池上彰『伝える力』|子どもへニュースを伝える力

そんな気にさせるコミュニケーション術

自分の意図を伝える力

本書『伝える力』で紹介されているのは、相手に自分の意図通りに解釈し、行動してもらう方法だと感じます。

自分の意志を「伝える」ということと、自分の意志が「伝わる」ということは、似ていますが全く違うことです。本書『伝える力』では、タイトルとは違い「伝わる」ための方法を、池上彰さんが伝授しています。

冒頭で、子どもに「日本銀行」を説明するには、どう説明するかという問がなされます。そう、なんとなく「日本銀行」について知っていても、いざ何も知らない子どもに教えようとなると、どこから手を付けて良いものか悩ましい。

さすが『週刊こどもニュース』のお父さん・池上彰さん。子どもに説明できるほど噛み砕いて、簡単な言葉に置き換えてゆくには、大人の側の理解力が試されます。大ざっぱに知っていることは、噛み砕いて説明できません。きちんと徹頭徹尾理解しているときに、簡単に翻訳することができるんです。これは、現在もテレビで池上彰さんを拝見するときのお姿に重なりますね。

伝えるテクニックを磨くには

第二章は、相手の心を惹きつけるための極意。話の「つかみ」の大切さが説かれます。小説も、最初の出だしが大事だと言います。名作と時代を超えて愛される作品は、出だしの文章まで印象的!(例 『吾輩は猫である』『雪国』)

また、人間関係で大切なのはコミュニケーションです。コミュニケーション力の高さは、伝える力に大いに関係があります。参考になるのは、毒舌を言っても憎まれない人たち。芸能人だと、綾小路きみまろさんや毒蝮三太夫さんが挙げられています。彼らは毒舌でお客さんのことまでヒドイ言いまわし!だけど、毒されたはずのお客さんは、みんな嬉しそう。「毒舌」にも、その根底に愛情が潜んでいることが、ポイントなんだそう。

そして、伝わる「文章」を書くコツも紹介されます。ここで紹介されるノウハウはベーシックなものが多いです。やっぱり基本は大切なんですね……。ニュースの原稿を手書きで書き起こしてみたり、あと、無闇にカタカナ語や熟語を濫用しないよう呼びかけられています。ここでも、相手に伝わる言葉の選び方が重要なのだと気付かされます。

また、アウトプットに必ず必要なのは、インプットです。しかも、上質なインプットがしたい!池上彰さんは、落語を聞いたり小説を読んだり、文化的な活動を勧めておられます。また細切れの時間を見つけて、インプットを行うために、スケジュール管理方法まで言及されています。

「教える力」「理解させる力」ではない

「伝える力」って、池上彰さんっぽいなぁってのが、感想ですw

この「伝える力」の面白いところは、「教える力」ではないってこと。先の例だと、日本銀行がどんな仕事をしているのか、社会の中でどんな働きをしているのか「教える」のではありません。あくまで、「こんな仕事をしてるんですよ~」と「伝える」力なんです。

その姿勢は、本書を通して一貫しています。相手に「教える」「理解させる」のではなく、相手に「伝える」。同じような事柄ですが、微妙に違います。池上彰さんがテレビで活躍している様子を見ても、「伝える」ことに重きを置いておられるんだと思います。

意思表示をきちんとする力

「教える」「理解させる」って、相手に働きかけ、相手に変化を与えることです。だけど、「伝える」って、ちょっとニュアンスが違うなぁと思いました。

自分の意図を伝える。きちんと意思表示を相手に認識させる。それって、社会生活の中で必要なコミュニケーションスキルの一つです。喜怒哀楽の感情も、自分たちの利益不利益も、きちんと伝えるべくことは沢山あります。

「これは大事な話です」と伝えたつもりが、相手には大事さが伝わっていなかった、なんてこと、ありますよね(あさよるは、よくあります(^_^;)>)。それって、「伝える力」がないからです。

苦情やクレームを入れるのが下手ならば、迷惑なクレーマーとして対処されてしまいます。けれども、本来クレームは上手にできれば業務やサービスの改善がなされますから、大人ならきちんと苦情、クレームを入れられるようになりたい……と思いました(あさよるは、苦情を伝えるのがとても下手で、身につまされます)

軽めの読み物として、隙間の時間に!

