60 産業

[書評]テレビリサーチャーという仕事

「テレビリサーチャー」という仕事があるらしい。

簡単に言っちゃえば、テレビ制作にあたり、番組のネタの裏取りをするのが主な仕事だ。

テレビという華やかな世界を支える、地味だけど大事な裏方の仕事なのだった。

「調べる」ことが仕事

バラエティー番組で、タレントがちょこっと口にするネタも、本当かどうかの裏取りが必要だ。

クイズ番組や教養番組では、知識そのものがネタになるため、事前のリサーチがとても大切になる。

そのために、あらゆることを「調べる」のがテレビリサーチャーの仕事だ。

番組会議で、その場のノリで誰かが口走っただけのことでも、その裏を取らなきゃならないらしい。

正直、大変な仕事だろう。

しかし正直、ちょっと気になる仕事である。

なぜかって?

だって、図書館にこもって、コピーにとった資料を読み込むことが仕事になるだなんて、面白そうじゃないか。

図書館(書籍)で調べ倒して、WEBは基本信頼しない

ちょこっと(というか、かなり)耳が痛いのは、「調べる」ためにはまずは書籍の資料を読み込む。

とことん読み込む。

ほとんどこの作業が中心みたいだ。

わたしたちは、ついうっかりWikipediaでまずは下調べをしたくなってしまうが、それは最後の最後らしい。

というか、WEBの情報はほとんどアテにならないと思った方がいいのかもしれない。

確かに、ある程度のネットリテラシーのある人なら、著者の言う真意が汲めるんじゃないかと思う。

今後、YouTubeやWEBにも登場する仕事かも

情報の裏取り。

それを専門にする仕事。

今回はテレビの裏取りのプロ「テレビリサーチャー」の仕事を知ったけれども、この仕事って今後WEBの世界でも登場して広まるのかもしれない。

たとえばYouTuber。

視聴数が多く影響力のあるYouTuberになればなるほど、発信する情報の裏取りも必須なんじゃないだろうか。

情報ブログみたいなのももちろん。

今は野放しな状態だけれども、今後どうなってゆくのか。

「調べる」ことを仕事とする人は、今後増えるのかも?

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『誰がアパレルを殺すのか』|「欲しい服がない」の正体

『誰がアパレルを殺すのか』挿絵イラスト

こんにちは。服がない あさよるです。年明けに張り切って春用の服を買ったのですが、なかなか袖を通す気候になりません。春用ワンピースにあわせて、ブーツとジャケットと帽子も買ったのに~( ノД`)

あさよるネットを熟読してくださっている方がこの世に居ればご存知かもしれませんが、オシャレを知らないあさよるは、最近、洋服とかお化粧とか、そういう色気づいた事柄を勉強中です。化粧品を理解するのに化学の勉強をしていたのですが、アパレルを知るには素材や流通のことも勉強しなきゃなあと思っています。そこで、目についたのは『誰がアパレルを殺すのか』という、なんともショックなタイトル。なに?アパレルって殺されそうなの!? なにも知らぬ あさよるは、素直に手に取りページをめくり始めるのでした。

アパレル業界の“無自覚な自殺”

本書『誰がアパレルを殺すのか』というショッキングなタイトルは、〈沈みゆく船〉であるアパレル業界にとどめを刺す存在は誰だろうかと問いかけています。アパレル業界の衰退は、景気が悪いからでも、インターネットが主流になったから顧客が流れたからでもなく、本書では“無自覚な自殺”をしていると結んでいます。

本書では、国内の糸・生地のメーカー、染色・縫製業者から、小社・メーカー、アパレル企業・卸売業者、そして百貨店・ショッピングセンター等の小売店まで、アパレル産業に携わる川上から川下までを俯瞰して取材されています。そこで見えてくるのは、川上・川中・川下の完全な分断と、企画を丸投げしてしまうメーカーや、無計画に中国工場を移してしまう、上辺だけトレンドを追ってしまう体制などが指摘されています。

