こんにちは。あさよるです。池谷裕二さんの本が立て続けに面白かったので、またもや手に取ってしまいました。ちなみに、今まで読んだ中で一番面白かったのは『単純な脳、複雑な「私」』でした。
池谷裕二さんはヒトの脳の特徴や、人の行動・思考のクセについての本を複数出版されています。脳の話は、知れば知るほど不思議で、頭の中が「?」でいっぱいになってゆく面白さがたまりません。
今回手に取った『できない脳ほど自信過剰』は脳に関するコラム集で「ほうほう」と、「知らなかった!」と「やっぱりそうか!」の繰り返しの読書でした。
脳はやたら上から目線!?
本書『できない脳ほど自信過剰』は、ピリッと皮肉の効いたタイトルです。それは「能力が低い人ほど、自分の能力を客観的に判断できないから、自信過剰になりがち」というこの世の心理を端的に表してるからです—―(>_<→ グサッ
ドライバーに「あなたは車の運転が上手い方ですか」と質問すると、70%の人が「はい」と答えるそうです。20%の人が、自分を過剰に評価していることになります。こわいですね~……と、他人事のように言っておこう。サーセンサーセンm(__)m
これは、あなたの〈人が悪い〉わけではありません。ヒトの脳は、見えない相手、よくわからない相手を低く評価する〈クセ〉があるようです。
例えば「オーパーツ」という言葉があります。
オーパーツは、それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる物品を指す。英語の「out-of-place artifacts」を略して「OOPARTS」とした語で、つまり「場違いな工芸品」という意味である。
オーパーツの代表であるナスカの地上絵は、航空技術が発達してから地上に絵が描かれていることが発見されました。航空機がなかった時代、古代人がこのような絵を描くことは不可能ですから、「宇宙人が描いたんだ」なんて話が登場します。……これ、現代人の「思い上がり」ですよね。「古代人は現代人よりも劣っているハズ」という先入観があって「劣等な古代人が高等なことができるわけがない」と考え、そこから「古代人にはムリだから、人知を超える存在が作ったんだ」→宇宙人、という発想に結びついてゆきます。しかし、古代人であれ、我々と同じホモサピエンスです。我々と同じことを古代人が考え、実行していてもおかしくありません。
また、人間以外の動物を低く見てしまうという傾向もあります。当然ですが、ヒトが得意なこともあれば、ネズミが得意なこともあり、哺乳類より虫のほうが長けていることもあります。なのに、ヒトは高等だと、つい考えています。
同じような話で、どうしても私たちは機械、ロボットを下に見てしまいます。ヒトの方が優秀であると思っているし、そうであって欲しいと願っているのかもしれません。
ヒトの脳は本来的に自信過剰にできていて、なかなか冷静に判断ができないようです。本書のタイトルは『できない脳ほど自信過剰』ですが、さながら「ヒトはやたらと上から目線だなあ」という感じ。
脳や人の行動に関するコラム集
紹介が遅れました。本書『できない脳ほど自信過剰』は、著者の池谷裕二さんが「週刊朝日」に連載されていたコラム集です。ですので、テーマは毎回違っていて、脳や人の行動に関するコラムが雑多に集まっている印象です。雑学や話のネタにどうぞ。
以下、あさよるが気になった、面白かった話を少し取り上げます。
- 自己評価が伴わない
先に述べました、ヒトはどうやら自己評価が伴わない存在のようですw 〈自信過剰〉だけでなく、自己評価が低い人ほど、他人のユーモアに敏感だったりと、自己評価のできなさは〈自身過少〉にも働くようです。
面白いことに「自称ウソツキ」の人は、実際にウソツキだそうです。ということは、ウソツキほど正直者であるということ!?
- 思い込みが強い
〈自信過剰〉と繋がりますが、ヒトの脳は思い込みが強いw 例えば、しつけは、厳しくするよりも、褒めて伸ばす方が効率的だそうです。しかし、やっぱり感覚的に「しかし厳しい方が効くんじゃないか」と思ってしまう自分もいます。
同じような話で〈我慢〉はするほど忍耐力が落ちてゆくという話に触れられています。たぶん、実際にそうなんだと思いますが、これもやはり体感としては「我慢した方が良いんじゃないか」と自分で思い込んでしまいそうです。
あと、ビジネス書にもよくありますが「おとり商品」に騙されてしまう話。松竹梅の3つの商品があった場合、買わせたいのは竹で、竹を買わすためのおとりとして松をメニューに加えると、みんなまんまと竹を買ってしまうというお話。これも、「自分でメニューを選んでいる」と思い込んでいるのに、実際には商売上手にノセられているのです。
- 一目ぼれせよ!
恋愛結婚した夫婦より、お見合い結婚する方が離婚率が低いという話は聞いたことがあります。恋は盲目ですから、相手の欠点も見えなくなって結婚するのですが、恋が冷めてしまうと……というワケ。
しかし「一目ぼれ」で結婚するカップルは意外にも長続きするそうです。なんでも、「一目ぼれ」とは、その人の収入や職業、家柄や社会的な立場や、なにもかもを度外視して、パッと見て潜在的に「好印象」の相手だからです。次第に相手の欠点が見えてきても、そもそも「好印象」を抱いている相手だから、悪い部分には目をつぶることができるんだそう。これは意外。
- 三途の川が!
