【書評/レビュー】植木理恵『本当にわかる心理学』

より良い人間のための心理学入門!

『本当に分かる 心理学』を手にしたキカッケ

あさよるはあまり「深層心理」とか「心理学」とか、そっち方面には興味がありませんでした。

たまたま、探している本を求めて図書館の心理学の棚へ迷い込み、なんとなく手にした本です。中をパラパラと見て、ちょっと読んでみようかなぁと、貸出してもらいました。

そんな、軽い気持ちでなんとなく読み始めた本でしたが、とても興味深い内容でした。

「あさよるも、こんな思考しちゃってるなぁ」「ああ、こんなループにハマってるかも…」と、自分事として読めたのも、興味を持てたところです。

心理学はコミュニケーションや勉強にも利用できる?

まず第1章にて、ここで扱われいる「心理学」について紹介されています。

どういうことかというと、テレビや雑誌で面白おかしく扱われるような、深層心理を仕草から探ったり、無意識化に潜む欲求をあぶり出すような「心理学」ではない、ということです。ですから、読者の興味の対象によっては『本当に分かる 心理学』は不要な、おもしろくない書籍に感じるでしょう。

本書は、フロイトやユングで有名な“深層心理学”ではなく“実験認知学”を扱います。

ですが、これが面白い。

誰もが、やってしまっている思考や行動のクセが見えてきます。いいえ、みんなが共通して持っているクセなのですから、人間の“習性”といった方がピッタリですね。

「第一印象」の認知バイアスを利用できる?

第一印象は一瞬で決まる、なんて言いますが、その“印象”は「認知バイアス」となって後々まで尾を引くというのです。

認知バイアスとは、事実と反する、誤りの情報を認識してしまうことです。

第一印象の場合だと、最初に「いい人だ」と認識した場合、その後も、その人の「いい人」な部分を見つけ、「自分の第一印象は間違っていなかった」とどんどん実証してしまいます。反対に、最初に「嫌な人だ」と思えば、その後もその人の嫌な部分を見つけては、「やっぱり」と確信してゆくのです。

もちろん、当たり前ですが、誰にだって長所があれば短所がある。良いところもあれば嫌なところもあるのは同じです。しかし、最初に「いい人だ」と思えば良いところばかり見え、「嫌な人だ」と認識すれば嫌なところばかり認識してしまうのです。

一度「嫌なヤツ」と思われてしまうと、どんなに良い部分を見せても挽回することは困難です。それは困った話だなぁと思いつつ、「あるある」な話ですよね。あさよるも、この思考にハマってしまっていると思います。

自己紹介はチャームポイントからはじめよう

だけど、人への印象のカラクリがわかったなら、今後の対人関係に応用できるかもしれないと思いました。第一印象で、「いい人そう」「優しそう」「親切な人」など、ポジティブな印象をゲットすればよいのです。

(σ・∀・)σゲッツ!!

自己紹介は、自分の良い面を全面的に出した方が良いでしょう。謙虚に、自分の欠点ばかり挙げ連ねていると、その通りの印象になてしまうそうな……(^_^;)。

アッシュの印象形成実験が紹介されていました。

ある人物の性格特性を述べたリストを呈示し、その人物に対する印象について質問している。その際のリストは下記の二つのものであった。
・リスト1:彼は、「知的な・勤勉な・強力な・批判的な・頑固な・嫉妬深い」人である
・リスト2:彼は、「嫉妬深く・頑固で・批判的な・強力な・勤勉な・知的な」人である
このリストをよく見れば、同じ言葉を正反対の順序で並べているだけであることがわかる。しかし、つくられた印象は大きな開きが見られた。リスト1のように「知的な」といった望ましい特性を先に提示されると、全体として「多少の欠点はあるが、のうりょくのある人」という好印象が形成される。しかし順序が逆転すると、「他の欠点のために、能力が発揮できない人」という悪印象を持つ人が多かったのだ。

植木理恵『本当に分かる 心理学』p.57

同じことを言っているのに、順番が違うだけで印象が正反対に変わってしまいます。謙虚のつもりで自分の欠点や苦手、ダメなところを挙げ連ねる自己紹介はやめましょう。まず、自分のチャームポイントを述べてから、“たまにキズ”な欠点を伝える自己紹介を考えようと思いました。

容姿と印象も大きく関係している?

