地理・地域研究

池上彰『高校生からわかるイスラム世界』|今を知るには歴史が必要

池上彰先生のイスラムの授業

本書『高校生からわかるイスラム世界』は、テレビでおなじみの池上彰さんが、イスラム教やイスラムの歴史、イスラム世界にまつわる現在の国際問題までを解説するものです。「高校生からわかる」とあるように、10代の人向けで、社会科の教科書だけでは扱いきれていない話や「世界史」「現代社会」などと教科別ではなく、「イスラム世界」というテーマで話題が扱われます。教科を超えて、より広い視点で世界を眺めることができるでしょう。

日本にもイスラム教徒はいますが、あまり身近ではない存在の人も多いのではないでしょうか。あさよるも、キリスト教徒の人は知り合いにもいますが、イスラム教徒の人はいないんで、「知識としては知っているけど……」という存在だったりします。

しかし、世界的には、イスラム教徒の数はどんどん増えていて、近い将来、キリスト教徒の数を上回るそうです。また、アジアの国々でも、ヨーロッパでもイスラム教徒はたくさんいますから、日本が例外的な立地なのかもしれません。

で、池上彰さんといえば「わかりやすい解説」ですよね。もちろん本書『高校生からわかるイスラム世界』でも、やさしく話しかけるような文体で、とてもわかりやすい!

イスラム教は怖い?

本書の冒頭では、高校生の前で講義をする際、池上彰さんが生徒たちにイスラム教のイメージを訪ねた話題から始まります。生徒たちは「怖い」「暗い」「他の宗教より激しい」という答えだったそうです。高校生に限らず、大人たちも同じようなイメージを抱いている人は多いんじゃないでしょうか。

イスラム教について知識が乏しければ「自分の知らない存在」ですから、得体が知れなく「怖い」と感じてもおかしくないでしょう。その上に、ニュースではイスラム世界で起こっている紛争やテロの報道が続いています。そりゃあ「怖い」「暗い」「他の宗教より激しい」と思う人もいるでしょう。

しかし、イスラム教は世界三大宗教であり、ほとんどの圧倒的多数の人は「普通の人」なんだろうなぁと想像します。それは、日本人の中にも悪い奴も時々いますが、まぁ概ねほとんどの人は「普通の人」であるのと同じじゃないでしょうか(「普通の人」というのは「聖人君子なわけでもないけど、極悪人でもない」という感じで)。

まずは「得体の知れない存在」から「知っている存在」に変えることは、自力でできます。その入り口に本書『高校生からわかるイスラム世界』にいいんじゃないでしょうか。

10代へ世界の常識を

本書『高校生からわかるイスラム世界』で扱われる話題は、

  • イスラム教とは。コーランとは
  • ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の関係
  • イスラム教徒の戒律や習慣
  • イスラム「原理主義」とは
  • イスラム教を取り巻く国際問題(中東問題や、ユダヤ世界、エルサレム、湾岸戦争など)
  • イスラム世界のこれから

ざっとこんな感じ。

大人も、ややこしい話はわからないor忘れちゃってる部分があるでしょうから、「高校生からわかる」シリーズですが、本書は大人こそオススメだったりします。というか、「高校生からわかる」ってネーミングいいですね。昔は「サルでもわかる」とか、最近だと「中学生からの」みたいなタイトルの本が多いですが「高校生からわかる」というのは、サルでも中学生にもわからない、難しい話を扱っている感じがしますw

なんで歴史を学ぶのか?

