『「やりがいのある仕事」という幻想』|お金のために働くでOK??

こんにちは。夏バテがひどいあさよるです。去年も夏はぐったりしてたんですが、こんなだったっけ……いつも徒歩で移動する距離を電車に乗ってしまうという(-_-;)

と、この暑い中、就活頑張ってらっしゃる学生さんたち、お疲れ様です。今回は、就活生の方も目を通してもらえると良さげな本をチョイスしました。といっても、そんじょそこらのビジネス書や、働き方を説く本とは違います。なんたってタイトルが『「やりがいのある仕事」という幻想』w

先に言っておきます、あたり前で露骨に本音の話をしているのですが、こんなこと教えてくれる本もなかなかなかろうかと思います。決して「優しい」感じではありませんが元大学助教の森博嗣さんの「親切」で「真摯」な内容が良いと思いました。

誰も言わないホントの話

本書『「やりがいのある仕事」という幻想』というタイトルからしてもう、アケスケで内容を物語っていて秀逸です。すなわち、「やりがいのある仕事」というのは幻想であるという話なのです。

なにより、本書が書かれた経緯からして、アケスケです。編集者から若者の就活や就活自殺をうけ“人生の目標”について森博嗣先生に書いてほしいと依頼を受けた。それに応えた。しかし、著者自身が大学の教官から作家になり、会社員の経験はない。多くの人とは違った経歴の持ち主である。それにしても、そもそも人それぞれ違っているし、職業もいろいろだ。そう思案しつつも、助教授として学生たちと接していたことと、やはり多くの人が幸せになるように願っている。そんな経緯で、本書は執筆された。

もう、本書はこの「まえがき」だけでも全てを言っている。人それぞれ違っているし、人は働くために生きているわけでもない。そして、職業に貴賤もない。「やりがいのある仕事」とは幻想なのである。

〈やりがい〉〈好き〉〈楽しい〉と〈お金を稼ぐ〉こと

本書を読んで改めて考えると「やりがいのある仕事」というのは変な話なんですね。もちろん、今の仕事にやりがいがある人もいるでしょう。「やりがいがある」ことが悪いと言っているわけではありません。不思議なのは「仕事にやりがいを感じなければならない」という強迫観念めいた考え方なのでしょう。もしかしたら今、「自分は仕事にやりがいを感じている」と思っている人も「そう思わなければならない」と思い込んでいるのかもしれません。

〈やりがい〉という言葉も、気になります。例えば「好きな仕事がしたい」とか「楽しい仕事がしたい」なんて言うと「仕事はそんな甘い物じゃない!」と言われてしまいそうですが、「やりがいのある仕事をしたい」或いは「仕事にやりがいを見出したい」と言うと、なんか収まりがいい。しかし、別に好きなことでお金を稼いでもいいし、仕事は楽しい方がいい。もっと言えば、「仕事しなくていいならしたくない」「お金があるなら働かない」って、なんか「言っちゃいけないこと」みたいな雰囲気。不思議ですね。

森博嗣さんは、「やりがいのある仕事」を否定するわけじゃないけど、仕事をお金を稼ぐ手段としてもいいじゃないとおっしゃいます。そして、その仕事に上も下もない。職業に貴賤はない。みんな口ではそう言います。だけどなんとなく「カッコいい職業」「みんなの憧れ」があるのって、これも不思議な話。

「羨ましがられたい」「スゴイって言われたい」「認められたい」

職業に貴賤はないと言いながら、なんとなく良い職業とそうでない職業がある気がする。多くの方は、内心「カッコいい職業」「憧れの職業」「羨ましい職業」なんてあるんじゃないでしょうか。そして「それに比べ自分の仕事は」あるいは「あの人の仕事は」と何かと比べている気がしませんでしょうか。

結局のところ、他人が羨ましがるような仕事がしたいとか、みんなが憧れる職業に就きたいとかって願望がどこかにある。そして、上手いこと他者が羨ましがる仕事に就けなくても、「自分はこの仕事にやりがいがある」と言いたい。本当は、やりがいなんてなくても構わないのに、「やりがいがあるんだ」「好きなんだ」って言い切りたい。だって、「やりがいのある仕事」に就いている人もまた、羨ましい対象だから。

他人の評価を踏襲して生きることに重きを置くと、「結婚しないといけない」「子どもを持たなきゃいけない」という考えにも繋がっていく。要するに「幸せな結婚をする人は羨ましい」「子どもに囲まれて生きるのは憧れられる」。もちろん、自分の意志でそれを望む人を反対しているわけではない。ただ、なんとなく「みんながそういうから」と、トレンドに乗り遅れないよう取り組んでいる人もいるのでしょう。

自分の〈やること〉をやる

長々と書きましたが、『「やりがいのある仕事」という幻想』で述べられている考えは、みんなの憧れや羨望に乗っかる必要はないこと。別に「お金が欲しくて働いている」でもいいじゃん。それよりも、自分の価値観ややるべきことに取り組むべきだ。すなわち、働いてお金を儲けて、自分のすべきことをやる。で、好きなことややりたいことって、既にやってるでしょ?