日本のアパレル業界は、戦前に花開き、戦後の好景気に胡坐をかいたまま90年代を迎えます。バブル崩壊後の90年代は、洋服は「どのブランドか」よりも「どう着こなすか」にトレンドはシフトしてゆきますが、アパレル業界は新たなブランドを乱立させました。そして、グローバルな時代の到来により、外国からアパレル業界への参入もありました。現在ではインターネットで服を買うことに我々は抵抗がありません。だからといって、安易にインターネットショッピングに手を出すも、惨敗しているのが、現在のアパレル業界です。

〈お客様〉不在

本書では現在のアパレル業界の状況と、これまでの変遷が2章にわたり紹介されているのですが、驚くのは「お客様」がどこにもいないことです。消費者に提案すべきスタイルや、お客様が何を求めているか等の視点ではなく、「ユニクロが」「ZARAが」「ZOZOTOWNが」と、同業者やデパートや小売店、卸の事情ばかりが並びます。

これが“無自覚な自殺”の所以です。

「景気が悪いから」「円高/安だから」「消費が落ち込んでいるから」ではないのです。

消費者は〈なにか〉を望んでいるのかもしれませんが、アパレル業界が消費者を見ていないので、我々はいつまでも満たされません。

躍進する企業もある

アパレル業界が苦戦する中、反対に売り上げを伸ばしている企業もあります。例えば、「nutte」は、縫製職人とオーダーメイドを望む消費者をマッチングするインターネットサービスです。本書では、加齢で背中が丸まってしまった母親が、結婚式に出席するためのドレスを受注した事例が紹介されています。既製品では体に合わず、要介護なので、脱ぎ気がしやすく、見た目にも華やかなドレスが提案されました。

「メルカリ」を利用なさっている方は多いでしょう(あさよるも、めっちゃ使ってますw)。「メルカリ」は〈フリマアプリ〉と呼ばれる、フリーマーケットのように誰もが物品を出品できるサービスです。値付けは出品者が行います。ヤフオク!一人勝ちだった市場に、ヤフオク!からオークション機能を取り払った「メルカリ」が席巻しました。「メルカリ」の特徴は、物を多くの人たちが「シェアしている」感覚に近いことです。着れなくなった子ども服が、人から人へ譲られていきます。同じ商品がなんどもメルカリでやりとりされていくのです。そして、その売上金で、別の〈お古〉を買うのです。

限りなく受注生産に近づけロスを出さず、セールを行わないことで、低価格で商品の提供を努力する企業もあります。

既存のアパレル業界は“無自覚な自殺”をしようとしている最中、従来のしがらみや概念を持たず、新しいサービスとしてアパレル業界に参入してくる企業もあります。そして、そこで成果を出している人たちがいることも、忘れてはなりません。

競合は他のブランドじゃない

アパレル業界は、慢性的な人材不足を抱えているそうです。それは、小売店に立つ店員です。かつて、ショップ店員は流行の先端であり、若者の憧れの存在でした。しかし現在では、アパレルのショップ店員は「ブラック」だと認知され、避けられる職種になっています。実際に、過酷な業務であるにもかかわらず、アパレルの正社員の平均年収は、全国平均に届いていません。また、ブランドの洋服を購入し試着して出勤するため、収入のほとんどが衣装代になることもあるそうです。

そして、アパレルブランドには設定する年齢層があり、その年齢を過ぎると、同じブランドで働き続けられません。そこから、内勤や買い付けなどの裏方業に回るしくみもなく、多くのアパレル店員は「使い捨て」が慣例だそうです。また、資格や能力によって昇給する仕組みもないため、多くのスタッフに活気やモチベーションが保てません。業界のしがらみ・慣例で、店舗に立つスタッフたちの待遇や状況により、〈お客様〉の存在はなくなっています。

アパレル業界は、まずは優秀な人材を集めなければなりません。それは、隣のアパレルブランドを視察することではなく、ベンチャーや、IT企業や、新進気鋭の業界から、生え抜きを探し出さねばならないのです。にも拘わらず、アパレルブランドは、他のブランドとの差別化や、世界の他のアパレル企業ばかりを気にしていると指摘しています。

「欲しい服がない」

『誰がアパレルを殺すのか』挿絵イラスト

本書『誰がアパレルを殺すのか』では、「欲しい服がない」という消費者の本音に触れられています。そう、欲しい服、買いたい服がどこにも売られていない! 今、フリーサイズで、袖付けの位置が低いダボダボの服ばっかり売ってて、どのブランドも似たりよったりで困っていました。あさよるは、自分のサイズで、肩の位置が合った服が欲しいのに。この冬は「オーソトックスな型紙のピーコートが欲しい」と探し回りましたが、なかなか見つからず難儀をしました(;’∀’)

