小説・ものがたり

『新訳 メアリと魔女の花』|たった一夜の魔法もあるんだよ

こんにちは。話題を遅れて取り入れる あさよるです。見ましたか?『メアリと魔女の花』。あさよるはもちろんまだ見てませんw なんだか事態をよく呑み込めないまま公開が終わってしまいましたw

児童文学『小さな魔法のほうき』が『メアリと魔女の花』のタイトルでアニメ映画化された。アニメーションを手がけたのはスタジオジブリのOBたち、ということでおk? という程度の認識で、完全に乗り遅れてしまったーw

今さら予告編を見ています。ちなみにSEKAI NO OWARI のMVは公開時に見たな。

↑この映画の予告編にも出てくる本が、本書のデザインと同じなのね。

『メアリと魔女の花』あらすじ

『メアリと魔女の花』はこんなお話。

 夏休みに両親や兄弟と離れて、田舎の親戚の家にひとりで預けられた十歳の少女メアリは、年寄りしかいない家での生活に退屈しきっていた。それでもなんとかおもしろいことを探そうとしているうちに、小さな黒ネコ、ティブと出会い、ふしぎな力を持つ魔法の花「夜間飛行」とほうきを見つける。メアリはネコとほうき(魔女の話には付き物の三要素)に導かれるようにして、空を飛んで魔女のいるエンドア大学へ行き、やがて近所の少年ピーターとともに、思いもかけない大冒険に巻きこまれていく。

p.219-220

黒ネコと花とほうきを手に入れたメアリが、ほうきで空を飛びエンドア大学で魔法を学ぶことになる。しかし……というお話。黒ネコ、花、ほうきという「魔女モノ」の三種の神器と、ハリーポッターでもお馴染みの「魔法学校へ行く」という展開。ザ・魔法使いなお話。

こちらは映画『メアリと魔女の花』に伴い新訳で出版されたもののようですが、昔の『小さな魔法のほうき』をお読みになった方もおられるかも。

小学生から大人まで

本書は読んでみると小学校高学年以上が対象なのかな?という感じ。漢字にルビなし。お話自体はシンプルな筋書で、〈夏休みのたった一夜の大冒険〉という、何がどう転んでも胸がトキメク、子どもさんにも薦めやすい内容です。また、〈魔法使いモノ〉の定番の設定や道具が次々登場しますから、「一般教養としての魔法使いのお話」にもいいかもw 役に立たない知識ですが、そういう「お約束」をどれくらい知っているかって大事じゃないっすか。

映画を見た後に、「本でも読んでみない?」なんて持っていくのも良いやも。

で、大人のあさよるが読んでも楽しい。適度にドタバタ、適度にコミカル、適度にハラハラ。やっぱ魔法を使ったり魔法が解ける描写は胸がキュンとする。

風景や状況描写も丁寧で、土のにおいや湿った草原や、乾いた風が吹きぬける様子など、読んでいて気持ちよくなっちゃう。植物や動物の名前がたくさん登場したりね。

児童文学、イイネ!

当あさよるネットでは時折「児童文学ってイイネ!」という記事を書いております。これはあさよるネットの中の人が単に、思い出したように児童文学を読んでみては、「これは良いものだなぁ……」と唸っているだけなのですが。

過去にイイネ!と唸っていたのは『魔女の宅急便』と『精霊の守り人』でした。どちらも映像化されているのでご存知の方も多いでしょう。ぜひ原作でも読んでみてください。

『新装版 魔女の宅急便』(全6巻)|児童小説をあなどるなかれ!

『精霊の守り人』|守り人シリーズ第一作。謎、バトル、ファンタジー

あさよるは個人的に、読書ってジャンルをこだわらずにイロイロ雑多に読む方が、どんどん読書が楽しくなってゆくと思っているので、子ども時分に「児童文学ばっかり」になるのはオススメじゃないんです。だけど、あれもこれも色んな本や辞書や図鑑などなどを読む中で「児童文学も読む」のはgoodだと思います。こんなに名作もたくさんあるしね。

もちろん、大人も「大人向けの本ばっかり」じゃなくってたまには「子ども向け」「児童文学」を読んだっていいじゃないか!と、そういうスタンスで行こうと思いますw あまりたくさんを読んだことないので楽しみです。