死の直前〈三途の川〉が見えるという話は、オカルトではなく、ホントらしい。といっても「川が見える」のか分からないけれども、瀕死の状態から一命を取り留めた人の中に、臨死体験をする人は多く、現実よりもリアルに感じるそうです。実際に死にゆくマウスの脳派を調べると、死の直前に独特な脳の変化が起こるそうです。
ここから、あさよるの余談ですが、日本人は臨死体験で川辺で大切な人を見るそうですが、文化が変わると見えるものが変わるそうです。「川のほとりで」というのは、日本人の心象風景なのでしょうか。関係ないけど、日本人の子どもは昔(今も?)「川で拾ってきた」というのが定番です。「コウノトリが」「キャベツ畑の」の日本版ですね。どうでもいい話だな。
- 気合でどうもならないことがある
体内で水分が不足すると記憶力が下がるそうです。特に子どもは、学校に登校してきた時点で水分不足になっているそうで、テスト前に水分を取らすといいらしい。大人も、小まめに水分を取って体調管理を密にした方が、能率が良いってことでことですね。「気合」「根性」ではどうにもならないことがある。
あと、よく寝た方が学習効率が上がるとか、散歩がいいとか、「いわずもがな」な話ですが、脳科学的に見ても、はやりそうであるという裏取りができた気分。
ちょっと発見、ちょっと反省
本書『できない脳ほど自信過剰』はコラム集ですから、ちっちゃな面白い小ネタが詰まっています。一節ずつ小さな発見と、ちょこっと自分に反省しつつ、自分のことを棚に上げて楽しめる、好奇心を刺激するエンタメ本ってとことでしょうか。
脳の働きや、ヒトの認知って、意外と自分の体感・実感とは齟齬があるようで、知れば知るほど不思議な世界です。また、ネズミの生態や、虫の能力を知ると、ヒトの脳を知ることは「生命とは」を考えることになるようです。なにもヒトだけが特別な存在ではないんですね。わかっちゃいるけど、つい「特別」な感じに考えてしまいます。
よく、数学的な確率と、実感としての確率が乖離する話があります。23人集まれば、50%の確立で同じ誕生日の人がいる、とか、やっぱ実感として信じがたい。ヒトは感覚的に選択すると、分が悪い選択をしてしまいます。「わたし、間違えるんで」と開き直って対策を考えた方がよさ気。
池谷裕二さんの本はどれも面白かったので、また違う本も読んでみたいです(^^♪
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池谷裕二さんの本
脳科学の本
- 『脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方』
- 『あなたの脳のしつけ方』|モテも運も努力も脳次第?
- 『最高の休息法』|脳科学×瞑想で集中力が高まる
- 『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』|我慢、苦労は脳にいい?
- 『「賢い子」に育てる究極のコツ』|脳の成長は〈ワクワク〉!
できない脳ほど自信過剰
目次情報
はじめに
Ⅰ 脳のクセを知る
嘘つきは実は正直者!?
「目」は語る
ユーモアがわかる人は自己評価が低い
斬新すぎるアイデアは理解されない
悪い噂は良い噂の2倍広まる
しつけは叱ってはだめ
結婚後に絶望するカップル
ヒトの選択行動には重要な意味がある
我慢すると忍耐力が下がる
失敗するほうが脳は学ぶ
見えない相手を下に見る脳のクセ
「おとり効果」の上手な使い方
プラセボ効果の利害は善か悪か
「サービス精神」はほどほどに
笑って楽しい人生にⅡ 記憶とは何か
ぼうっとすることが記憶力を高める
「へえ!」は記憶に残る
睡眠学習は効果あり!
記憶の持続にカフェインが効く
記憶が蘇る薬を発見!
散歩は記憶力を高める
体の水分不足で記憶力が下がる
ヒトは過去を都合よく歪めるⅢ ヒトをヒトたらしめているもの
ヒトは約1兆種類のにおいを識別可能
人は一人では生きれない
「豊かな」生活とは何か?
「仲間」の効果とは
男と女が存在する意義は何か?
変わりゆく世界で「変わらないもの」
私たちのルーツを探る!
IQは遺伝する
脳の活動はコントロールできる
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なぜ、ヒトは「社会」を作るのかⅣ 「気持ちいい」を科学する
「好きだから」が一番!
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可能性を秘める「共感」と「同情」の研究
他人の不幸は蜜の味
退屈の苦痛にヒトは耐えられない
「気が合う」とはどんな状態か?
仲間はずれは必然的に生まれる
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iPS細胞に「心」は宿るか
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「長寿の薬」は夢ではないけど……
受験を「薬」に頼るのは卑怯なのか?
自ら学習するコンピュータ誕生!?
人工知能が活躍する時代に初出一覧
参考文献
池谷 裕二(いけたに ゆうじ)
1970年、静岡県生まれ。薬学博士、東京大学薬学部教授。神経の可塑性を研究することで、脳の健康や老化について探求している。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。著書に『進化しすぎた脳』(講談社)、『脳はこんなに悩ましい』(共著・中村うさぎ/新潮文庫)、『ココロの盲点(完全版)』(講談社)、『脳なにげに不公平 パテカトルの万能薬』(朝日新聞社)など多数。
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