
雑談で、LINEで、Twitterで、すでにレトリックを使っています。
だからこそ、レトリックについて深く知れば、さらに豊かな対話が紡ぎ出せます。
「なるほど納得!」を目指しましょう!
国語にチャレンジしようと思った…
あさよる は小学生中学生時代から、語学が大の苦手です。
英語ももちろん苦手中の苦手ですし、国語の授業も嫌で嫌でたまりませんでした。大人になっても、「英語ができない」「国語なんて大嫌い…」というノロイから開放されるわけではありませんでした。
語学や言語に関する勉強から逃げまくってきたのですが……どうしても逃げきれるものじゃないんですよね(;^_^A
インターネットを通じて、やり取りされるのは言語によるコミュニケーションです。しかもその言語とは、世界共通語になった「英語」と、母国語である日本語……すなわち「国語」です。
そろそろ苦手だ苦手だと逃げまわっていては、何もできなくなってきました。まずは、日本語の持っている働きや技法を知りたいと思い『日本語のレトリック』を手に取りました。
そもそも……レトリックってなに?
まずは、本書のタイトルにもある「レトリック」とはなんでしょうか。
古代ギリシアにて「レトリック」は生まれました。古代ギリシアでは共和制がしかれており、市民には言論の自由がありました。自分の考えを自分の言葉で表明するためには、説得力のある話をしないといけません。
暴力によってではなく、言葉を尽くし、相手を説き伏せること。それが「レトリック」でした。
レトリックは極めて実用的ですから、時には人を騙したり、詭弁のようにも使われます。ですから、私利私欲のためのレトリックを見破る知性も必要です。
日本では「文章の美しさ」を目指すものとして
古代ギリシアで「レトリック」が登場してから、ゆうに2500年もの歴史があります。長い歴史の中で、時代や地域によって「レトリック」の意味は変化し続け、新たなニュアンスがつけ加えられ続けてきました。
そして、西洋で生まれた「レトリック」が、東洋の日本にも海を渡ってきました。
日本では「レトリック」を、表現の装飾したり、言葉のアヤのような、文章を美しくする意味として使われることが多いでしょう。
まるで文章のアクセサリーのように「レトリック」という言葉が使われるので、度々、レトリックは余計なもの、いらないものとして扱われがちです。
確証よりも「なるほど」が重要
絶対100%確たる証明があったとしても、その事柄を説明し、理解させ、人を納得させ、何らかの行動に移させないと意味がありません。どんなに「あのお店のオムライス美味しいよ!」と訴えても、相手に伝わって、かつ実際にオムライスを食べてもらわないと、説得したことにならないからです。
反対に言えば、多少自信のない、確証のない事柄でも、相手が納得させればOK、ということになってしまいます。
確たる証明よりも、「なるほど」と納得したことのほうが、人は説得に応じます。そのテクニックが「レトリック」です。
レトリックが言葉の豊かさを生む
確証もないことを納得させるテクニックと言ってしまうと、やっぱりレトリックってイカガワシイものだ!と思われてしまうかもしれません。確かに、レトリックは諸刃の刃で、悪用されることもります。
しかし、レトリックは想像以上に、人々の生活に密着しています。雑談やLINEのメッセージや、Twitterの140文字のツイートにも、既にレトリックは大活躍しているんですよ。
レトリックは、言葉の豊かさそのものです。
そして、レトリックそのものは言語を超えて普遍的に存在します。
レトリック研究の辞書のように使える
本書では、日本語のレトリックを、大きく30に分けて紹介されています。
「30って多すぎない?」と思われるかもしれませんが、もっと細かく100以上に分類した人もいるそうです。ですが、さすがに100を超えるとわけが分からなくなってしまいますよね。30くらいなら、大雑把に覚えることもできそうです。
「具体的にどんなレトリックが紹介されてるの!?」と思われる方は、ちょっと落ち着いて。
すでにこのブログ記事だってレトリックで満ち溢れています。
おしゃべりもLINEメッセージもレトリックがほとばしっている
そもそも「レトリック」は概念であり、形も大きさもないものですから「レトリックで満ち溢れている」というのは、喩え話です。
その前には「ちょっと落ち着いて」と突然、読者に語りかける口調を使いました。
「まるで」とか「例えば」とか、「~のよう」「~みたい」とか、普段の会話の中でもたくさん使います。
「お布団がお日様のにおいがする」「バケツをひっくり返したような雨」「割れんばかりの拍手」「トゲトゲした言葉」なんて、もとの言葉の意味も考えず、慣用句のように使います。さらに勝手にバリエーションを付け足すこともありますよね。
「僕の前に道はない僕の後ろに道は出来る」と書いたのは高村光太郎ですが、人生を道に例えたり、山に例えたりは日常茶飯事。
「あなたを責める気はないけど~」と前置きすると、だいたい責める話が始まります。「◯◯なわけあるわけないしねぇ~」と思わせぶりに言えば、「◯◯だろう」という反対の意味を指し示します。
例を挙げればキリがありませんが、キリがないくらい例があるということです。
しかも、レトリックのバリエーションは言語を問わない。「まるで◯◯みたいだ!」という表現の、◯◯に入る部分は自分のオリジナルで構わないのです。
「まるで君の笑い声はサクサクの天ぷらみたいだね」とか、「あなたは用水路のように頼もしいわ!」とか、なんでもいいのです。こんな例えをされて嬉しいかどうかは分かりませんが……。
なんとなくの日本語から一歩抜けだそう
レトリックは、既に普段からたくさん使っています。
おしゃべりが好きな人や、SNSに投稿している人なんかは特に、レトリックを多用していることでしょう。『日本語のレトリック』を読まなくたって、今後も楽しい会話を続けられます。
ですから、この本は、そこからもう一歩。自分の使う言葉を振り返ったり、おしゃべり上手な人のテクニックを研究するためにも、役に立ちます。
以下に掲載する目次情報にあるように、レトリック技法を30に分割し、それぞれ例文を挙げながら解説されています。この例文も多岐にわたり、名文や名作を「レトリック」という切り口で見てみると、これもまた面白い。読み物としても面白いですし、字書のようにも使えます。
「なんとなく」の日本語から抜けだして、ちょっとだけ「言葉」「言語」について触れておこうかなぁという方にオススメしたい一冊です。
正直、1回読んだくらいでは、レトリック分類が覚えきれないので、手元に置いておきたいと思いました。
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