工学

『コンピュータが小説を書く日 』|ショートショートで星新一賞チャレンジ!

以前、『人工知能は人間を超えるか』という本を読み、人工知能、AIに少しだけ興味がわきました。

昨今、ニュースでもAIの話題はよく見聞きしますし、「コンピューターが人間の仕事を奪う」なんて言って、将来消滅してしまう職業の一覧など、話題になりますよね。

ほんとのところ、どうなのよ!?

『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

この本が出版されたのは2016年。

それから7年経ち、AIに文章を書かすのは一般の私たちでも普通の行為になりましたね。

はてさて、AIの文章力はいかほど。

コンピュータは文章が読めない

コンピュータに小説を執筆させ、文芸賞・星新一賞受賞を目指す!名古屋大で人工知能のプロジェクトが始まりました。

まずは、星新一さんのショートショートを分析したり、自分たちで簡単な小説を執筆し、人はどうやって文章を作っているのか分解してゆきます。

意外なことに、コンピュータは小説を書くことよりも、小説を読むことが苦手なようです。「文脈を読む」とか、暗示を読み解くとか、ニュアンスや、人間が経験則で知っていることを理解するのがムズカシイよう。

例えば、気温が何度になったら暑い/寒いのかは、人間にとっては感覚的で説明不要の事柄も、コンピュータにはわかりません。

『コンピュータが小説を書く日』では、小説を書くための四苦八苦にページが割かれており、非常に興味深いのですが、文章を読む、理解するという、我々が何気なくやっている動作を、説明することは困難なのだと知りました。

まだまだ道半ば

名古屋大の佐藤先生のチームは、人工知能が東京大学合格を目指す「東ロボくん」の開発もしています。

人工知能に小説を執筆させる「作家ですのよグループ」と「東ロボグループ」は、どちらもまだまだ道半ば。

まさに今、なうで進行しているプロジェクトですから、『コンピュータが小説を書く日』を読んでいても、臨場感ありでワクワクします。

ただ、巷で語られるような「意思を持つロボット」「人類を凌駕するコンピュータ」みたいなイメージとはまだまだ程遠い様子。

テクノロジーを悪者に語られるときに使われる、コンピューターのテンプレって、フィクションの話なのね……。

文章を紡ぐって、どういうこと?

『コンピュータが小説を書く日』を通じて、普段自分がどうやって文章を紡いでいるんだろう?

どうやって文章を理解しているんだろう?

コンピュータにプログラムするためには、人間が人間らしい活動をどのように行っているのか、知る必要があります。人類が自らを研究対象としているんですね。

完成した小説(本書にも添付されています!)を星新一賞に応募すると、事務局から問い合わせが来ました。

1.最終的に文章を書いたのは、人間か、それともコンピューター(人工知能)か?
2.創作過程において、人工知能が果たした役割は?

どう答えればいいか、私は頭を抱えました。というのも、この質問には、いかようにも答えられるからです。

p.152

小説を出力したのはコンピュータであることは揺るぎない事実です。しかし、そのアルゴリズムを入力したのは人間です。

コンピュータが執筆したとも言えるし、アルゴリズムを人間が作ったとも言えます。

コンピュータープログラムは、無から有を作り出すことはできません。ですから、テキストを出力するためには、

・それをそのまま記憶しておくか、あるいは、
・より小さな部品から合成するか

のいずれの方法しかありません。

p.154

完成した小説を用意し、それをバラして置き換え可能な部品を用意し、文として成立するように条件付けをします。そして、部品をたくさん用意すれば、それらの組み合わせで膨大な物語を作れます。

これだと、コンピュータが小説を「書いた」とも言えるし、「書いていない」とも言えます。

細かな話は本書を読んでいただくとして、実際に文章を生成する様子が体感できるんですよ!

実際にweb上で文章を作成できます。面白いので、ぜひリンク先もご参照ください。

文章作成の様子は、YouTubeでもデモンストレーションが閲覧できます。

これらはたぶん、本書『コンピュータが小説を書く日』を読んでから見ると、胸が熱くなります。

外国語で小説を執筆できるか?

