『たべものがたり―食と環境 7の話』を読んだよ

山本良一/Think the Earth プロジェクト『たべものがたり 食と環境 7の話』書影 60 産業

幼稚園生のころや、小学生だった頃を思い出すとき、まっさきに「給食の思い出」が浮かびます。
幼稚園では週に数回お弁当が支給され、小学校では学校で作った給食でした。
私はこの給食がイヤでイヤでたまらなかったんです。
嫌な理由は上手く言えませんが、もうなにもかもイヤでした。ペコペコに凹んだアルミの器も動物のエサ入れみたいで、目にギラギラを眩しくてイヤでした。グループで机をみんな付きあわせて、食べないといけないのもイヤでした。

大学生になってからは、自分でお弁当を作るようになりました。「弁当箱」と言っても、白米を詰め込み、豚肉や唐揚げを2、3個つめこむ程度のものです。梅干しまであれば豪華だあなぁというものでした。
しかし、そんなメニューじゃお腹もいっぱいになるわけないので、足りない分は自販機でインスタントのカップ麺や、売店で菓子パンを買ってしのぎました。
決して贅沢ではないけれども、私自身は「こんなもんだろう」と納得していました。

しかし今思うと、私は食への関心が低すぎでした。こんな食生活を繰り返していては、そりゃ誰だって体を壊すし、ヤル気もでないでしょう。
今になってやっと、「食べるものって大切なんだなぁ」と気づきます。

食について関心を持ち始めると、これまで見えなかったものが見え始めました。

まず、食べものは体を作ること。私の体は食べものを材料にできています。
その「私」という「個人」が集まって「社会」を作っているのですから、社会も食べものが作っていると言えるでしょう。

フード・マイレージを下げる!地産地消と食料自給率

しかし、私たち日本社会の食料自給率は、40%と過半数にも満たないことは、ご存知の通り。もし、外国からなんらかの理由で輸入ができなくなったとき、とっても困ってしまうのは目に見えています。
「そうなったら国内で作ればいいじゃん」と簡単にもいかないでしょう。一度やめてしまった農業を、再びはじめることって、そんなに簡単ではないのではないでしょうか。
農家のお百姓さんたちは、最新のバイオテクノロジーを使いこなす、まるで科学者です。誰でも彼でも今すぐ初めてできることではないでしょう。
食料自給率が下がることは、農業の知識や技術が継承されにくいということではないかと思いました。

『たべものがたり―食と環境 7の話』を読み、新たに「フード・マイレージ」という言葉を知りました。マイレージって、飛行機に乗った距離分だけポイントが溜まっていくアレです。
「フード・マイレージ」は、食べものの重さとに、運ばれる距離(km)をかけて表します。大きければ大きいほど、遠ければ遠いほど、フード・マイレージは上がるんですね。

重いものを遠くへ運ぶには、ガソリンや電気など燃料が必要です。これは、今のエネルギー問題や、二酸化炭素排出規制の問題にも繋がります。
外国から日本へ食べものを輸入するのは、コスト高なんですね。
もし、今あちこちで提唱されているように「地産地消」が進めば、フード・マイレージも少なくて済みます。

やってみたら案外できるかも?

そんな、理想の話ばかりしていても、どうせ無理な話じゃないのかなぁと思います。気の長い取り組みが必要なのでしょう。

「弁当の日」という取り組みがあります。元中学校校長の竹下和男が牽引している運動で、その日は子どもたちが、子どもだけの力でお弁当を作る日です。子どもには料理は無理、あぶないから保護者がついていないと……と大人たちの心配はなんのその!みんなとても凝った、こだわりのお弁当ができあがるもんなんです。
しかも、案外みんな、栄養バランスを考え、彩りよく盛りつけされています。

さっきの私の経験でも、自分で弁当を作れる力はとっても大人になって役に立ちます。朝の忙しい時間にパパッと、未来の自分のためにお弁当箱に詰めてゆくのです。それに、お弁当は、午後の自分のエネルギーでもありますから、なにを入れるべきなのか熟考が必要です。
私も義務教育中に、食に関する授業は受けたハズなのですが、「そんなことできない」「忙しいから無理」と思い込んでいました。

「できない」って思い込みは厄介です。
そう思い込んでいる限り、絶対に本当にできないからです。

食に関する「できない」も、まずは自分の心の中の枷をはずしてゆくところからかもしれません。

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たべものがたり―食と環境 7の話

  • 企画監修:山本良一
  • 編著:Think the Earth プロジェクト
  • 発行所:ダイヤモンド社

目次情報

  • 食料自給率が100%を超えよ!
  • たべものがたり
    • 1 はらぺこ惑星
    • 2 食べもの再発見
      • 野菜の魅力
      • このタネ、なんのタネ?
      • 大豆の一生
      • 牛肉が届くまで
      • 旬のサカナたち
    • 3 食と生命
      • 体内のトンネルツアー
      • 生きものたちの食生活 絵 祖敷大輔
    • 4 食と日本社会
      • 数字で見る食の今
      • 地球は何人養えるか?
      • ありあまる食、足りない食
    • 5 食と地球温暖化
      • 気候変動は食の危機
      • 旅する食べもの――フード・マイレージ
      • 食生活が地球を変える
    • 6 食と学び
      • 広がれ!!“弁当の日”
      • 食感表現の豊かな日本語
    • 7 食の未来
      • 食問題を解決する30の方法
      • 和風は河谷いっぱいに吹く
      • もっと知りたい たべものがたり
  • あとがき  3つの“わかる”
  • たべものまんが
    ①お米を食べよう ②菌はシェフ!? ③温暖化の怖さ ④食料が入ってこなくなると……

