『「美しい」ってなんだろう? 美術のすすめ』を読んだよ

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森村泰昌『「美しい」ってなんだろう?』書影

学ぶことと、マネすること

「マネる」と「学ぶ」。どちらも同じ「まねぶ」という言葉から生まれたと言われています。
マネをすることと学ぶことは、もともとは同じものなのです。

私たちは日本語を読んだり書いたりします。学校で国語の勉強をしたからですが、そもそも小学1年生になるまでに、みんな日本語で会話ができるようになっていますよね。
生まれてから小学校に上がるまでの間にも、お父さんお母さん、おじいさんやおばあさん、お兄さんお姉さんや、親戚や友達、地域の大人たちと関わることで、言葉を覚えてゆくのです。

赤ちゃんはモノマネの天才!?

当たり前ですが、生まれたばかりの赤ちゃんは言葉が喋れません。
赤ちゃんはママをはじめ、周りの人たちと向き合って、お互いに「あー」とか「うー」とか、マネをしあって遊びます。「MMMMM(ムムムムム)言語」というそうです。
更に、赤ちゃんのしぐさや表情をマネすると赤ちゃんが喜びますし、私たちがペロッと舌を出したり、「あー」と口を開けたりすると、赤ちゃんもマネしてくれます。
赤ちゃんと言葉ではお喋りはできないけれども、一緒に遊ぶことができるんです。

そして、赤ちゃんは遊びながら、少しずつ言葉を覚えてゆきます。マネをして、遊びの中で学びとってゆくんですね。
そう、学ぶことって「遊び」でもあるんです。

私は今、英語の勉強をしているのですが、なかなか上達しません。一つ覚えると一つ忘れてしまって、いやになってしまいます。
しかし「マネる」ことを考えると、私は英語をマネする回数が少ないのかもしれないと気付きました。できれば、英語がペラペラのアメリカ人と一緒に遊びながらマネができれば良いのですが、そうは上手くいきません。
自分の力で、たくさん英語の会話をマネするチャンスを作らないといけませんね。どんな方法があるのでしょうか。

マネの達人・美術家の森村泰昌さん

マネの達人(?)の森村泰昌さんの本『「美しい」ってなんだろう?』を読みました。森村泰昌さんは、自らを「美術家」と呼んでいます。森村さんは、絵を描かないので画家でもないし、役者やモデルでもありません。美術を“する”から「美術家」だそうです。

森村さんの作品について検索してもらえると分かると思うのですが、とても面白い作品を作っている人です。それは、森村さんが有名な絵や人になりきって、モノマネ写真を撮っているのです。
私はパッと見て、おかしくて笑ってしまいました。が、次々と森村さんの作品を見続けている内に、“森村泰昌”という人物がわからなくなってしまいました。どれが本当の森村さんなのだろうか、どれが作りものの森村さんなのだろうかと、混乱してしまったのです。そして、「とても面白いこと、興味深いことをしている人だなぁ」と思いました。
だって考えてみると、すべて森村さんの写真なのですから、どれも森村泰昌さん本人です。しかし、まるで別の人物や、絵画になりきっているものですから、なにがなんだかわからなくなってしまったのです。
「“その人”“本人”とは一体なんだろう」
「その人“らしさ”ってなんだろう」
「自分はどうやって人間の姿を、誰が誰かと判断しているんだろう」
これまで考えたこともなかったことが、不思議に思えてきました。

マネをしてみて気付くこと、わかること

森村さんも、自分が絵画のマネをすることで、絵画について深く考えたり、知ることができるそうです。
これはちょっと分かります。私もイラストを描くのが好きなので、好きなキャラクターの絵や、好きなイラストをマネして描いてみると、気付くことがたくさんあります。
それはぜひ、みなさんもやってみてください。

それを森村さんは「描く」や「作る」ではなく「なってみる」ことで、その絵について発見や研究をしているのですね。まさに、マネをして学んでいます。

「マネする」って、あんまりいい意味で使われないですが、実はとっても大事なことなんです。だけど、ただマネをして終わりではありません。マネをして、学んだら、次はそれを活かしてゆかないともったいない。

