『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』|幼いころ失った「愛着」が今も

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「愛着障害」……そんな言葉をこの書籍で知りました。

ネットの口コミで見たこともありましたし、図書館でもチラチラッと目に入り以前から気になっておりました。

なんとなく感じる違和感、「愛着障害」かも?

愛着障害とは、幼いころの経験が関係しています。

幼児期、愛着を抱いていた対象を失ったり、引き裂かれる経験が、愛着障害を生むのです。

幼児期に強い愛着を持つ相手の代表は、自分の父母。特に、母親への愛着は格別です。

例えば、幼いころに母を亡くしたり、なんらかの理由で祖父母に育てられた経験。両親の離婚、病気や経済的理由で親子が引き裂かれることもあります。

もちろん、虐待やネグレクトを受けて育つ人もいます。

幼い頃、なんらかの理由で「愛着」を失った経験は、大人になっても影を落とすといいます。

その結果、他者との距離を必要以上に取る人や、反対に人との距離が近く依存傾向にある人。他人を信じられず、疑ってばかりだったり、自分がここにいることを確認するように窃盗など犯罪行為に手を伸ばす人もいます。

自分はどう?あの人は?

「愛着障害」によって引き起こされる症状を並べてみると、自分自身に当てはまる特徴があるようにも思います。あるいは、身近な友人知人の特徴に重なる部分もあります。

中高生になってから、学習に力が入らず成績がガクンと下がってしまう人。パートナーを信じられず、態度や言葉を重ねても満たされず愛情を感じられない。あるいは、他人に依存してしまったり、浮気を繰り返してしまったり。

本書『愛着障害』では、傾向や症状の具体例がたくさん紹介されています。心当たりがある人もたくさんいらっしゃるでしょう。

「愛着障害」詳しく知りたいなら……

本書『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』では、「愛着障害」にまつわる周辺の話が中心です。

医学的根拠や、具体的な事例、治療例などは端折られています。ですから、もっと踏み込んだ内容を知りたい方は、他の本にあたりましょう。

本書はあくまで、「愛着障害」という症状があること、それは世代を超えて起こること、「愛着障害」を負っている人は身近にいるであろうこと(もしかしたら自分がそうかも)が提示されています。

これまであまり知られていない事柄ですから、「愛着障害という考え方がある」ということを知るためのものです。この本を読むことで、自分の抱えている問題や、生き難さの理由の一端を感じられるかもしれません。

(これはご自身の経験によるでしょうから、「読んでみてください」としか言えない(^_^;))

身近な人の「異変」に気づいたなら

自分の経験だけではなく、身近な人の異変や、違和感の理解にも繋がるかもしれません。

コミュニケーションがうまく取れず孤立している人や、疑い深く心をひらいてくれない人。他者に依存してしまいトラブルになる人や、身近にも「愛着障害」を抱えているのではないか?と思う相手がいます。

もちろん、「愛着障害」を抱えている人の中には、自分の過去の辛い経験をカミングアウトする人もいますが、中には過去を直視することを避けヘラヘラと冗談を飛ばしたり、あるいは薄情に見えるような人もいます。

パッと見て「愛着障害」には見えなくても、実は問題を抱えている人のコト、ちょっとだけ知れるような気がします。

『愛着障害』を最初の第一歩に

本書『愛着障害』は、愛着障害を知るための、最初の一歩になる本です。

解決法や治療法、具体的な事例などは、端折られている印象です。自分が「愛着障害」に当てはまっていると感じたなら、症状によっては専門医の門を叩くことも必要でしょう。また、軽い症状であっても、改善策を知りたいなら、他の本を探さないといけません。

ですから、本書『愛着障害』は、最初の一冊目なのです。

まずは、本書を読んで、自分の幼少期の経験や、現在抱えている問題などと照らし合わせてみましょう。

そして、「愛着障害」を持っていても、その特性を利用して成功した偉人たちも紹介されています。彼らの生涯に触れることも、大きな励みになります。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々

目次情報

はじめに――本当の問題は「発達」よりも「愛着」にあった

第一章 愛着障害と愛着スタイル

あなたの行動を支配する愛着スタイル/抱っこからすべては始まる/特別に選ばれた存在との絆/愛着の形式と臨界期/愛着の絆と愛着行動/愛着の傷と脱愛着/親を求めるがゆえに/安全基地と探索行動/ストレスと愛着行動の活性化/子どもの四つの愛着パターン/統制型と三つのコントロール戦略/良い子だったオバマ/愛着パターンから愛着スタイルへ/愛着障害と不安定型愛着/三分の一が不安定型愛着を示す

第二章 愛着障害が生まれる要因と背景

増加する愛着障害/養育環境の関与が大きい/親の不在/川端康成の場合/K君の場合/ルソーの場合/養育者の交替/漱石の場合/太宰治の場合/親の愛着スタイルが子どもに伝達される/愛着障害を抱えていたミヒャエル・エンデの母親/愛着スタイルと養育態度/ビル・クリントンの場合/ヘミングウェイの場合/ネガティブな態度や厄介者扱い/親に認めてもらえなかった中原中也/母親のうつや病気も影響する/ウィニコットの場合/母親以外との関係も重要/一部は遺伝的要因も関与