そしていい加減「欲しい服がない」のは仕方がないとして、「自分で服を作ろう」と、夜な夜なPinterestで洋服のシルエットを考えたり、型紙探しを始めています……。本書の「欲しい服がない」という指摘を見て初めて、あさよるが困っていることの意味を理解しました。そうか、ホントに、わたしたちが着たい服は売られていないのか。

そして、先ほども紹介した「nutte」というサービスを知り「プロの人にオーダーメイドしてもらいたい!」なあと思いました。値段もオーダーメイドにしては手ごろみたいだし。

みなさんも、アパレル関係で感じる「違和感」があるなら、本書に当たってみると、ちょっと理解が深まるかも。

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『ユニクロ潜入一年』|ブラックバイトへカリスマ社長の招待状

こんにちは。突然春めいて着る服がない あさよるです。ブログではいつも着る服がないと書いている気がします。ないんです。みんな大好きユニクロですが、あさよるの行動範囲にユニクロ店舗がなくて、実はあまり利用する機会が少ないんです。アクセスしやすいのは超大型店で、あまりにも売り場面積が広すぎて、店の前でうんざりして帰ってきてしまうんですよね。「店員さんも大変だなあ」と思っていましたが「やっぱり店員は大変だった」と本書『ユニクロ潜入一年』を読んで知りました。

本書『ユニクロ潜入一年』は著者の横田増生さんが、実際にユニクロ店舗の面接を受け、アルバイトとして働いた1年間の記録です。ユニクロの過酷な業務内容と共に、著者が接客業に喜びを見い出している様子や、真面目に業務をこなす様子など記録されているルポルタージュです。

ユニクロ帝国の光と影・柳井正社長からの招待

本書は、2011年3月に著者の横田増生さんが出版した『ユニクロ帝国の光と影』が発端となって始まります。ユニクロの国内店舗と中国の委託工場での労働環境について言及したことが、同社の「名誉棄損」に当たると、ユニクロが出版元の文藝春秋宛に通告書が送られてきたのです。横田増生さんは何度もユニクロに取材を申し込み、柳井正社長との対談もやっと一度だけかないましたが、それ以外は広報への取材もかないませんでした。にもかかわらず、取材もせずに誤った記事を掲載しているというのが、ユニクロ側の言い分でした。

結果的に2014年、最高裁がユニクロ側の上告を却下し、文藝春秋側が裁判に勝ちました。「事実誤認はあったか」という著者の問いに、ユニクロの広報部長は「それはなかった」と答えました。事実誤認はなかったのに、訴えられた。結果、文春側が勝ったが、今後ユニクロについて言及する記事を書けば「面倒くさいことになる」と知らしめるには十分だったでしょう。

さらに著者は、ファーストリテイリング社の中間決算会見に締め出しを食らっっており、裁判に勝ったのにそれでも出席しないで欲しいと連絡がなされます。理由は、

「柳井から、横田さんの決算会見への参加をお断りするようにと伝言をあずかっています」p.6

というもの。

相手がその気ならばと、横田増生さんは、合法的に名前を変え、実際にユニクロ店舗でアルバイトとして1年間務めた記録と、そして中国やカンボジアでの委託業者への取材をまとめたものが、本書『ユニクロ潜入一年』です。

ユニクロで一年働いてみた

ユニクロ店舗でアルバイトを始めた経緯は、ほかにない柳井正社長直々に「招待」があったからです。2015年3月号の雑誌「プレジデント」にて、柳井正社長のインタビューを記事を読んだことから始まります。