寄稿者

足立 直樹(あだち・なおき)

㈱レスポンスアビリティ代表取締役
サステナビリティ・プランナー

1965年生まれ。東京大学理学部、同大学院で生態学を学び、理学博士号を取得。95年から国立環境研究所で熱帯林の研究に従事。マレーシア森林研究所(FRIM)勤務の後、2002年にサステナビリティ・プランナーとして独立。06年、(株)レスポンスアビリティ設立。企業と生物多様性イニシアティブ(JBJB)事務局長兼任。個人ブログ サステナ・ラボ

篠原 信(しのはら・まこと)

独立行政法人農業・食品産業技術綜合研究機構
野菜茶業研究所 野菜IPM研究チーム

1971年、大阪府生まれ。京都大学博士(農学)。専門は有機養液栽培技術、微生物情報伝達物質クオルモンによる病源菌抑制技術。92年から専門とは別に日本の食料問題の調査を開始し、2003年にレポート「日本は何人養える?一問一答」を作成。08年に最新レポート「石油で作るコメ、切迫している日本の食料危機」を公開。

竹下 和男(たけした・かずお)

香川県綾川町立綾上中学校 校長

1949年、香川県生まれ。香川大を卒業後、県内の小・中学校、県教委で勤務。食育実践「子どもが作る“弁当の日”」で農林水産省大臣賞受章。“弁当の日”で子どもが育つ環境を整えようと全国で講演活動を続けている。著書に『“弁当の日”がやってきた』、『台所に立つ子どもたち』(ともに自然食通信社)。

中田 哲也(なかた・てつや)

農林水産省 ほくりくのうせいきょく企画調整室長

1960年、徳島県生まれ。82年岡山大学を卒業後農林水産省に入省。2001年から農林水産政策研究科でフード・マイレージに関する研究に従事。その後、関東農政局消費生活課長、九州農政局消費生活課長を経て08年4月から現職。著書に『フード・マイレージ――あなたの食が世界を変える』(日本評論社)、共著に『食べ方で地球が変わる』(創森社)がある。

早川 文代(はやかわ・ふみよ)

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
食品総合研究所 主任研究員

兵庫県生まれ。博士(学術)。専門は調理科学、官能評価学。お茶の水女子大学家政学部卒、同大学同大学院修了。同大学院助手、上海水産大学客員助教授等を経て2004年より現職。食べるときの人の口中感覚を数量化する研究に従事している。その過程で「言葉」の重要性に気づき、食感表現の研究にも意欲的に取り組んでいる。著書に『食語のひととき』、『食べる日本語』(ともに毎日新聞社)。

藤田 智(ふじた・さとし)

恵泉女学園大学 人間社会学部 准教授

1959年、秋田県生まれ。宮沢賢治にあこがれて岩手大学農学部卒業、岩手大学大学院博士課程単位取得退学。恵泉女学園短期大学助手、専任講師、助教授を経て現職。専門は、野菜園芸学、農業教育学、育種学。最近は市民農園での野菜作りの指導・普及に情熱を傾けている。主な著書に『キュウリのトゲはなぜ消えたのか』(学研新書)、『野菜づくり大図鑑』(講談社)など多数。

企画監修

山本 良一(やまもと・りょういち)

東京大学 生産技術研究所 教授

東京大学工学部冶金学科卒業。工学博士。環境経営学科会長、環境プランニング学会会長、エコマテリアル研究会名誉会長、国際グリーン購入ネットワーク会長など、多くの要職を兼務。著書に、『温暖化地獄』(ダイヤモンド社)、『地球を救うエコマテリアル革命』(徳間書店)、『戦略環境経営エコデザイン』、『サステナブル・カンパニー』などのほかに、『1秒の世界』、『世界を変えるお金の使い方』、『気候変動+2℃』(ダイヤモンド社)の責任編集を担当。本シリーズ『いきものがたり』、『みずものがたり』では企画監修をつとめる。

編著

Think the Earth プロジェクト

「エコロジーとエコノミーの共存」を基本テーマに2001年に発足したNPO。世界中の企業やNPO・クリエイヤーを結び、環境問題や社会問題への無関心や、あきらめの心を減らし、少しでも多くの人が地球のことを考え、行動するためのきっかけを作り出している。地球時計「wn-2」、携帯アプリ「live earth」などのほか、手がけた書籍に、写真集『百年の愚行』(紀伊國屋書店)、『えこよみ』(ブロンズ新社)、『1秒の世界』、『世界を変えるお金の使い方』、『気候変動+2℃』、『いきものがたり』、『みずものがたり』(ダイヤモンド社)などがある。ウェブサイトでも日々、地球に関するさまざまな話題を掲載中。

コメント

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