夏休み中帰省していた親戚と「子どもの頃、なんで歴史なんか勉強しないといけないのかと思っていた」という話をしました。「大人になると義務教育で習ったことは知ってないといけないんだとわかった」という話です。

「歴史をなぜ学ぶのか」というのは、「お母さんはなぜ起こっているのか」という話と同じだろうと思います(笑)。お母さんは別に、今日、我が子が生まれて初めて部屋を散らかしっぱなしでゲームをしているから怒っているわけではないでしょう。たぶん、過去にも同じようなできごとが散見されていた結果として、今、怒っているんだろうと想像されます。

「今、なにかできごとが起こる」のは、過去になんらかの理由や原因が複数あって、それらが絡み合い、重なり合い、なにがなんだかわからなくなりながら、「今」がある。その瞬間瞬間はランダムに起こるできごとでしょうが、それらを振り返ると軌跡となっていて、それが「歴史」になっているんじゃないかと思っています。

現在の国際問題について知るには、モーゼやノアの時代の話題が飛び出すというのは、「歴史は必要なんだ」というのをよく表していますね。よく「歴史から学ぶ」という言い回しがありますが、あんまりそれは的確じゃなくって、「今を知るために、過去を知る」という感じじゃないかなぁと思います。

あと、世界の戦争や紛争のニュースは、キリスト教やユダヤ教の問題でもあるのに、イスラム教ばかり「怖い」と思われてしまうのは偏った話だなぁと思いました。

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『地図趣味。』|地図に萌えっ!等高線を愛でよ!海図も月面地図も

『地図趣味。』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。あさよるは幼いころより地図をつくるのが好きでして、大学生になってもせっせと地図を作っていました。最近、地図作りができてませんから、息抜きが足りてないのかもしれませんね。と言いつつ、目下ブログのサイトマップの構想を毎日考えてるんですが(苦笑)。

「地図」って、その目的によってバリバリ情報が偏るから、すごく面白い。昔、ノラ猫がうちに居ついた頃、ネコの後をつけて、ネコの道の地図を作ったこともあります。それは人間の地図とは全然違っています(やつらは塀の上や屋根の上も歩くから、立体的に表現しないといけないし)。

「子どもの地図」も、大人にとっては道じゃない、子どもだけの道がありますから、やっぱり特別な地図になります。あさよるは過去の自分の創作物はどんどん捨てちゃうんですが(いちいち取っておけないし)、この「ネコの地図」と「子どもの地図」は置いときゃよかったとちょっと後悔しています。

『地図趣味。』挿絵イラスト

「地図に萌えっ!」それだけ!

本書『地図趣味。』は、もうタイトルそのまんま。地図が趣味。趣味が地図。地図を眺めているだけでキュンキュンしちゃうし、平面の地図から立体の情報を妄想するだけでもワクワクしちゃう。そのために資料探しもやめられないし、神保町で古地図の衝動買いもしちゃうのだ。

個人的にとても面白いと感じたのは、マンハッタンで人に道を尋ねて、メモ書きしてもらった地図を実際の位置関係に並べて表示したもの。ナプキンや紙皿にボールペンで地図が書き込まれており、それらをつなぎ合わせると街の形になっている。バラバラの要素(地図を描いた人もバラバラさし、各人も一要素を書いただけ)であっても、情報が集まると、立体的に姿が立ち現れる様子がたまらん。

地図にもいろいろありまして

一口に「地図」といっても、いろんな地図があります。そもそもこの本は、月の地図の話から始まるんです。色とりどりの月面地図から、グリーンランドの動物の皮と流木でできた地図、ミクロネシアの棒をひもで結わいて組み立てた航海地図など、見たことのない地図から始まります。

エルサレムを中心に、アジア、ヨーロッパ、アフリカと三つ葉のクローバーのように広がった地図は「確かに、ユーラシア大陸とアフリカ大陸をこんな風に解釈もできるなあ」と妙に感心してしまいました。

別に、衛星写真に写された地球の姿こそが正解というわけでもなく、地図は解釈の仕方や、なにに注目するかによって描き方が変わります。もちろん、よく目にするメルカトル図法の世界地図もかなり歪んでいますから、メルカトル図法の地図による誤解や問題もあると思います(赤道が中央横方向に走るメルカトル図法の地図では、日本列島の場合、北海道は大きく見え、沖縄諸島は小さく見えます。沖縄問題が小さく扱われるのは、地図のせいじゃないかと疑っています。あるいはヨーロッパは巨大に見え、アジアの国々は概ね小さく見えます)。

土地の形を表すものばかりでなく、川の地図もあれば、都市部の形が見える地図もあります。

地図は何を目的とするかによって、同じ場所を表示していても全く違った姿になるのです。

地図をつくるのはたまらん!