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『ハリー・ポッターと呪いの子』|ヒリヒリと沁みる物語、再び

ハリー・ポッターと呪いの子 アルバスとスコーピアス

こんにちは。2016年末は映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が公開され、『ハリー・ポッターと呪いの子』が出版され、ハリー・ポッターシリーズが帰ってきました。あさよるもハリー・ポッターシリーズ好きでしたので、とっても嬉しい。書店の平積みが終わった今頃になってから読み始めるのは、いつもの感じでw

〈あれから〉19年後のお話

『ハリー・ポッターと呪いの子』は「ハリーポッター」シリーズの最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』のあと、19年後の世界です。ハリーの息子、アルバスは有名人の父親を持ったことでコンプレックスを抱えています。アルバスもホグワーツ魔術学校で寮生活をしており、ドラコ・マルフォイの息子、スコーピウスと連れ立っています。

アルバスとスコーピウスが、消滅したはずの「逆転時計」を使い、過去の世界へタイムスリップし、過去を改ざんしようと画策します。その結果、現在が大きく変わり、闇の魔法使いが支配する世界になってしまったのです。再び歴史を元に戻すため、過去と現在を行き来する二人。目まぐるしく入れ替わる時空と、登場するキャラクターたちに夢中!

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『小説 君の名は。』|アニメ映画を見たら、小説も

2016年大大大ヒットした『君の名は。』みなさんご覧になられましたか?ついに今週、2017年7月26日DVD&Blu-rayがリリースされて、ご自宅で鑑賞された方も多いはず。ええ、あさよるも……え~、あさよるも……実は、あさよるは映画も見に行かずじまいでした(;’∀’)チーン

で、DVD発売も知らなくって、SNSでみなさん話題しているのを見て知りました。折角なので『小説 君の名は』を取り出した次第です。映画見てない人間が言うのもなんですが、これ、映画『君の名は。』ファンの方は小説読んでも良いかと思われます。「映画見てないくせに言うなよ」と言われるとその通りなのですが、「読んでみて!」と言いたくなるくらい、すごく良かった!

ちなみに あさよるは特典ディスクがついてるのが欲しい……なぜならば、新海誠監督の絵コンテのビデオが全編収録されているそうで、めっちゃ見たい!今週、オープニングの絵コンテが期間限定でYouTubeにアップされていて、すでに何度も何度も繰り返し見ておりました。すごい!

新海誠さんの『小説 秒速5センチメートル』がよかった

そもそも、なんで『小説 君の名は。』を所持していたかというと、同じく新海誠さんの著書『小説 秒速5センチメートル』が良かったからです。この作品はあさよるネットでも紹介しました。映画『秒速5センチメートル』では語られなかった主人公の気持ちが描かれていて、共感というか、納得というか、「彼もいろいろあったんだなぁ」分かり、自分の気持ちの持って行き先が分かった感じでした。

『小説 秒速5センチメートル』|小説で映画を補完^^

映画だと、あの美しい世界と、どこか陰鬱で孤独な描写。そして鳥肌のラスト。完成され閉じられた世界だからこそ、視聴者である〈わたし〉がどこへ心を持って行って良いのか戸惑いを感じたのかもしれません。それが小説では、主人公に共感や〈わたし〉を重ね得るスペースが用意されていたと言いますか。「小説読んで良かったなぁ」としみじみ思ったのでした。

んじゃ、今話題の『君の名は。』も読むべ!と、積んでありました。

『小説 君の名は。』はこんな話

『君の名は。』のストーリーはもうご存知の方が多いでしょうが、一応ネタバレしない程度に紹介します。まず、Amazonの商品紹介にはこうあります。

山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も、山奥の町で自分が女子高校生になる夢を見る。やがて二人は夢の中で入れ替わっていることに気づくが―。出会うことのない二人の出逢いから、運命の歯車が動き出す。長編アニメーション『君の名は。』の、新海誠監督みずから執筆した原作小説。

小説 君の名は。 (角川文庫) | 新海 誠 |本 | 通販 | Amazon

高校生の三葉と瀧がある日、お互いの魂が入れ替わってしまう。それは時々、夢を見るように起こる。見知らぬ場所の見知らぬ異性に入れ替わる二人は、戸惑いつつお互いの日々を過ごし、次第に二人はメッセージを残し合い、情報を共有するようになってゆく。しかし、ある日を境に、二人の入れ替わりが終わってしまう。瀧は、入れ替わっていた三葉を探しに、記憶を頼りに旅に出る。そこで、思ってみない事実に出会ってしまう。それが、三葉と入れ替わらなくなった理由であることも悟る。

現在と過去が錯綜し、大宇宙を股にかけて、二人の結びつきを軸に物語が急激に動き始める様子は壮大!