 世間ではユニクロに対してブラック企業だとの批判があるという質問に対して、柳井社長は、「我々は『ブック企業』ではないと思っています(中略)」『限りなくホワイトに近いグレー企業』ではないでしょうか」と答えたのち、「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」と語っているのを見つけた。
この箇所を読んだとき感じたのは、「この言葉は、私への招待状なのか」というものだった。つまり、私にユニクロに潜入取材してみろという、柳井社長からのお誘いなのだろうか、と思った。

p.46

横田増生さんは一旦、奥様と離婚し、奥様の姓で再婚し、合法的に姓を変え、ユニクロ店舗のアルバイトに応募します。日本ではこのような記者が企業内部に潜入取材すること珍しいですが、海外ではよくあるそうです。また、香港の人権NGO団体のSACOM(サコム)が、ユニクロ下請け工場の潜入レポートを行い、違法な長期労働を指摘しました。彼らの働きも、横田増生さんを刺激したと言います。

ということで、ユニクロのイオンモール幕張新都心店、ららぽーと豊洲店、ビックロ新宿東口店の3店舗で実際に足かけ1年強アルバイトが始まります。まず心配なのは年齢です。1965年生まれの横田さんはユニクロ潜入時の2015年には50歳です。この年齢でアパレルのアルバイトに採用されるのか?と気になりますが、3店舗とも即採用で即勤務が始まりました。ユニクロ店舗では深刻な人材不足に陥っているようです。

人材不足が顕著なのは、アルバイトの中にかなり多くの外国人が採用されていることからもわかります。当初は、外国人のお客様へ対応するためのスタッフかと思われましたが、実際にユニクロに訪れるお客様のうち、外国人は1割にも満たないそうで、外国人スタッフの数が多すぎます。ユニクロ店舗は常に人手不足でてんてこ舞いな上に、日本語が堪能ではないスタッフが多数いることで余計に業務が増えています。それでも、なんの改善もなされておらず、慢性的な人手不足であることがわかります。また、横田さんは英語が堪能で、外国人客の接客に当たることが多かったそうです。ユニクロではかつて、社内では英語が公用語だと発表されていましたが、いつの間にか雲散霧消してしまっており、正社員も英語を使えない人が多いそうです。外国人客が増えているのに英語を話せるスタッフが不足しており、かつ、社内では外国人を雇用しコミュニケーションが取れていないという、「やりにくい」感じがよく伝わってきます。

ユニクロ店内の労働環境は、その店舗と、店長の手腕によってかなり違っている雰囲気です。最初に働き始めたイオンモール幕張新都心店では、店長も人格者で、働きやすそうです。しかし、最後にバイトをしていたビックロ新宿東口店は、雇用状態も店内もむちゃくちゃで、ユニクロバイト経験アリの横田さんも疲弊しきっています。

また、ユニクロのカリスマ柳井正社長のワンマンぶりに、末端のアルバイトまでが振り回されている様子が伝わります。バックヤードには「部長会議ニュース」が貼り出され、従業員の全員が目を通します。そこでは柳井社長の言葉が掲載されており、コロコロと話が変わったり、一貫性のない指示が出されているのですが、「誰もツッコめない」、まさに「ユニクロ帝国」なのです。

中国・カンボジアからのレポート

本書は、ユニクロでのアルバイト勤務の間に、中国やカンボジアのユニクロ委託業者の労働環境の取材もなされています。先に紹介した香港の人権NGO団体SACOMは、工場の問題点を4つにまとめています。

一・違法な長期労働と安すぎる基本給
二・漏電による死亡などのリスクがある危険な労働環境
三・労働者に対する厳しい管理方法と違法な罰金システム
四・労働組合がなく、労働社の意見が反映されない職場
こうした労働環境の劣悪な工場を、欧米では“sweatshop(搾取工場)”と呼ぶ。

p.179

もし火災が起これば逃げられない環境にいることを自覚し、恐怖を感じながら働いている労働者や、ストライキに工場が応じず警察が強制的に労働者を排除した問題にも触れられています。ミスがあると罰が与えられたり、過労で倒れ病院へ担ぎ込まれた男性には1日だけ休暇が与えられ、それ以降はまったくの無給になった話や、シフト交代はなく、朝から夕方まで休憩なしで低賃金で働き続けるなど、労働環境が語られます。

体当たりの取材記

ユニクロに足かけ1年間実際にアルバイトとして勤務をし、その間に外国の委託工場の取材を試みた記録である本書。あさよるの感想としてはまず、「イオンモール幕張新都心店ならバイトしたいなあ」というものだった。ユニクロの劣悪な労働環境について暴く内容ではあるけれども、同時に柳井正社長がカリスマ経営者であることもよくわかる構成です。ただ、社長がカリスマであるがゆえに、巨大に成長した会社の末端が見えなくなっており、柳井社長自身が、ユニクロ店舗スタッフがどんな環境で働いているのか、本当に見えなくなっているのではないでしょうか。