本書が面白いのは、ただ地図を愛でるだけでなく、オリジナルの地図を作ろうという試みに発展することです。しかもただ模型を作るわけじゃなくて、地層を表現した食べられるムースとか、等高線を模したクレープとか「四色定理」グミとか、なんでそうなった! という展開にw (四色定理とは、どんな地図でも4色あれば隣り合う領域と違う色で塗り分けることができるというもの)

さらに滋賀県の形をしたアクセサリーとか、どうしてそうなった\(^o^)/

あさよるも、地図をつくるのを趣味にしていた時期があったので、ものすごく心ときめきます。

凸凹、坂道、谷や川を愛でよ

あさよるは関西在住ですから、たまに東京へ行くと、東京の街のアップダウンの激しさにクラクラします。しかも、東京の街の面白さは、パッと見渡す限りはビルが立ち並び、地面の高低差が隠されており、どこまでも平たい関東平野が広がっているように錯覚してしまうところ。しかしいざ街を歩き始めると、ビルの陰に潜んでいた坂道や、突然立ち現れる崖や、エレベーターでビルの上階に上がったのに、そこが地面につながっていたりと、奇想天外。

大阪の場合、現在の市街地の多くは人工の埋め立て地ですから、一部、上町大地(大阪城や四天王寺のある南北に細長い高台)以外は海抜が低く、基本は平らかです。だからこそ、たまにアップダウンの激しい土地に行くと、情報量が多すぎて、位置情報や高さを脳内で処理するだけで頭がいっぱいになります。とても刺激的!

地図は平面の紙に印刷されたものが一般的でしたが、現在では「グーグルアース」や「グーグルストリートビュー」というすごすぎるサービスが無料で使えますから、「地図」の概念も変わっています。すごいね!

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『北欧スウェーデン式自分を大切にする生き方』|ネガティブ思考をハックせよ!

こんにちは。夜中におにぎりを食べてしまった あさよるです。そして自己嫌悪に陥り、なんかものすごい絶望的な気持になります。そんなに後悔するなら食べなきゃよかったのに! さて、あさよるも〈ネガティブ思考〉な人間ですから、今回手に取った『自分を大切にする生き方』のテーマである、〈ネガティブ思考〉からの脱却は、耳に痛くもあり、ためになる話でもありました。

本書は、著者のビルマーク夫妻が「心の病」から抜け出した経験から書かれたものですが、いわゆる精神病治療の話ではありません。〈ネガティブ思考〉から〈ポジティブ思考〉への思考の変え方。あるいは〈自己欺瞞〉から脱却する方法といったところでしょうか。医学的な話ではないのであしからず。

心の病から抜け出した夫婦の話

本書『自分を大切にする生き方』の著者であるビルマーク夫妻は、二人とも心の病に苦しみ、そこから脱却した経験がまとめられています。二人の間の娘との関係も描かれます。不調を自覚し、少しずつ生活習慣や思考を変えてゆくことに苦心した記録や、自分以外の人の存在を認識し、「今」に集中できるまでに回復します。

夫妻の住むスウェーデンは、暮らしやすい国ですが、真面目な国民性からメランコリー(うつ)を抱える人が少なくないそうです。社会的背景を元に、彼らがメランコリーを乗り越えるまでの経緯を知りましょう。

ストレス、ネガティブ思考を把握する

まずは、自分の心身に起こっている症状を自覚する必要がります。ストレスは肉体的な変化を引き起こします。肉体に起こっているストレスレベルを把握しましょう。次いで、ストレスの要因の特定です。ストレスの原因を遠ざけられれば良いですが、それが難しい場合は自分が対処するしかありません。

これまでの対処の仕方が、ストレス、不安、頭痛、睡眠障害、高血圧、潰瘍、腰痛、集中力散漫、憂鬱、自身のなさにつながっているのかもしれません。これを「ネガティブ反応」と呼びます。ネガティブに反応することを自ら選んでいるのです。

p.29

メランコリーの原因は、ネガティブな事柄に自らが集中してしまっていて、悪循環に陥っている可能性があります。悪かったことばかり注目するのではなく、良かったことにも目を向けます。

専門家への相談を!