小説版は3種類ある

あさよるが今回読んだのは、角川文庫から出ている『小説 君の名は。』です。新海誠監督自ら書かれたもので、たぶんこれがスタンダード版でしょう。

これ↓

角川文庫以外に、2種類の『君の名は。』の小説があります。

『君の名は。 Another Side:Earthbound』 (角川スニーカー文庫)

スニーカー文庫から出版されているものは、アナザーサイド物語で、サブキャラたちのお話みたいですね。

これはぜひ読みたい!三葉のお父さんとお母さんの間にも何かあったようだし、おばあさんの思わせぶりなセリフも気になるし、テッシーのスーパーマンっぷりとかも気になっておりまして、触れられているといいなぁ~。

『君の名は。』 (角川つばさ文庫)

つばさ文庫は、子ども向けのもの。小学生の高学年くらい以上の人が対象ですね。物語は同じようなので、映画を見た子どもたちにプレゼント用にいいかもね。

感想のようなもの

ネタバレしないように、ということですので、フワッとしか紹介しておりませんがw、あさよるの感想を簡単にまとめました。

〈運命の人〉に出会うためには

まだ出会ったこともない二人。だけど二人はすでに想い合い、体の隅々の、その感覚まで知っています。だって、二人が入れ替わった記憶は忘れてしまっていても、入れ替わっている間の時間、互いの身体で生きていたのですから。

出会う前から想い合い赤い糸で結ばれた〈運命の人〉。それを実現するためには、これだけのエピソードを経ないとならぬのか!太陽系を股にかけた、千二百年の時を超えたスケールです。

『君の名は。』は、現在過去未来の時間を超え、離れ離れの距離を越え、そして地球よりももっと大きな力が作用しながら、三葉と瀧、二人の若者は出会うのです。壮大すぎ!

ハッピーエンド

映画『秒速5センチメートル』のレビューとか見ていると、「鬱エンド」なんて呼ばれていたり、バッドエンドであることに触れられていることが多い気がします。主人公の彼が、どんな気持ちで踏切を渡り切ったのかの解釈によりけりだろうけれども、「え~ここまで焦らしてそれ~」みたいな感じではあるw

そして、『秒速5センチメートル』がバッドエンドだったなら、『君の名は。』はみんなが望んだハッピーエンドでしょう。

新海誠監督の過去作も見たいね

前から、新海誠監督の他の作品も見たいなぁと思いつつ、まだ見てない。今回、このブログ記事を書くにあたり、『ほしのこえ』をぜひ見たい!と思いました。この作品は、新海誠監督がほぼ一人で制作した作品らしく、絶対見たい。

CMを見てずっと気になってるのは『星を追う子ども』。先に鑑賞した友人は「星を追えよ」と感想を漏らしていて、余計に気になって見たくなっている作品w

で、前作である『言の葉の庭』ですね。『君の名は。』を語る上で、前作くらいは見ておいて、盛り込みたいところ(映画すら見てないのにエントリーしてるけどねw)。

というか、『君の名は。』が見たいわ!

と、過去作見るのもいいけど、まず『君の名は。』を見たいっすw

小説版読了後の勢いでTSUTAYAへ走ろうかと思ったけど暑いし(苦笑)、配信ってめちゃ便利だなぁとしみじみ。

Amazonプライム版はこちら↓

追記(2018/07/04)

やっと映画版を見た感想のようなもの。

小説版の感想とほぼ同じ(苦笑)。というか、小説版とアニメ版に印象の違いがないのがすごい。アニメ見るの初めてだったのに、まるで過去に全編三鷹のような再現率だった。細かな描写がなされている点で、小説版もぜひ読んでほしいです。

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『精霊の守り人』|守り人シリーズ第一作。謎、バトル、ファンタジー

