

こんにちは。自分に才能ってあるのかな?と不安な あさよるです。『日本人の9割が知らない遺伝の真実』は、話題の本っぽいことと、才能が発言するタイミングは?なんて帯に書いてあって、恐る恐る手に取りました。
あさよるは、煽り気味のタイトルから「どうせ炎上商法でしょ」「オカルトじゃないの?」なんて疑いながらページをめくり始めたのですが、2章目くらいまで読んでから「こ、これ……マジメなやつちゃうん?」と気づき、驚きましたw マジメなヤツなので、導入部が長いです。結論も、スッキリと読了感が良いわけでもありません。今、「遺伝についてこういう風に考えられてるんだなぁ」と知って、自分の思い込みや勘違いが多かったことにも気づきました。
勘違いされがちな〈遺伝〉の話
本書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』のあとがきでは、本書が『言ってはいけない 残酷すぎる真実』のヒットにあやかった便乗本であることが告白されています。
『言ってはいけない 残酷すぎる真実』|親の言うことをきかない子


『言ってはいけない 残酷すぎる真実』は、遺伝にまつわるみんなの誤解を解く内容で、専門知識がなくても読める内容に書かれています。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』の著者は作家ですが、本書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』は行動遺伝学、教育心理学の専門家です。
本書の冒頭でも、本書についてこう説明されています。
「知能は遺伝する」というと、「親がバカなら、勉強してもムダ」、「遺伝の影響は一生変わらない」、「才能は遺伝ですべて決まってしまう」――そう思い込んでしまう人がいますが、これらはすべて誤解です。
(中略)
行動遺伝学のもたらす知見とは、遺伝的な差異によって人を差別するためのものではありませんし、人の才能がすべて遺伝で決まるといっているのではありません。
私たちは、行動遺伝学が導き出した知見とどうやって付き合っていくべきなのか。本書ではそれを明らかにしていきます。
p.26
「知能は遺伝する」のですが、「親がバカなら、勉強してもムダ」ではありませんし、持って生まれた遺伝とは別の力も働きますから、生まれたときに一生が決定しているわけでもありません。また、現代日本の現状では、学歴と学力、そして生涯年収がリンクしているように感じますが、実際にはそれぞれ別の能力のハズです。現代の教育問題にまで幅広く話が展開してゆきます。
頭が良いのは遺伝?
本書の冒頭で、「かけっこ王国」のたとえ話がなされます。かけっこ王国ではかけっこが早い人たちは18歳になると一斉にかけっこ勝負をし、優秀な人たちはプロのランナーになったり、マラソンランナーや走り高跳びの選手に転向する人がいます。しかし、かけっこ上位10%に入るような超優秀な人は、スポーツの道に進まず、官僚や研究者、経営者になります。家柄やコネがなくても、かけっこの実力があればチャンスがあります。かけっこ王国では、かけっこの能力が高く評価されており、かけっこが苦手な人は好きな職業にも就きにくく、劣等感を受けて生きています。
かけっこ王国の話は、突拍子もなく非現実的な話に思えます。しかし、現代では「頭の良さ」が「かけっこ」に当たる尺度として働いています。頭のいい人は様々な職業に就くチャンスがあり、18歳のとき勉強ができなかった人は能力が低いとみなされ職業も選びにくく、劣等感を抱いて生きます。
そもそも「頭の良さ」は測れるの?
しかし、考えてみると、「頭の良さ」ってどういう能力なのでしょうか?そして、それはどうやって測れるものでしょうか?学力テストは、テストの成績を測ることはできますが、それがその人の能力を示しているとは限りません。
何を持ってして「知能」とするのかは、諸説あり、どの要素をどうやって測るのかもそれぞれ。結局のところ、「測れる知能」が知能とされ、測れない知能は測れないので評価対象になりません。
測れない才能の方が多い
当然ながら、測ることはできないけれども、他にない才能であるという事柄は存在します。本書では、例えば有名大学を出て道路工事の現場作業に従事する人は少ないけれども、土木の現場で必要な才能はあるはずだと考えます。怪我しないよう、安全に大きなものを運び、設置する一連の「勘」としか呼びようのない存在。それは、知能であり才能でしょうが、「測れない」から評価されません。どうように、測れないがゆえに評価されない、低く見られている才能がたくさんあるはずです。