そこで本書の結びでも、著者・横田増生さんは柳井社長に対し「素性を隠し、ユニクロ店舗でバイトをしてみる」経験を勧めておられます。

あんなに大きな会社なのに、新人バイトまで社長の会議での発言を知っているというのは「すげーな」というのが本音でした。あさよるもこれまでアルバイト経験をいくつかしましたが、正直社長の名前も知らなかったり、役員の会議の内容も、これからの展望も、バイト風情が知ることはありませんでした。感覚的には、地方の中小企業の社長のまま、日本を代表するようなアパレル企業に成長したのかなぁと感じる。

あと、ユニクロの製品を買わない「不買運動」をしている人が あさよるの周囲にもいます。彼らが言う「外国での劣悪な工場労働」の実態の一部に触れると、確かに「ユニクロの服あんまり欲しくなくなったなあ」と思います。幸か不幸か、あさよるの行動圏内に手ごろなユニクロ店舗がないので(巨大店しかなく商品を探すのが大変)、あまりユニクロで買い物しないのですが、これから志向が変わるかも。

働き方の本

横田増生さんの本

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『AIとBIはいかに人間を変えるのか』|人類の新ステージ?

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。連休中に西洋音楽史の本を読みまして、「音楽」って普遍的で大昔から変わらないものだとばかり感じていましたが、今私たちが馴染んでいる「音楽」は意外と新しいものなんだと知りました。西洋ではかつて音楽は神様の世界のもので、禁欲的。今の私たちにとっては「全然楽しくない」感じです。ポピュラー音楽に至っては、20世紀、第一次大戦が終わってからのもの。もっと言えば、我々が慣れ親しんでいるのは「録音音楽」です。レコードとプレイヤーで楽しむことを「音楽」と呼ぶのは、歴史の中ではかなり特殊な環境です。

西洋音楽史 「クラシック」の黄昏 (中公新書)

今当たり前すぎて疑うこともない価値も、意外と新しいもので、歴史が浅いものってあるんですね。「不変」だと「信じていた」というのは、もう信仰です。「ああ、私は近代を信仰しているのか」と気づき愕然としました(;’∀’)

今回紹介するのは『AIとBIはいかに人間を変えるのか』という、これから訪れる「人類の新しいステージ」を考える内容の本です。現在、先進国は軒並み伸び悩み、成長できずにもがいています。景気対策を打っても国内の格差は広がるばかりで、国の中が貧しくなっています。現状を打破するためには、今の社会の形を根本から変える必要があるのではないか? そこで注目されているのがBI(ベーシックインカム)です。

また、AI・人工知能の技術的な進歩により、人間の働き方の変化が期待されています。また、男女同権により女性の社会進出も進んでいます。後進国だった国々は経済発展しています。インターネット網は地球を包み込み、インフラのない土地にも等しく知識や教育が行き渡っています。世界は変わっています。さて「人類の次のステージ」はどのようなものなのでしょうか。

AI、BIとは

AI・人工知能もBI(ベーシックインカム)も、どちらも近年よく見聞きする言葉です。AIとBIについて触れつつ、このAIとBIが合わさって、もたらされる「未来」を考えます。

AI・人工知能とは

まずAI・人工知能とは。1930年代コンピュータの登場した当時からAIの登場が構想されていました。しかし二度ののAIブームは合ったものの、AIの冬の時代も長く、順風満帆とは言えませんでした。2012年にGoogleが「ネコを判断できるAI」を開発し、一躍有名となりました。その頃から「ディープラーニング」によるAIの進歩が注目され、現在は第三次AIブームといったところでしょうか。

近年、AIが飛躍的に進歩したのは、ビッグデータが扱えるようになったことと、インターネットの普及により膨大な数の写真や映像、データがインターネットにアップロードされるようになったことが影響しています。