よく言われるように、容姿が優れている人のほうが印象が良いそうです。ただ、ここで問題が一つ。

飛び抜けて優れている人は、それだけ人から期待されています。ですから、ちょっとしたミスや失敗だけで、裏切られた!と落胆され、大きく減点されてしまうのです。

「思い込み」が人をコントロールする?

洗脳や、人にコントロールされてしまうしくみも説明されていました。

「アメとムチ」と言いますが、ムチが強すぎる場合、無気力に陥りその場から動けなくなってしまうそうです。ですから、人をコントロールするには「アメと無視」が使われます。適度にアメを与えつつ、たまに無視されるのです。すると「これはいけない!」とますます相手の要求に従ってしまう…。

こんな書き方をすると人事のようですが、同じような手法で誰かにコントロールされていないでしょうか。結婚詐欺なども、「アメと無視」を駆使して近づいてくるそうです。

人の認識の習性を知ることで、自分がそこへ陥らないよう、予防線を張れるのではないかと思いました。

「記憶」のしくみを知れば、勉強もはかどる?

人の記憶についても触れられています。

自分の記憶って確かなものではなくて、時としてウソの記憶をつくりだしてしまいます。

ウソの記憶によって、無実の人が裁判に訴えられてしまう事例も、ヨーロッパでは多発しているそうです。もちろん根拠の無い濡れ衣なのですが、難しいのは、訴えを起こしている方には確かに「記憶」があるのです。

記憶って案外、不確かなのですね(^_^;)

ある事柄について思い出そうとしても、漠然とした記憶をただ思い出すのは至難の業です。ですから、その時一緒にいた人や、聞いていた音楽など、その周辺の記憶とともに思い出しませんか?

あるいは、関連のないワードを順番通りに覚えるのは難しいですが、数珠つなぎや連想ゲームのように変換してやればスルッと覚えられることもあります。

記憶の特性を知れば、勉強にも生かせるのではいかと思いました。

発見と気づき満載の“心理学入門”本!

『本当にわかる 心理学』には、実験心理学に関する初歩的な知識が、幅広く網羅されています。

心理学を知る第一歩としても良いですし、コミュニケーション術や、勉強術としてかいつまんで読むことも可能です。

あさよる的には、「深層心理を探る」系の話はニガテなので、行動心理学のアプローチからの方が読みやすかったです。そして、少し心理学について知ってみると、深層心理学についても軽く知りたいなぁと思うようになりました。

ボリューム満点ですが、たくさんの短い章立てで構成されているので、読みやすいです。

発見と気づきの多い書籍でした。

関連記事

フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学

  • 植木理恵
  • 日本実業出版社
  • 2010/2/26

目次情報

第1章――心理学とは何か

01 目に見えなくともそこには「ある」?
02 目に見えないものはそこには「ない」!
03 「今日から使える」知識の生かし方
04 心理学を正しく理解する整理法はこれだ!
05 研究手段によって心理学を勉強する
Column ドイツ人と米国人どちらがより残虐か?

第2章――「現象」から見える心理学

OUTLINE 日常的な現象から人間のもつ本質を推測する心理学
01 自分を好きになる方法は?
02 集団が大きくなると人の行動はどう変化するのか?
03 美男美女であることは本当に得か?
04 「見るな」といわれるとどうしても見たくなるのはなぜ?
05 なぜ記憶はときどきウソをつくのか?
06 人の潜在能力を最大限に引き出すには?
07 第一印象を効果的にするテクニックとは?
08 小さな悪を放置しておくと人の心はどう変わるのか?
09 共感してもらう人は「お返し」をしたくなる
10 学級崩壊に教師はどう立ち向かうべきか?
Column トイレの所要時間はどんな要因で変化する?

