生物・バイオテクノロジー

[レビュー]池谷裕二『脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬』|人間の脳・習性のトリビア

こんにちは。以前、池谷裕二さんの『脳には妙なクセがある』を読み、脳の特性って面白いんだなぁと知りました。

自分が“自分の意志である”と思っていることも、どうやらそうではなさそうだし、自分の考えってなんだ?自分ってなんだ?と混乱しちゃうくらい、ショッキングな読書体験でした。今回、また池谷裕二さんの『脳は何気に不公平』を見つけ、即、手に取りました。

脳は知らないことを知っている?『脳には妙なクセがある』

脳・身体にまつわるエトセトラ

『脳はなにげに不公平』は、脳や人間の身体・習性についての、たくさんのお話が紹介されています。

〈Ⅰ 幸運は伝染する〉では、日ごろ何となく感じていること。人の顔をパッと見ると、なんとなく性格が分かる。これは顔の位置を測ることで、コンピュータでも判断できることのようです。人は顔でその人の性格を判断している!?

また、完全にランダムで〈当たり〉を作っても、幸運な人と不運な人ができてしまうそうです。〈完全な公平〉に分配すると、貧富の差が現れてしまうふしぎ。

〈Ⅱ 人類2.0〉は、科学や遺伝子学の力の話。薬やドーピング、そしてDNAの話。

〈Ⅲ 脳の不思議な仕様〉では、脳が持っている特性の話。睡眠不足だと体重が増えるのはなぜ?なんて、気になる話題も。

〈Ⅳ 「心」を考える〉は、“人間らしさ”の話なのかな?

以上に挙げたように、スパッと完璧に話題が分かれているわけではないのですが、「脳」に由来する人間の習性や行動の雑学集ですね。

トリビア集的な楽しみを

脳科学の話題を一冊かけてじっくり解説する本ではありません。専門的な知識を深く知りたいなら他の本へ。それは先に紹介した『脳には妙なクセがある』も同じですね。専門知識を知るための本ではなく、とっつくにくいいイメージの脳科学に、親しみを感じるような構成です。また、「常識」と思い込んでいるようなことも、科学的に見ると捉え方をすると、意外な答があるかもしれません。

教養を深める系というよりは、トリビア集のように楽しくサクッと読むのがおすすめです。ただね、これをとっかかりに、次の読書に繋がる読書にしましょう。

これまでに紹介した“脳”に関する本

脳は知らないことを知っている?『脳には妙なクセがある』

『あなたの脳のしつけ方』|モテも運も努力も脳次第?

『脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方』

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[レビュー]わかりやすい!『エピジェネティクス 新しい生命像をえがく』|「遺伝」だけじゃなかった!

こんにちは。生物学の勉強がしたい あさよるです。そのために、化学の勉強からやりなおさなきゃいけないことに気づき、呆然としていますw

今回は、大阪大学大学院・生命機能研究科および医学系研究科教授の仲野徹さんの『エピジェネティクス』を選びました。

なんじゃそら!?と聞いたこともない言葉です。仲野先生がラジオ番組に出演されているのを聞き、本書を紹介なさっていたのです。お話も終始面白く楽しい時間でした。

PodcastやWEB上でも聞けるようなので、ご拝聴あれ。↓

ちなみに、以前あさよるネットでも紹介した『かぜの科学』も、番組中に仲野先生が紹介なさっていたので、興味を持ちました。

『かぜの科学 もっとも身近な病の生態』|マスクは効果があるか?

「エピジェネティクス」ってなに?

まず、「エピジェネティクス」ってなによ?って話ですよね。詳しくは本書を読んでくださいとしか言えないんですが(笑)、ちょっと頑張って説明しようとしてみます。

と言いつつ、著者の仲野徹先生が中高生に向けた記事で、エピジェネティクスについてインタビューに答えておられました。

私たちのからだは、精子と卵子でつくられる受精卵が分化して、眼や腕や心臓などの細胞が形づくられていて、どんな細胞をつくるかは遺伝子によって決まります。どの細胞も基本的には同じ遺伝情報を持っているのに、それぞれ別々の細胞になるのはなぜか。それはそれぞれの細胞で使われる遺伝子と使われない遺伝子が決まっているからです。そして、それぞれの細胞には、使われる遺伝子と使われない遺伝子に、ある種の目印がついています。これが「エピジェネティクス制御」です。