自分で対処が無理な場合は、専門家に相談しましょう。専門家を頼ってる人は多いですし、服薬治療をしている人も少なくありません。身体に悪影響が出ているのですから、速やかに専門窓口へ。

ネガティブ思考に対処する

ネガティブ思考を遠ざけるため、「心配タイム」を設けます。これによって、日中、心配事が起こったとき「あとで心配タイムに考えよう」と保留できます。そして、心配タイムでは、心配事を書き出し、心配事の対策を考え書き出します。そして、その対策をいつ取るのか決め、必ずそれを実行します。

心配タイム導入により、漠然とした不安ではなく、建設的に心配事に取り組めるようになります。しかも、心配事の対策を実行することで、少なくとも一つの心配事は減ります。

生活を変えてゆく

生活習慣そのものも変えてゆきましょう。マルチタスクは非効率だと割り切り、タスクを周りの人に分散し協力してもらいましょう。また、部屋を片付け、心がくつろげる環境を整えましょう。思い切って模様替えに勤しんでもOK。睡眠の質と量の改善も。寝具を奮発して良いものに変えてみるだけでも、変化があるかも。

健康的な生活に必要なのは、睡眠と、栄養と、適度な運動です。これらが確保できるよう生活習慣を変えてゆく必要があります。

毎日テレビを何時間見ていますか? 何時間スマホを見ていますか? 自分の何気ない時間が、自分の生活を圧迫しているかもしれません。時間切れになって自己嫌悪になるよりも、一日の時間の使い方を見直しましょう。

ネガティブ思考を変えてゆく

上手くいかないことがあっても、それにどう対応するかは自分で決められます。いつも元気な人なんていないし、いつでも良い人なんていません。「良きパートナー」「良き親」「ダイエットする」「学びなおす」など、責任感や約束事に思うなら、それはなぜ? 周りの人から求められているのかもしれません。

「~べき」とか「~しなければ」という思考を捨てましょう。「~したい」に変えてゆくのです。

そして、大変な時は「大変です」と言い、完璧な人のフリをするのはおしまい。自分の弱みも、人に見せられるように。

「他者」の存在を意識する

完璧な人をやめることは、他者を受け入れることにもつながります。どうしても、自分を誇大に見せようとすると、自慢話をしたり、相手に自分の価値を確認させようとしてしまいます。SNSでマウンティング投稿をやめ、他者への感謝を日記に書き留めましょう。

「今」に集中する

きちんと「ノー」を言い、お人好しをやめ、テレビやスマホに時間を奪われるのをやめて、何をするのでしょう。それは、「今」に集中しましょう。過去に何があっても、今は過去ではありません。将来にどんなに不安になっても、まだ将来は来ていません。「今」しかないのです。

頭の中のおしゃべりをやめ、雑念を取り払い、「今」に集中する。

ネガティブ思考から得ているものはなに?

