人工知能

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』|人類の新ステージ?

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。連休中に西洋音楽史の本を読みまして、「音楽」って普遍的で大昔から変わらないものだとばかり感じていましたが、今私たちが馴染んでいる「音楽」は意外と新しいものなんだと知りました。西洋ではかつて音楽は神様の世界のもので、禁欲的。今の私たちにとっては「全然楽しくない」感じです。ポピュラー音楽に至っては、20世紀、第一次大戦が終わってからのもの。もっと言えば、我々が慣れ親しんでいるのは「録音音楽」です。レコードとプレイヤーで楽しむことを「音楽」と呼ぶのは、歴史の中ではかなり特殊な環境です。

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

今当たり前すぎて疑うこともない価値も、意外と新しいもので、歴史が浅いものってあるんですね。「不変」だと「信じていた」というのは、もう信仰です。「ああ、私は近代を信仰しているのか」と気づき愕然としました(;’∀’)

今回紹介するのは『AIとBIはいかに人間を変えるのか』という、これから訪れる「人類の新しいステージ」を考える内容の本です。現在、先進国は軒並み伸び悩み、成長できずにもがいています。景気対策を打っても国内の格差は広がるばかりで、国の中が貧しくなっています。現状を打破するためには、今の社会の形を根本から変える必要があるのではないか? そこで注目されているのがBI(ベーシックインカム)です。

また、AI・人工知能の技術的な進歩により、人間の働き方の変化が期待されています。また、男女同権により女性の社会進出も進んでいます。後進国だった国々は経済発展しています。インターネット網は地球を包み込み、インフラのない土地にも等しく知識や教育が行き渡っています。世界は変わっています。さて「人類の次のステージ」はどのようなものなのでしょうか。

AI、BIとは

AI・人工知能もBI(ベーシックインカム)も、どちらも近年よく見聞きする言葉です。AIとBIについて触れつつ、このAIとBIが合わさって、もたらされる「未来」を考えます。

AI・人工知能とは

まずAI・人工知能とは。1930年代コンピュータの登場した当時からAIの登場が構想されていました。しかし二度ののAIブームは合ったものの、AIの冬の時代も長く、順風満帆とは言えませんでした。2012年にGoogleが「ネコを判断できるAI」を開発し、一躍有名となりました。その頃から「ディープラーニング」によるAIの進歩が注目され、現在は第三次AIブームといったところでしょうか。

近年、AIが飛躍的に進歩したのは、ビッグデータが扱えるようになったことと、インターネットの普及により膨大な数の写真や映像、データがインターネットにアップロードされるようになったことが影響しています。

今後、AIの進歩により、人間の仕事がAIに取って代わられると話題です。一方で、AIの進歩によって新たに生まれる仕事もあるでしょう。今の子どもたちの半分以上は将来、今は存在していない職業に就くと考えられており、感覚的にもなっとくできます。

コンピュータが人間の仕事の多くを引き受けるなら、人間はより「人間らしい」活動に集中することができます。

BI(ベーシックインカム)とは

BI(ベーシックインカム)は、経済成長が軒並み頭打ちしている先進国の、現状打破策として注目されています。先進国では、かつてのような経済成長が起こらず、経済対策を打っても国内の貧富の差が拡大してしまうジレンマに陥ってます。

BIは「健康で文化的な最低限の生活を営む」ために国民全員に現金で与えられる基礎的(Basic)給付(Income)で、政治学では“生存権所得”とも言われている。このBIは、様々な社会保障制度を一元化できる上に、給付漏れが起こらず、受給者にも理解しやすいシンプルな制度であることが評価されている。

p.104

BI(ベーシックインカム)は実験的に導入される例も登場し、貧しい人たちが前向きに人生設計を考え、豊かに生きようとし始めるなど良い結果があり、期待されています。

BI(ベーシックインカム)の良いところは「シンプル」。本書では、全ての国民に月8万円を現金で給付することが想定されています。すると、年金制度や健康保険、生活保護などの社会保障が一元化され、ムダなコストも削減できます。なにより、ややこしい手続きが不要になることで、役人の数を減らすことができます。

財源として、まず国の社会保障をシンプル化することで浮いたお金を財源に回します。また税率を引き上げ、国の収益を増やします。本書では消費税を18%に引き上げても、毎月8万円ベーシックインカムを受け取る額の方が多く、貧しい世帯にもダメージはないと計算されています。

BI(ベーシックインカム)の導入を阻んでいるのは官僚たちです。ベーシックインカムが導入されると、社会保障に関わる官僚たちの仕事がなくなってしまいますから、「ベーシックインカム的」な制度は遠ざけられています。