「知能」とは、「測れる知能」のことであり、我々は「測れる知能」の分野が得意な人が評価され、社会の中でチャンスに恵まれます。一方で測れない知能を持っている人は、測れないが故に低く評価され、劣等感を持って生きる人も少なくありません。「どうせやってもムダ」「自分には才能がない」という思い込みほど、人の行動を制限するものはありません。
明快な答えがある話じゃない
本書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』は、現在も研究中の内容を扱っている&これからの教育について扱っているので、明快な気持ちのいい答えが用意されたものではありません。もし、読了後のスッキリ感や感動が欲しいなら、別の書籍を。
反対に、知っているつもりでよく知らない〈遺伝〉のことや、教育、能力について、新しい発見や気づきがあるかもしれません。なぜだろう?どうしてだろう?って答えはないけれども考える指針はある。結論は「自分次第だ」と分かると、元気が出る人もいると思います(逆に、白けちゃう人もいるかもしれないケド)。
分かりやすい才能ばかりじゃない
子育てで、子どもの才能を伸ばしてやりたいと考えている方もいらっしゃいますね。子どものうちに才能の芽が出る子っていますが、それは「見つけやすい才能」だった時の話です。例えば、楽器の演奏が上手いとか、他の子より運動神経がいいとか、分かりやすい、見つけやすい才能です。見つけやすい才能を持っている人は、先ほどの「測れる才能」と同じく、分かりやすいので人に評価されやすいんですね。
しかし、子どもの頃に目立った才能がなかったからといって、その人の能力は決められません。大人になってから芽が出てくる時間のかかる才能もあります。地道に、社会の中で揉まれながら、少しずつ少しずつ磨かれていく才能もあります。あくまで、子どもの頃に見つかる才能は「見つけやすい才能」のみ。ほとんどの人は、時間をかけて才能を磨き手に入れていくんですね。
現在の教育は悪くない、でもベストでもない
現代日本の教育、小中の義務教育と、多くの人が進学する高等学校の教育を、著者は否定しません。多くの人が教育を受けられることに加え、多種多様な「部活」も用意されており、部活動の中で自分の才能を模索する人も少なくありません。教員の質が話題になることもありますが、一部レベルの低い教員はいるかもしれないが、概ね同じくらいの教員が用意されていることも評価しています。
しかし、今の教育がベストでもありません。繰り返しますが、現代の教育は「測れる知能」が評価され、それ以外の人は大きな劣等感を抱くシステムでもあります。本当は他の才能を持っている人が、劣等感から無気力になってしまっては、チャンスもなくなってしまいます。
多様性を見出す教育のかたち?
現在の教育がベストでないなら、どんな教育の形が望ましいのでしょうか。本書では、学校で従来の学習をするよりも、若いうちからインターンシップに出て、本物のプロに出会い、プロの仕事を体験してみることが提案されていました。どんどん、様々な分野に触れてゆく、その中で自分に合った仕事を見つけることもあるでしょうし、反対に「これは向いていない」と向き不向きを実感することもできます。
また、子どもの内は勉強して大人になった勉強しない社会ではなく、必要なときに勉強できる社会が必要です。MOOCや放送大学など、そのための取り組みもなされており、環境は整いつつあります。
あなたの才能を見つけるために
本書で苦笑いしちゃったのは、小中校と12年間もみっちり勉強してもみんな忘れてしまう、と、指摘されていたことです。……た、確かに(;’∀’) 子どもにどんどん学習をさせても、どうせ忘れてしまうんだから、リアル・キッザニアのように、どんどん社会の中で実際にプロの仕事に触れて、適性を見出してゆく方がいいんじゃないかってことですね。そして、学習は自分で、必要なもの・興味のあるものを選べばいい。ポイントは、年齢は関係ないってところでしょうか。必要とあらば、大人になっても、歳をとっても学ぶ。
本書を通しても読むと、どうやら「才能」というのは持って生まれた遺伝的なものが作用しているようです。しかし、その才能を掘り起こし磨き上げられるかどうかは、環境や行動が作用しています。自分で「なんとなく向いてるんじゃないか」と思うことをやってみるってのも、大事。やってみて、向いてるかもしれないし、やってみないとわからないんですね。あさよるも、いまいち自分の適性が自分で見出せていないんですが(;’∀’)、これからもじっくり時間をかけて、磨いたり揉まれたりしながら、目の前のことをやるしかないのね!と思いました。ヨシッ( ・ㅂ・)و ̑̑
本書を読むにあたって、こちらも併せて読むと分かりやすいかも。↓
『エピジェネティクス――新しい生命像をえがく』|「遺伝」だけじゃなかった!


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