『ブランドらしさのつくり方―五感ブランディングの実践』|体感をともなう体験を

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

こんにちは。あさよるです。今日読んだ『ブランドらしさのつくりかた』は、あさよるの愛読書で、過去に何度も読み返しているものだったりします。学生時代に教科書として指定されていた本で、当時も繰り返し読んでいました。ブランディングを手を動かしながら考える時、パラパラと読み返します。

図解もたくさんあり、実際にブランディングがなされる過程も細かく紹介されており、読んで楽しい内容でもあります。kindle版も出ているようなので、おすすめです。

五感をともなうデザイン

「人のぬくもり」という言葉があります。例えば「初音ミクの歌は機械的で人のぬくもりがない」とか一昔前だと「ワープロ出力の文書は人のぬくもりがない」だとか。マジレスすると「ボカロを調教してんのは人間だぞ」とか「その文章を書いたのは人間だし、ワープロを作ってるのも人間だ」なんて言いたくなることもあります。

しかし、「人のぬくもり」と言いたくなる状況とはなんだろうと考えると、それは「人の身体をともなう活動がイメージできる/できない」に由来するのではないか。もっと抽象度を上げると美しい/美しいくないなのかもしれません。すなわち、それを「使う人」への配慮や心地よさが設計されているかが「人のぬくもり」なのではないでしょうか。

本書ではコカ・コーラの瓶からロゴマークを消し去っても、それがコカ・コーラと分かると言います。例えその瓶を割ってしまっても、そのガラスのかけらだけでもコカ・コーラの瓶だと判別できます。それは、あの瓶が「コカ・コーラをが飲みやすい」ようにデザインされており、他のコーラや飲料とは一線を画しているようです。あの瓶のフォルムは、見るからに「触感」をイメージさせ、コーラの炭酸が喉を流れていく感覚をイメージさせます。

シャンプーのCMの多くは視覚と触覚、臭覚に訴えかけるものが多いので、泡立ちの気持ちよさを想起させる「音」、すなわち〈聴覚〉を刺激する音を使うことで他のシャンプーとの差別化を測ることができます。人気のカフェやレストランも、五感をうまく使っています。調度品や、絨毯の感触、BGM、香りと五感に訴えかけるのです。

特に嗅覚を用いるデザインは今後もっと広がってゆくでしょう。コンビニが良い例です。コンビニって中に入るとフワッとおでんのにおいがして、「コンビニらしい」と感じます。近年ではコーヒーのにおいもコンビニのにおいになりつつあるのかもしれません。

五感の情報だけで、わたしたちは連想し、イメージします。「バタン」という音だけで「車のドアが閉まった」とわかるんです。記号として五感を使っているのかもしれません。

ブランドとは何か

そもそも「ブランド」とは、牛に押した焼き印の「焦げ(Burned)」という言葉が起源です。「ブランド」の概念は最初、牛、酒、石けんなどに使われていました。高級品やアパレルの世界で「ブランド」という言葉が使われるようになったのは最近だそう。さらに近年では商店街や公共施設・サービス、人間もブランド化されています。

ブランドとは「高級品」だけでなく、人が価値を見いだすものすべてです。

ブランドはよく、脳の中の構造にたとえられる。個人のいろいろな経験が、脳の中で複雑に絡み合って、ある連想のネットワークを構成する。たとえば、「花火」という記憶は、単独で終わるものではなく、夏、夜、きれい、ワクワク、混雑といった他の記憶と絡み合って脳に蓄積されている。この脳内の「記憶の集合体」がブランドなのである。この「記憶の集合体」が大きくてかつほかにない独自のものであればあるほど、そのブランドは強いということができる。

p.40

「京都」がブランドになるのは、「京都」の漢字二文字を見て、多くの人が様々なイメージを連想するからです。

また、ブランドは顧客だけのものではありません。

魅力的なブランドとは、顧客にとっては、「このブランドなら買ってみたい、使ってみたい」と思わせる対象だけではなく、従業員にとっては「このブランドなら誇りを持って働きたい」と思わせる対象であり、株主にとっては、「このブランドなら投資してみたい」と思わせる対象であるべきものである。

(中略)

一言でいえばブランドとはすべての関係者にとっての「記憶の総体」である。

p.42

「ブランド」の記憶

みなさんもブランドにまつわる記憶やイメージがありますか?