より「人間らしい」活動を

AIの到来により、コンピュータが人間の代わりに働く未来では、人間は「より人間らしい」仕事に集中することができます。

またBI(ベーシックインカム)導入後の未来では、「死なないために働く」という労働から解放され、人々は「豊かに生きるために働く」ようになります。今、嫌々やりたくない仕事をしている人も、ベーシックインカムが導入されれば今の仕事にこだわる必要はなくなり、豊かに生きるための人生設計を考え始めるでしょう。それはつまり「より人間らしい」人生を生きようとすることです。

AIとBIの未来は「より人間らしい」世界がやってくると想定されます。これは、かつて農業革命や産業革命によって人類が「進化」したように、AIとBIが人類を「新たなステージ」へと導くものではないか?と考えられます。

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

「豊かに生きる」ことができますか?

はてさて、AIとBIの未来は明るい!みたいな感じがしますが、問題は命が保証され、お金も保証されたとき、ハッと気が付くのです。「豊かに生きる」ことってどんなこと? もしAIが面倒な仕事を引き受け、BIで最低限の生活の保障がなされているとして、あなたはどう生きますか?

今、「楽しむ」という言葉が乱用されているように感じます。スポーツ選手も、「試合を楽しみます」ってインタビューで答えていますし、学校の勉強も「楽しんで学ぶことが良いこと」のように語られます。プライベートな時間はまるで「楽しくないと生きている意味がない」くらいの勢いで、ライブやレジャーや、食事やショッピングなどの予定を詰め込んでいる人がたくさんいます。

みんな身づくろいも小奇麗で、清潔感のある爽やかな人ばかりになりましたね。

もしかしてすでに私たちの社会は「死なないように生きる」時代は終わり、「楽しく生きなければならない」という価値が到来しているのではないでしょうか。しかもそれは強迫観念的に執着して。AIとBIによって人類が新しいステージへ進んだなら、私たちは今以上に「豊かに生きる」ことこそが「人間らしさ」であり、「お金の価値ではない豊かさを生きなければならない」時代が到来するとも考えられます。

BIは単に「働かなくていい」「怠け者が増える」政策ではなくて、もしかして「結構キツい」時代が来るのかもしれません。今はほら、連休に海外旅行へ行ったInstagramドーン! 彼氏にプレゼント貰ったドヤァ。ママにバーキン買ってもらったFacebook投稿いいね! なんかをしてるだけで満足できるけど、「新しい時代」はそれじゃ豊かじゃない。「お金の豊かさじゃない豊かさ」をアピールできないといけない。

新しい時代は。「センス」とか「才能」とか「オシャレ」とか「ステキ」とか「可愛い」「美形」とか、そういう価値が重要になるんじゃないのかな? 「ダサイ奴」は生きにくい時代になってしまうのだ。はてさて、「ステキ」に生きられるように、生涯邁進し続けなければならない人生、〈楽勝〉な人と〈ムリゲー〉な人に、パッカリ分かれるんじゃないかしら。

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『仕掛学』|思わずやってしまう「良い仕掛け」をつくる

こんにちは。あさよるです。学生時代デザインを学んでいたんですが、社会人になってから新たに工学や生理学を学んだとき、これってデザインに必要な知識だったんだなあと気づきました。感覚的に仕事をするんじゃなく、意味があって、理由があって、言葉や図解で説明できることで、より頭の中がクリアになった気がします。

今日手に取った『仕掛学』は、デザインをやってる人ならよく見知っているデザインの成功例がたくさん紹介されています。しかし、本書はデザインからの視点ではなく、工学からのアプローチで「良い仕掛け」を紐解いてゆきます。

「仕掛学」とは

本書『仕掛学』では、「思わずしてしまう仕掛け」が多数集められ紹介されています。また、仕掛の分類がなされ、新たな仕掛けをつくる助けとなります。

「仕掛け」とはどのようなものなのか、例を挙げるとよくわります。例えば、

  • 男性用トイレに「的」をつけることで、汚れが防止される仕掛け
  • 子どものお片づけを促す仕掛けとしては、おもちゃ箱の上にバスケットゴールを設置して、ゴールにおもちゃを投げ入れると勝手に片づいてゆく仕掛け
  • エスカレーターより階段を使うように促す仕掛けでは、階段をピアノの鍵盤に見立て、白と黒の段を作り、踏むと音が鳴ります
  • ゴミ箱にゴミを入れると「ヒュー」っと物が落ちてゆく音が聞こえ、数秒後「ドーン」と地面へ落ちる仕掛け。「世界一深いゴミ箱」で動画検索してみてください。わざわざ周りのゴミを拾ってまで捨てに来る人がいたそうです