今後、AIの進歩により、人間の仕事がAIに取って代わられると話題です。一方で、AIの進歩によって新たに生まれる仕事もあるでしょう。今の子どもたちの半分以上は将来、今は存在していない職業に就くと考えられており、感覚的にもなっとくできます。

コンピュータが人間の仕事の多くを引き受けるなら、人間はより「人間らしい」活動に集中することができます。

BI(ベーシックインカム)とは

BI(ベーシックインカム)は、経済成長が軒並み頭打ちしている先進国の、現状打破策として注目されています。先進国では、かつてのような経済成長が起こらず、経済対策を打っても国内の貧富の差が拡大してしまうジレンマに陥ってます。

BIは「健康で文化的な最低限の生活を営む」ために国民全員に現金で与えられる基礎的(Basic)給付(Income)で、政治学では“生存権所得”とも言われている。このBIは、様々な社会保障制度を一元化できる上に、給付漏れが起こらず、受給者にも理解しやすいシンプルな制度であることが評価されている。

p.104

BI(ベーシックインカム)は実験的に導入される例も登場し、貧しい人たちが前向きに人生設計を考え、豊かに生きようとし始めるなど良い結果があり、期待されています。

BI(ベーシックインカム)の良いところは「シンプル」。本書では、全ての国民に月8万円を現金で給付することが想定されています。すると、年金制度や健康保険、生活保護などの社会保障が一元化され、ムダなコストも削減できます。なにより、ややこしい手続きが不要になることで、役人の数を減らすことができます。

財源として、まず国の社会保障をシンプル化することで浮いたお金を財源に回します。また税率を引き上げ、国の収益を増やします。本書では消費税を18%に引き上げても、毎月8万円ベーシックインカムを受け取る額の方が多く、貧しい世帯にもダメージはないと計算されています。

BI(ベーシックインカム)の導入を阻んでいるのは官僚たちです。ベーシックインカムが導入されると、社会保障に関わる官僚たちの仕事がなくなってしまいますから、「ベーシックインカム的」な制度は遠ざけられています。

より「人間らしい」活動を

AIの到来により、コンピュータが人間の代わりに働く未来では、人間は「より人間らしい」仕事に集中することができます。

またBI(ベーシックインカム)導入後の未来では、「死なないために働く」という労働から解放され、人々は「豊かに生きるために働く」ようになります。今、嫌々やりたくない仕事をしている人も、ベーシックインカムが導入されれば今の仕事にこだわる必要はなくなり、豊かに生きるための人生設計を考え始めるでしょう。それはつまり「より人間らしい」人生を生きようとすることです。

AIとBIの未来は「より人間らしい」世界がやってくると想定されます。これは、かつて農業革命や産業革命によって人類が「進化」したように、AIとBIが人類を「新たなステージ」へと導くものではないか?と考えられます。

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

「豊かに生きる」ことができますか?

はてさて、AIとBIの未来は明るい!みたいな感じがしますが、問題は命が保証され、お金も保証されたとき、ハッと気が付くのです。「豊かに生きる」ことってどんなこと? もしAIが面倒な仕事を引き受け、BIで最低限の生活の保障がなされているとして、あなたはどう生きますか?

今、「楽しむ」という言葉が乱用されているように感じます。スポーツ選手も、「試合を楽しみます」ってインタビューで答えていますし、学校の勉強も「楽しんで学ぶことが良いこと」のように語られます。プライベートな時間はまるで「楽しくないと生きている意味がない」くらいの勢いで、ライブやレジャーや、食事やショッピングなどの予定を詰め込んでいる人がたくさんいます。

みんな身づくろいも小奇麗で、清潔感のある爽やかな人ばかりになりましたね。

もしかしてすでに私たちの社会は「死なないように生きる」時代は終わり、「楽しく生きなければならない」という価値が到来しているのではないでしょうか。しかもそれは強迫観念的に執着して。AIとBIによって人類が新しいステージへ進んだなら、私たちは今以上に「豊かに生きる」ことこそが「人間らしさ」であり、「お金の価値ではない豊かさを生きなければならない」時代が到来するとも考えられます。

BIは単に「働かなくていい」「怠け者が増える」政策ではなくて、もしかして「結構キツい」時代が来るのかもしれません。今はほら、連休に海外旅行へ行ったInstagramドーン! 彼氏にプレゼント貰ったドヤァ。ママにバーキン買ってもらったFacebook投稿いいね! なんかをしてるだけで満足できるけど、「新しい時代」はそれじゃ豊かじゃない。「お金の豊かさじゃない豊かさ」をアピールできないといけない。

