住野よる『君の膵臓をたべたい』|私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ

読書の秋に小説でも。

青春モノと思いきや、大人になるほど胸がいっぱいに……

あと、映画化されるらしい

オススメをオススメをされた!

『君の膵臓をたべたい』は他人からオススメされて手に取りました。しかも、オススメされたをオススメされるという、又オススメでしたw

「まぁ最近、小説もチェックしてないし、人気なら読んでみようかなぁ」と、図書館の蔵書を検索すると、確か予約が30人以上入っていて、本書の人気を確認しましたw で、図書館の予約をポチってたら、忘れた頃にやっと順番が回ってきたので、意気揚々と読み始めたのでありました。

あと、作者の名前が、あさよると名前が似ていたので、気になりましたw

あさよる的にはオススメです。サラッと一気読みできて、文章も平易で堅苦しくもなく、普段小説を読まない人にもオススメしやすい感じ。読書の秋ですしね。

余命1年の彼女に、出会ってしまった

Amazonの紹介文を引用します。

 偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。

病を患う彼女にさえ、平等につきつけられる残酷な現実。
【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。
全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!

君の膵臓をたべたい | 住野 よる | 本 | Amazon.co.jp

主人公は高校生の男の子。

たまたま病院でクラスメイトの女子・山内桜良と出会い、彼女が膵臓の病気により余命1年だと告白されます。

しかし、彼女はあと1年の命だとは思えないくらい元気で天真爛漫。これまで人と関わらず自己完結した世界で過ごしていた主人公は、彼女に振り回されるハメに。しかし、流れに流されることをヨシとする彼は、いつの間にか彼女と同じ時間を過ごす内、これまでにない「思い」が湧いてくるのですが……。

不治の病を患う女の子に出会ってしまった彼の物語。「ガール・ミーツ・ボーイ」モノの小説です。

高校生のお話。だけど大人の方が共感しちゃう

あまり筋や感想に言及し過ぎると、ネタバレになってしまいます。というか、Amazonのレビューも、ザッと見るかぎりとある“仕掛け”や話の伏線のネタバレしまくってるので、見てはいけない!w

悪いことは言わない。今後、『君の膵臓をたべたい』を読もうと少しでも思っている方は、絶対にネタバレを避けるように!

と、あさよるは結構、ネタバレ平気でガンガン自ら読みに行くタイプなのですが、今回この『君の膵臓をたべたい』は一切前知識ナシで読んで良かったなぁと思います。

年齢を重ねるほど……身近に感じる物語

主人公は高校生男子。余命1年のクラスメイトの女子と出会い、彼女と一夏を過ごす……という物語です。が、これは歳を取るほどグッと来る物語じゃないかと思います。

正直、主人公と同年代の高校生がこの本を読んで胸がいっぱいになるだろうか?少なくとも、高校生の頃の自分を振り返ると、絶対に“不治の病の少女”の設定に「ケッ」となり、彼らの会話文に「ケッ」となっていただろうと思います(どんな高校生だったんだ)。

なんで歳を取るほど胸に迫るかというと、不治の病とか、余命とか、闘病とか、どうしようもない、治らない病気や怪我が「身近なもの」に感じるからです。自分自身や、近しい身内が、治らない病気や怪我を負っていることって……他人事じゃないんですよね。

「余命」を二人でケラケラと冗談で笑い飛ばしちゃう感じとか、だけど必ず来る“その時”にどうしようもなく焦ってしまう感じとか、読んでて何度も胸がいっぱいになってしまったり、思い出すことがあったりと、気持ちが落ち着きません。

途中、ガッカリしたけど、その後持ち直した

後半、思ってもみないアクシデントに見舞われます。

「えっ」と驚くと同時に「え~、それ~??」みたいな、落胆をしてしまいました。え~、なんで、よりによって~みたいな。うん、「成り行き」を見守りたかったのに、ホント思ってもみない出来事。

もちろん、それが作者の狙いで、そのアクシデントこそが、この物語の「メッセージ」なのでしょう。そう、生きるってそういうことだよね……と、ネタバレになるので詳しくは書かない( ー`дー´)キリッ

と、後半ダレちゃったんだけれども、その後の、主人公と彼女の気持ちが通じ合う描写が、よかった。

最後にちょっとネタバレするぞ!

誰も、死者に囚われている

これで最後です。ですので、ちょびっとネタバレします。

彼は、彼らは、死んでしまった彼女に心が囚われたまま、物語は終わります。

誰とも関わらず生きてきた主人公は、少しずつ、時間をかけて他者と関わり、心を交わし、関係を築き始めます。主人公はもうどこにも居ない彼女に突き動かされ、自らが変わってゆくんです。

少なからず我々は、必ず誰かに囚われています。時に、この世にもう居ない人物から離れられず、どこにも居ない人に影響を受けて生きてゆきます。それが人と関わるってことだし、生きるということでしょう。

高校生のひと夏の経験

甘酸っぱい恋模様を描くのかと思いきや、サラッと「生きる」ということを描きとっていて、かといって説教臭いわけでもなく、適度にキュンキュンしつつ、叶わぬ恋に胸が痛みつつ。

で、自分の青春時代を振り返ると、そういうゴチャゴチャと、生きることや焦燥感や恋のようなものについて考えたり文学に親しんだり(主人公は文学青年)、全部盛りの時代だったなぁと思います。

生きること、人と共に生きること、恋をすること、やりたいことをすること、記録を残すこと、いつか命が終わること。そういう、当たり前だけれども、当たり前すぎで見えなくなりがちな、あるいは見たくないからスルーしちゃう事柄を、高校生の彼らの視点、彼らの言葉で見せつけられる物語でした。

サラッと一気に読めますし、言葉使いも平易で読みやすい。読書の秋にオススメです。

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君の膵臓をたべたい

  • 住野よる
  • 双葉社
  • 2015/6/17

住野 よる(すみの・よる)

大阪府在住の兼業作家。高校時代より執筆活動を開始。本作がデビュー作。

コメント

  1. […] 記事リンク:『君の膵臓をたべたい』|私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ […]

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