少しのアイデアを加えることで、人の行動を変えて、違う結果を引き出すデザインが「仕掛学」として紹介されているのです。

本書では「仕掛け」を3つの要素で定義しています。

本書では、問題解決につながる行動を誘うきっかけとなるもののうち、以下の3つの要件からなる「FAD要件」(それぞれの要件の英語の頭文字をつなげたもの)を全て満たすものを「仕掛け」と定義する。

・公平性(Fairness):誰も不利益を被らない。
・誘引性(Attractiveness):行動が誘われる。
・目的の二重性(Duality of purpose):仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる。

p.36-37

良い仕掛けと悪い仕掛けがあります。

「良い仕掛け」と「悪い仕掛け」の区別は簡単である。仕掛ける側と仕掛けられる側の双方の目的を知ったときに「素晴らしい、こりゃ一本取られた」と笑顔になるのが良い仕掛けであり、「だまされた、もう二度と引っかからないぞ」と不快にさせるのが悪い仕掛けである。

p.35

仕掛学では、良い仕掛けを目指します。ただし、良し悪しの境目は曖昧です。例えば商品の陳列を工夫して物を売る努力はどのお店でもなされていますが、消費者を騙して不利益を与えているわけではないし、不愉快にも感じません。

「仕掛け」の反応の強弱と、飽き

また、その仕掛けに対して、人の反応の強弱があります。それを使う人にって「得られる利便の大小」と「行動を変えるための手間・負担の大小」の兼ね合いで、仕掛けによって得られる結果が変わりません。

先の例ですと、トイレに的を作るのは、使う人の利便性は低いですが、行動する手間も小さい。階段をピアノにするアイデアは、使う人の負担の利便は小さく、負担もエレベーターを使うより大きい。

また、人々はそのうち仕掛けに飽きてしまいます。

「仕掛けもどき」に注意

地面に足跡を書くことで、人の行動を導く仕掛けはよく用いられます。しかし本書では、足跡の失敗例が紹介されていました。それは免許の更新で訪れた免許センターにて、足跡の位置で立って待つように指示されているのですが、みんなその足跡を踏みません。なぜなら、その足跡が紙に手書きされたもので、なとなく踏みつけるのに抵抗があったのかもしれません。

一見すると効果のある仕掛けのようでいて、仕掛けとして機能をしていない「仕掛けもどき」もあるので注意が必要です。

人工知能の研究から始まった

本書で「仕掛学」として取り上げられる事例は、デザインの勉強をした人なら馴染み深い例でしょう。本書の著者の松村真宏さんは人工知能の研究者であり、工学の視点から「仕掛け」が考察されています。

デザインの視点と「仕掛学」との違いは、「良い仕掛け」「悪い仕掛け」と、「良いデザイン」「悪いデザイン」の違いを見ればわかりやすいかもしれません。「良い/悪い仕掛け」は利用する人にとって利便があるか否かで分けられます。一方で「良い/悪いデザイン」はデザインをした人が狙った通りに人を行動させられるかが問われます。似ているようで、本質的に少し違います。

なぜ人工知能の研究から「仕掛け」へ?

著者は人工知能の研究から、日常空間にあふれている仕掛を集めているうちに「仕掛学」が生まれたと紹介されています。コンピュータはどんなに高性能でも、今、目の前にある事象をデータ化できない限り、扱うことができません。人間はデータがなくても鳥のさえずりや道端の花に気づきます。

必要なのはデータでもコンピュータでもなく、生活空間の魅力を魅力に気づかせる「仕掛け」である。

仕掛けは見えているのに見えていない、聞こえているのに聞いていない生活空間の魅力に気づかせるための仕組みである。仕掛けによって計算機で扱える世界の外、つまり日常の生活空間を研究対象にできるようになる。

p.11

コンピュータは目の前の事象を扱えませんが、人間は目の前の事象に「仕掛け」によって気づく仕組みを持っています。工学の視点から世界を観察し、人間の認知と行動を促す例を集めているうちに、その「仕掛け」が応用可能だと気付いたと経緯をまとめておられます。この経緯もデザインとは異なっています。

デザイン・人間工学を知りたい人に

本書『仕掛学』では「仕掛け」が分類され、それぞれの特徴について記述されていて、デザイン出身の あさよるにとっては興味深いものです。デザイナーとして仕事をしている方にも工学出身もいるし、あさよるも個人的に工学や人間工学についての本を読んだり勉強すると、「そのデザインのどこが優れているのか」と考えるとっかかりになって良いのです。