新しい時代は。「センス」とか「才能」とか「オシャレ」とか「ステキ」とか「可愛い」「美形」とか、そういう価値が重要になるんじゃないのかな? 「ダサイ奴」は生きにくい時代になってしまうのだ。はてさて、「ステキ」に生きられるように、生涯邁進し続けなければならない人生、〈楽勝〉な人と〈ムリゲー〉な人に、パッカリ分かれるんじゃないかしら。

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『知られざる地下街』|地震、火災、水害…ヤバイ?安全?

『知られざる地下街』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。あさよるはショッピングに商業ビルよりも地下街を利用する方が好きです。ビルは上ったり下りたり面倒ですが、地下街は横に伸びていることが多いし、多層になっていても知れていますからね。

通路としても地下街を利用しますが、地下街についてみんな多くを知らないのではないでしょうか。本書『知られざる地下街』は、タイトルからしてこれは読むしかない!

そういや、地下街ってなんだ?

本書『知られざる地下街』は、地下街の歴史や、地下街の仕組みなど、みんな知らない地下街の話題を扱います。地下街を利用する方は多いでしょう。近道に通り抜けたり、ショッピングしたり、雨や暑さ寒さを避けて地下街を通ることもあります。だけれども、地下街のコト、みなさんどれくらいご存知でしょうか?

地下街とは

この「地下街」とは、駅前の広場や通路、都市の公園などみなさんが公共で使う場所(公共用地)の地下にある、店舗と道路の合わさった施設のことをいいます。「地下街」と似た施設に、「準地下」や、「地下階」があります。「純地下街」は、店舗の部分は民間会社が持っている土地(民有地)で、通路部分が公共用地、という施設です。「地下階」は、店舗や通路とも民有地の地下にあるものです。

p.14-15

大阪の地下でいうと、ホワイティうめだや、なんなんタウン、あべちかなんかは「地下街」。店舗が民有地で通路が公共用地という「準地下」は、ヨドバシカメラ梅田の地下階は民有地だけど通路は公共地といったところでしょうか。通路も店舗も民有地の「地下階」は、梅田駅前の第1ビルから第4ビルの地下階ですね。日中は通路のように使ってますが、早朝や深夜はシャッターが閉まってて通れません>< なんばCITYの地下も「地下階」かな。

わたしたちはひと口に「地下街」と一まとめにしてますが、詳しく見ると区分が違うってことですね。

地下街が担っている役割

地下街は公共の施設です。ですから、地下街は公共的な役割を担っています。

①障害物や天候などに左右されない、安全で快適な歩行の環境を整えること
②買い物客が使いやすく回遊性の高い、賑わいのある環境をつくること
③錯綜する地上の道路交通を緩和させ、都市の景観向上に寄与すること
④地下街のある沿道の都市開発を促進し、地下街が接続する建物の価値向上を図ること
⑤地震や台風などの災害が発生した場合の一時避難機能(帰宅困難者など)を有すること

p.27

たしかに、あさよるの利用する地下街もすべての項目に当てはまっていると思います。近年では⑤の災害時の避難場所としての地下街が注目されているそうです。

日本の地下街まとめ!

本書では札幌から博多までの地下街が網羅的に紹介されています。あさよるは大阪に住んでいるので、関西の地下街しか馴染みがありませんが、どの地下街もそれぞれの地域で愛され利用されているんですね。それぞれ地下街のカラーというか、特色があるのも良いですね。

札幌の地下は、冬の積雪を避けるために発達しているそうです。名古屋は「地下街の街」だそうで、独特な雰囲気があるみたい。

というか「意外と地下街って少ないんだなあ」というのが あさよるの感想でした。東京23区内の地下街も16しかないそう。もっと、東京の地下はアリの巣のように街が張りめぐらされているのかと思っていました。一つ一つの規模が大きいのかなあ。ちなみに大阪の地下街は14だそうです。

地震、水害、火災時の地下街

地下街の話題で気になるのは「もしものとき」の対策です。災害や火災時に、地下街って危険なの!?