―URL:第7回 | この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 | 中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

この後も図解付きで説明が続きますので、ご参照ください。

最初の受精卵の細胞が分裂していく最中に、ある細胞は心臓に、ある細胞は消化器に、ある細胞は脳細胞に、と分化してゆき、身体を形作っています。

どの細胞も同じ遺伝子情報を持っていますが、別々の働きをするのは、遺伝情報が書かれた文字列に付箋をつけたり塗りつぶしたり、ON/OFFが切り替えられるからです。

この、遺伝子に目印をつけON/OFFを切り替える働きが「エピジェネティクス」です。

そして、父親と母親から半分ずつ受け継いだ遺伝子は不変ですが、「エピジェネティクス」は変化します。ですから、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児も、時間と共に遺伝子は同じですが「エピジェネティクス」が働くので別人のように変化してゆきます。

親から受け継いだ遺伝子は不変ですが、しかしその遺伝子の内、どの情報をONにするか。どのタイミングで、どれだけの働きをさせるか。変化します。

かつて生物は生まれながらの遺伝配列に左右されると考えられていましたが、後天的要素によっても変化が引き起こされるんです。

新書ながら、むずかしいよぅ><

本書『エピジェネティクス』は、最新の専門分野のお話を嚙み砕いて簡単に説明くださっているんだとうと思います。あとがきでは、高校生でも背伸びすれば読める内容を目指した、とあります。

しかしながら……あさよるには難しかったぁ……(;’∀’)> 正直、途中読み飛ばしちゃった部分もアチコチありました。

中高で習った理科の知識を総動員してお楽しみください。

「エピジェネティクス」という現象自体、最新のもので、今のところ全てを証明できるものではなさそう。今後の展開に超期待ってことですね。

wktk

「遺伝」とエピジェネティクス

これまで、持って生まれた遺伝子は変わりませんから、発病しやすい病気や体質等、生まれたときから決まっていると考えられていました。

しかし、エピジェネティクスの考えでは、遺伝子の情報だけでなく、どの情報を発現させるのかによって、その個体の持っている要素が変わってゆくと考えられています。

例えば、胎児の頃に栄養不足に陥った人は、生まれるころには通常の大きさで生まれ成長しますが、糖尿病や特定の病気にかかりやすいとデータにあるそうです。

そして興味深いのは、青年期に栄養状態が良かった人の、子や孫世代の寿命や体質に影響しているというデータもあるそうです。もちろん“遺伝子”には親の栄養状態は影響しませんから、エピジェネティクスが何らかの方法で受け継がれているように見えます。

ただ、全ての実験やデータの量はまちまちですから、全てが信頼できるデータとは限りません。が、エピジェネティクスが人間にも働いているかもしれない例として、面白いですね。

わたしたちもエピジェネティクスに動かされてる?

プレーリーハタネズミというネズミの生態が面白かったです。

プレーリーハタネズミの雄と雌は、つがいになると生涯連れ添い、片方が死んでも、もう片方は次の相手に興味を示しません。

この“つがいの絆”は、オキシトシンとバソプレッシンというホルモンが関係しています。

オキシトシンを雌のプレーリーハタネズミの脳室に注入すると、パートナー嗜好が生じます。雄のプレーリーハタネズミにはバソプレッシンを投与しても、同じようにパートナー嗜好が生じます。

「このネズミじゃなきゃダメっ!(///)」って感じ?

二つのホルモンが両者に働くことで、プレーリーハタネズミ夫婦の絆が生じ、逆戻りしません。

エピジェネティクスは、一定方向にしか働きません。ボールがコロコロと坂道を転がることはあっても、坂を上り始めることがないのと同じです。

人間とネズミは違います。プレーリーハタネズミが持っている生態を、ヒトも持っているとは限りません。

だけど自分の行動や嗜好も、同様に何か原因があってボールが転がるように、エピジェネティクスが働いているのかもしれないと思うと……怖い気もしますし、面白いとも思います。