感覚的にデザインをしている人にとっても、こうやって良いデザインを分類して、それぞれを系統だてて考えることで、すでにあるデザインを認識しやすくなるし、また新しいデザインを考えるときの助けになるでしょう。

また、「良い仕掛け」「悪い仕掛け」の定義も面白いと思いました。人工知能の研究から始まっていますから、「物を売る」とか「指示を間違えない」ことではなく、使用する人にって「利便があるか」が重要なんですね。

軽く面白く読める内容で、「仕掛学」の研究テーマに触れられます。

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『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』|AI苦節60年…

『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』イメージ画像

こんにちは。あさよるです。近年、「AI」や「ディープラーニング」「人工知能」という言葉をよく見聞きしますが、正直なころ「それ、なに?」と何度も聞き返してしまう あさよるです。あさよるネットでも「AI」「ディープラーニング」「人工知能」を扱った書籍を紹介していますが、実はまだ頭の中で上手く整理されていなかったりする(;’∀’)>

ということで「14歳から」という、好奇心旺盛な中学生の夢が広がるようなAIの話が収録された『14歳から知っておきたいAI』を手に取りました。目次や索引も含めて全96ページの薄い本ですが、内容は濃い。

『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』イメージ画像

図解でわかる 14歳から知っておきたいAI | インフォビジュアル研究所 |本 | 通販 | Amazon

全ページカラーで、図解に多くの紙面が割かれています。本書のカラーの図解は、情報量が多く、読み込む面白さがあります。テキストと図解とを突き合わせて理解を深めましょう。学習の助けになるでしょう~。

あと30年でAIは人間を超える!?

本書『図解でわかる14歳から知っておきたいAI』は、その名の通り中学生以上なら誰でもわかるAIのお話。昔でいう「サルでもわかる」系でしょうか。

AIの歴史はまだ60年ほどのもので、90年代にはAIの冬の時代がありました。そして2000年代に入って「ディープラーニング」というコンピュータの学習方法が確立され、現在注目を集めています。そのAIは、あと30年もすれば人間の頭脳を超えると多くの知識人が予測しています。

さてこれは「もう30年で」なのか「まだ30年で」なのか微妙です。なぜなら、1965年アメリカの大学で科学者たちが「このままコンピュータのプログラム高度化すれば人間の頭脳を持つようなコンピュータが登場する!」と楽観的な予測をしたのですが、なかなか実現しない!

科学者は、人間の頭脳が持つ世界理解という無限の知識量の前に、茫然と立ち尽くすことになります。(p.9)

たとえば人間は、乳児でも「ねこ」を認識し、それが生き物で、どういうものなのか知り、猫についての概念を学んでゆきます。

同じことをコンピュータにさせたとします。「ねこ」という名称は記号化できても、それは実際の猫と関係ありません。コンピュータにネコという生物の概念をもたせるためには、生物としての猫に関するあらゆる属性を記憶させる必要があります。それは、この世界の全ての知識を与えることでもあります。そこには連綿とした知の網の目があり、枠(フレーム)がありません。それに対し、AIは枠名でしか処理できないため、これをAIの「フレーム問題」と呼ぶようになりました。人間なら乳児でも簡単にできることが、コンピュータには果てしなく困難であることを、AI研究者の名にちなんで「モラベックのパラドックス」とも呼び、現在にまで続くAI研究の難問として、いまだ解決していません。

p.8-9

1956年科学者たちの楽観的な空想から始まったAIの開発は、早々から暗礁に乗り上げます。AIの苦節60年の歴史を知り、これからのAIの展望を考えるのが、本書『14歳から知っておきたいAI』のテーマです。

AI苦節60年……冬の時代……

AIの歴史は順風満帆とは程遠いものです。「人間の知能を持たせるには道は長い……」判断され、まず、70年代にはコンピュータが得意な専門分野を伸ばそうと試みられました。それをエキスパートシステムと言います。コンピュータが得意なこと、それは「推論」と「計算」。

1980年代は、このエキスパートシステムの大ブームが起きます。全世界でエキスパートシステムを開発するベンチャー企業が誕生し、何千ものシステムが開発されました。事務計算、販売支援、建設管理、物流、天気予報、工場生産設備などなど、その応用も産業界全体に広がりました。
しかし、ここでも同じ問題が生じました。コンピュータはルール化された情報しか処理できないというAIの二度目のつまずきです。(中略)

