こんにちは。あさよるです。
誰にでも「悪夢」のイメージがるんじゃないかと思うけれども、わたしの場合それは「水の中」だ。子どもの頃、プールや川遊びを怖いと思ったことはなかったけれど、大人になってから「水の中」のイメージが恐ろしい。たまに見る「悪夢」は、海底から水面をぼんやり見上げていたり、真っ暗な海の底を覗きこんでいる夢だ。自分が魚になった気分になってしまう。
だから……と接続詞を使うと唐突かもしれないけれども、「水の中」「海の中」に興味ひかれる。これが「怖いもの見たさ」なのか、あるいは暴露療法的なものなのだろうか。
海の中は、未だに未知の世界、地球に残された最後の「ナゾ」だそうだ。宇宙飛行士の数よりも、深海の世界へ踏み込んだ人の方が圧倒的に少ない。冒険を望むなら、海を目指すべきなのかもしれない。
最後の秘境へ
『太平洋』は好奇心くすぐられるブルーバックスの新書だ。まずは、太平洋を「やわらかい太平洋」=海の水と、「堅い太平洋」=海底にわけ、太平洋の構造を知る。世界の海はベルトコンベアのように、対流している。大西洋北部で冷えて重くなった海水が海底へ落ち、南下してインド洋や太平洋に流れ込み、「潮汐流」という潮の満ち引きにより生まれる乱流によって海面へ上がってくる。そして海面を太平洋から南下し、大西洋へ流れ込む。
海の水がこのベルトコンベアで一周回るには2000年かかると書かれていた。「2000年」というのは、意外にも「短い」と感じた。今、海の水質が変化しているそうで、2000年後には変化した海水がぐるっと海を一周することになる。
「地球温暖化」と言われているが、太平洋の温度が上昇傾向にあるらしい。ごくわずかであっても、大量の水の温度を変化させるとは、莫大なエネルギーが加わったということだ。何が起こっているんだろうと興味を持った。
太平洋の火山についても書かれている。ハワイのように、海から顔を出している島々だけではなく、海底に隠れている海底火山もたくさんある。火山の吹き出し口には、火山の化学物質をエサにする生き物がたくさん住んでいるらしい。
海底というのは、死の世界ではなく、生物がたくさん住んでいると考えられているそうだ。以前、クジラの死骸が海の中で分解されてゆく過程について読んだけれども、海底というのは、結構食べ物があるらしい。
生き物はどのように土にかえるのか: 動植物の死骸をめぐる分解の生物学
しかし、深海は未だに未知の世界で、地球上に残された最後の秘境だ。深海を調査する潜水船の話題にもページが多く割かれている。深海の大冒険に憧れている人も多いだろう。
『太平洋』は、太平洋の構造、水質や、火山、太平洋に住む生き物、海の調査の方法、調査のエピソードが紹介されている。子どもが読んで、好奇心を刺激して、自分が研究したいことを知れる良い本だ。
そこで考えたこと
最初に書いた「水の中が怖い」というのは、閉所恐怖症の一種だそうだ。調べたところ、人間はみんな閉所が怖いのは当たり前で、正常な感覚だ。大事なのは「ここは安全な場所だ」と学習して、慣れることらしい。そう言われると、なぜ水の中が怖いのかも予想がつく。わたしは恥ずかしながら「泳げない」のだ。
今回、深海の世界について少し知ると、それなりに食べ物もあって、生き物もたくさん住んでいるらしいし、ちょっとは印象が変わっただろうか。
本書では、太平洋の水温がわずかに上昇していることや、プラスチックごみがPCBsと呼ばれる毒性の物質を吸着して、それを魚が食べ、最終的にはその魚を人間が食べる、ごみの循環ができているとも紹介されていた。
環境問題について考えるとき、冷静で客観的な考える指針が欲しかったから、読んでよかった本だった。
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