ここから、あさよる的目から鱗だったお話。

ネガティブな思考に陥っているときって、自分自身が苦しんでつらいのですが、実はネガティブ思考になることで自分は「何かを得ている」のかもしれない、という指摘はショックでした。

 ネガティブ思考は、やりたくないことから逃げる方便にもなります。

p.158

まず、ネガティブ思考に陥り、体調を崩すと、「何か」から解放されることがあります。もしこれが本当ならば、自傷しているのと同じじゃないかと思い至りました。何か欲求があって、そこから解放されるために自信を苦しめているのです。矛盾しているように思えますが、実際にそのような行動を取ってしまう人は少なくないでしょう。(あさよるも、夜中にアイスクリームを食べてしまいます(^^;)

また、ネガティブ思考は自尊心を満たすこともあります。

 自尊心が低い人は、人から同意や承認を得ようとしがちです。自分はよくやっている、十分魅力的だ、特別な存在だ、と誰かに言ってもらいたいのです。

p.160

自分で自分の評価が正しくできない場合、他者に評価してもらいたくなります。「正しく評価ができない」とは、〈過大評価〉のみならず〈過小評価〉も同じです。自己評価が低い場合、他者に評価され、認められたいと願うのです。そのため、ネガティブ思考が発動します。さながら、よく女子会なんかで展開される「わたしブスだから」「もっと痩せないと」みたいな話も、同じ心理状態ですかね。

なんらかの報酬があって、ネガティブ思考をやめられない場合は、心がけで少しずつ思考を変えてゆきましょう。

ネガティブ思考を改めるためにできる心がけをいくつかあげてみましょう。

・自分に正直になる。ネガティブ思考で自分を傷つけていることを自覚する。
・ネガティブ思考は改めなければならない悪い習慣、と自覚する。
・起きている間のエネルギーのすべてを、不健全な思考パターンを経つのに費やすと決意する。
・自分の思考パターンを意識する。
・人に認めてもらおうとするのではなく、アファメーションや励ましの言葉によって、自分自身で気分を高揚させる。

p.160-161

長い年月にわたって〈ネガティブ思考〉を培ってきたのですから、〈ポジティブ思考〉に鞍替えするのも気長に暇がかかりそうですね(;’∀’)

〈ポジティブ思考〉は周囲の幸福度UP

本書のメッセージは「過去にどんな経験をしてきても、今変わることができます。遅すぎることはない」という力強く心強いものです。

そして「ポジティブな人は、周りの人を幸せにする力を持っている」と、変化の先にあるものも示されています。これって、真面目で責任感の強い人ほど〈ポジティブ思考〉に向いているってことですよね。周りの人をより幸福にする〈責任感〉は〈ポジティブ思考〉になることにより達成されるのです。

逆に言うと、〈ネガティブ思考〉に陥っているとき、本人の真面目で責任感の強い性格とは裏腹に、周りの人に悪影響を与えてしまっています。

自分だけの幸福を追求するのではなく、周囲の人たちの幸福度にちょっとだけでも貢献できるなら、それは嬉しい話カモ。

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『方向オンチ矯正読本』|なぜ地図が読めない?目印はどれ?

こんにちは。地図を熟読する あさよるです。年末に京都に行こうかなって計画し始めて、連日Googleマップを熟読しております。ストリートビューで歩き回っています。こんな性分なので「方向オンチ」ではありません。しかし、うっかり者ではあるので、たまにあり得ないくらい盛大に道を間違えることはあります。これは事前準備不足だと反省しつつ、間違って歩いた道程は貴重な資料として反芻しています。

こんななので、自称方向オンチな人に悩まされることが多く、彼らが何を考えているのか知りたくて『方向オンチ矯正読本』を手に入れました。ちなみに悩みとは「スケジュールを丸投げされる」「遅刻で長時間待たされる」こと。自称方向オンチさんは、一体何がひっかかって時間がかかるのか分からなかったので、良い勉強になりました。

方向オンチは治る?

本書『方向オンチ矯正読本』の著者・北村総一郎さんは「方向音痴改善レッスン」をしておられ、大阪を中心にセミナーも開催しているそうです。レッスンで方向オンチ改善って治るの?てか、そんなレッスンがあるんだ!という、これだけでも面白い。

どうやら、方向オンチは訓練で改善するようです。目で見て聞いて感じた情報を、うまく立体的に記憶ができないことで、あらぬ方向へ歩いて行ったり、地図が読めないということも起こるようですね。

ちなみに昔『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がありましたが、方向オンチレッスンをやっていると、方向オンチに男女差がないと気づいたと紹介されています。むしろ、方向オンチであることで困ってレッスンに来る人は男性の方が多いそうです。で、遺伝も関係ないそう。

じゃあ、「方向オンチ」ってなによ? ……ズバリ、環境が方向オンチを作っている!