人間の思考は、無数の例外の集積ともいえます。厳密なルールの外側に存在する多様な質問に、このシステムは有効な答えを返すことができません。産業界の期待が大きかった分、その失望も大きく、AI研究への反動も深刻なものでした。

p.10-11

コンピュータが産業業界での活躍を大きく期待されていたにも関わらず、人間のニーズに応えるコンピュータが思ったように作られず、失望されていしまいます。その後、1990年代はコンピュータの冬の時代を迎えます。1980年代後半から90年代にかけて、コンピュータ研究の実績をとにかく作ろうと、専門分野に徹して課題研究が始まります。このとき、画像認識、機械翻訳、ロボット工学、音声認識など、技術が進歩します。

パーソナルコンピュータが登場し、CPUの性能向上、低価格化により、個人がコンピュータを所持できるようになりました。1995年インターネットと接続できるWindows95がリリースされ、インターネットの利用者が増えることで、より多くの情報をコンピュータ開発に使えるようになりました。

AIの研究者たちは、それぞれの現場でAIの推論ロジックの高度化を模索していました。彼らを導いたのは、アメリカの計算機科学者ジューディア・パールが提唱した確率論的AI推論ロジックでした。極めて大雑把にいえば、正しい結論に至るために論理的に思考するのではなく、確率的なグループ分けを繰り返し、その分類の課程で正解に最も確率的に近い結論に絞り込んでいこう、というものです。
このAIの推論ロジックは「機械学習」と呼ばれています。

p.12-13

ついに機械学習をするAIの登場します。医療、株式、銀行、音声認識、財務管理など、コンピュータは活躍しています。そして「ディープラーニング」の登場により、AIが再び社会の注目を集めます。人間の脳のネットワークが発見され、脳細胞のニューロンを模したネットワークをコンピュータでつくられました。

ディープラーニングの研究が促進される頃、爆発的にインターネット上にビッグデータが集積されはじめました。ついに2012年GoogleのAIがYouTubeの動画から「ネコ」の認識に成功します。2014年にはGoogleが独自開発した自動運転車が実用段階に入ります。2017年にはFacebookのAI同士が会話を始めました。

日本では静かにロボット革新が起こっていた

一方、日本では70年代から静かに変革が起こっていました。1970年代から、産業用ロボットとともに、人間型のヒューマノイドロボットの開発が進んでいたのです。日本では1980年代には、物作りロボットの最盛期を迎えます。2000年には二足歩行ができるロボットASIMOをHONDAが発表し世界を驚かせました。

それを受け欧米では、人間型の「二足歩行ロボットでは日本に敵わないだろう」と、別の道を模索され始めます。欧米ではソフトウェアの開発に重点が置かれました。こうして、日本の人間型ロボットと欧米のソフトウェアが合わさって、新しい技術の到来が待たれます。

ディープラーニングの研究はアメリカ発でした。これから日本が世界でどんな活躍をするのでしょうか。

鉄腕アトムとターミネーター

『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』イメージ画像

日本では人間の形をしたヒューマノイド型ロボットの研究がなされて。2000年HONDAが二足歩行ができるロボットASIMOを世界に発表します。ASIMOの開発はたった一言「アトムをつくれ」というものだったそうです。1986年に下半身のみの歩行ロボが完成し、1996年にやっと人間の形になります。そして2000年にASIMOが登場し、その後も精度は上がっています。しかし、ASIMOはAIロボットではありません。

日本ではASIMOのモデルにもなった手塚治虫『鉄腕アトム』を筆頭として、ロボットは人類の友だち、仲間として描かれます。藤子・F・不二雄『ドラえもん』もそうですね。しかし、欧米では「ロボットは敵」に描かれることが多かったっそうです。その典型が『ターミネーター』。ターミネーターは、未来の世界でロボットたちが人類をしようと反乱を起こし、過去の歴史改ざんのために送り込まれるのがアーノルド・シュワルツェネッガー演じる「T-800」なのです。ということで、欧米のロボットはメカが剥き出しでおどろおどろしい姿をしてることも多いのです。

日本と欧米の違いは、信仰の違いによってもたらされているのではないかと紹介されています。

アメリカの研究者が、危険な作業を行うロボットが開発なされますが、アメリカでは導入が進みませんでした。が、日本では大歓迎されます。この違いは何でしょうか。

 アメリカの人々が産業用ロボットに拒否感を露わにしたのは、欧米社会の規定にあるキリスト教の影響がありました。神を絶対の善とし、この世の全ては神に創られた被造物であり、人間は神との契約との中でこの地上の主人として、他の生物を管理する役割をもつ。このような世界観をもつ人々にとって、被造物である人間が、命に等しいものをつくことは最大の罪悪です。この世界観は、欧米社会に古くから、人間とロボットが敵対する物語を生み出しました。

p.36

古くはフランケンシュタイン、近年ではターミネーターが欧米のそれでした。人は、この世の主人としてロボットと戦う使命があると考えるのです。

一方で、東洋的な思想では、この宇宙には様々な命があり、それらに優劣はありません。命は等しく尊いので、ロボットも大切にされるのが、東洋的ロボットの描かれ方です。

西洋と東洋の思想の違いが、ロボットの姿かたちや役割まで変えているとは、面白いですね。

未来はこれから作られる

さて、人工知能、AIの技術の展望は明るいのでしょうか。あさよるの感想は「想像よりも難しそうだなあ」というものです。現在、人工知能が持て囃されていますが、流行はその内忘れ去られてしまうでしょう。しかし、一歩一歩着実に技術革新が起こっているのは事実です。