あさよるは以前、無印良品で働いていました。入社前からMUJI製品が素敵だと思っていましたが、働き始めるともっとMUJIが好きになりました。こんなに会社から大事に扱われたのが初めてだったからです。スタッフ仲間もみんな明るくて爽やかで、みんなMUJIの大ファンでした。お客様も丁寧できちんとした方が多く、働きやすい職場でした。退職後の今もMUJIは特別なブランドに思えます。そう「特別」なんです。

昔デザイン生だった頃、授業で「資生堂」の広告が紹介され、資料として資生堂が発刊していた『花椿』を熟読しはじめました。憧れのブランドでした。大人になって資生堂のカウンターで化粧品を買うとき、学生時代の瑞々しさや高揚感や若い苛立ちや、あの頃のことを思い出します。また町の資生堂のお店では、お店の人と恋の話をしたり、年配の女性が華やかにお化粧をしている姿に「ええ女やなぁ」とシビレタ。あさよるもあんな女になれるだろうか。背中が曲がって髪が薄くなっても「あの口紅を塗りたい」と思いました。

ブランドのイメージ。ただ製品のクオリティだけでなく、思い入れやイメージや記憶が絡み合って「他とは違う」「特別」になっています。

五感をともなうブランディング

五感に訴えるデザインと、ブランドとは何かを押さえたところで、本書の本題「五感ブランディング」に移ります。

先ほど紹介したシャンプーのCMでは聴覚を欠いているブランドが多かった。だから泡立ちの気持ちよさを想起させる〈音〉が考案されました。あるアジアの航空会社では、乗客に配るおしぼりにアジアを連想させる香りをほのかにつけました。これが好評で、他の航空会社との差別化が成功しました。風鈴の〈音〉を聞くと涼しい感じがするのも、五感を使った好例。

また、キーボードで文字を入力するとき、我々はキーボードを叩きつけています。この感覚が重要で「入力した!」って実感を抱かせています。コンピュータが普及した今、ブラックボックスに囲まれて生きてる我々は指先の「入力した感覚」がとても重要です。

五感を使ったブランディングを見ていくと、まだまだ五感ブランディングは弱いブランドが多いと気づくかもしれません。ウェブサイトのイメージと、お店のエントランスの雰囲気と、店内の様子がチグハグで変な感じなお店とかいっぱいありますよね。

あさよるの雑談ですが、床がペタペタしている系の飲食店はなんとなく避けてしまいます。また、プッチンプリンの蓋の裏についているプリンはご馳走ではありますが、出先では避けてしまいます。だから「プッチンプリンは家で食べるもの」と感じるので、家庭的なイメージがあります。結構、われわれはちょっとした感覚で商品やサービスのイメージを持っていて、それがブランドと合致しているかどうかが大切なのです。

新宿駅の五感ブランディング

本書では実例として、新宿駅の五感ブランディングをしてゆく様子が細かく紹介されます。新宿駅の利用者にアンケートを取り、新宿駅の五感に関わるイメージを暴いてゆきます。そして、新しい新宿駅の五感ブランディングをしてゆくのです。

用いられるのは従来の視覚に頼ったイメージボードだけでなく、手で触れる素材も盛り込まれます。さらに「新宿駅の香り」を新たに作りました。本書の書籍版では、実際に新宿の香りがついた付録がありました(今はないかも)。

視覚に頼りすぎているデザイン

五感ブランディングに触れると、自分がいかに視覚的なイメージ過多なのか気づきました。とくにブログは視覚しか情報がないのが残念ですね。「音楽をつけようか」と一瞬血迷いましたが、本書でバッサリと「トップページで音楽が流れ続けるサイトうざい(意訳)」と書かれていて思いとどまったw

ブログでにおいや触覚、味覚に訴えかけられる方法ってないのかな? 背景をモコモコな素材に変えるとか? においはもっと難しいですね。冒頭に「焼き鳥」とか「カルビ」とか書く? うーん。

話は変わって、あさよるは音楽CDはiPodに入れて、新たに買う分は iTunesで購入するようにしています。増えてしゃーないからね……。んで、昨日久々に音楽CD現物を買いまして「あの封を切る時のウキウキ」を久々に体感しました。「私まだこんな気持ちになれるんだ!」という喜びw iTunesには「あの封を切る時のウキウキ」はないし「タワレコのシャカシャカの黄色い袋ぶら下げて歩く感じ」もないな。

代わりに「お気に入りのiPod touch第四世代を剥き身のまま使い込んでいい感じ」を楽しんでおります。(写り込んでいるのはフナイのエアコン)

博報堂『ブランドらしさのつくりかた』イメージ - iPod touch 第四世代

iPod touchは触覚と聴覚と視覚が刺激されるものね。メタリックな感じが金属のにおいのイメージも想起させるかも。大量生産される工業製品なのに「人のぬくもり」を感じさせるしね。