日本は「方向オンチ」大国だそうです。外国では方向オンチは「自分のコントロールができない」とネガティブな印象らしく、「方向オンチキャラ」としてキャラ立ちしてしまう日本とは大きく環境が違います。日本人は「方向オンチが多い」のではなく、「方向オンチを自称する人が多い」ということですね。かつ、日本ではパソコンやスマホを駆使し、狭い国土に密集して暮らしているので、環境が複雑で高層化しやすいことも原因かと。

脳内の記憶回路をつくれ!

さて、方向オンチ克服法。簡単にステップを紹介すると、「地図を〈見る〉から〈読む〉へ」「目印のつけ方」「脳内マップを構築する」「脳内マップを紙に書く」。さらに「自分で書いた地図を本物の地図に落とし込む」までできれば上々。

一つずつ要素を見てゆきましょう。

地図を読む、目印を覚える

まず「地図を〈読む〉」という概念を知る。NOT方向オンチさんは地図から情報を読み取って頭の中でイメージしているのです。言うが易しって感じですが、頭で考えるよりも感情を働かせ「体感」しましょう。

地図を見る時、地図の世界に自分が入り込んだ様子を想像して、地図の中の自分が見ている情景を思い浮かべましょう。人形の自分がマップ内を歩き回っている様子。RPGゲームの世界のキャラクターを動かしているような感じかな?

地図を読む、という行為は、次の3つのパートに分けられます。
①地図を見て、全体の中から、自分が目的地にたどり着くのに必要な情報を抽出する
②抽出した情報を、頭の中でビジュアル化(仮想化)する
③目的地にたどり着くまでの行程をシュミレートしたのち、目的地に向かう

p.86

②では、地図の情報だけで景色をイメージできるようにします。平面の記号をリアルな世界に変換する能力ですね。実際に自宅の近くなど街の中を歩きましょう。慣れてきたら知らない街でも試します。

道程の目印、ここでは〈アンカー〉と呼ばれていますが、アンカーを適切に設定します。

「自分が好きなもの」「興味のあるもの」をアンカーとします。ここでは主観が大事で、他人の価値観は不要です。自分がアンカーだと思えばアンカー。好きなこと、興味のあることは「覚えよう」としなくても、勝手に頭に入ってきます。そして、好きなこと興味のあることは何回も繰り返し考えてしまうので、脳の記憶に定着しやすいんです。

そして、道を曲がる時のアンカーが大事!帰りは、行きに打ったアンカーを確認します。

脳内マップを作る

アンカーを使いこなせるようになったら、脳内の地図を紙に書き出します。

①アンカーが反映された、脳内マップを作成する
②本物の地図と比べる
③完成したマップを携えて、答え合わせのために、もう一度同じ道を歩く
④必要、もしくは不要な情報を修正し、精度を上げて本物の地図に近づけていく

p.134

これだけ見ると「難易度たけー」と若干ビビってしまいましたが、そういえば あさよるも昔、毎日せっせと地図を書いて、本物の白地図と見比べて、再び同じ道を歩いて……という活動をしていたことがありました。あさよるが方向オンチをじゃないと自任しているのは、このへんの経験からなのかもしれません。

これ、やってみるとなかなか楽しいし、旅先なんかだと思い出になるしオススメ。

上手な道の迷い方

本書が親切な本だなぁと思うのは、最後に道に迷った時の対処法まで網羅されているところ。誰だって道に迷います。方向オンチじゃない人も、迷うんです。だから「上手な道の迷い方」。

方向オンチさんの中には、道に迷ったと気づいていても立ち止まるのが怖くてズンズン歩いてしまう人がいるそうです。だめ!アレ?と思ったら立ち止まる!落ち着いてから来た道を、記憶を巻き戻す様に思い出します。記憶法を身につけていれば大丈夫です。

そもそも、迷いやすい道は避け、わかりやすい道を選ぶことも大切です。これは事前に、地図を見て景色をイメージする力と、アンカーの設定の仕方がマスターしておれば大丈夫。

あと、便利なアプリを使おうw

自称「方向オンチ」のナゾがわかる!?