本書は『14歳から知っておきたいAI』とタイトル通り、10代の人が読んで、自分の進むべき道を知るきっかけになる本だと思います。コンピュータの技術は、意外過ぎるくらいに歴史は浅く、冬の時代も長く、実用化されたのは意外と最近。コンピュータがなかった時代、人々がどうやって生きていたのか知ることも、また未来を考えるヒントかもしれません。

以下余談ですが、あさよるが子どものころ、NINTENDOの初代ファミコンのその名も「ロボット」という玩具で遊んでいた記憶があるのですが、これはAIだったの? なんともレトロな風貌だなあw

これ!これ!アマゾンで売られてたwあさよるの初ロボット体験は、この任天堂のロボットでした。

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『トコトンやさしい人工知能の本』|目覚まし前にエアコンつけといて

こんにちは。Google Home が欲しい あさよるです。Amazon Echo のレビューと読み比べていて、 コンセプトの違いがあるっぽくて、あさよるの場合は今のところ Google Home が先に欲しいかな~。

音声入力の人工知能は、今は siri ちゃんに検索やアラームをセットしてもらうくらいですが、これから対応してくれることが増えると楽しいかも。「鍵持った?」とか「お風呂焚いといたよ」「今日仕事じゃないの?」とか気を利かせて欲しいですな。おっちょこちょいの あさよるは待望しております。

と、AIに夢を膨らませていますが、AI(Artificial Intelligence/人工知能)ってなんだ? というワケで『トコトンやささしい 人工知能の本』を手に取りました。この「トコトンやさしい」シリーズお気に入りです(^^♪

人工知能ってなんだ?

人工知能という言葉の定義はなく、その時代やその人によって違った使われ方をしています。概ね「コンピュータが人間のように賢い動作をする」ことを言いますが、時代によって「賢い」の基準も変わっています。昔は数式やパズルを解くだけで「すごい!」ってなもんでしたが、近年では「コンピュータが人の仕事を奪うかも!?」なんて言われてます。近年の人工知能ブームは、コンピュータのアルゴリズムでは難しいと言われていた人間の「直感」や「感覚的」なものが、克服されつつあるからです。

どうしてコンピュータが思考ができるかというと、「論理的思考」は数式で表すことが可能だからです。こんな記述もあります。

電子回路と似ているのが神経の回路です。脳では神経細胞同士が互いに結びついて信号を送り合い、その過程で「かつ」や「または」、「ではない」といった論理的な変換をしていきます。

p.14

機械、ロボットの歴史も簡単に。古代エジプト時代には、空気の熱膨張を利用した「自動ドア」「自動販売機」がありました。18世紀にエンジンの調速機構が登場し、19世紀には複雑な模様を折れる織機が登場します。20世紀にはレーダーによって敵の飛行機の位置が分かるようになりました。20世紀後半にには、コンピュータが計算機から思考する人工知能へと主題が変わりました。ロボットの歴史が古代エジプトから始まるのもビックリですが、人工知能の歴史は超浅いんですね。

1950年代が探索や推論といった人工知能の基本的なコンセプトを提示する時代だったとすれば、60年代は実際的な問題への応用をはじめた時代、さらに70年代はその成果を知識工学として確立させた時代と言えます。

p.20

人工知能の開発は順風満帆ではなく、80年代90年代は冬の時代だったそうです。「人工知能ができないこと」がクローズアップされた時代でもあります。研究が進まなくなったのは「データ不足」。しかし、この問題はインターネットの普及で解決します。インターネット上に無数の画像やデータがあるからです。

