照葉樹林文化

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』|豊かな「ふつうにおいしい」くらし

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』挿絵

こんにちは。料理番組が好きな あさよるです。やはりNHK「きょうの料理」は格別で、やはり土井善晴先生と後藤アナとのシノギを削るバトルがたまりまへん。ホントは大泉洋さんの土井先生のモノマネに定期的にハマっているのですが、それはさておきw

で、土井先生の著書『一汁一菜でよいという提案』が出版当初から話題になっていたので気になっていました。何気に、土井先生の本を読むのも初めてです。

SNS映えする料理をしなくてもいいじゃん。多少見た目が悪くても、味がふつうでも、毎日の料理ってそういうもんでしょ。それよりも、感性や自分の美意識を持って、質素で豊かな食卓にしましょうよ。そんな提案です。

質素で豊かなくらし

本書『一汁一菜でよいという提案』はタイトル通りの内容で、「一汁三菜ないといけない」という呪縛をサラリと説いてしまうものです。そもそも、お祝いの席やお祭りで特別な食事が振る舞われますが、普通の日はふつうの食事で良いのです。家でもお店のようなメニューを出そうとする風潮は、むしろ「下品」とバッサリ。Sインスタ映えや、豪華な手料理ををfacebookにアップしたりねぇ~。反対に質素なメニューは「#手抜きしちゃった」なんてハッシュタグをつけて「だからなんだ」「なにを言いたいのだ、言ってみなさい」とw。

そして、土井先生は言うのです。「質素なのは手抜きではない」と。

ちなみに「一汁一菜」とは、お味噌汁と、つけあわせとご飯の取り合わせです。お味噌汁の具がおかずを兼ねています。つけあわせは、お漬物でOK。ご飯も白米でも、季節の炊き込みご飯でも楽しめます。一汁一菜といっても、その組み合わせのバリエーションはなかなかです。

というか、あさよる家は昔から一汁一菜かもしれないw ご飯と味噌汁と香の物。これで十分でしょ。

贅沢で貧しいくらし?

本書『一汁一菜でよいという提案』の裏テーマって、豪華で高額な食事だって、自分に感受性や美意識がなければ、それは貧しいよねってメッセージにも読み取れました。むろん、これは穿った見方すぎかもしれませんが……(苦笑)。

あり合わせで、地域の食材を近所で買って、パパっと簡単に料理しちゃうってスキルであり、それが豊かさなのかも。

教養、感受性、美意識を

『一汁一菜でよいという提案』は料理の本だと思って読み始めましたが、これまた奥の深いが広がっていました。本書でも話は人類学や信仰、歴史、文化と広がります。そもそも料理って科学の世界でもありますから、マジで深すぎる世界です。

また、料理に欠かせない「器」の話もちょろっと触れられています。ただ、こちらも突き詰めると果てのない話でしょう。「良い器」で食事ができるって、なんて贅沢なことでしょうか。そのためには、器ひとつとっても、その良し悪しを見抜く力が自分に必要です。

季節の移ろい、美しさを見い出し、感動する。だからこそ食材一つ一つを見定め慈しむ感覚が宿るのでしょう。今「丁寧に暮らす」とか「スローライフ」なんて言われますが、根本的に「良いもの」「美しいもの」に「感動する」って、どんな生活にも必要なのね。

「ふつうの食事」「一人の食事」

一汁一菜の提案は、普通の何でもない日の食事の提案です。肩の力が抜けるのは、「見た目が多少悪くてもいい」し「ふつうにおいしければいい」じゃないか、という提案でもあるからです。むちゃくちゃ美味しい、舌もとろける料理を作る必要はない、「ふつうにおいしい」でええやないですか、と。

味噌汁もね、だしを取るのが大変なら、湯に味噌を溶くだけでいい。具に、だしの出そうなものを入れればいいんです。見た目も、自分で食べるんなら多少ぐちゃぐちゃでもよろしい。本書のレシピや写真では、お味噌汁の具として鰹節や煮干しを放り込んだり、ベーコンやブロッコリーの洋食の食材も使われていました。確かにおいしそうです。パンを合わせてもいいのよ、とぶっ込んできますなあ。しかし、庶民の食卓とは、和洋中アジアン入り乱れるもんで、それが家庭の味じゃないかしら。

家族に食事を用意するとなると、一人の時と意識が変わるかもしれません。見た目に気づかって、ちょっとこだわろうという気にもなります。そんな風に、一人の時、家族と一緒に、客人を招いて、そしてお祝い事やお祭りごとの晴れの席と、食事のモードが段階的に変化してゆく。

「ふつうにおいしそう」なんですけど

本書ではカラーで一汁一菜のメニューやレシピが掲載されているんですが、ふつうにおいしそう。お味噌汁にトマトとか溶き卵とか、やったことないけど、絶対おいしそうだ。ピーマンやえんどう豆も、色どりに良い。しかしこれらは、確かに見た目ぐちゃっとなっているから、お家だけでの特別メニューです。

土井先生はお味噌汁にご飯をダイブさせる食べ方に触れておられませんでしたが、ぶっかけごはんが食べたいw

食に関する話題って、とめどなく深い。単にレシピ通り切って混ぜて火を通すだけじゃない。もっと感覚をフルに、感度を上げて、「食べる」って行為に集中したいです。

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』挿絵

関連本

『「食」の歴史人類学―比較文化論の地平』/山内昶

『照葉樹林文化―日本文化の深層』/上山春平

『勝間式 超ロジカル家事』/勝間和代

『理系の料理』/五藤隆介

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