こんにちは。今年は小説をしっかり読みたい あさよるです。

10代~20代半ばくらいまで、物語しか読まない人だったのですが、読まなくなっちゃうと、流行や話題の本にも疎くなってしまいました。

テレビで、綾瀬はるかちゃん主演のドラマ『精霊の守り人』の宣伝をよく見ていて、なんかカッコいい雰囲気に惹かれていました。

児童文学が原作だと知り、さっそく読み始めたのでありました。

あらすじ

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

精霊の守り人 (新潮文庫) | 上橋 菜穂子 |本 | 通販 | Amazon

「精霊の卵」を体内に宿された皇子チャグムは、皇帝が自らの威厳を守るため、幼い命を狙われます。

短槍使いのバルサは、チャグムの母の命令でを、チャグムを命がけで逃がします。

精霊の卵とはなんなのか?

一国の建国神話や、地域の伝承を集めていくうちに、卵の正体、そしてチャグムの運命が暗示されてゆきます。

児童小説なの?

『精霊の守り人』は、1996年に発表された児童小説です。

…といっても、これ、子ども向けなの?とびっくりしてしまいました。

著者の上橋菜穂子さんは文化人類学者でもあられます。そのせいなのか物語中の民話や伝承、そして物語世界に生きる人々の風俗も、なんだか本当にそんな世界が存在するようです。

そして、「謎」。

チャグムが持つ不思議な力は、物語冒頭から示されますが、些細なものです。しかし、お話が進むごとに、その描写に意味があることに気づきます。

チャグムの体内にあるという「卵」。その卵を抱えて守っているチャグムこそ「精霊の守り人」です。

その精霊とは、どうやら水の精らしいのですが……。水の精を狙うモノや、皇帝からの刺客が入り乱れ!

バトル要素、謎解き要素、魅力的なファンタジー世界、力強いキャラクターたち!

入り組んだスト―リーに、えええ!?これが児童文学なの!?大人でも十分面白いんですけど!

オモロー!

運命に翻弄され、運命と生きる人びと

あさよるが、『精霊の守り人』っていいなぁと感じたのは、登場人物たちが、それぞれの運命のなかできちんと地に足をつけて生きていることです。

皇子の身分から一転、逃亡生活が始まったチャグム。

幼いころに父を亡くし、短槍術を使い用心棒をしているバルサ。

物語の主役である二人も、抗えない運命に翻弄されながらも、それでもしっかりと立っている。

運命に逆らうでもなく、運命を受け入れるでもない。

荒波の中で、しっかり生きる人びとの描かれ方が、すごくいいなぁと思いました。

シリーズ全10作なんだって

NHKのドラマにつられて読み始めたのですが、すごく面白い本に出会ってしまったー!

あさよるはこの『精霊の守り人』を全然知りませんで、「守り人シリーズ」なるものがあるようです。

本書『精霊の守り人』一冊でも完結しているのですが、この語、バルサとチャグムの物語は続くそうです。

ちなみに、バルサが主人公の作品は「守り人」、チャグムが主人公の作品は「旅人」です(と、wikiにあったw)。それら併せて「守り人シリーズ」と呼ばれ、全10作。

プラス、短編集が2作。

読みたいっ!!ヽ(=´▽`=)ノ

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『家康、江戸を建てる』|地味ぃ~な天下取り!?

書評ブログや読書メーターでちらちらっと見かけて気になっていました。『家康、江戸を建てる』。

歴史小説です。

このブログで歴史小説ってまだ取り上げていないかも?夢枕獏さんの『陰陽師』のレビューはしましたが、あれは歴史小説のカテゴリーなのかな?

あさよるは一時期、歴史小説ばっかり読んでいた時期がありまして、結構好きですw

ちなみにこちら、岡田斗司夫さんが動画で紹介なさっていて、面白そうなので手に取りました↓

開拓すっぞ!

天正18年、小田原にて。相模、武蔵、上野、下野、上総、下総、安房、常陸の関八州。

豊臣秀吉から天下一の広大な土地を受け取った徳川家康。城は江戸とした。

当時の江戸は沼地で、将来、日本の都になるな土地ではなかった。

さて、家康は江戸を開拓に開拓する。

川を曲げ、山を切り開き、道を作る。

そして、日本全土に流通するにたる貨幣を作る。

都市に必ず必要な飲み水を確保する。

そして、徳川の天下を示す、ランドタワーを築く!