2010年代には人工知能ブームが巻き起こります。

 第1の要因は、地道な研究の進展です。冬の時代でも研究は細々と続けられていて、1997年にはチェスで人間チャンピオンに勝つといった成果がありました。デジタルカメラが人の顔を認識できるようになったという進歩も驚異的です。
第2の要因は、インターネットが巨大なデータをもたらしたことです。機械学習を成功させるには、学習の手本となるデータの数が勝負です。SNSでの文章や写真、ネットショッピングの購買履歴、電車の乗車履歴など、多種多様で膨大かつ日常生活にまつわるデータが急に出現したのです。(中略)
第3の要因は、人工知能を必要とする巨大なネット企業の出現です。(中略)直接的な商業的価値を生み出すことが人工知能に期待されるようになりました。

p.24

人工知能の研究は、意外と人間くさい要因で発展しているんですね。人工知能の研究があり、そこにネットの普及、次いでネット巨大企業登場によって、研究が大きく進んだ。現在は商業的な人工知能に突き進んでいます。ここでは、個人情報の取り扱いという倫理的な問題も絡んできます。たとえ匿名であっても、購買傾向や発言の特徴から個人特定も可能ですから、ますますナイーブな問題もはらんでいます。

人工知能のネガティブな言説としては、「人工知能の台頭で人間の仕事が奪われてしまう」というものがありますが、その点は著者の辻井潤一さんは楽観的です。コンピュータができる仕事は人工知能に任せてしまえば、あいた手でより〈人間らしい仕事〉ができます。逆にいうと、現在は煩わしい作業に労力を奪われていますから、そこから解放されるのです。

人工知能について知る!

以上がだいたい第1章の内容です。

第2章は「人工知能を体感してみよう」という章で、人工知能がどのような方法で「思考」をするのかを、図解付きで簡単に解説したものです。人間にとっては子どもできる簡単な判断が、人工知能ではなかなか判別がつかないことも多いようです。例えば、犬と猫の写真を見せて、猫を選ぶということも。

第3章では「人工知能を支える基礎技術」として、人工知能が「思考」をするための「やり方」を紹介したものです。例えば、似ている者同士を分類したり、因果関係の確立ネットワークを組んだり、類似性を見つけ出したり、ネットワークの重要性を見つけ出したり、「傾向」を読んだり。こちらも、人間が思考するときにやっている事柄を、人工知能に当てはめています。

第4章はいよいよ「人工知能はどう応用されているのか?」です。ノイズ交じりのデータから隠れたニーズを見つけ出したり、例えば料理のレシピを読んでなんの料理か判断したり、画像を解析したり、健康管理を人工知能にお願いしたり。

第5章は「ディープラーニングはなにがすごいのか?」で、ディープラーニングの考え方が紹介されます。ディープラーニングは世界をどう変えるのか。もちろん、ディープラーニングの弊害もあるでしょう。このへんは、まだまだこれからの分野っぽいので楽しみです。

大人の事情な人工知能

人工知能の変遷や、現在の人工知能の使われ方を見ると、なんだかものすごく人間くさい。人の営みに寄り添っていると言えばそう。現在の商業的に特化している様子も、その時代その時代のニーズを反映していると思います。

また、人工知能の思考法を見てゆくことは、人間がどのように思考しているのか考えることでもありそうです。電子回路と、脳神経回路のつながり方が、具体的に似ているとは知りませんでした。

また、巷で語られるような「人工知能が人間を凌駕する」というようなターミネーターの世界は、今のところはまだ来てないみたい……? 著者の辻井潤一さんの考える人工知能は、人類を滅ぼす恐ろしいコンピュータ像ではなく、「人類の良き相棒」である人工知能であって、これかの技術の発展が楽しみです。

さて、いつになったら「ガスの元栓閉めた?」「お味噌汁温めといたよ」と、あさよるの世話をしてくれる人工知能が現れるのでしょうか。むしろガスは勝手に切れる仕様になって、味噌汁は人間が作り続けるのかもしれません。

あと、繰り返しの作業は人工知能に任すとして、「人間にしかできない人間らしい仕事」ってなんだろう? 意外とハートフルなほっこり系の話だったりする?

関連本

『人工知能は人間を超えるか』/松尾豊

『コンピュータが小説を書く日 』/佐藤理史

『人は感情によって進化した』/石川幹人

『トコトンやさしい染料・顔料の本』/中澄博行,福井寛

『トコトンやさしい水道管の本』/中澄博行,福井寛

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『コンピュータが小説を書く日 』|ショートショートで星新一賞チャレンジ!

以前、『人工知能は人間を超えるか』という本を読み、人工知能、AIに少しだけ興味がわきました。

昨今、ニュースでもAIの話題はよく見聞きしますし、「コンピューターが人間の仕事を奪う」なんて言って、将来消滅してしまう職業の一覧など、話題になりますよね。

ほんとのところ、どうなのよ!?

