【書評・レビュー】藤沢晃治『「分かりやすい説明」の技術』

プレゼン初心者へ!

「伝える」ことの教科書にいかが?

度重なる勘違い、誤解から

人間関係やコミュニケーションについて、誰しも悩みや課題はありますよね。

あさよるの場合は、上手く相手に考えていることや、現状を伝えることが苦手です。自分では、ちゃんと伝えているつもりなのに、勘違いされていたり、事実と異なる理解をされてしまったり。

これは、あさよる側に問題があるのだなぁと、コミュニケーションや「伝える」ということに特化した本を探し、『「分かりやすい説明」の技術』に出会いました。

伝わるように伝えること

言いたいことを言ってるだけ?

『「分かりやすい説明」の技術』では、「伝える」ということは、伝える意志が必要なんだと思い知らされます。

不親切な看板や、意味の分からない説明書。何を言っているかわからないアナウンス。巷には、伝わらないメッセージが溢れています。

メッセージを発している方は、なにか意図あってそうしているのでしょうが、「言いたいことを言っているだけ」。あるいは「やりたいようにやっているだけ」「書きたいことを書いているだけ」。

看板を作りたいなぁと思ったから、看板を作った。この文言を言いたかったから、言った。そこには、そのメッセージを受け取る「相手」が想定されていません。

「分かりやすい説明」には技術がある

道順を人に教えるとき、「自分はよく知っている」が故に、相手が何をわかっていないのか配慮を怠りがちです。例えば「角にコンビニが有ります」と伝えても、どこの角のコンビニなのかわかりません。

あるいは、専門的な話をするときにも、配慮が必要です。自分は知っている内容でも、相手にとっては初耳の話。こんなときは、導入部分をきちんととり、少しずつ専門的話題へ移行してゆく。

この様子を、映画館での様子に喩えられています。先に映画館に入っていた人は、暗闇に目が慣れていますが、後から入ってきた人は、真っ暗で何も見えません。先に入った人は、相手の目が慣れるまでの間、じっくりと待ったり、的確な指示を出す必要があります。

「タイムラグ」も発生します。説明をするとき、相手はワンテンポ遅れて話を理解するのです。次の話題に移って、しばらく話している間に、前の話題を理解することもあります。

ですから「話したその場で相手が理解している」と思い込んで話を続けると、会話が噛み合わなくなることもあるでしょう。

プレゼン上級者には不満?

すでにプレゼンテーションをたくさんこなしてきた方や、文書作成をされてきた方には、すでに実践しているテクニックがほとんどでしょう。

『「分かりやすい説明の技術」』はあくまで、プレゼンテーションの「基礎編」的内容です。平易な文章と、比喩や、失敗例をたくさん交え、誰にでも理解しやすい内容です。

学生や、これからプレゼンスキルを磨いてゆく人にぴったりです。

プレゼンテーションの教科書に

これからプレゼンテーションや、コミュニケーションスキルを磨きたい人には、『「分かりやすい説明」の技術』はとても読みやすく、親しみやすい内容でしょう。

章立ても細く区分されており、さらに小さな節に分けられています。区切りをつけやすいので、教科書的に何度も読み返して使い倒す読み方がピッタリじゃないかなぁと感じました。

困ったときのお助けアイテム的に!

「教える」ことを教える

あさよるが「いいなぁ」と思ったのは、「教える」「伝える」「説明する」などの事柄について、人にレクチャーするときです。

参考文献として、『「分かりやすい説明」の技術』を開きながら、具体例を出してレクチャーしてゆく。

本書にはイラストも随所に掲載されているので、硬い雰囲気にもなりません。

心惹かれる人物に

コミュニケーション方法や、人間関係のトラブルが起こった時にも『「分かりやすい説明」の技術』を参照してみるのをオススメします。

本書を読んだからといってコジレタ関係が元に戻るわけではありません。しかし、なにがすれ違いの原因だったか、自分にも説明が不適切でなかったか、など、振り返りに便利でしょう。

人に上手く説明するって、自分の魅力や、自分の能力を伝えることもできるんです。

「筋道立てて説明する」って、言うのは簡単ですが、実践するのは難しいものです。さらに、お互いの前提知識の違いも補填しなければなりません。

手探りで「分かりやすい説明」を模索するよりも、『「分かりやすい説明」の技術』をまずは一読してみるほうが、手っ取り早いでしょう。

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「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール

