こんにちは。やっぱ〈本〉に関する話題が好きな あさよるです。日頃は〈本好き〉と名乗るほどじゃないと思っているんですけれども、やっぱ本の話題に食いついちゃうのは、本好きの証拠でしょうか。
本書、タイトルが『本が好き』。もう、これは読んじゃいますよね。内容も、安野光雄さんの本にまつわるエッセイです。
「本が好き」な人の本にまつわるお話
本書『本が好き』は、本が好きな本にまつわるあれやこれやのお話。みなさんも、本好きな方ならそれぞれ本への思いってありますよね。そして、その思いを語るってことも、あるんじゃないかと思います。本書でも、安野光雄さんが、各章ごとに本を取り上げて、その本に〈まつわる〉お話が始まります。安野光雄さんのイラストも添えられているのもポイント。
本好きの本語りって、その本について語るパターンと、その本から派生した話を語るパターンとありますよね。本書は完全に後者です。あさよるも、本の内容について深く語るものよりも、本にまつわる〈その人〉の話が展開していく方がドラマチックだし、素敵だなーと思います。
(ちなみに、当あさよるネットは、本の内容について語るという方に特化してしまっているので、もっと他方の要素も盛り込みたいなぁと思いつつ……。中の人の好み敵には、自分語りの方が好き。だけど実際に自分で書くと本語りになってしまうという……)
話があちらへこちらへが楽しい
本語りで楽しいのは、その人ならではの「自分語り」が繰り広げられるところです。本書では、安野光雄さんの原風景や、見聞きしてこられたのであろう事柄が展開され、これが面白い。
安野光雄さんは1926年生まれで。現在(2017年)御年90歳を超えておられます。世代の違う方の話って、真新しく知らないことばかりです。あらよるはこの手の、人生の先輩方の思い出話を読むのが好きでして、あさよるの知らない時代の話が聞けるのが楽しいです。例えば、戦時中の話題が登場しますが、戦時下での庶民たちの様子って現代の我々とそう変わりません。その時代の人たちがどう暮らしていたのかしると、自分の生活のルーツや元ネタがあるような気がして楽しくもあります。
次々登場する著名人とのエピソードや、落語の話や、あさよる的には楽しい読書でした。本好きさんも共感したり、あるいは「自分だったらこのエピソードを」って考えるのも面白いですね。あとあと、やはり挿絵が素敵!
ゆったり時間をかけて、少しずつ読み進めていくと、きっと良い読書になろうかと思われます(^^)/
本が好き
目次情報
糞の山にもぐりこんで一生このままでいよう
『完訳ファーブル昆虫記』奥さん。砂漠でそんなことを言わんでも……
武田百合子『犬が星見た――ロシア旅行』アフガニスタン人の犠牲はその百倍だと考えてもいい
中村哲・澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』文明人はこれをやぶってはシリフキにつかう
『絵本 パパラキ』構成・絵 和田誠、ショイルマン編、岡崎照男元訳*
心の支えにしてもらいたい本
デカルト『方法序説』谷川多佳子訳科学の道は遠い
橘南谿『東西遊記』宗政五十緒校注門外不出の本、貸すわけにはいかない
ホワイト『科学と宗教との闘争』森島恒雄訳「遺伝子のたくらみ」を語るよりむつかしい
日高敏隆『人はどうして老いるのか 遺伝子のたくらみ』*
私にはただ非情な不名誉だけが残されたのであります
コロンブス『全航海の報告』林家永吉訳
堀田善衛『スペインの沈黙』
ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』染田秀藤訳そんな長いものがよめるか、というひともあろうが
デュマ『モンテ・クリスト伯』山内善雄訳世論というものは、つかみどころもなく抵抗する方法もわからない
大沸次郎『ドレフュス事件』さらばよし・人はいざしらず
カーン『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』吉田秀和・郷司敬吾訳*
気のせいかレフカダ島の沖は宍道湖にそっくり
小泉八雲『耳なし芳一』カツラがうまく作れても、誰がかうものか
芥川龍之介『羅生門』『藪の中』ふしぎに『平家物語』を読んだ気になってしまう
井伏鱒二『さざなみ軍記』無用の戦役によって民の疲弊がはなはだしい
司馬遼太郎『韓のくに紀行』*
英国公使館は文明開化を卑俗だとして無視している
イザベラ・バード『完訳 日本奥地紀行』金坂清則注*
あの庭に鶏頭が咲いていたのか
森まゆみ『子規の音』読み進むと、最後に驚くべき展開が待っている
岡倉覚三『茶の本』わたしは文語文の、きちんとした言い方に酔った
森鷗外『即興詩人』入歯が靴の中から出てきた
『逸話に生きる菊池寛』、菊池寛『父帰る』*
圓生の頭のなかはどうなっているんだろうと思う
六代目三遊亭圓生『新版 寄席育ち』まあ、とにかく戦争は終わった
三木のり平『のり平のパーッといきましょう』聞き書き 小田富二わたしは、がんらいB面的だから
半藤一利『B面昭和史』ほか目をうごかして、わたしを呪うしぐさをする
志賀直哉『城の先にて』*
原稿は頼む前からできているのではないか
『吉村昭自選作品集 別巻』トイレのペーパーで作った紙飛行機に「SOS」と書いた
堀内誠一『パリからの手紙』枇杷くらいもどかしいものはないのではないか
谷川俊太郎『ことばを中心に』『よしなしうた』本当の意味での思想家、考える人であった
遠山啓と大岡信についてあとがき
本書で紹介した主な本
安野 光雅(あんの・みつまさ)
一九二六年、島根県津和野町生まれ。山口師範学校研究科修了。
一九七四年度芸術選奨文部大臣奨励賞、その後ケイト・グリナウェイ特別賞(イギリス)、最も美しい50冊の本賞(アメリカ)、BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン章などを受賞。一九八八年に紫綬褒章、二〇〇八年に菊池寛賞を受ける。津和野に「安野光雅美術館」、京丹後市には「森の中の家 安野光雅」がある。
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