『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

コンピュータは文章が読めない

コンピュータに小説を執筆させ、文芸賞・星新一賞受賞を目指す!名古屋大で人工知能のプロジェクトが始まりました。

まずは、星新一さんのショートショートを分析したり、自分たちで簡単な小説を執筆し、人はどうやって文章を作っているのか分解してゆきます。

意外なことに、コンピュータは小説を書くことよりも、小説を読むことが苦手なようです。「文脈を読む」とか、暗示を読み解くとか、ニュアンスや、人間が経験則で知っていることを理解するのがムズカシイよう。

例えば、気温が何度になったら暑い/寒いのかは、人間にとっては感覚的で説明不要の事柄も、コンピュータにはわかりません。

『コンピュータが小説を書く日』では、小説を書くための四苦八苦にページが割かれており、非常に興味深いのですが、文章を読む、理解するという、我々が何気なくやっている動作を、説明することは困難なのだと知りました。

まだまだ道半ば

名古屋大の佐藤先生のチームは、人工知能が東京大学合格を目指す「東ロボくん」の開発もしています。

人工知能に小説を執筆させる「作家ですのよグループ」と「東ロボグループ」は、どちらもまだまだ道半ば。

まさに今、なうで進行しているプロジェクトですから、『コンピュータが小説を書く日』を読んでいても、臨場感ありでワクワクします。

ただ、巷で語られるような「意思を持つロボット」「人類を凌駕するコンピュータ」みたいなイメージとはまだまだ程遠い様子。

テクノロジーを悪者に語られるときに使われる、コンピューターのテンプレって、フィクションの話なのね……。

文章を紡ぐって、どういうこと?

『コンピュータが小説を書く日』を通じて、普段自分がどうやって文章を紡いでいるんだろう?

どうやって文章を理解しているんだろう?

コンピュータにプログラムするためには、人間が人間らしい活動をどのように行っているのか、知る必要があります。人類が自らを研究対象としているんですね。

完成した小説(本書にも添付されています!)を星新一賞に応募すると、事務局から問い合わせが来ました。

1.最終的に文章を書いたのは、人間か、それともコンピューター(人工知能)か?
2.創作過程において、人工知能が果たした役割は?

どう答えればいいか、私は頭を抱えました。というのも、この質問には、いかようにも答えられるからです。

p.152

小説を出力したのはコンピュータであることは揺るぎない事実です。しかし、そのアルゴリズムを入力したのは人間です。

コンピュータが執筆したとも言えるし、アルゴリズムを人間が作ったとも言えます。

コンピュータープログラムは、無から有を作り出すことはできません。ですから、テキストを出力するためには、

・それをそのまま記憶しておくか、あるいは、
・より小さな部品から合成するか

のいずれの方法しかありません。

p.154

完成した小説を用意し、それをバラして置き換え可能な部品を用意し、文として成立するように条件付けをします。そして、部品をたくさん用意すれば、それらの組み合わせで膨大な物語を作れます。

これだと、コンピュータが小説を「書いた」とも言えるし、「書いていない」とも言えます。

細かな話は本書を読んでいただくとして、実際に文章を生成する様子が体感できるんですよ!

実際にweb上で文章を作成できます。面白いので、ぜひリンク先もご参照ください。

文章作成の様子は、YouTubeでもデモンストレーションが閲覧できます。

これらはたぶん、本書『コンピュータが小説を書く日』を読んでから見ると、胸が熱くなります。

外国語で小説を執筆できるか?

人工知能に小説を書かせるプロジェクト「作家ですのよ」。想像以上に大変なことっぽい。

こうやって、あさよるも毎日つらつらと文章を書いてネットに垂れ流しておりますが、それを「どうやってやっているのか?」を説明できぬ。

いったい、どうやって毎日ブログを書いているんだろう?そして、どうやって本を読んで文脈を理解しているんだろうか?

突然ですが、あさよるは外国語がからっきしダメです。日本語の能力は年々培われてゆきますから、相対的に外国語はますます苦手になってゆきます。

ニュアンスも読み取れないし、文化的背景もわからない。スラングや、暗に語られている含みや思考なんて絶対に読み取れません。

コンピュータは0と1のデジタルの言語を扱っています。彼らにとって、日本語で小説を書くことは、外国語で小説を執筆するのと同じです。

そりゃあ、細かなニュアンスを理解するには時間がかかるよなぁとしみじみ思いました。

(……ふぅ、あさよるも英語勉強しなきゃな)

『コンピュータが小説を書く日』を読んで、人工知能が物語を紡ぐ難しさに触れたのと同時に、なんか「これって、できるんじゃね!?」なんて、胸が高鳴りました。

あさよる、プログラミングやりたいなーと思いつつ、ずっと保留にし続けているのですが、マジでやりたい。楽しいだろうなぁ!ジタバタ。

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