『デザインの教科書』|すぐそばの平凡で優秀なデザインへ

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デザインってなんだ?

使いやすい、便利で、豊かな生活を目指して。

人類と道具の歴史。

写真や幅広い話題が興味惹かれた

『デザインの教科書』は地元の図書館の棚で出会いました。

パラパラと中を見ると、白黒の写真も多数収録されており、幅広い話題が扱われているようなので、興味がわきました。

文章も平易だし、デザインに興味ある人も、そうでない人にも、オススメできる内容では?と思いました。

「デザイン」って、どんなものを思い浮かべる?

本書のタイトルは『デザインの教科書』です。みなさん、「デザイン」って聞くと何を思い浮かべますか?

カッコイイポスターやフライヤー、おしゃれなデザイナーズルーム、流行の洋服、見ているだけで飽きないWebSite。などなど、デザイナーにより“デザインされた”製品は数限りなく存在します。

ですから、「デザイン」と聞いて思い浮かべるものは、人それぞれかと思います。

デザインの近代史・産業化、工業化

『デザインの教科書』で扱われるデザインは、産業革命以降の工業デザインの話題が中心です。

それらを説明するために、太古から人類が生み出してきたデザイン、そして、自然界が生み出したデザインにも触れられます。

近代デザイン・工業が背負っているものは、華々しい物ばかりではありません。公害やエネルギー問題、また、それらと混同されがちな自然現象なども、見てゆかねばなりません。

網羅されている範囲は、とても幅広く膨大です。『デザインの教科書』では、それをコンパクトに、易しい言葉で淡々と語られます。

デザイン学生、「デザイン」初心者さんに

『デザインの教科書』を真っ先にオススメしたいのは、デザインを学ぶ学生たちです。

なにか夢や目標を持ってデザイン系の学校へ進んだのですから、これから深く“デザイン”と向き合うための、第一歩に最適です。『デザインの教科書』と銘打たれているだけあって、客観的な出来事の羅列なのも、読みやすく感じました。

と言っても、著者の柏木博さんの考え、思想も存分に含まれていますから、ただの味気ない教科書とも違います。

それ故に、ある程度デザイン界隈の勉強を進めてこられた方には、物足りない内容でしょう。また、著者の考える“デザイン”と相容れない考えを持っている方もおられるでしょう(想定しにくいですが(^_^;))。

初心者や、これからデザインを学ぶ人向けという性質上、それに当てはまらない人には、他の書籍のほうがいいカモ。

誰もが使っているデザイン

「デザイン」は万人に関係のある物事です。

『デザインの教科書』を読んでいると、我々は四六時中、デザインされたものに取り囲まれて生きていることがわかります。

そして、デザイナーという特別な職業に就いた人のみが、デザインをしているわけでもありません。

デザインは、人間らしく生きること、と言ってもいいかもしれません。物と物を組み合わせ、道具を用い、より便利に、より豊かになろうと努めます。

切り株だって、机になり、椅子になる

木をスパンと切ってしまえば、切り株が残ります。その切り株を人に腰掛ければ、「椅子」です。ピクニックやバーベキューで、切り株に腰掛けた経験のある人は多いでしょう。

切り株の椅子は持ち運び出来ませんから、次は丸太を持ち歩いて椅子することもできます。さらに、木材を組み合わせて「椅子」を作り始める。

古代エジプト時代には、こうした「家具」が登場しており、今日の椅子や机などの家具の原型はすでに生まれています。

それは、拾った石を道具として用いていたのが、次第にハンマーにしたり、石を砕いて鋭利な歯を作ったりと、人はどんどん使いやすいように改良してゆきます。

技術とデザイン

例えば、人類がハンマーを多用していた頃は、さまざまなハンマーのデザインが生み出されました。

しかし次第に技術力が上がっていき、ハンマーでない他の道具のほうが便利になれば、次はそちらのデザインが発達してゆきます。

デザインのバリエーションと、技術は、切っても切り離されないものです。

近年では、携帯電話からスマートフォンへの以降が顕著でした。携帯電話が普及していた頃は、携帯電話にもたくさんのバリエーションがありました。あさよるは現在(2016年7月)もガラケーユーザですが、ちょうど今のケータイに買い替えた頃(2012年1月)、ガラケーが2種類しかなくって、困りました(-_-;)

そして、スマートフォンが普及して以降は、タブレットや時計型のモバイル端末や、バリエーションが一気に増えています。各メーカーさまざまなデザインの製品が競って登場し、ついて行くのが大変ですね(^_^;)

新しい技術で生まれる、新しいデザイン

また、技術の革新は、それまでなかったデザインを生み出します。

例えば、金属を加工し、自由自在にカーブや直線を作れるようになった。それを用いたデザインの家具は、今日ではありふれています。

先のスマホも、iPhoneと言えば、金属のボディが目印です。

繊維の技術の進歩も目覚ましいものがあります。今やありふれてしまったヒートテックやフリースの登場で、我々の衣装は一新しました。あさよるは昨冬、ユニクロの“極暖”を手にれ、ついにコートを着ることなく冬を越しました。