人工知能に小説を書かせるプロジェクト「作家ですのよ」。想像以上に大変なことっぽい。

こうやって、あさよるも毎日つらつらと文章を書いてネットに垂れ流しておりますが、それを「どうやってやっているのか?」を説明できぬ。

いったい、どうやって毎日ブログを書いているんだろう?そして、どうやって本を読んで文脈を理解しているんだろうか?

突然ですが、あさよるは外国語がからっきしダメです。日本語の能力は年々培われてゆきますから、相対的に外国語はますます苦手になってゆきます。

ニュアンスも読み取れないし、文化的背景もわからない。スラングや、暗に語られている含みや思考なんて絶対に読み取れません。

コンピュータは0と1のデジタルの言語を扱っています。彼らにとって、日本語で小説を書くことは、外国語で小説を執筆するのと同じです。

そりゃあ、細かなニュアンスを理解するには時間がかかるよなぁとしみじみ思いました。

(……ふぅ、あさよるも英語勉強しなきゃな)

『コンピュータが小説を書く日』を読んで、人工知能が物語を紡ぐ難しさに触れたのと同時に、なんか「これって、できるんじゃね!?」なんて、胸が高鳴りました。

あさよる、プログラミングやりたいなーと思いつつ、ずっと保留にし続けているのですが、マジでやりたい。楽しいだろうなぁ!ジタバタ。

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『小学生でもわかる プログラミングの世界』|アプリって?インターネットって?

こんにちは。ブログ歴はなんだかんだで10年以上の あさよるです。

あさよる家にパソコンとインターネットがやってきたのは、1997年ごろだったと思います。ですから、かれこれ20年です。ホームページを作って遊んだり、日記ブログを書いていたのは、今に続いています。

で、あさよるも一応、プログラミングも独学で勉強しようとしていたんですが、ほぼ全て忘れてしまっていますね(;’∀’)

『小学生でもわかるプログラミングの世界』を見つけて、あさよるの若きあの日を思い出しました…。

プログラミングを勉強し始める前に

表紙には「プログラミングを勉強し始める前に知っておきたい基礎知識をわかりやすくQ&Aで図解!」と書いてあります。

プログラミングを学び始める前の、オリエンテーションみたいな感じで読むといいのかな?

小学生の子どもたちに、著者の林 晃さんが先生となって疑問に答えてゆきます。

その小学生たち、将来の夢にプログラマーが候補に挙がっていて、それぞれ勉強もしているようです。

プログラミング言語の種類や、パソコンのしくみ、インターネットの考え方もある程度わかっている。

コンピューターやプログラミングの歴史なんて、大人でも知らないかも!?

そんな、プログラミングがしたい、プログラマーに憧れる子どもたちを対象とした内容です。

小学生向けの基礎知識

プログラミングを学ぶ前に学ぶ本ですから、本書『小学生でもわかるプログラミングの世界』を読んでも、プログラミングができるようにはなりません。

あしからず!

表紙には「プログラミングってそういうことか……」と書かれれています。

「アプリ」ってなに?「言語」ってなに?音楽ってどうやって保存されるの?

素朴な疑問ですが、的確に答えられる大人は限られています……。

プログラミングや、コンピューター、ネットワークに興味を持った子どもたちを、サポートする大人にとっても役立つ一冊になるでしょう。

プログラマーってどんな仕事?

プログラマーに憧れる子どもたちが、プログラミングの先生に教えを乞う内容です。

プログラマーってどんな仕事?どんな勉強すればプログラマーになれるの?

子ども向けの職業案内の側面が大きいですね。

無料アプリでどうやって収益化するの?とか大事な話ですよね。アプリ政策は子どもでもできますから、ますます好奇心かき立てる話でしょう。

図書館なんかで出会いたい

本書『小学生でもわかるプログラミングの世界』は、学校や地域の図書館で、小学生の子ども自身が見つけて手に取って欲しい本だなぁと思いました。

プログラムってなんだろう?プログラマーってどんな仕事?と、自分の興味を満たす一歩になるんじゃないかと思うからです。

プログラミングに興味を持つ子どもに、親が一緒に読むという状況は考えにくい?プログラミング知識のある親御さんでしたら、直接お教えできるでしょうし、知識のない方なら、この本では不十分かなぁと。

読者の「小学生」と言っても、高学年くらいで、自分の力で必用な知識を得られる力のある人向けかな?と感じました。

もちろん、大人が読んでも面白いですよ。

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『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

ターミネーターの世界はやってくる?