テレビで活躍の池上彰さん。テレビでは知っていても、実際に著書を読んだことがない人も多いかもしれません。

この『伝える力』は誰にでも当てはまるコミュニケーションの基礎のような内容ですから、誰でも読むことができます。

一方で、コミュニケーション関連の書籍やビジネス書をたくさん読んでいる方には、物足りない内容かもしれません。内容が基礎的ですので、上級者の方は、他の本を。

『伝える力』とタイトル通り、どの章節もライトで読みやすく、すんなりと頭に入る言葉が使われています。ササッと読めば、早い人なら1、2時間もあれば読破しちゃうかも?短い節に分かれていますし、通勤時間や、ちょこっとした隙間の時間に、ちょっとずつ読んでゆくのがオススメです。

関連記事 池上彰さんの本

「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える! 伝える力

  • 池上彰
  • PHP研究所
  • 2007/4/19

目次情報

はじめに

第1章 「伝える力」を培う

1.「日銀」とは何か、説明できますか?
2.深く理解できていないと、わかりやすく説明できない
3.教科書はわかりにくい
4.まずは「自分が知らないことを知る」
5.謙虚にならなければ、物事の本質は見えない
6.何を取り、何を捨てるか
7.プライドが高い人は成長しない
8.聞くは一事の恥、聞かぬは一生の恥
9.「よい聞き手」になるために
10.V6井ノ原さんとTOKIO国分さんの人気の秘密
11.自分のことばかり話さない
12.相手の「へぇー」を増やす

第2章 相手を惹きつける

13.(1)映画や連載記事に学ぶ“つかみ”方
14.(2)景気が回復したのは小泉内閣のおかげです?
15.(3)「元次期大統領のゴアです」
16.(4)一〇秒あれば、かなりのことを言える
17.(5)「型を崩す」のは型あってこそ
18.(6)言うべきか、言わざるべきか
19.(7)会議では一人一人の目を見ながら話す

第3章 円滑にコミュニケーションする

20.(1)「爆笑問題」の危機管理
21.(2)その言葉に“愛情”はあるか
22.(3)綾小路さんや毒蝮さんの毒舌が受け入れられるわけ
23.(4)「村上世彰発言」の問題点
24.(5)成功して好かれる人、成功して嫌われる人
25.(6)悪口は面と向かって言えるレベルで
26.(7)叱るのは「一対一」が大原則
27.(8)褒めるときは「みんなの前で」
28.(9)「聞く」ことで「伝わる」こともある
29.(10)理屈でない感情もある
30.(11)謝ることは危機管理になる
31.(12)苦情をいうときのポイント
32.(13)「実りある苦情」にするために
33.(14)苦情電話の対応策

第4章 ビジネス文書を書く

34.(1)フォーマットを身につける
35.(2)優れた文章を書き写す
36.(3)現地調査では「素材」を探す
37.(4)演繹法か、帰納法か
38.(5)「緩やかな演繹法」
39.(6)「五感」を大事にする
40.(7)問題は「中身のない文章」

第5章 文章力をアップさせる

41.(1)「もう一人の自分」を育てる
42.(2)プリントアウトをして読み返す
43.(3)寝かせてから見直す
44.(4)音読する
45.(5)上司や先輩に読んでもらう
46.(6)人に話しながら、書く内容を整理する
47.(7)ブログを書く
48.(8)新聞のコラムを要約する

第6章 わかりやすく伝える

49.(1)氾濫する“カタカナ用語”
50.(2)カタカナ用語は社外の人には使わない
51.(3)「~性」「~的」はごまかしが利く
52.(4)漢語表現や四文字熟語の使い方
53.(5)「難しことも簡単に」書く、話す
54.(6)相手の立場になって伝える
55.(7)図解はあくまで手段
56.(8)矢印を使い分ける
57.(9)図に入れる文字は最小限に

第7章 この言葉・表現は使わない

58.(1)「そして」「それから」
59.(2)順接の「が」
60.(3)「ところで」「さて」
61.(4)「いずれにしても」
62.(5)メールの文字

第8章 上質のインプットをする

63.(1)アウトプットするには、インプットが必要
64.(2)小説を読む
65.(3)人間と語彙の幅を広げる
66.(4)落語に学ぶ
67.(5)スケジュール管理がビジネスを左右する
68.(6)スケジュールは公私ともに一冊で管理する
69.(7)年始に大まかな一年の予定を組む
70.(8)思い立ったらすぐにメモ

おわりに

池上 彰(いけがみ・あきら)

1950年、長野県生まれ。慶応義塾大学卒業後、73年NHK入局。報道記者として、松江放送局、呉通信部を経て東京の報道局社会部へ。警視庁、気象庁、文部省、宮内庁などを担当。94年より11年間NHK『週刊こどもニュース』でお父さん役を努める。05年3月にNHKを代謝し、現在はフリージャーナリストとして多方面で活躍。
著書に『そうだったのか! 現代史』(集英社)、『相手に「伝わる」話し方』(講談社現代新書)、『ニッポン、ほんとに格差社会?』(小学館)など多数。

コメント

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