こんにちは。ぼけーっと週末を過ごしちゃう あさよるです。頭のいい人って、休んでるときも頭がいいんだよな~と思うと悲しくなってきちゃった(苦笑)。本書『東大物理学者が「考える力」の鍛え方』の著者はもう、なにがどうなっても“カシコ”だし、カシコの著者が「考える力」に鍛え方があるというのならば、それは知りたいと思いましたw
先に言っときます。これ、真面目なヤツです。楽に手抜きする方法は紹介されています。〈考える力〉を正攻法で身につけたいならぜひ。地味で地道な話なのですが、結局コレが一番近道なのかも。
「考える力」とは
「頭の良さ」とはなんでしょうか。受験では「たった一つの答えを見つける力」が評価対象ですが、それは「頭の良さ」の一部であって全体ではありません。大学生になって、あるいは就活が始まって、院生になって、他の「頭の良さ」を求められるようになり、混乱してしまう場合も多いんだとか。
繰り返しになりますが、大学受験までは「たった一つの答えを見つける力」だけが評価対象になることが多く、優秀な人ほどそれに特化した思考を身につけています。しかし、大学や社会では「一つの答え」が存在しない問題が提示されたり、問題すらなく自分で「問題を見つける力」が必要になります。
著者・上田正仁さんは物理学者で東京大学の教授であり、学生たちに「考える力」を身につけさすための教育を本書で紹介されています。学業成績を効率よく上げる「マニュアル力」も、「考える力」を身につけるための基礎力になります。必要な力であり、これを否定しているわけではありませんが、使える場が限られているのです。「考える力」はアイデアを生むために不可欠な「創造力」です。
上田正仁先生によると、「考える力」とは3つの要素があります。それは「問題を見つける力」「解く力」「諦めない人間力」の三要素。簡単に見てみましょう。
- 「問題を見つける力」
問題を見つける力は実社会で重要な力。にもかかわらず、受験勉強ではスッポリ抜け落ちている部分でもあります。大学生や社会人になったとき途方に暮れてしまうのもわかります。大学でも、本格的に「問題を見つける力」が必要になるのは博士課程からといいますから、かなりレアな能力でもあるんですね。
まず、日ごろからの疑問を大切にする習慣を身につける。一方通行な講義に慣れてしまっていますが、「対話」を心がけましょう。
「問題を見つける力」を身につける極意は、人との対話、そして、自分との対話の積み重ねを通じて問題意識を煮詰めていくことなのです。
p.47
普段無意識に考えていることを意識下に置き、一つずつ問題を炙り出してゆきます。考えて「わからない」ことこそが重要です。「わからない」は大抵「事実を知らない」「答えがわからない」「何がわからないのかわからない」の三つです。中で「何がわからないかわからない」はパターンも多く曲者で、わからないことを明確にしてゆきましょう。「何がわからないか」がクリアになれば、問題や課題がハッキリします。
で、当然ですが「メモを取る」習慣が大事です。いつもポケットに筆記具を忍ばせて、どこでもメモを取れるように。情報も、ウィキペディアなんかを読んで「分かった気」になってもしかたありません。じっくりと読み込みます。
面白いのは「自分が理解した情報は捨てよ」との指南がなされている点でしょうか。通常は「知っていること」「分かっていること」が大事だと思ってしまいがちですが、ここでは「分からないこと」を探しているわけです。どんどん自分の理解したことを捨てていくと、ポッカリと「わらかないこと」が浮き彫りになるのです。
- 「解く力」
「解く力」には学業成績を上げるのに必要な「マニュアル力」を使います。課題をパターン化し、解くための手順をしっかりと見定めます。創造的な問題には決まった答えが用意されていませんから、多角的に対策を立てアプローチしてゆきます。
基本的なプロセスは次のようになります。
・複雑な問題を類型化する
↓
・要素に分解する
↓
・各要素を1つ1つ解決する
↓
・解決できなかった要素があった
(または各要素は解決できたが、最初の問題の解決にはつながらなかった)
↓
・その問題解決のために足りない要素は何かを分析し、もう一度トライするp.118
これの繰り返しです。
また、あえてと遠回りをすることも恐れてはなりません。優秀な人ほど最短距離で最適解を見つけてしまう故に、遠回りしないのかもしれません。
2005年にノーベル物理学賞を受賞したテオドール・W・ヘンシュ博士がよく使うスライドの1つに、ニワトリとひヒヨコが描かれている絵があります。ニワトリは柵の向こう側にあるエサを目ざとく見つけますが、柵にさえぎられてくちばしが届かず食べることができません。一方で、気ままに動き回るヒヨコは遠回りしながら、いつの間にかエサとは反対側の柵の切れ目から外に出てしまい、エサへと近づいているというものです。
p.122
ニワトリのように一直線に突き進もうとする行動を「ゴール・オリエンテッド」、ヒヨコのように好奇心のままに行動することを「キュリオシティ・ドリヴン」と言い、研究においては後者の重要性を説いています。
好奇心の赴くままに行動しよう!
- 「諦めない力」
簡単に答えが出ない問題にこそ、大切な時間と頭脳を費やすだけの価値があるのです。自分の見つけた課題に時間をかけて取り組みましょう。このとき、やらないことを決めることで、やるべきことに集中する方法もあります。
原動力は先ほど述べた「好奇心」。好奇心に突き動かされているからこそ、続けられるエネルギーです。また、時には振出しに戻る勇気も必要です。
インスタントな〈答え〉を探しちゃう私たち
中学高校大学と受験や試験問題では〈答え〉を早く見つけるの力が試され続けました。その力ももちろん大切な力ではあるんだけども、〈創造する力〉を身につけるにはその先の「考える力」が必要だと知りました。〈創造する力〉とは、答えのない問題を見つける力です。まだ誰も答えを見つけていないことや、自分独自のやり方を見つけるのです。
ですから〈答え〉ではなく〈疑問〉を大切にする。そのために、自分の無意識化にあることも考える。
ついつい私たち、疑問に思ったことはその場でパッと検索しちゃったりして、適当に分かった気になるような答えを見つけて納得してしまいます。本当はなんにも分かっていないのに……(苦笑)。そうじゃなくって、自分の疑問に対し、好奇心を持って丁寧に取組んでゆきましょう。インスタントにそれっぽい回答が得られる現代だからこその悩みですね。
意外?泥臭く「考え続ける」姿
頭のいい人たちはさぞやスマートに思考していると思いきや、本書を読めば読むほど泥臭く、地道で地味な思考の連続であることを知りました。「思いついたことはメモする」とか「情報をよく読み込む」とか、突飛でもなんでもなく、巷で語られることです。「諦めない」なんてともすれば根性論に聞こえてしまうようなことです。
結局のところ、地道なことを黙々とやり続ける能力ことが「マニュアル力」、すなわち学業成績が良い人なのだろうし、さらにその先に研究や実社会で成果を残す人もやはり、真正面から実直に物事に取り組むことなのかもしれません。面倒くさがりな我々は、すぐにズルしたくなりますが、近道なんかなくって、延々と果てない道を歩き続けることだけがゴールへの近道なのかも。
そういう意味で、パッとやればポンッと結果が出るようなものを探している方にとっては、本書『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』は役に立たないものでしょう。だって、正攻法しか書いてないから。