地震には強い?

まず、地震には地下街は強いみたいです。都市部で震度6~7の大地震が襲ったのは、1995年の阪神大震災。神戸三ノ宮の地下街「さんちか」「デュオこうべ山の手」「メトロこうべ」が被災しますが、地上の大被害とは対照的に、地下の被害は少なく済んだそうです。部分的に柱にひび割れがあったくらいと紹介されています。

2011年の東日本大震災でも、地下街ではありませんが、仙台の地下鉄に被害がありましたが、小規模なものだったそうです。ただし、2016年の熊本大地震のように震度7の地震が2度続けて起こったとき、地下にどのような被害があるのかは警戒が必要でしょう。

また、東日本大震災では「帰宅困難者」が問題になりました。地下が地震に強いからといって、非常時に地下に人があつまる危険性にも触れられています。地下街や地下道の多くはターミナル駅に隣接しています。多くの人が一気に一所に押し寄せると、そこで将棋倒しになったり、二次被害が考えられます。

火災時はヤバイ?

地下での火災というと、2003年にあった韓国での地下鉄の火事を思い出されます。200人近い方が亡くなられ、地下の火災は恐ろしいと感じた人も多いでしょう。しかし、本書『知られざる地下街』では、事前に火災対策がなされているため、地上のビルでの火災よりも安全性は高いと紹介されています。

火災があった場合、火災の起こっている区画のシャッターを下ろして完全に火災を閉じ込めてしまうそうです。また、火災の煙は天井に溜まりますから、地下空間が一酸化炭素で満たされるまでには時間がかかります。すみやかに冷静に対処することで、地下から脱出する時間はあるそうです。

地上での火災はシャッターで完全に封じ込めることはできませんから、確かに考え方によっては地上より火災には強いのかもしれません。

水害はこわい?

近い将来、東南海地震が想定され、その際津浪が広く太平洋側に到来すると報道されています。あるいは、台風や大雨被害など、「水害」に地下街は弱そうに感じます……。

その辺も、地下街は対策が打たれているそうです。まず、地下に浸水させないように、地下への入り口に仕切りをして、水が流れ込まないようにすること。通気口は、地面よりも高い位置に設置すること。あるいは、通気口を手動or電動で蓋をできるようになっているそうです。物理的に「水を地下に入れない」対策がなされています。しかし一度、地下街に水が流れ込んでしまうと、地下から地上への脱出は難しい。水に逆らって階段を上ることは困難です。

あさよるも以前、地下にある駅の改札が完全に水没している現場に出くわしたことがあります。ゾッとして立ちすくんでしまいました……。

緊急の案内板は?

地下街の多くは、お店が立ち並び賑やかな街が続いています。ショッピングの際は、緊急用の案内板を確認しておくのが良いでしょう。さらに、緊急時には電子掲示板が、緊急用の表示に変わるよう用意されている例が紹介されていました。また、地下街を行きかう人は日本語が堪能とは限りません。電子掲示板は、多くの人への情報提供に役立つでしょう。

もし停電したら……

あさよるが『知られざる地下街』を読んで一番こわいと感じたのは、緊急時に「停電」してしまう可能性に思い至ったときでした。当たり前ですが、地下街は停電すれば真っ暗です。火災や水害の最中、停電してしまったらどうするんでしょう……。

本書では、蓄光できる案内の設置が紹介されていました。普段は見えませんが、辺りが暗くなると、しばらくの間光を放つ仕掛けです。

利用者としては、常に出口を意識して地下を利用すべきだと思いました。

地下街を歩くのは楽しい^^

『知られざる地下街』挿絵イラスト

地下のちょっと怖いシチュエーションの話をしましたが、それぞれの対応は考えられているようで、少し安心しました。だけど、繰り返しますが、利用者としても「非常口」の場所を意識するのは忘れちゃいかんとも改めて思いました。もちろんこれは地下に限らず、地上の建物でも同じだけど。

しかし、地下街ってなんかすごく楽しい空間ですよね。ただ通り抜けるだけのときも、お買い物をするときも、地上の路面を歩くよりも、地下を歩く方が好きです。

本書で日本中の地下街が紹介されているので、他の街の地下街も歩いてみたくなります。

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