ちなみに、iPod touch 第5世代も愛用していますが、こちらは第4世代より使いやすいけど、トキメキが少ない。

ブランドらしさのつくり方―五感ブランディングの実践

ブランドらしさのつくり方―五感ブランディングの実践

ブランドらしさのつくり方―五感ブランディングの実践

  • 作者:博報堂ブランドデザイン
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 発売日: 2006-09-29

目次情報

第1章
なんとなく五感体験

日常にあふれている「なんとなく」
「なんとなく」の正体は五感である
見ているつもりが見えていない?
見えていないと見えてくるものがある
「五感」と購買の関係
コンビニには五感を刺激する商品がいっぱい
家電商品は、いまや五感競争
機能の競争から知覚品質の競争へ
要注意!五感で嫌われる商品
五感と愛着
こだわりの製品やサービスが五感に効く
購買と愛着のメカニズム
五感体験は時代が求めている

第2章
ブランドの「らしさ」づくりと五感

セリングとブランディング
ブランドに対する誤解
誤解① ブランドは高級なもの
誤解② ブランドとはマークや名称のこと
誤解③ ブランドは広告でつくるもの
誤解④ ブランドは顧客のためにつくるもの
「らしさ」がつくる永続的なビジネス
ブランド「らしさ」づくりの変遷
第一期:表層の時代
第二期:左脳の時代
第三期:右脳の時代①パーソナリティへの関心
第四期:右脳の時代②視覚の導入
第五期:五感の時代
「らしさ」づくりと五感体験の確執
ブランドと倫理の葛藤
感覚を情報共有することの難しさ
右脳と左脳の橋渡しをする
あなたのブランドは「スマッシャブル」か?

第3章
五感に訴えるブランドとは

“色シェア”
シャンプーの“音”?
航空会社の“香り特許”
AV機器ならぬ“AVT機器”
ビデオレンタルを映画館にしてしまう“味”
日本における五感ブランディングのチャンス

第4章
五感ブランディングの方法論

ステップ1 五感の計測――「らしさ」を可視化する
五感体験の背後に眠る、潜在意識を理解する
送り手と受け手の「ズレ」に留意する
まずは既成概念を取り払う
ステップ2 五感の設計――「らしさ」を規定する
ブランドの提供価値を規定する
パーソナリティを規定する
ブランドの世界観を規定する
五感要素を規定する
ステップ3 五感の展開――「らしさ」を実践する
五感タッチポイント・マトリックスを作成する
五感体験シナリオを設計する
五感体験プランの優先順位をつける
計画を実践する

第5章
仮想ケース:
新宿駅の五感ブランディング

新宿駅を知りたくば新宿を見よ
「新宿らしさ」の計測
新宿を色で表すと、何色?
新宿を音で表すと、どんな音?
新宿をにおいで表すと、どんなにおい?
新宿を手探りで表すと、どんな触り心地?
新宿を味で表すと、どんな味?
新宿駅のブランド戦略
新宿の存在意義
新宿駅が備えるべき事実・特徴
新宿駅のスタイルの規定
新宿駅の五感因子の抽出
視覚因子としての基調カラー3色を決める
触覚因子として5つの素材を選ぶ
聴覚因子として「新宿のサウンド」をつくる
臭覚因子として「新宿の香り」をつくる
味覚因子を「カクテル」で表現する
新宿駅のタッチポイントを洗い出す
五感タッチポイント・マトリックス
中央地下通路の五感再設計
音が時と位置を知らせるしくみ:新宿駅のサウンド
「臭い」新宿ではなく、「奥深い香り」の新宿へ
タッチポイントデザインと機能性

第6章
五感のこれから

嗅覚
嗅覚の研究にノーベル賞
香りをインターネットで届ける
触覚
触れ合いを実現したロボット・ペット
味覚
味の数値化への挑戦
「食育」への関心が味覚研究を後押しする
聴覚
「聞き分ける」ロボット
視覚
3D技術のさらなる進化
五感の“五”を考える
五つの感覚は、実はつながっている
デジタルで分析し、アナログで統合する
つながりのある五つの感覚が、“互感”!

おわりに
参考文献

博報堂ブランドデザイン

(株)博報堂内のブランド専門組織。左脳的思考と右脳的思考の融合をモットーとし、調査、戦略立案から、CI、VI、ネーミング、商品開発、店舗・空間開発、広告、WEB、サウンドブランディング、インナー研修など様々なアウトプット領域にわたる一貫したブランドコンサルテーションを得意としている。

SNSでもご購読できます。

コメント

コメントを残す

*