これは、ファッション自体も変わるんだろうなぁとワクワクしました。

囚人たちのデザイン

本書内で、あさよるが面白く感じたのは、囚人たちのデザインでした。

囚人たちは、持ち物が制限された中で、少しでも過ごしやすく道具をデザインします。空き箱で棚を作り家族の写真を飾ったり、細々とした道具を一所にまとめて収納します。

温かい飲み物を飲むために、金属を組み合わせ電気プラグを作り、即席のヒーターを作ります。

ゴミとして処分してしまいそうな小さな箱やケースも、貴重な材料です。ありあわせの材料で物を作るには、必要な物をイメージし、図面に起こし、スケッチしてゆく作業です。そのために欲しい素材を割り出し、手に入れる必要もあるでしょう。

これらの作業は計画的に行われ、それは近代デザインの緻密で計画的な作業と同じです。

我々、囚人でなくとも、身の回りにあるもので道具を作り出すことって多々ありますよね。すでにある物を別の使い方をしたり、分解して材料として利用したり。

「平凡なデザイン」を生み出す

『デザインの教科書』を読んで、“平凡なデザイン”を作りたいと思いました。

あさよる自身もデザイン業界出身ですが、「特別なデザイン」「とっておきのデザイン」を「カッコイイ!」と思っている節がありました。

だけど、広く普及し、あらゆる人々の生活の中に溶け込んだデザインは、それは日常であり、普通であり、平凡です。

“特別ではないデザイン”になることこそが、いいデザインなのかなぁなんて、思うようになりました。

おすすめ関連本

デザインの教科書

デザインの教科書 (講談社現代新書)

デザインの教科書 (講談社現代新書)

  • 作者:柏木 博
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 2011-09-16

目次情報

はじめに
アイデンティティとしての室内/さまざまなものをわたしたちは生活の中に組織する

第1章 デザインって何?

いくつかの視点/視点1 心地よさという要因/視点2 環境そして道具や装置を手なずける/視点3 趣味と美意識/秩序と規範/イルカの形態/視点4 地域・社会/社会との関わり

第2章 二〇世紀はどのようなデザインを生んだか

近代のデザイン/見積もりのエンジニアリングから量産システムへ/デザインによる生活様式の提案/デザインの普遍性・インターナショナリズム/消費への欲望を喚起するデザイン/積み残した課題

第3章 心地良さについて

生活を豊かにする/生活に秩序を与える/とりあえずのデザイン/ものの扱い/日常の実践あるいは受け手のデザイン/住まい(家)という実践/生活を切りつめるデザイン/ル・コルビュジエのカバノン/家具のような室内/生活を切りつめる

第4章 シリアスな生活環境のためのデザイン

1 貧困解決とデザイン
絶望的貧困の発見/デザインによる処方/オルタナティヴなデザイン

2 生きのびるためのデザイン
極限状態でも快適さを/自立するためのデザイン/危機とデザイン

3 ユーモアを持った器用人のデザイン
極限状況を生き抜くユーモアとデザイン/独房の中でのデザイン/ブリコルールのデザイン

第5章 デザインによる環境問題への処方

牛のゲップも二酸化炭素量を増やす/汚染されていない海水では死んでしまうタコ/サステイナブルなデザイン/分離可能なデザイン/エネルギーのコントロール

第6章 デザインを決める具体的な要素

1 色彩
色彩はどんな感覚に結びついてきたのか/色彩は形容詞/アスピリンの色・コカコーラの色

2 素材がデザインを生む
鉄とガラスとコンクリート/デザインを自在にさせた合成樹脂と合板/戦闘機のラップからサイボーグ服まで/素材の組み合わせ

3 ものと人間と相互作用
相手を対象化する/デザインによる改宗/移動装置(デザイン)が生活を変化させる/筆記具が与える影響/カトラリーと食事文化/関係性を考える

第7章 趣味とデザイン

趣味とめぐるいくつかの発言/美学的判断としての趣味/受け手の美意識/民藝・趣味の論理/富本憲吉のデザイン

第8章 デザインの百貨事典――デザイン・ミュージアムの展示

百科事典と博物館/デザイン・ミュージアム/デザインの展示/V&A/MoMA/ブルックリン美術館/クーパー・ヒューイット国立デザイン・ミュージアム/パワーハウス・ミュージアム

おわりに

柏木 博(かしわぎ・ひろし)

一九四六年神戸生まれ。デザイン評論家。武蔵野美術大学卒業。現在同大学教授。近代デザイン史専攻。著書に『デザインの20世紀』(日本放送出版協会)、『モダンデザイン批判』(岩波書店)、『玩物草子』(平凡社)、『探偵小説の室内』(白水社)、『「しきり」の文化論』(講談社現代新書)など多数。

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