というか、人工知能ってなんだ??

きっかけ

『人工知能は人間を超えるか』は、今話題の!ですね。

2015年3月に発表され、依然としてあちこちの読書系ブログさんや、読書メーターで話題になっているのを見て、あさよるも読みたいなぁ!と以前からチェックしていました(^^)/

まずは「人工知能」とは何か?

「人工知能とは」と初歩的な内容から紹介されており、あさよるのような不案内な人間には、『人工知能は人間を超えるか』の導入部分はありがたく、また興味深いものでした。

まず「人工知能」、まるで人間のような知能を持つコンピューターは、未だ登場していません。しかし、人間の脳が電気回路であり、電気信号により思考していることを考えると、同じく電気回路を用いるコンピューターが、知能を持たないということはありません。

人間が電気回路を使い、なんらかの「計算」をしている状態が「知能」なのであれば、それが再現できればコンピューターも知能を持つということですね。

鳥の羽ばたきと、飛行機

また、こんな例も紹介されていました。人類は鳥のように空を飛ぼうと、鳥と同じように羽を羽ばたかせた。しかし、実際に実現した「飛行機」は羽ばたかず、ジェットエンジンを使い、空気の上を滑空するものでした。「空を飛ぶ」を実現したとき、元のモデルになった鳥の羽ばたきとは全く違うものでした。

人工知能が実現するときも、このように起こるのかもしれません。

すなわち、人間の知能を再現しようと研究を始めたが、完成する人工知能は、人間の思考法とは違うけれども、別の方法で同じような知能が実現するかもしれないのです。

そう考えると……ますます人工知能って、どう思考するのか、どんな手順を踏み、「知能」を獲得するのか、好奇心が掻き立てられますね。

知識がないとやや難しいかも…

『人工知能は人間を超えるのか』はとても面白い本です。とってもオススメ。なのですが……。

どうやらAI、人工知能やコンピューターについて、最低限の知識は持っていないと、読み解いてゆくのは大変かもしれません。

これを書いている あさよる 自身が、とてもサッパリわからない分野であったので、人に聞いたり、調べながら読みました(^_^;)>

もちろん、少しネットで調べればヒットするものですから、手間はかかりますが、じっくり読めば問題ないでしょう。

文体も平易で読みやすい文章ですから、「ググればOK!」ってことで(^^)v

「ディープラーニング」でAIが進化する?

人工知能と聞くと、あさよるは人間と将棋を指すコンピューターを連想しました。コンピューターが勝ったとか、人間が勝ったとか、時折ニュースになりますからね。

現在、東大合格を目指す「東ロボくん」も日夜、着々と偏差値を上げ、日本中の大学の合格判定内に入ってきているそうです。一方で、「コンピューターって東大合格出来ないんだ~」「そういうの得意そうなのに~」と思いました(笑)。

よく思春期の頃、「私はコンピューターじゃないんだから、教科書通りにできないよ!」なんて思ったりしていましたが、実はコンピューターもできなかったんですね(苦笑)。というか、テキストの通り、先生の指示通り行動できるのは、「人間らしい」ことだったのかもしれないと思いましたw

ディープラーニング経験の数で勝負!