分厚い!けど、読める!

『家康、江戸を建てる』、分厚いです……w 単行本で約3センチ強くらい。

あさよるもビビってしまい、「しょ、正月に読もう……」と寝かせておりました。

で、年明け早々読み始めたのですが、これ、スラスラと一気に読める。三が日かけて読もうと思ってたのに、数時間で読み終えちゃいました。

ビビらなくてOKでしたww

歴史小説ですが、登場人物たちは現代の言葉を話していますし、堅苦しい雰囲気もありません。

サクッと楽しく、街づくりができる!

江戸を建てるプロフェッショナルたち

『家康、江戸を建てる』というタイトルですが、江戸を建てるのはその道のプロフェッショナルたちです。

「江戸城を建てたのは誰?」「大工さん!」というやつです。

第一話は、東京湾へ流れ込む川の流れを変えるお話。昔の江戸は一面の湿地帯で、とても人がたくさん住めるようなところではありませんでした。

大規模な土木工事によって、土地を手に入れないと日本一の城下町は作れない!

第二話は、日本の通貨を徳川が乗っ取ってしまおうというお話。精度の高い金の小判を作るプロジェクト。

第三話は、江戸の町に水道を通す。井戸を作っても飲み水が引けない江戸は、大都市になりえない。どこから水を引く?どうやって水を引く?と壮大なお話。

第四話は、江戸城の石垣をつくるお話。ただの石垣、されど石垣。巨石を江戸に運び込む。ただこれだけの話に思えるが、胸アツ展開なのです。

第五話は、いよいよ江戸城の天守を建築するのですが……ここでは秀忠が将軍として立派に振る舞っています。

「江戸を建てる」とは、江戸の街をつくることであり、またきちんと将軍家が代替わりすることです。

んで最後、なんかよく分からない感動で幕を閉じます。「あれ、これなん話だっけ?」って感じでw

地味ぃ~な天下取り、のお話

戦国武将が次の幕府を開く話です。

ですが、派手でドメスティックな“天下取り”の話ではなく、地味に土木工事、建設工事にいそしむお話なんです。

江戸版リアル・マインクラフトを想像すると、なんとワクワクしませんか!

ということで、結構面白かったです。サクッと読めるのも気持ちいい。

戦国武将や江戸時代の大名って、土木工事ばっかりやってるんですよね。そこを全面的に取り上げて、楽し気です。

登場するキャラクターたちも、みなどことなく愛らしいのも良い。

あさよる的には結構好きでした。

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コリコの町の人々と関わり、悩み、成長する『魔女の宅急便2 キキと新しい魔法』

角野栄子『魔女の宅急便2 キキと新しい魔法』書影

「働く」ことは、誰にだって同じことなのかもしれません。14歳の魔女、キキも同じです。

魔女の修行のためにコリコの町へやってきたキキも、宅急便をはじめて2年目です。お届け物を請け負って、町の人に喜んでもらっています。キキの貢献で、魔女への悪いイメージも払拭されつつあります。

しかし、キキの仕事は順風満帆ではありませんでした。「町の人に喜んでもらいたい」と始めた仕事なのに、不意に「黒い手紙」を運んでしまったからです。結局は勘違いだったのですが、キキが運んでいる物は、人の良心ばかりではないのかもしれません。

キキは悩み戸惑います。自分の仕事について、魔女について、自分の持っている魔法について。

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大いなるマンネリ?『陰陽師 螢火ノ巻』を読んだよ

夢枕獏『陰陽師』書影

今宵も、京の都の土御門大路の屋敷の縁側で、安倍晴明(あべの せいめい)と源博雅(みなもとの ひろまさ)は、ゆるゆると二人、酒を飲んでいる。
10年前もそうだったし、20年前もそうだった。

人気シリーズになった夢枕獏氏の「陰陽師」シリーズは、もうかれこれ30年もの間、ポツリポツリと連載されつづてている。
きっと、10年後も20年後も、彼らは同じように酒を飲んでいるだろう。