第三章 愛着障害の特性と病理

愛着障害に共通する傾向/親と確執を抱えるか、過度に従順になりやすい/ヘミングウェイの後悔/信頼や愛情が維持されにくい/何度も結婚に失敗したのは/ほどよい距離がとれない/傷つきやすく、ネガティブな反応を起こしやすい/ストレスに脆く、うつや心身症になりやすい/非機能的な怒りにとらわれやすい/過去にとらわれたり、過剰反応しやすい/「全か無か」になりやすい/全体より部分にとらわれやすい/川端の初恋/ヘミングウェイと闘牛/意地っ張りで、こだわりやすい/発達の問題を生じやすい/発達障害と診断されることも少なくない/自分を活かすのが下手/キャリアの積み方も場当たり的/依存しやしく過食や万引きも/ヘミングウェイと依存症、うつ/思春期に躓きやすい/子育てに困難を抱えやすい/良い父親ではなかったヘミングウェイ/父親になることにしり込みしたエリクソン/アイデンティティの問題を演技性/道化という関わり方/内なる欠落を補うために/反社会的行動の背景にも多い/ジャン・ジュネという奇跡/安住の地を求めてさまよう/性的な問題を抱えやすい/ルソーの変態趣味/谷崎潤一郎の女性観/親代わりの異性と、ずっと年下の異性/古代自己と大きな願望/高橋是清の「強運」/独創的な創造性との関係

第四章 愛着スタイルを見分ける

愛着スタイルが対人関係から健康まで左右する/大人の愛着スタイルを診断する/ストレスが溜まったとき、人を求めますか?/つらい体験をよく思い出しますか?/愛する人のために犠牲になれますか?/愛着スタイルと仕事ぶり/対人関係か仕事か/愛着スタイルと攻撃性/健康管理に気を配る方ですか?/喪の作業の仕方が違う/愛着スタイルは死の恐怖さえも左右する/成人愛着面接では、親との関係に焦点を当てる/子ども時代の愛着パターンとの関係

第五章 愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情

1.安定型愛着スタイル

安定型の特徴

2.回避型愛着スタイル

【回避型の特性と対人関係】
親密さよりも距離を求める/何に対しても醒めている/自己表現が苦手で、表情と感情が乖離する/隠棲生活とひきこもり/種田山頭火

【回避型の恋愛、愛情】
愛とは、こだわらずに忘れ去るもの/パートナーの痛みに無頓着/助けを求められることが怒りを生む

3.不安型愛着スタイル

【不安型の特性と対人関係】
なぜ、あの人は、気ばかりつかうのか/拒絶や見捨てられることを恐れる/すぐ恋愛モードになりやすい/べったりとした依存関係を好む/ネガティブな感情や言葉が飛び火しやすい/パートナーに手厳しく、相手の愛情が足りないと思う/両価的な矛盾を抱えている

【不安型の恋愛、愛情】
不安型の人がセックスに燃えるとき

4.恐れ・回避型愛着スタイル

漱石の苦悩の正体

第六章  愛着障害の克服

1.なぜ従来型の治療は効果がないのか

難しいケースほど、心理療法や認知療法が効かない理由/精神分析が愛着障害を悪化させるのは/なぜ、彼らは回復を生じさせたのか?/愛着障害を乗り越えた存在のもつ力

2.いかに克服していくか

(1)安全基地となる存在
安全基地を求めてさまよい続けたルソー/良い安全基地とは?

(2)愛着の傷を修復する
未解決の傷を癒す/幼いころの不足を取り戻す/踊り子体験と愛着の修復/ままごと遊びと子ども心の回復/遊びがもつ意味/依存と自立のジレンマ/傷ついた体験を語り尽くす/怒りが赦しに変わるとき/過去との和解/義父と和解したクリントン/スティーブ・ジョブズの場合――禅、旅、妹との邂逅

(3)役割と責任をもつ
社会的、職業低役割の重要性/否定的認知を脱する/自分が自分の「親」になる/人を育てる/アイデンティティの獲得と自立

おわりに――愛着を軽視してきた合理主義社会の破綻

愛着スタイル診断テスト

主な参考文献

岡田 尊司(おかだ・たかし)

一九六〇年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態整理学講座精神医学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務。医学博士。山形大学客員教授。著書に『シック・マザー』(筑摩選書)、『アスペルガー症候群』『境界性パーソナリティ障害』(以上、幻冬舎新書)、『パーソナリティ障害』『統合失調症』『子どもの「心の病」を知る』(以上、PHP新書)など多数。小笠原慧のペンネームで小説家としても活動し、『DZ』『手のひらの蝶』『風の音が聞こえませんか』(以上、角川文庫)、『サイバー・ミッション』(文春文庫)などの作品がある。

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