ではなく、「人類の良き相棒」である人工知能であって、これかの技術の発展が楽しみです。

さて、いつになったら「ガスの元栓閉めた?」「お味噌汁温めといたよ」と、あさよるの世話をしてくれる人工知能が現れるのでしょうか。むしろガスは勝手に切れる仕様になって、味噌汁は人間が作り続けるのかもしれません。

あと、繰り返しの作業は人工知能に任すとして、「人間にしかできない人間らしい仕事」ってなんだろう? 意外とハートフルなほっこり系の話だったりする?

関連本

トコトンやさしい人工知能の本

目次情報

第1章 人工知能はこうして生まれた

1 人工知能ってなんだろう?「計算機の動作が人の考えをまねる」
2 知能は書き表せる「アルゴリズムを使った知的活動の表現」
3 論理的な思考とは計算の一種である「ブール代数と電気による論理回路」
4 情報を扱う機会の登場「サイバネティクスと情報理論」
5 人工知能の学問分野が確立「ダートマス会議からはじまった」
6 現実の問題に挑みはじめた人工知能「推論・探索・知識工学の人工知能ブーム」
7 人工知能の冬の時代「人工知能の限界、失望、そして停滞期」
8 壁を突き破った技術革新「なぜ今、人工知能ブームが起きているのか」
9 人工知能ブームの立役者、ディープラーニング「写真の内容を見分けられるようになった」

第2章 人工知能を体感してみよう

10 探索木に沿って考える「人工知能が答えを探すメカニズム」
11 鉄道路線で一番の近道を探したい「経路探索の古典、ダイクストラ法」
12 ヒューリスティクスを使った探索「A*アルゴリズム」
13 最小値探索で文字列の類似性を見抜く「DPマッチング」
14 やりながら学ぶオンライン学習「Q学習で試行錯誤しながら学ぶ」
15 対戦的状況での戦略を選ぶゲーム理論「相手の出方を見越して勝つ手順を見越して勝つ手順を探し出す」
16 画素情報から画像認識への初歩「物の数よりオイラー数の方が簡単という不思議」
17 過学習の罠「誤差が少ないモデルが良いとは限らない」

第3章 人工知能を支える基礎技術

18 機械学習の3つの方程式「試行錯誤を繰り返すことで、解法を見つける人工知能」
19 教師なし学習「クラスタリング」という知能「知能の第一歩は分類から」
20 人工知能用のプログラム言語「制御の指令から、知識の指示を書く言語へ」
21 ベイジアンネットが広げた推論の世界「確実ではない因果関係や相関関係を扱う技術」
22 類似度を可視化する樹形図「Fitch-Margoliashのアルゴリズム」
23 ネットワークの最重要要素を見つける中心性「つながりの中から構造を洗い出す」
24 サポートベクターマシン「近年注目を集めるデータ分類技術」
25 人間の知能をつかさどる大脳皮質「様々な機能を実現する50の領野」
26 大脳皮質を模倣した機械学習技術「ディープラーニング」
27 脳全体を模倣した汎用人工知能の可能性「人間のような知能の実現へ」
28 機械学習と並列計算「機械学習を並列化するには?」
29 人工知能と計算機「人工知能に適した計算機とは?」
30 信号のデジタル処理「アルゴリズムが実世界データを処理する」
31 単純な近隣通信だけで生み出せる複雑性「セルオートマトンの不思議な世界」
32 アリのように群衆が作り出す軍知能「マルチエージェント型人工知能」

第4章 人工知能はどう応用させているのか?

33 自然言語処理は人工知能の大きな柱「人工知能が本領を発揮する発展著しい分野」
34 オントロジーによる概念の明示化「言葉の意味合いを踏まえた自然言語処理」
35 単語の意味をベクトルの形で把握する「「分散表現」で浮かび上がる単語間の関係性」
36 テンソルで関係性と知識を表現する「組み合わせ型のデータで関係を表す」
37 ノイズがあっても声を聞き取る技術「隠れマルコフモデルと音声認識」
38 自然言語処理の技術要素「今やフリーで使えるようになった高度な技術」
39 広がる自然言語処理技術の応用先「大量に読むことができる人工知能の新しい役割」
40 人工知能は画像をどうやって理解しているか?「膨大な画像群を記憶して利用する」
41 人工知能とサービスシステム設計「社会の中で活きる人工知能の実現のために」
42 人工知能が運動の質を理解し健康増進を支援「指導者の能力を倍増させる」
43 業務知識を学び従業員を支援する「人の能力を向上させる人工知能」
44 ロボットの行動規則を試行錯誤で学習する人工知能「大域的な試行錯誤から局所的な試行錯誤」

第5章 ディープラーニングは何がすごいのか?