マンネリであることがファンの喜び

「陰陽師」シリーズは、愛すべき「大いなるマンネリ」シリーズだ。
作者の夢枕獏さん自身も『陰陽師 太極ノ巻』のあとがきで、「マンネリを恐れない」と書かれていた。
それはシリーズのファンにとっては嬉しい一言だった。


「マンネリ」というと悪い印象があるかもしれない。
面白くないとか、退屈とか、そういうイメージとくっついているかもしれない。
が、実際には違う。
『水戸黄門』や『ウルトラマン』も、『サザエさん』も『ドラえもん』もずうっと同じことを繰り返す。
シェイクスピアだって、スターウォーズだって、お決まりのお話だ。
だからと言って、私たちはそれらの物語を、悪いものだとは思わない。
大いなるマンネリバンザイ、なのである。

マンネリは「定番」であり「ベタ」である。
私たちはそれを愛している。
春が来て夏になり、秋が終わると冬が来る。冬の寒さもいつの間にか和らぎ、また春がくる。
自然界こそベタ、マンネリを繰り返している。
そして、それこそが平穏であり、幸福であろう。

安倍晴明と源博雅は今日も縁側でゆるゆると酒を飲んでいる。
ときにうわさ話をしながら、ときに散りゆく花々を眺めながら、ただただ同じ時間をすごす。
博雅の聞いてきた頼みごとや、厄介事を晴明が聞きながら。

蛍火ノ巻

『陰陽師 蛍火ノ巻』は、蘆屋道満(あしや どうまん)が度々登場する。

蘆屋道満。
なにやら恐ろしい、悪い人物に描かれることの多い呪術師だが、夢枕版・蘆屋道満は、飄々とユーモラスな好々爺に描かれる。
ギラギラと光る目は妖しく、一杯の酒を求めて、気まぐれに人助けのようなことをする。

先ほど「大いなるマンネリ」だと書いた途端だけども、「陰陽師シリーズ」だって、どんどん描かれるものは変わっている。
ただ、晴明と博雅が今宵も酒を呑むように、道満も今宵酒を呑む。
スポットライトに照らされる場所が変われど、彼らはなにも変わらない。
それだけのことだ。

メディアミックスされる『陰陽師』

さて、小説「陰陽師シリーズ」のキャラクターたちは、つつがなく同じ日々を過ごしている。
それこそがファンの喜びだ。

一方、それを原作に、メディアミックスされた作品たちは、違った道へ進んでゆく

代表すべきは岡野玲子のコミックス『陰陽師』だ。

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『夢をかなえるゾウ』を読んだよ

水野敬也『夢をかなえるゾウ』書影

好きな小説の一つに『岸和田少年愚連隊 完結編』があります。10代のガキだった不良仲間がそれぞれ大人になってゆくのが気に食わない主人公・チュンバ。家庭を持ったり、働こうとしたり、一人前の大人のような振る舞いをするツレが許せず、苛立ちます。青春の終わりの、なんとも言えない喪失感や、やりきれなさが溢れています。
私は、そんな昭和時代の不良ではなかったけれども、“子供時代”を失った空虚や、やり場のない想いは、同じように持っていました。それを、素直な言葉で綴られてしまうと、もう劇物です。読んでいる私まで、“あの頃”の思いでいっぱいになってしまいます。

この「岸和田少年愚連隊シリーズ」で目立つのは、その言葉です。タイトルの通り、作者も大阪府にある岸和田市出身の方で、岸和田方面で使われている方言で書かれています。
私は幸いにも(?)関西人なので馴染みのある言葉なのですが、なぜだか、関西弁を文章にしたものは、独特の読みづらさがあります。
日本語には喋り言葉である「口語」と書き言葉の「文語」という、二つのタイプがあります。関西弁っぽく文章にするときは、口語の内容を文字に書き起こしてしまうので、読みにくさが起こるのではないのかなぁと思っています。

『夢をかなえるゾウ』はその内容が話題になりましたが、「関西弁」の妙に関心しました。ある男のもとに、ある日突然インドの神様・ガネーシャが現れます。ガネーシャは人間の体にゾウの頭が乗った神様で、富を呼ぶ神様として大切にされています。
そのガネーシャがパッとしないサラリーマンのもとへやってきて、お金を稼いで“成功”する方法を伝授してゆくのですが……どれも地味で在り来りなものばかり。戸惑いながら、疑いながら、ガネーシャの言うことを聞いてゆくうちに、少しずつ「自分を変える」とはどういうことなのか知ってゆきます。