人工知能研究は、さまざまななアプローチがなされてきました。

問題に対し、最適の解を導き出そうとすると、すべての場合を考えねばならず時間がかかります。人間の場合、勘とか思いつきとか、「見たら分かる」とか、瞬時に判断できることが、すべての場合を考えるコンピューターにとっては、莫大な情報量なんです。

ですから、外れても良いから、手当たり次第チャレンジをして、「失敗する」という経験を積むことで、ハズレを引かない確率を上げてゆく方法があります。

また、人間にとってはひと目で分かる画像も、コンピューターにとっては見分けが難しい。写真に写っているネコを見分けるには、かなりの経験が必要です。さらに、ネコとライオンを見分けるとなると、至難の業。

ビッグデータを用い、たくさんの画像を処理し、ネコと、ネコじゃないものをどんどん判断し、たくさん失敗することでネコを見分ける精度を上げてゆく。このような方式を「ディープラーニング」と言うそうです。

本書『人工知能は人間を超えるのか』ではディープラーニングについてページを多く割かれていました。日本全国の天気の欠けた情報を与え、全国の天気予報の正解率を上げる話など、面白く読みました。

映画『ターミネーター』は実現しちゃうの!?

人工知能と聞くと、映画『ターミネーター』を連想してしまいます。

『ターミネーター』の舞台は2029年。コンピューターが人工知能を持ち、反乱を起こします。人類は絶滅の危機に立たされます。『ターミネーター4』では、人工知能のコンピューターたちが支配する未来の様子も描かれ、とてもコワイ……。

ねぇ!人工知能ってコワイものじゃないんですか!?

著者・松尾豊さんのお答えはズバリ!「人工知能は人類を超えない」。

人間というのいうのは、知能だけの存在ではありません。「人間=知能+生命」なんです。そして、“生命であること”が人間を突き動かしています。生存のために、知能や本能を駆使し生き残ろうとするのです。

しかし、コンピューターには本能がない。もし、本能のようなプログラムが登場しても、生命を、肉体を持っていない。ここが、人間と人工知能の大きな違いなんです。

……ホットするような、ちょっとガッカリするような(苦笑)。

と言っても、人工知能の開発、まだまだ序の口っぽい!本書『人工知能は人間を超えるか』も、著書の考えが色濃く反映されているようなので、また違った方面からの研究、考えを持っている人の書籍も読んでみたく思いました。

とってもオススメ!

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『トコトンやさしい水道管の本』|水道の歴史!種類!管理!修繕!

こんにちは。楽しみは後に取っておく方の あさよるです。本書『水道管の本』も、「あとで読もう」とずっと積んでいた本でした。この「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい~」のシリーズを以前読んで面白かったので、これも楽しみだったのです。

本書『水道管の本』は、水道管に関するあらゆることが収録された本です。水道管の歴史、水道管の原理、水道管の素材、水道管の設計や修理、特殊な水道管、水道管のトラブルなどなど。各節は見開き2ページにイラスト付きで分かりやすく掲載されています。

町に見えない川がある!

水道の歴史は古く、エジプト王朝や古代バビロニア王朝でも水道の遺構が見つかっているそうです。本格的な水道は古代ローマのアッピア水道。エルサレムにあるヒゼキア王のトンネルが世界最古の水道トンネルです。日本じゃ小田原早良上水が最古の水道設備として記録されています。現存する最古の水道は熊本県の豪泉水道です。太閤下水は現在も使われています。

水道管に使われる素材も多種多様で、作り方と特性によって使い分けられているみたい。時代と共に使われなくなる素材もある。素材を聞いただけで設置された頃や目的までわかるのかな?〈利き水道管〉したいw

水道管が町中張り巡らされているようすを想像すると「我々は川の上に棲んでいる」とも言えるのではないだろうか。町には目に見えない川が流れ、流れ続けているのだ。

管理し続ける仕事

ローマ水道もローマ帝国の滅亡により破壊され荒廃してしまいました。水道管は管理し続けなければなりません。現在使われている水道は、日々誰かが管理し続けているということです。本書でも管理、点検、修繕の様子が紹介されているんですが、なんだか途方もない話で唖然!