45 ディープラーニングを支える自己符号化器「多層のニューラルネットを一層ごとに作る」
46 ディープラーニングと表現学習「人間が気付かない目の付け所を見つける人工知能」
47 ディープラーニングが変える世界「人工知能大競争開始の号砲が鳴った」
48 コンピュータが将棋で人に勝つ「ミニマックス法と評価関数」
49 コンピュータが囲碁で人に勝つ「モンテカルロ木探索と深層学習」
50 芸術を作る人工知能「人工知能が音楽、小説、絵画を作る」

第6章 人工知能の未解決問題と突破策

51 人工知能は自身の思考を変えられるか?「人間に与えられたアルゴリズムからの超越」
52 フレーム問題「言わずもがなの常識もルールに書くのは大変」
53 記号と対象物の間の大きなギャップ「実世界で働くには記号と実体との対応を知る必要がある」
54 人工知能の安全性をどう保証するか「命を預かる役目を果たす人工知能」
55 計算量の爆発「すべての場合を考えようとしても膨大な選択肢が」
56 汎用人工知能の夢「人間のようにどんな問題でも受け付ける人工知能」
57 人工知能から人工生命へ「自己複製し増殖するプログラム、そしてロボット」

第7章 人工知能が溶け込んだ社会の将来像

58 人工知能が変えるものづくり「第4次産業革命は何をもたらすか?」
59 自動運転車は現代の人工知能技術の中心題名「何が必要か?どう実現されるか?」
60 家電と人工知能「家庭内や職場で人工知能はどう使われるか?」
61 人工知能が医療を変える「隠れた情報をフルに活用する「精密医療」」
62 人工知能が金融を変える「利益追求からリスク管理」
63 人工知能が教育を変える「教育支援から入試突破プログラムまで」
64 アメリカの人工知能開発戦略「新たな産業革命をアメリカ政府はどう考えているか」
65 これからの日本の人工知能「ベンチャー精神とエコシステムに活路が見い出せるか」
66 人工知能が仕事を奪う?既存影響と新規事業「人工知能ビジネスの動向」

コラム
①人工知能研究の歩みとこれから
②人工知能学の俯瞰図
③小中学生からのよくある質問
④人工知能研究者になるには?
⑤人工知能の研究職場
⑥人工知能時代の人材・組織論
⑦産業技術総合研究所人工知能センターについて

参考文献
索引
執筆者一覧

辻井 潤一(つじい・じゅんいち)

産業技術総合研究所人工知能研究センターセンター長。1949年生まれ。1973年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。同大学助手、助教授として質問応答システム、機械翻訳、言語理解の研究に従事。この間、フランスCNRC上級研究員。1988年、英国マンチェスター科学技術大学教授。1995年、東京大学理学部教授同大学院情報理工学系研究科教授。1995年から2001年、2005年から2011年、マイクロソフト研究所アジア主席研究員。2015年より現在に至る。2016年よりマンチェスター大学教授を兼任。
計算言語学会(ACL)、国際機械翻訳協会(IAMT)、アジア言語処理学会連合(AFNLP)、言語処理学会などの会長を歴任。2015年より国際計算言語学委員会(ICCL)会長。
主な受賞歴
日本IBM科学賞(1988年)、香港SEYF招聘教授賞(2000年)、大和エイドリアン賞(2004年)、IBM Faculty Award(2005年)、人工知能学会業績賞(2008年)、紫綬褒賞(2010年)、情報処理学会フェロー(2010年)、情報処理学会功績賞(2013年)、船井業績賞(2014年)、ACLフェロー(2014年)、大川賞(2015年)

コメント

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