「生まれながらの遺伝子だけではない」という考えは、現代の多くの人にとっても興味深い事柄ではないでしょうか。

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『寄生虫博士のおさらい生物学』|理科の知識が必要なワケ

こんにちは。生物学を勉強している あさよるです。

……化学、生物、苦手だったんですよね~(;’∀’)

しかし、生きる上でとても大事な知識なんだと、自分が歳を取るほど思うようになりました。

だって、医師の言うことを理解するにも、健康のためになにをするにも、理科の知識、化学、生物学が必要なんだもん( ノД`)

いい歳して、もう一回理科の勉強しようと重い腰を上げたところ、『おさらい生物学』というドンピシャのタイトルの本を見つけました。

著者は“寄生虫博士”の藤田紘一郎さん。以前に同著者の『脳はバカ、腸はかしこい』はとても面白く役立ったので、本書も間違いないと読み始めました。

( ´∀`)bグッ!

『脳はバカ、腸はかしこい』|脳はすぐに勘違い、間違っちゃう?

「生物」の授業をおもしろく!

本書の『おさらい生物学』の“ねらい”は、あとがきにて紹介されます。

 今、日本の高校や大学で行われている「生物学講義」はいかにもおもしろくない。生物をギザギザに切り込んでおいて、その断面だけを見せるからだろう。骨と皮だけの「身のない」生物学講義で学生をおもしろがらせたり、イメージを描かせたりするとはとうてい無理な話だと思うのだ。
(中略)
生物学は、自分自身の健康や広く環境問題を考えるための基礎知識でもある。本書はこれから生物学を学ぼうとする学生はもちろんのこと、現代に生きている一般の人たちにもぜひ読んでもらいたい内容になっていることを最後に強調したい。

p.298-299

生物学は現代を生きるに必要な知識であるにも関わらず、高校や大学の「生物学講義」も、中高の「理科の教科書」もおしろくない。

そこで、“寄生虫博士”が「おもしろい理科の教科書」を作ろうじゃないかと乗り出した。それが本書『おさらい生物学』なのです。

“生物学”だからね、むずかしいよね……

タイトル『おさらい生物学』ですから、内容のほとんどは中学高校の理科の時間に習った事柄ばかりです。

生物ってなに?細菌は?ウイルスは?プリオンは?生きものなの?クローン技術やDNA、ABOの血液型。知ってるようで、説明は難しいですよね。

ウイルスや細菌、アレルギーや がん、私たちが気になるのは自分の「健康」のこと。現在、アンチエイジングがトレンドですが、知っておきたいのは人間の体の機能です。

『おさらい生物学』は、生物学に関する話題の全般を扱いますから、範囲も広い。先に述べたように、確かに中高で習った内容ですから「知っている」ことなのですが……。

理科の科目が得意だった方はいざ知らず、あさよるのような人にとっては、なかなかに読むのはボリュームのある内容でした(;’∀’)>

「自分のこと」だから

あさよるは「生物」が苦手でした>< 苦手だからこそ、「しかし生物の知識が乏しいのはつらい……」と痛感していました。

それは、食品を選ぶ時にも、病院へかかったときにも、体の変化を感じたときにも、「理科で習った気がするが……」と思い出せない記憶に戸惑っておりました。

生物学って、生きてゆくために必要な知識であり、ズバリ「自分」を知るための手段でもあるのです。

我々はみな動物であり、生命であり、アミノ酸の塊なのです。

「自分」について考えるとき、「人間」について考えるとき、「いのち」について考えるとき、不可欠なのは「生物学」の知識です。

『おさらい生物学』はあくまで入門の入門書のような存在。この一冊の本から生物学にちょっと興味がわいたなら、少しだけ一歩踏み出しましょう。

著者の藤田紘一郎さんの他著書も楽しいです。

生物学をおさらいしよう

生物学を勉強したのは何年前ですか?

科学は年々進歩してゆきます。そして、記憶はだんだん薄れてゆきます(;’∀’)>

正直ね、面倒な本ですよ、『おさらいの生物学』。著者は「おもしろい理科の教科書」と仰りますが、教科書であることには変わりなく、勉強はワクワクするばかりでもありません。

でもね、生物学を通じて、自分のことを知る。生きることを知る。

それは、哲学や芸術や文学や道徳やなんやかんやと、他の学問とはまた違ったアプローチです。

著者の藤田紘一郎さんの語り口は軽妙で、著者自身が楽しんで書いておられるのが伝わってきます。挿絵もたくさん挿入され、“教科書にしては”かなり楽しい内容。

気楽な読書のともには……ちょっと読むの大変だけどね(by 生物学苦手マン)

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『おなかの調子がよくなる本』|バナナが正解!?

