幼い頃、ワクワクしたり、トキメキを感じたイメージの断片が、今でも不意に溢れ出てくることがあります。
今、再び人気の『セーラームーン』のブローチだったり、『眠れる森の美女』の魔女たちがケーキを作るシーンを思い出したり、雑貨屋さんで買ったおもちゃの指輪を見つけた時だったり。
その瞬間のハッと胸が高鳴り、頭の先から足の先まで宙に浮いたようなあの気持ち。
あまりにも「あの頃」と同じ感覚でいっぱいになるため、一瞬、今の自分の年齢や、今がいつなのかを見失ってしまいます。
ドロシーの銀の靴にトキメキが溢れ出す!
今回『オズの魔法使い』を読んでも、トキメキや胸の高鳴りが、「ハッ」と蘇った箇所がところどころにありました。
『オズの魔法使い』を通して読んだ記憶も薄れ、話の筋はすっかり忘れていたので、ワクワクと読み進められた上に、キュンキュンと胸がいっぱいになりました。
例えば、ドロシーの銀色の靴。
何故か「銀色」という響きに大人っぽさを感じており、大人の靴を履くドロシーにトキメキました。
ブリキの木こりが油をさすシーンも、どこか可笑しく、コミカルで、ユーモラスでしかし実直な木こりの姿にワクワクしたことを思い出しました。
忘れていたけれど、眠っていた感動体験
『オズの魔法使い』を手に取ったのは、「有名な作品なのに読んだことがないなぁ」と思ったからでした。
しかし、自分の記憶は間違いだったようです。
そこここで、かつて、幼いころに胸が高鳴り、浮足立ち、体中でワクワクした気持ちが、ドバドバと溢れだしました。
読書の記憶とは不思議ですね。
読んだことも忘れていて、話の内容も覚えていないのに、その時感じた感覚や感動はしっかり体に染み付いているのです。
私は今も、数十年後に思い出し、胸が一杯になるような読書体験をしているでしょうか。
それは、トキメク本に出会っていないのではなく、読み手である私の感性の問題なのでしょう。
豊かな読書体験とは、ただただ大量の本を読むことだけではなく、感動とともに本を読むことかもしれませんね。
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オズの魔法使い
オズの魔法使い
ライマン・フランク・ボーム/著、W・デンズロウ/イラスト、幾島幸子/訳
岩波書店
(2003)
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