人が入れない水道管もありますし、有毒ガスが発生していたり、低酸素状態の水道管もあります。危険を伴う仕事の上、気の遠くなるような地道な作業ばかり。鏡を使って地上の光を取り込んだり、車に乗せたライトやカメラで水道管内を点検するマシンがカッコいい。また、超音波やX線を使って水道管内を点検したり、ハイテクとローテクが入り乱れている感じがいい。

他人の仕事にアーダコーダ言えない

うちのご近所も水道工事でしばらるドカドカと賑やかで大きな車も出入りしていたんですが、「おお!この水道管を掘っていたのか!」と思うと、煩わしさは吹っ飛んで「カッケー!」と興奮してしまいました。他人様の仕事にゴチャゴチャ言っちゃあいけないっすな。何か必要があってやってるんだろうし。

この「トコトンやさしい」シリーズはお気に入りで、あさよるネットでも『トコトンやさしい染料・顔料の本』を紹介しました。こちらも、人の知恵の集大成を見ているようで良い本でした。本書の著者、高堂彰二さんも本シリーズで他にも本を書かれているようなので読んでみたいです。

「色」をとりまく人の知恵、すごい!『トコトンやさしい染料・顔料の本』

トコトンやさしい染料・顔料の本 (今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしい染料・顔料の本 (今日からモノ知りシリーズ)

  • 作者:中澄 博行,福井 寛
  • 出版社:日刊工業新聞社
  • 発売日: 2016-02-09

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『トコトンやさしい人工知能の本』|目覚まし前にエアコンつけといて

こんにちは。Google Home が欲しい あさよるです。Amazon Echo のレビューと読み比べていて、 コンセプトの違いがあるっぽくて、あさよるの場合は今のところ Google Home が先に欲しいかな~。

音声入力の人工知能は、今は siri ちゃんに検索やアラームをセットしてもらうくらいですが、これから対応してくれることが増えると楽しいかも。「鍵持った?」とか「お風呂焚いといたよ」「今日仕事じゃないの?」とか気を利かせて欲しいですな。おっちょこちょいの あさよるは待望しております。

と、AIに夢を膨らませていますが、AI(Artificial Intelligence/人工知能)ってなんだ? というワケで『トコトンやささしい 人工知能の本』を手に取りました。この「トコトンやさしい」シリーズお気に入りです(^^♪

人工知能ってなんだ?

人工知能という言葉の定義はなく、その時代やその人によって違った使われ方をしています。概ね「コンピュータが人間のように賢い動作をする」ことを言いますが、時代によって「賢い」の基準も変わっています。昔は数式やパズルを解くだけで「すごい!」ってなもんでしたが、近年では「コンピュータが人の仕事を奪うかも!?」なんて言われてます。近年の人工知能ブームは、コンピュータのアルゴリズムでは難しいと言われていた人間の「直感」や「感覚的」なものが、克服されつつあるからです。

どうしてコンピュータが思考ができるかというと、「論理的思考」は数式で表すことが可能だからです。こんな記述もあります。

電子回路と似ているのが神経の回路です。脳では神経細胞同士が互いに結びついて信号を送り合い、その過程で「かつ」や「または」、「ではない」といった論理的な変換をしていきます。

p.14

機械、ロボットの歴史も簡単に。古代エジプト時代には、空気の熱膨張を利用した「自動ドア」「自動販売機」がありました。18世紀にエンジンの調速機構が登場し、19世紀には複雑な模様を折れる織機が登場します。20世紀にはレーダーによって敵の飛行機の位置が分かるようになりました。20世紀後半にには、コンピュータが計算機から思考する人工知能へと主題が変わりました。ロボットの歴史が古代エジプトから始まるのもビックリですが、人工知能の歴史は超浅いんですね。

1950年代が探索や推論といった人工知能の基本的なコンセプトを提示する時代だったとすれば、60年代は実際的な問題への応用をはじめた時代、さらに70年代はその成果を知識工学として確立させた時代と言えます。

p.20

人工知能の開発は順風満帆ではなく、80年代90年代は冬の時代だったそうです。「人工知能ができないこと」がクローズアップされた時代でもあります。研究が進まなくなったのは「データ不足」。しかし、この問題はインターネットの普及で解決します。インターネット上に無数の画像やデータがあるからです。