そこからまた、新しい表現が生まれてくるのかもしれません。

「美しい」って何だろう? 美術のすすめ

  • 著者:森村泰昌
  • 発行所:株式会社イースト・プレス
  • 2011年11月16日

目次情報

  • 1時間目 私は美術家です わたしは美術家です/「美しい」って言いますか?/「美しい」って必要ですか?/「美しい」世界はおおきいぞ!/「美しい」をさがしに行こう
  • 2時間目 モリムラ美術館 あらためて自己紹介/「ゴッホ」 vs 「ゴッホ」/モリムラ版ゴッホの作り方/「美術家」、誕生!/なんでそんなバカげたことをするの?/「見る」「作る」「知る」/それでも、美術はむずかしい/第四の道は「なる」だった/「なる」ことでわかること
  • 3時間目 ふしぎ美術館 まっしろにする/絵のまえでうでぐみをするのはなぜか/絵のまえにひとが集まる理由/絵のなかのふしぎ/ドラクロワのふしぎ/絵を笑え/笑ったあとで、さらに進む/ドラクロワ、ヴィーナス、高倉健/ドキドキするのがはじまりだ
  • ブレイクタイム1
  • 4時間目 ものまね美術館 「まなぶ」と「まねる」のあいだから/どっちがよい子?/日本語のまなびかた/「まなぶ」とは「まねる」こと/マネは、まねる!/マネはなぜ、まねるのか/まねなのに、まねないでマネの絵/モリムラ流のまねかた教えます/「まね」の「まね」の「まね」はオリジナルになる?/「ものまね」のすすめ/おまけ
  • 5時間目 芸術 vs 芸能美術館 芸術か芸能か、それが問題だ!/後悔しない表現選び/メジャーデビューの悩み/芸能界と芸術世界のちがい/「深く行きつくこと」と「広く行きわたらせること」
  • 6時間目 しあわせ vs ふしあわせ美術館 「しあわせ」は、どんなとき?/「しあわせ」の絵画/印象派/「しあわせ」から「ふしあわせ」へ/「ふしあわせ」の絵画/ムンク/「ふしあわせ」という「美しさ」/明るくて暗い絵/ゴッホ
  • ブレイクタイム2
  • 7時間目 ほねぐみ美術館 「よくわかららんなあ」/モンドリアン vs ブレッソン/「静か」であっても「退屈」ではない!/「きれい」なら「美しい」のか?/骨のある写真は美しい/これであなたも骨人間
  • 8時間目 おおきさ美術館 おおきくなれば値段もあがる/おおきい絵、ちいさな絵/商品と作品のビミョウな関係/レンブラント vs フェルメール/フェルメールはなにを描いたか/フェルメールの「美しさ」
  • 9時間目 「地球美術史」美術館 あらためて自己紹介/さまざまな女優に扮します/なぜ「女優」なの?/フリーダ・カーロって、どんなひと?/私はなぜフリーダを知らなかったか/「美」はマユゲにあり/「毛」におどろく/「手」におどろく/あなたが宿すタネを育てよう
  • ブレイクタイム3
  • 10時間目 いつでもどこでも美術館 「美」のひろがり/「美」の森でドングリをひろう/世の中、いつでもどこでも美術館
  • あとがき

著者紹介

森村 泰昌(もりむら・やすまさ)

美術家・1951年大阪市生まれ。京都市立芸術大学卒業、同大学美術学部専攻科終了。1985年,ゴッホの自画像に自らが扮して撮影するセルフポートレイト手法による大型カラー写真を発表。1988年,ベネチアビエンナーレ/アペルト部門に選ばれ,以降海外での個展,国際展にも多数出品.古今東西の有名絵画のなかの登場人物になる〈美術史シリーズ〉,映画女優に扮する〈女優シリーズ〉などの作品で知られる。個展「美の教室、静聴せよ」(横浜美術館、熊本市現代美術館)などによって、2007年度、芸術選奨文部科学大臣賞。巡回展〈なにものかへのレクイエム/戦場の頂点の芸術〉により、2011年に毎日芸術賞を受賞。一連の芸術活動により、2011年秋に紫綬褒章受章。近著に『露地庵先生のアンポン譚』(新潮社)、『対談集 なにものかへのレクイエム-20世紀を思考する』(岩波書店)。最近の作品集に『森村泰昌全女優』(二玄社)、『まねぶ美術史』(赤々舎)、『森村泰昌 肖像/経済』(Akio Nagasawa Publising)。オフィシャルHPは、 www.morimura-ya.com/

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