自分の考えるというのは、仕事だけでなく、結婚や家族も同じ。もちろん、結婚制度を否定しているわけじゃない。だけど、なんとなく焦って「やらなきゃ」「決めなきゃ」と思わなくてもいいじゃん。子どもも同じですね。もし、「子どもができると羨ましがられる」「憧れられるママになりたい」と、周りの人から「認められる」ための活動は、やめてもいいんじゃない?という提案ですね。

他人から「認められるため」の就活ではなく、自分が「生きるため」の就活をしよう。本書『「やりがいのある仕事」という幻想』では、包み隠さない本音を暴くのですが、森先生は親切だなぁとも思いました。誰も言わない誰も教えてくれないことを、わざわざ文字にして提示してくれるんですから。

就活で絶好調な方はそのままがんばるとして、ちょっと「どうなるのかな」「このままでいいのかな」と感じている学生さんは、ちょろっと立ち読みでもしてみてください。「なんじゃこりゃ」と本を元に戻してもいいし、少しだけ、みんな分かってるけど口にしない本音を知りたくなったら、どうぞ。

「やりがいのある仕事」という幻想

目次情報

まえがき

この本のきっかけ
若者の相談から考えた
人はそれぞれ違う
人は働くために生きているのではない
職業に貴賤はあるか
若者にとって就職が悩ましい理由
この本で書きたいこと

[第1章] 仕事への大いなる勘違い

仕事の定義
「羨ましがられたい」という感情
仕事ってそんなに大事なの?
仕事をしていると偉いのか?
仕事は平等とは無関係
肩書は無効化されていく
金と権力の作用
権力からは逃げられる
仕事でのし上がれた時代
偉大さ・大変さを捏造
無理に働く必要はない
精神論のツケ
楽しさを演出する時代
涙と感動が人生の生きがい?
人は何で評価されるのか

[第2章] 自分に合った仕事はどこにある?

働くことが一番簡単
好きなことが最良とは限らない
好みか、それとも適正か
自分のことなのにわからない
「みなが憧れている会社」の危うさ
今良いものはいずれ悪くなる
流されないためには
将来をイメージしよう
自分に投資をする
大学院では得か
常に勉強する姿勢を持つこと
いつまで仕事を続けるのか
サラリィマン以外
「上手くいかない」のも仕事のうち
周囲の言葉に惑わされない
自分にとっての成功はどこにあるか

[第3章] これからの仕事

客観的に世間を観察する
ほとんどの情報は正しくない
社会の大きな流れ
仕事は大きな流れ
仕事は減って当たり前
定常に達した社会では
エネルギィの問題がある
生き残る仕事、消える仕事
マイナ思考になる
スペシャル思考になる
スペシャリストの強み
マイナをまとめるプラットホーム
これからのライフスタイル
高齢化と省エネの観点から
過去のスタイルから卒業しよう
宣伝するのは売れないから
広告という商売の今後
狭い範囲で選ぼうとしていないか

[第4章] 仕事の悩みや不安に答える

理想と現実のギャップ
すぐに仕事を辞めてしまう人
長く働こうと思うから辞める?
問題はすべて人間関係
もっと抽象的に、客観的に考える
具体的な問題に答えてみよう
Q 仕事に希望がありません
Q やりがいがか、給料か
Q 仕事に厭きています
Q 働きたくないのですが……
Q 人に頭を下げるのに疲れた
Q 日本の労働環境は異常なのか?
Q 休日に心が休まりません
Q 自由時間がありません
Q ノマドはファッション?
Q 職場が殺伐としています
Q 孤独な職場で寂しいです
Q 放っておかれています
Q 社会人の幸せとは何でしょう
Q 仕事のほかに楽しいがありません
Q 辞めるに辞められません
Q ブラック企業に勤めています
Q 理不尽な上司がいます
Q 会社から必要とされていないようです
Q 未来への不安が尽きません
Q 会社員に自由はありますか
少々のフォロー

[第5章] 人生と仕事の関係

取り上げられた生きがい
企業戦士の時代
受験戦争の時代
やりがいという幻想
やりがいとは何か?
それはやりがいではない
人生のやりがいはどこにあるか?
自由はどこにあるか?
何故いつも楽しそうな人
他人の目を気にしすぎる
貧乏でも金持ちでも同じ
人に自慢しないと気が済まない?
仕事に没頭するということ
主婦について少しだけ
向いている人に任せる
一つのものに打ち込む?
誤解しないでもらいたいこと
できるかぎりのアドバイス

あとがき

なりたかったらもうしているはず
難しくて冷たい?
検索しても解決策はない
死にたくなったことのある人へ
僕は何のためにこれを書いたか

森 博嗣(もり・ひろし)

1957年12月7日愛知県生まれ。作家。工学博士。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年に『すべてがFになる』(講談社ノベルス)で第1回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビュー。以後、『スカイ・クロア』シリーズ(中央公論新社)、S&Mシリーズ、Vシリーズ、Gシリーズ(いずれも講談社)などの小説から、『自由をつくる 自在に生きる』(集英社新書)、『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』(新潮新書)などのエッセイまで、約250冊以上の著書が出版されている。仕事量は1日1時間であり、最大の関心事は模型製作。

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