こんばんは。お腹の調子が優れない あさよるです。

元々胃や腸は丈夫だったハズなのですが……やっぱ、これって老化!?

最近、おなかの調子に関する本に手が伸びがちです。

おなかのベストな状態がわかる!

あさよる的に、本書で最も大きな収穫は、便の“正解”が分かったことでした!

お食事中の方すみませんm(__)m

本書内では、「バナナ」が理想だとありました。色も黄色っぽく、やわらかいものです。

で、便秘の人って以外と少ない!?やっぱこれ、異常事態何だなぁと襟を正されました。もっと真面目に便秘解消に乗り出さねば……。

そして反対に、お腹が緩くて困っている人もいるようです。朝の通勤ラッシュ時は、どの駅もトイレがいっぱいだという話を読み驚きました。

みんなそれぞれ悩みは尽きないのですね……。

結局、王道しかないの!?

本書のサブタイトルは「自分でできる腸内フローラ改善法」です。腸内フローラとは、まるでお花畑のように数々の腸内細菌が分布しています。

この腸内フローラの状態がお腹の状態、そして体の状態に影響します。

腸内環境が良いと、セロトニンやホルモンの賛成が高く、脳にも良い影響を及ぼすそうです。

腸と脳!?って聞くと、少し前のあさよるだったら意外すぎて信じられなかったかもしれません。

たまたま、少し前にも、腸内フローラに関する書籍を読んだときも、同じようなことが書いてあったので、それが医学的な考え方なのかなぁと納得しました。

『やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実』

で、この『腸内フローラ10の真実』を読んだ時も感じたのは、結局のところ、楽で裏技的な腸内環境の整え方はないのね……ということです。

規則正しい生活やバランスの良い食事と、適度な運動。これマスト。

両書とも発酵食品、中でもヨーグルトが紹介されていました。腸内フローラのバランスはちょっとやそっとじゃ変わらないそうですが、継続して食品を変えてゆくことで変化があるようです。

あさよるも、この二冊の本を読んで、ヨーグルトと納豆を定期的に食べるよう心がけて始めました。

研究者ってどんな人?

本書『おなかの調子がよくなる本』では、著者が腸内環境研究者になったいきさつや、研究で学んだことなども記されています。

著者の福田真嗣さんは映画『ジュラシック・パーク』を見て、バイオテクノロジーに興味を持ったそうです。

明治大学農学部へ進み、そこで微生物研究と出会いました。

微生物の研究をするなんて特別な人のように思えますが、きっかけって些細なことなんだなぁと感じました。

あさよるも『ジュラシックパーク』に感動しましたが、バイオテクノロジーへ進むことはありませんでした。だけど、あさよるも、あさよるの興味のままにやってきました。

やってることは違いますが、興味を持つきっかけを知ると、「研究者」や「研究職」も身近に感じます。

こうやって、研究者の素顔が知れるってのも、良いなぁと思いました。

ヨーグルトスゴイ

本書を読んだ結論。

「ヨーグルトスゴイ」w

食べ物が自分の体を作っている飲みならず、食べ物は腸内細菌のフローラまで作っている。

また、清潔、除菌こそ正義!って風潮がある気がしますが(ですよね?)、腸内環境を考えると、清潔で除菌された世界が良いとは言い切れなさそうです。

もちろん、人間に害をなす菌もいますが、良い菌まで殺してしまっているんですね。だからと言って、どうすれば良いのかなぁという、新たな疑問と興味も湧いてきました。

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『せいめいのはなし』|「生命」をテーマのダベリはおもしろい

こんにちは。中高生のころ、生物と科学の授業が苦手だったあさよるです。

物理や地学は好きだったんですけどね……(;’∀’)

大人になってから、苦手を理由に避けて通ってきた科目も、勉強しときゃあよかったなぁと、今になって思います。ちょっとずつ勉強していこう……。

そんな思惑もあり『せいめいのはなし』という本を見つけたら……読まないわけにはいかないでしょ!