2010年代には人工知能ブームが巻き起こります。

 第1の要因は、地道な研究の進展です。冬の時代でも研究は細々と続けられていて、1997年にはチェスで人間チャンピオンに勝つといった成果がありました。デジタルカメラが人の顔を認識できるようになったという進歩も驚異的です。
第2の要因は、インターネットが巨大なデータをもたらしたことです。機械学習を成功させるには、学習の手本となるデータの数が勝負です。SNSでの文章や写真、ネットショッピングの購買履歴、電車の乗車履歴など、多種多様で膨大かつ日常生活にまつわるデータが急に出現したのです。(中略)
第3の要因は、人工知能を必要とする巨大なネット企業の出現です。(中略)直接的な商業的価値を生み出すことが人工知能に期待されるようになりました。

p.24

人工知能の研究は、意外と人間くさい要因で発展しているんですね。人工知能の研究があり、そこにネットの普及、次いでネット巨大企業登場によって、研究が大きく進んだ。現在は商業的な人工知能に突き進んでいます。ここでは、個人情報の取り扱いという倫理的な問題も絡んできます。たとえ匿名であっても、購買傾向や発言の特徴から個人特定も可能ですから、ますますナイーブな問題もはらんでいます。

人工知能のネガティブな言説としては、「人工知能の台頭で人間の仕事が奪われてしまう」というものがありますが、その点は著者の辻井潤一さんは楽観的です。コンピュータができる仕事は人工知能に任せてしまえば、あいた手でより〈人間らしい仕事〉ができます。逆にいうと、現在は煩わしい作業に労力を奪われていますから、そこから解放されるのです。

人工知能について知る!

以上がだいたい第1章の内容です。

第2章は「人工知能を体感してみよう」という章で、人工知能がどのような方法で「思考」をするのかを、図解付きで簡単に解説したものです。人間にとっては子どもできる簡単な判断が、人工知能ではなかなか判別がつかないことも多いようです。例えば、犬と猫の写真を見せて、猫を選ぶということも。

第3章では「人工知能を支える基礎技術」として、人工知能が「思考」をするための「やり方」を紹介したものです。例えば、似ている者同士を分類したり、因果関係の確立ネットワークを組んだり、類似性を見つけ出したり、ネットワークの重要性を見つけ出したり、「傾向」を読んだり。こちらも、人間が思考するときにやっている事柄を、人工知能に当てはめています。

第4章はいよいよ「人工知能はどう応用されているのか?」です。ノイズ交じりのデータから隠れたニーズを見つけ出したり、例えば料理のレシピを読んでなんの料理か判断したり、画像を解析したり、健康管理を人工知能にお願いしたり。

第5章は「ディープラーニングはなにがすごいのか?」で、ディープラーニングの考え方が紹介されます。ディープラーニングは世界をどう変えるのか。もちろん、ディープラーニングの弊害もあるでしょう。このへんは、まだまだこれからの分野っぽいので楽しみです。

大人の事情な人工知能

人工知能の変遷や、現在の人工知能の使われ方を見ると、なんだかものすごく人間くさい。人の営みに寄り添っていると言えばそう。現在の商業的に特化している様子も、その時代その時代のニーズを反映していると思います。

また、人工知能の思考法を見てゆくことは、人間がどのように思考しているのか考えることでもありそうです。電子回路と、脳神経回路のつながり方が、具体的に似ているとは知りませんでした。

また、巷で語られるような「人工知能が人間を凌駕する」というようなターミネーターの世界は、今のところはまだ来てないみたい……? 著者の辻井潤一さんの考える人工知能は、人類を滅ぼす恐ろしいコンピュータ像ではなく、「人類の良き相棒」である人工知能であって、これかの技術の発展が楽しみです。

さて、いつになったら「ガスの元栓閉めた?」「お味噌汁温めといたよ」と、あさよるの世話をしてくれる人工知能が現れるのでしょうか。むしろガスは勝手に切れる仕様になって、味噌汁は人間が作り続けるのかもしれません。

あと、繰り返しの作業は人工知能に任すとして、「人間にしかできない人間らしい仕事」ってなんだろう? 意外とハートフルなほっこり系の話だったりする?

関連本

『人工知能は人間を超えるか』/松尾豊

『コンピュータが小説を書く日 』/佐藤理史

『人は感情によって進化した』/石川幹人

『トコトンやさしい染料・顔料の本』/中澄博行,福井寛

『トコトンやさしい水道管の本』/中澄博行,福井寛

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