本書の面白いところは、方向オンチさん本人だけでなく、方向オンチじゃない人も役立つだろうとことです。すなわち「方向オンチはなぜ道に迷うのか」と逆説的な答えがおぼろげながら見えてくる。きっと方向オンチじゃない人からすれば「方向オンチ」という状態が存在すること自体がナゾじゃないかと思います。

正直に言うと「自称方向オンチ」ってただのズボラで無責任なだけじゃないのか?と思ってさえいました。だって、彼らの遅刻の言い訳がサッパリ意味が分からないから。

あと、ハッと気づいたのは「迂回ルートしか知らない人は、最短ルートを意識しない」という事実。だから盛大に大回りしたって、それが「その人にとっての最短ルート」なのかもしれない……!

方向オンチの人は、脳内で立体的に空間を把握、記憶するのが苦手で、訓練で上達するってことはわかりました。だから辛く当たらないで、じっくりとサポートする方に回った方がよさそうね。

あと、著者の北村壮一郎さんの方向オンチ克服セミナーも気になります。誰かレポよろ!

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『ヒルビリー・エレジー』|チャンスの掴み方を忘れてしまった人々

こんにちは。おすすめ本はなるべく読むあさよるです。本書『ヒルビリー・エレジー』もトランプ大統領の話題と一緒にゲット! アメリカでは今なにが起こっているのか?どんな人がトランプ氏を支持したの? と、考えの手助けに。著者自身が、ケンタッキー州の廃れた元工業地帯で生まれ育ち、秩序崩壊している環境での経験を詳しく綴っています。「格差」とは、どういうことなのか考えるにも、ぜひ。

取り残された白人の労働者階級

本書『ヒルビリー・エレジー』の〈ヒルビリー〉とは、「田舎者」を馬鹿にしたようなニュアンスの言葉だそうです。エレジーは「哀歌」。「田舎者の哀歌」。現在アメリカの田舎に取り残された白人たちは、かつてない格差と貧困に陥っており、著者J.D.ヴァンスさんもヒルビリーの白人家庭に生まれました。

本書が注目されているのは、そう、2016年にドナルド・トランプ大統領の出現によってです。Amazonの商品説明ではこのような紹介がなされていました。

◎アメリカ人が、もうひとつのアメリカを知るためにこぞって読んでいる一冊
◎トランプ支持者、分断されたアメリカの現状を理解するのに、最適の書。
◎タイム誌「トランプの勝利を理解するための6冊」の1冊に選定。

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち | J.D.ヴァンス, 関根 光宏, 山田 文 |本 | 通販 | Amazon

アメリカでも、アメリカ国内で何が起こっているのか知りたい人がいるってこと?

トランプ大統領就任時、日本でもメディアで取りざたされましたが、アメリカ国内の格差が広がり、トランプ大統領は田舎の労働者階級に支持されたと見聞きされました。かつて工業地帯として栄えた田舎町。今は廃れて、貧しい人々が暮らします。ここで取り上げられているのは「アメリカの反映から取り残された白人たち」。ヒルビリーの白人たちは、富裕層の白人や、黒人、黄色人種たちよりも、未来に希望を描けない状況に陥っています。