そしてこのガネーシャ、なぜか関西弁を話すのです。著者は特に関西出身の方でもないのですが、なんとも上手い。変な関西弁でもない上に、読みやすい。ガネーシャの胡散臭さと同時に、世話焼きでお節介な感じとか、可愛らしく人情味あふれるキャラクターが強調されているように感じました。
そして、ちょっと理屈っぽい、説教臭い話を、くだけた言葉でダラダラと話しかけている雰囲気も、他の自己啓発本と違うポイントなのかもしれません。

しかし、内容はいたって真面目。ガネーシャ自身も「他の本にも書いてあることなんやけど……」と、奇をてらったものではなく、定番で手堅い“成功法”が伝授されます。巻末に「ガネーシャの名言集」なる大切な所を要約したまとめが掲載されていたり、読み物としても面白い上に、使いやすい内容でした。

だけど。こんなの読んでも、実際にやらなきゃ意味がありません。さっそくひとつ目の課題から取り組みます。

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『魔女の宅急便』を読んだよ

『魔女の宅急便』書影

魔法使いには魔法使いの“ならわし”があります。
子供の頃に読んだ物語には、私とは違う“ならわし”を持った人たちの、こだわりや習慣にいつも、心奪われていました。
自分とは違う、違う世界の物語であることが、それにより表わされているからです。

魔法使いのキキは、真っ黒の服を着て、真っ黒のネコを連れています。それが魔女のしるし、魔女とはそういうものだからです。
しかし、13歳のキキは、そんな古臭いしきたりや慣習が煩わしく、お母さんから魔法薬の作り方も学ばないまま、魔女の修行にでかけます。

黒い服や黒いネコ、しきたりや習わし、伝統は、人と魔女を分けるものです。魔女の“ならわし”こそが、魔女のしるしで、人と魔女を分け、魔女を魔女らしくしているのでしょう。
キキたち魔女は数も減り、もうたくさんの魔法を忘れてしまっており、キキのお母さんも空を飛ぶことと、くしゃみ止めの魔法しか知りません。

境界は時に、タブーや禁忌を作ります。
私たちの世界でもよく知られたタブーは、食べものそれでしょう。豚肉食の禁止はイスラムとユダヤを分け、キリスト教世界とイスラム世界を分けています。ヒンズーの牛肉食のタブーは、イスラムの豚食の禁忌に影響を受けていると言われています。タブー・境界は、コミュニティを強化します。

しかし一方、外部から誤解や、「知らないこと」「分からないこと」による恐れや偏見も招いてしまいます。
魔女も、魔女のいない地域では怖がられているようです。キキが修行先に住み着いたコリコの町も、長らく魔女がおらず、魔女には怖いイメージがあったようです。キキが町に馴染んでゆくずつ、その誤解は晴れてゆきます。

キキは、町に馴染めるようになると、自分が魔女なのに空を飛ぶとこしかできないと気づきます。なぜ母からそれ以外の魔法を習わなかったのか、不要だと思っていたのかと思います。せっかく、コリコの町の一員になろうとしているのに、キキは自分が魔女であること、コリコの人たちとは“違う”ことを意識し始めるんですね。そうして、キキは人々と境界を濃くし、魔女らしくなってゆきます。
町に馴染むほど、人とは違う、異質な存在に自らなってゆきます。

魔女が魔法忘れ、人と馴染んでゆく中、しきたりや習わしがますます重要になってゆきます。魔女と人を分けるものですから。

13歳で独り立ちし、魔女の居ない町へ移り住むしきたりも、魔女の存在を知らしめますが、魔女がどんどん人に馴染んでゆく原因でしょう。しかしキキの例を見ると、「魔女である」意識をつなぐには、有効な手段なのかもしれませんね。

全6巻まであるシリーズなので、今後のキキの成長が楽しみです。

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『幕末気分』を読んだよ

歴史の時間の流れを時計の文字盤のイメージを描いたコピックイラスト

歴史の時間の流れを時計の文字盤のイメージを描いたコピックイラスト

時間が過ぎるのはあっという間で、更に歳を取るごとに年月の流れが早くなるなんて言います。
大人になって以降、本当に「あっという間」に終わってしまう一年もありましたが、とても長く感じる一年もあったように思います。