「せいめい」とは何だ?自分とはなんだ?

本書は『せいめいのはなし』とひらがなのタイトルです。漢字で書けばもちろん「生命の話」なのでしょうが、あえてひらがな。

本書を読んでいくと、「生命」という熟語からイメージする内容からは、離れた話題もたくさん扱われているので、ひらがなが選ばれたのかなぁ?と推測します。

あるいは、カチッとカタチのある固まった「生命」ではなく、あやふやでとりとめもなく、形の見えない「せいめい」のおはなしです。

脱線多し!「生物」や「生命」のアレコレ

生命、生物の難しい話なの!?と構える必要はありません。

著者の福岡伸一さんが、哲学者で武道家の内田樹さん、作家の川上弘美さん、朝吹真理子さん、そして解剖学者の養老孟司さんの4人と、それぞれ対談をされる様子がまとめられています。

「せいめいのはなし」を中心に、4人それぞれの個性的な話に広がります。

時には「脱線しているのでは?」と思うような話題もあるように感じるかもしれません。しかし「せいめいのはなし」というテーマからは外れていないんですよね。

すごく幅の広い、だけどとても気になるテーマの対談集です。

時には哲学や物語のような話を使い、時には幼いころの経験や、素朴な疑問を用い「せいめいのはなし」は続きます。

“考え”のエッセンス。若い人へ

様々な人が、アレやコレや同じテーマで、てんでバラバラの話をしている様子って、ぜひ若い人にこそ刺激的なんじゃないかなぁと思います。

学校で習った生物の知識は、あくまでも果てしない学問のほんの入り口の入り口です。学校では理科とか国語、英語と科目を分けて教えられますが、実は突き詰めてゆくと同じことを言ってたり、同じルーツを持っている話だったりします。

思ってもみないモノとモノが関連していることに気づいた時のヨロコビや快感。そのエッセンスが詰まっている本だなぁと思いました。

カシコの駄弁りはオモシロイw

賢い人、教養のある人を「カシコ」というのは、方言なのでしょうか。『せいめいのはなし』を読んでしみじみと「カシコは駄弁りまでオモロイもんだなぁ」と思いました。

哲学者の内田樹さんとの対談では、細胞のような小さな世界は我々の世界と似ている。それは、我々が見たいものを見ているだけではないのか?鏡を見るように、自分の姿を見ているだけではないのか?と話が広がります。

作家の川上弘美さんは、大学では生物学を研究なさっており、対談では細胞の話に深まります。なんにでもなれる細胞が発見され、夢の細胞を人類は手に入れたかと思いきや、なんにでもなれる細胞は、放っておくと何ものにもなれない細胞です。

周りの細胞が「ここへお入り」と招き入れると、その形になる。へぇという話。

作家の朝吹真理子さんとは記憶にまつわるお話が展開されます。記憶というのは、細胞のどこかに刻み込まれ残っているのではなく、情報は消えてしまう。そこからフェルメールの話が登場したり、面白い。

そして解剖学者の養老孟司さんとのお話は、とても楽しく読めました。ご自身を「虫屋」と呼ぶ養老先生の虫のお話です。

虫を一目見ると、その虫がどの地域に生息する虫なのかなんとなくわかるそうです。「これは熱帯っぽいなぁ」とか「これは砂漠っぽいなぁ」とかいう風に。

それは、熱帯の虫は熱帯地域を連想させる模様や形をしているからだそう。ですが、実はこれは逆なんです。我々人間が、その地域に生息している虫や植物をモチーフに、文様や色彩の組み合わせを作っているんです。

人は、虫に見たいものを見ているというもの。

また、まるで木や葉のように擬態している虫も、「人間の目」で見ると「似ている」だけで、鳥の目ではどう見えているのかわかりません。虫同士でも、違った見え方をしているでしょう。

人間が「擬態」と呼んでいるものも、はたして虫はなぜそんな色や形をしているのかは「人の目」からはわからないんです。

てな感じで、四者四様の対談。最後には著者の福岡伸一さんの『「せいめいのはなし」をめぐって』という章もあり、もりだくさんです。

おもしろかったです。

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