目次情報

はじめに

第1章 「分かる」とはどういうことか 13

重要な報告会15/簡単で確実な技術16/分かりにくいアナウンス17/何を禁じているのか?18/解釈不能のエラー・メッセージ19/無競争が生む分かりにくさ21/目につかない道路標識22/「分かりにくい説明」の責任結果24/改善のきざし25/「分かるように解き明かす」こと25/脳内整理棚に入れる27/脳内関所の作業項目29/サイズのチェック30/脳内整理棚の選ぶ31/ポイントをつかむ32/論理性審査33/意味の確定34/脳内関所を通りやすくする34/説明はサービス35

第2章 説明術・基礎編 37

説明術① 聞き手とのタイムラグを知れ 39

映画館ではゆっくり歩け39/初めて聞く人への配慮40/タイムラグが起きるわけ41

説明術② 要点を先に言え 43

一番知らせたいことは?43/最初に「理解の枠組みを与えよ」44/脳内整理棚選定作業を手助けする45/脳内整理棚が用意されると46/点が線につながる48/ビジネスレターの要点49/目的意識を持って手早く正確に51

説明術③ しみ入るように話せ 53

せっかちな説明53/聞き手に合わせた速度54/ビール瓶の蓋の原理55/だらだら話さない57

説明術④ 抽象的説明と具体的説明のバランスを取れ 59

報告下手の二つのタイプ59/適度な抽象性も大切60/範囲が確定しない61/具体的な説明62/善玉抽象性64/ヘリコプターからの視点66/抽象的説明のテクニック67

説明術⑤ 説明もれを防げ 70

話し手の「盲点」70/靴を脱ぐ場所71/必要な説明・不必要な説明72/盲点をなくすために74

説明術⑥ 情報構造を浮かび上がらせろ

いらだつ説明76/説明は「情報の調理」77/情報の構造を明らかにする80/重複やムダのない説明81/相互関係を明示した説明82/あいまいな文章85/分かりやすい文章89

説明術⑦ キーワードを使え 91

一言で言い表せないか?91/言葉の取っ手92

第3章 説明術・応用編 95

説明術⑧ 論理的に話せ 97

その説明に説得力があるか97/説明の「詰め将棋」99/説得力は数学の証明から学べ101/理論武装のための二つのポイント103/ペイオオフにどう備えるか104/論争の行方106/X氏の理論武装109/視点をそらせ111

説明術⑨ 比喩を使え 113

「分かりやすさ」に書かせぬ比喩113/比喩のデータベースを持つ114

説明術⑩ 聞き手の注意を操作せよ 116

企業の意図vs.記者の意図116/誘導する説明118/「前」の質問・「後」の質問119/問いかけの効用120/「まとめ言葉」を使え121

説明術⑪ 引率せよ 123

ポン太との別れ123/動物霊園はどこだ?124/説明は「引率」126/まずは全体像を示す127/これからの展望を示す128/ついて来ているか?130/迷わせないホームページ131

説明術⑫ 「繰り返しの劣化」に注意せよ 134

なぞの車内アナウンス134/「慣れ」の恐ろしさ135

説明術⑬ 持ち時間を守れ 137

セミナーの時間オーバー137/持ち時間に合わせて説明する138/「見出し」をつける139

説明術⑭ 聞き手に合わせた説明をせよ 142

「看板に偽りあり」の説明142/パンフレット作りから始まっている143/聞き手が誰かを確認する144/省ける説明・省けない説明146/聞き手の熱意を推し量る148/コマーシャル制作者に学ぶ149/訴えたいことは何か?150

説明術⑮ 聞き手を逃すな

電話でのセールス152/糖衣錠のテクニック153/隠して届ける155/聞き手が不快に思うこと156/不快感を和らげる157/コマーシャルの手法158

第4章 「分かりやすい説明」のチェックポイント

簡単で当たり前のルール162/音読の勧め163

説明術の15のルール 165

おわりに

藤沢 晃治(ふじさわ・こうじ)

慶応大学理工学部・管理工学科卒業。現在、大手メーカーにソフトウェア・エンジニアとして勤務。専門分野で雑誌への寄稿情報処理学会等での講演などを多数こなし、その分かりやすいプレゼンテーションには定評がある。また、社会人になってから英語を独学し、英検1級、TOEIC900点、通訳ガイド国家資格、工業英検一級などを取得。著書として『「分かりやすい表現」の技術』(ブルーバックス)、『30歳からの英語戦略』(PHP研究所)、『分かりやすい英文を書く技術』(ダイアモンド社)がある。

コメント

  1. […] 『「分かりやすい説明」の技術』 […]

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