後に、過去を振り返ったとき、時間の長さに差を感じるのではないでしょうか。
日々変化が多く思い出す要因が多かった時期は、思い出す機会も多く、長い時間に感じます。
対して、同じような日常をひたすら繰り返し続けていた時期は、思い出す機会が少ないので、短く感じるように思います。

いずれも貴重で他に代え難い時間であったことは同じです。
変化の時期も大切ですし、継続の時期も同じように大切です。

日本の歴史と自分の生きた歴史を比べてみると……

自分の生きた歴史は、振り返ってみると、それでも「まだまだ短い」と感じます。
まだ私自身が何者にもなっていないせいでもありますが、あんなに長かったはずの幼少期や、鬱々と過ごした思春期ですら、今思い出すと、とても短く、貴重な時間でした。
振り返ると、感慨深いものです。

「近代」はほんの僅か。江戸時代はほんの少し前

人の一生の長さに感慨深くなっていると驚いてしまうのが、日本の「近代」の歴史の長さです。
「明治維新」「幕末」と呼ばれている、遠い過去のような話は、例えば桜田門外の変は1860年、大政奉還は1867年、戊辰戦争終結は1898年ですから、だいたい150年ほど前のことです。

自分のこれまで生きた年数と比べてみると、すごく明治維新は「最近」な気がするのですが、みなさんはどう感じますか?

明治期から現在までの時間は、とてもたくさんの出来事が日本列島内で起こり、社会システムが変わり、人々の生活も様変わりしたでしょう。
それだけの大きな変化が、「たった150年」の間に起こったと感じるからこそ、改めて驚きを感じます。

『幕末気分』を読んだよ

『幕末気分』を読みました。
先日読んだ『幕末不戦派軍記』で描かれていた弥次郎、喜多八、筒なし、関兵衛の四人組キャラクターが登場する元となった『在阪在京中日記』を扱った章があります。
『幕末不戦派軍記』は歴史小説風でしたが、『幕末気分』は小説風味はうんと少なめでした。

江戸時代も末期も末期、明治の近代化がもうすぐそこまで迫っている時代。
その激動の時代の中でも、名もない庶民たちはたくましく生きています。
躍動の時代ですが、ひたむきに生き延びた無名の姿に、現在の私も少しだけ、励まされるような気もします。

参考リンク:『幕末不戦派軍記』を読んだよ

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『幕末不戦派軍記』を読んだよ

古文書や古い資料のイメージをコピックマーカーで描いたイラスト

古文書や古い資料のイメージをコピックマーカーで描いたイラスト

面白い歴史小説は事実とフィクションの塩梅が絶妙

歴史小説の面白さに、歴史的事実の中にフィクションの出来事やキャラクターが溶け込み、どこまでが事実でどこまでがフィクションなのか分からない世界観を味わう楽しみがあると思います。

小説だけでなく、毎年のNHKの大河ドラマや、歴史を題材にしたマンガ作品も同じだと思います。

歴史小説はあくまで「小説」ですから、事実とは違うのですが、物語が歴史の世界を知るきっかけになれば、二重に楽しいですよね。

『幕末不戦派軍記』を読んだよ

弥次郎、喜多八、筒なし、関兵衛という徳川方の武具奉行四人組のお話です。
中西関次郎という人が書き残した『慶応元乙丑五月御進発御供中西氏ヨリ差下シ候道中并在京在阪中日記』という日記をモデルに、四人のキャラクターが生まれたそうです。

幕末、武具奉行の四人が大阪へ出張へ来て豪遊している内に鳥羽伏見の戦いが始まり、江戸へ逃げ帰ります。
上野戦争直前、武器を売って一儲けしようとしている内に、うっかり上野彰義隊に混じったまま上野戦争が始まってしまったり、北海道へ行き箱館戦争に巻き込まれます。

小説の所々に、先の資料から抜き出した箇所があるため、現実とフィクションが入り混じった面白い本でした。

著者の野口武彦さんの本を読んだのは初めてでしたが、他にもたくさんの著書があるようなので、続けて読んでみます。

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