こんにちは。えらそうばってる人を見ると、いじわるしたくなる あさよるです。自分のことを大きく見せようとしたり、上から目線な応対をする人を見ると、なんかこっちもトゲトゲした気持ちになっちゃう。ただ、相手の挑発に乗るのは、相手の思うつぼだったりする。本当は、スルーするのが大人の対応なんだろう。
他人の失敗や、他人の不幸を期待してしまう、喜んでしまう気持ちのことを「シャーデンフロイデ」と言うそうだ。今回読んだ本では「他人を引きずり下ろす快感」とも書かれている。
ドキッとする言い回しだけれども、多少なりとも誰もが持っている感情じゃないかと思う。
愛が人の不幸を喜ばす
「シャーデンフロイデ」とは、
誰かが失敗したときに、思わず沸き起こってしまう喜びの感情(p.14)
だそうだ。ネットスラングでいうところの「メシウマ状態」。他人の不幸は蜜の味。えこ贔屓されているあの子の化けの皮を剥がしてやりたい。いつも出しゃばる気にくわないアイツがポカをして穴を開けてしまう様子を見て「いい気味だ」とほほ笑む。
それは誰もが持っている感情で、本書『シャーデンフロイデ』では、脳科学的にその現象を分析してゆく。
シャーデンフロイデには、通称「幸せホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれている、オキシトシンという脳内物質が関係しているらしい。オキシトシンは、人々が愛し合ったり、仲間を大切にしたい気持ちを起こさせるホルモンだ。男性よりも女性の方がオキシトシンが分泌されやすく、授乳中の母親が我が子を大切にするのにも、オキシトシンは重要な役割を果たす。
「愛情」と言えばポジティブな印象だけど、言い方を変えれば「執着」とも言える。母親は我が子に執着するからこそ、身を削ってでも子育てができる。仲間や恋人は、その人でなければならず、他の人じゃダメなのだ。
だからオキシトシンが分泌されると、子どもや仲間、パートナーを守るために、攻撃的になったり、保守的になるそうだ。素敵な恋人ができたら「その恋人を失わなうんじゃないか」と嫉妬する。あるいは、同僚に非の打ち所がないような素敵な恋人ができたら、あの人はどうやってそんな人と付き合ったのか、なぜわたしじゃなかったのか、と「妬む」。
ちなみに「嫉妬」と「妬み」は心理学的には別のものだそう。「嫉妬」は自分が持っている物を奪いにくるかもしれない人を排除したい感情。「妬み」は自分よりも良い物を持っている人に対して、その差を解消したい感情だ。「妬み」は、相手があまりに格上で足元にも及ばないとき、「憧れ」にも変わる。
シャーデンフロイデは、執着や嫉妬や僻みの発露だけれども、それは愛着や愛情、絆の裏返しだ。必ずしも悪いものではなく、人間社会には必要な存在でもある。
いじわるな自分に無自覚な人は厄介

シャーデンフロイデを感じない人はいないだろう。他人の不幸を楽しむのは品がいいとは言えないけれども、厄介なのはシャーデンフロイデに無自覚で、「自分はそんなものを持っていない」と否定する人じゃないだろうか。たぶん、本人は本当に、自分にはそんな邪悪な心はないと信じ切っているんだろう。だからこそ厄介だ。まだ「他人の不幸は蜜の味」と自覚的で露悪的な人の方が、話が早いだけにマシな気がする。
状況把握できるだけで
「最高の復讐は幸福になること」という言い回しがある。誰かのせいで自分が不幸になって破滅してしまうと、他人を喜ばせてしまうだけだ。自分が幸せになることが、一番人を悔しがらせることだから。それって、まさに「シャーデンフロイデ」。
自分の幸福になるために必要なのは、他人の悪口の輪に参加したり、イヤなヤツのことを思い出してイライラする時間ではないだろう。それは自分の時間=人生を他人に乗っ取られているのと同じだ。自分の時間は、自分の判断と決断によって、自分が采配することが、自分の幸せにつながっている。「させられる」のではなく、自分はどうするのかを考えるところから始まるのかもしれない。
あと、いじわるな気持ちになったとき「オキシトシン仕事してるなぁ」と思ってもいいだろうし、いじわるされたときも「ああ、シャーデンフロイデ」と心の中でツッコむのも、いいかも。よくわからない思いにとらわれるよりは、きちんと今の状況を言葉で認識すれば、理解が変わるだろう。
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