アメリカンドリームがなくなったアメリカ

本書では「アメリカンドリーム」はアメリカよりも、現在はヨーロッパにあると語られています。

ヒルビリーで生まれた著者・J.D.ヴァンスさんは、父親違いの兄弟がたくさんおり、母親は職に就いても長く続かず、彼氏に依存しトラブルばかり繰り返します。ことあるごとに母親から虐待を受け、命からがら祖父母に頼って生きています。頼もしいお祖母さんではありますが、彼女も揉め事を“力”によって解決し、法秩序から逸脱しています。親子や恋人に依存し、薬物に依存し、お金は目先のものに使い切り、困ったことが起ると自分以外のモノのせいだと考え、悪びれず不正を働きます。労働時間は短いにも関わらず「自分たちは働き者だ」と信じています。これは著者の特別な経験ではなく、ヒルビリーの平均的な「普通」の家族の形。

こうやって要素だけ抜き出してみると、秩序が崩壊しているのがわかります。ヒルビリーの閉ざされた世界に生まれ育つと、自分の知っている世界が全てだと思い、ヒルビリーの価値観のみが行動規範になります。ヒルビリーの世界では、勉強をし良い成績を修めることよりも、男らしく喧嘩で勝てるほうがずっと価値があります。

ヒルビリーにもチャンスは平等にあるはずなのに、「チャンスに手を伸ばす」という観念が抜け落ちているようです。アメリカンドリームも今でも用意されているのかもしれませんが、そもそも「望まない」人にチャンスはありません。アメリカは「ドリーム」を失ったのでしょうか。

貧困の中にいると、貧困の思考しかできない

貧困から抜け出したいなら、勉強をして大学へ進む道があります。しかし、子どもたちを大学へ進学させることが何を意味するのかイメージできない。実際には、大学に通う方が学費が安上がりなのに、地元のカレッジに通う方がいいと思い込んでしまう。子どもたちに初めからチャンスがありません。

家族が不正を働いても、それをみんなで隠蔽することが正解であり思いやりであると考えてしまう。そもそもの問題を取り除こうという発想がなく、恋人や薬物に依存してしまっても、周りはその場しのぎの対応をするばかりです。それが「普通」の環境ですから、良い状態が想像できなくなる。

教育の機会が奪われていますから、子どもたちも偏った世界観の中で育ってゆきます。著者も、考えが錯綜し、偏った思想に囚われたり、母からの虐待を容認することが愛情だと感じてしまう。お母さんだって、もっと適切な対応があったのかもしれないけれども、どんどん泥沼化してるし、それがヒルビリーの「普通」。

貧しいから欲しいものが買えなくて、給料日にドッと買い物をしてしまう。でも、本当はお金を使うのを控えて、貯蓄に回せば新しい生活が手に入るかもしれないのに。大きな画面のテレビや、iPadを買うよりも、もっと必要なものがあるんじゃないの? そんな発想がなくなってしまい、「貧しいのに贅沢な買い物ばかりしてしまう」という悪循環から抜け出せないのです。

〈なう〉を理解する一助に

「アメリカンドリームはなくなった」と紹介しましたが、それでもまだドリームは少なからずアメリカにあります。著者ご自身も、海兵隊に入隊したことから境遇が変化し、オハイオ州立大学を優秀な成績で卒業し、名門イェール大学に進み、現在はシリコンバレーで起業しエリートです。「手を伸ばせばチャンスが巡ってくる」環境が消滅したわけではないのです。

大事なのは「手を伸ばす」「求める」ということ。ヒルビリーの白人たちは「チャンスに手を伸ばすことを忘れてしまった」のかもしれません。そして、なんとなくスカッとする毒舌を吐いてくれるドナルド・トランプ氏は支持されたのです。「オバマが悪い」「イスラム教徒が悪い!」「メキシコに壁を作らせろ!」と〈自分以外の誰かが悪い〉と言ってくれると気持ちいいですからね。

んで、これって日本でも同じことが起こりつつあるのかもなぁとも感じました。格差が広がり、チャンスが巡ってこない人たちがいます。いや、たぶん、日本だって優秀な人には機会が与えられていますが「手を伸ばすことを忘れている」に陥ってないかなぁ?と。これは自分の思考や行動を省みて。

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