第3章――「実験」で測る心理学

OUTLINE 仮設→検証を重視する「科学」としての心理学
01 人をやる気にさせるにはどうすればよいのか?
02 人はどうやってマインド・コントロールさせるのか?
03 人がやる気をなくすのはどういう状況か?
04 やる気を最大限に引き出すアメの与え方とは?
05 記憶の達人はどうやって覚えているのか?
06 偽りの記憶はどうやってつくり出されるのか?
07 うわさ話はどう生まれどう広がっていくのか?
08 自分の意見を通しやすいシチュエーションとは?
Column モチベーションには「外発―内発」軸しかないのか?

第4章――「観察」で見抜く心理学

OUTLINE 人を長期間観察し言語や行動を一般化する心理学
01 「ひらめき」はどうやって起きるのか?
02 「そういえば……」はどう頭をよぎるのか
03 偽りの記憶が生まれるのはどういうときか?
04 セクハラをしやすいのはどんなタイプ?
05 高学歴の人は仕事ができる?できない?
06 「一を聞いて十を知る人」の思考パターンとは?
07 親と子はどうやって「親子」になるのか?
08 子どもの社交性はどのように形成されるのか?
09 「友情」はどうやってつくられるのか?
10 本当の恋愛はいつからできるのか?
Column 自分自身のことはどうやって知るのか?

第5章――「理論」を整理する心理学

OUTLINE タイプ分類をするために現象モデル化する心理学
01 どれくらいの難易度なら人は意欲を感じるのか?
02 頑張ってもうまくいかない原因はどこにあるのか?
03 人の「意欲」を高める二つの公式とは?
04 知能の高低をどのように表現するのか?
05 心の知能は測定可能なのか?
06 「性格」を科学的に分析すると何が見えてくるのか?
07 ストレスとの上手な付き合い方は?
08 情報は、どのようにして記憶に変わるのか?
09 効果的に情報を覚えるにはどんな工夫が必要か?
10 すぐ忘れる記憶といつまでも残る記憶の違いは何か?
Column 効率的な学習方法とはどういうもの?

第6章――「技法」を提示する心理学

OUTLINE 理論を応用し臨床で役立てるための心理学
01 「問題行動」を抑えるにはどうすればよいのか?
02 うつを招きやすい特有の考え方とは?
03 気にするから具合が悪くなる…この悪循環から抜け出すには?
04 自己中心的な考え方から脱却するには?
05 心を見つめ直す究極の方法は?
06 メンタルヘルスを保つ自己暗示のひけつとは?
07 カウンセラーに求められるクライアントとの関係は?
08 内面へのアプローチがスムーズになる方法とは?
09 家族全体がカウンセリングの対象となることもある?
Column あなたは客観的発想ができますか?

参考文献
さくいん

植木 理恵(うえき・りえ)

1975年生まれ。心理学者、臨床心理士。御茶ノ水女子大学卒。東京大学大学院教育新理科終了後、文部科学省特別研究員として心理学の実証的研究を行なう。日本教育心理学会において最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞し、現在、都内総合病院心療内科でカウンセリング、慶應義塾大学理工学部教職課程で講師をつとめる。
著書に『ぷち依存生活のすすめ』(PHP研究所)、『部下のやる気を2倍にする法』(和田秀樹氏らと共著、ダイヤモンド社)、『人を見る目がない人』(講談社)、『シロクマのことだけ考えるな! 人生が急にオモシロくなる心理術』(マガジンハウス)、『小学生が「うつ」で自殺している』(扶桑社社新書)、『好かれる技術~心理学が教える2分の法則(新潮文庫)、『教育心理学の新しいかたち』(市川伸一氏らと共著、誠信書房)、『教育心理学』(鹿毛雅治氏らと共著、朝倉書店)、『絶対役立つ教育心理学』(藤田哲也氏らと共著、ミネルヴァ書房)など。

コメント

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