佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』|九十代女子のリアル

こんにちは。話題の本が気になる あさよるです。佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』がランキング上位に入ってるのは知っていました。先日、散歩中、道のわきで本書を読みふけっている方がいて、「そ、そんなに熱い本なのか!!」と驚き、さっそく あさよるも読み始めるのでした。影響されやすいです(;´∀`)>

老いも、ネタに昇華するエネルギー

「卒寿? ナニがめでてぇ!」

啖呵で幕を開ける本書。一番最初の話は〈こみ上げる憤怒の孤独〉。いやいや、佐藤先生……キレッキレじゃないっすか~!ブラックや~。笑えん~ww

御年九十歳になられた作家・佐藤愛子さんのエッセイ(現在2017年3月は93歳)で、原稿用紙に手書きで書きあげあられたそうです。

利発でエネルギッシュなお人柄がバンバン伝わってきますが、そこここに隠れている「老い」を丁寧に描写している様子は、気づくとドキッとします。単に、老いを笑い飛ばしているだけでない、ジメッとした感じや、人間の直面する現実がにじみ出ているような……。

ネタも、新聞の悩み相談を度々拾っておられる感じとか、なんか、活動範囲や日々の習慣が透けて見えるような……そういうのドキッとします。

「私の夢はね、ポックリ死ぬこと」
と友人はいった。
ポックリ死が夢?
なるほどね、といってから、けれど、と私はいった。
「あんたは高血圧の薬とか血をサラサラにする薬とかコレステロールを下げる薬とか、いっぱい飲んでるけど、それとポックリ死とは矛盾するんじゃないの?」
すると憤然として彼女はいった。
「あんた、悪い癖よ。いつもそうやってわたしの夢を潰す……」
彼女にとってポックリ死はあくまで「夢」なのだった。そうか、そうだった。「夢」なのだ。彼女は十代の頃、アメリカの映画スター、クラーク・ゲーブルと熱い接吻を交わすのが「夢」だった。ポックリ死はいうならば「クラーク・ゲーブルとのキスなのだ。」現実には掴めないことをわかっていての「夢」である。
「ごめん」と私は素直に謝った。私たちの「夢」はとうとうここまで来てしまったのだ、と思いつつ。

p.27-28

ごめんなさい。こういうとき、どんな顔をすればいいのか分からないの(#^^#)

これ、ユーモアの部分なんですよ。でもね、「老い」を取り出してホラと見せつけられたようです。平易な文章で、これっぽちの文章で、リアルすぎるよ佐藤先生。

そして2017年、高齢社会の日本にとって、これが「共感」なのだろうかと思うと、別の意味でも背中が寒い。

相容れない、世代と世代

一方で、老人の愚痴として、若年層への批判や、進化しすぎるモバイル機器へもおよぶ。

あさよるも一応まだ若者世代(のつもり)ですので、若年世代の置かれている状況や言い分を度外視して、年寄りがの都合の話ばかりなのは、辟易してしまいます。同じような感想を持たれる方も多いようです。

が、これって「お互い様」なんですよね。著者が若い人に理解を示さないように、若者世代も90代の高齢者に耳を貸していない。みんなお互いに忙しいし、大変だし、わけがわからないし、お互いに「どうせわかりっこない」といがみ合っている構図なのかもなぁと気づきました。

世代間格差って、相容れないのかな。

往く道なのか

佐藤愛子さんもお若い頃はブイブイ言わしてらしただろうが、歳とともに文明の利器とも疎遠になってゆくのかしら。年寄りの戯言だと一蹴することも可能でしょうが「年寄り笑うな行く道だ」ってね。

救いなのは、愛子さんがとにかくパワフルで、愚痴は言っても弱音を吐かないところ。体に不自由は現れても、それをネタにエッセイを書きあげる底力。軽快な語り口とユーモア。弱気にならず、「いちいちうるせえ!」と周りを蹴散らすパワー、これ、長く生きるのに必要なのだね。

本書と直接関係ないけど、「老後」のためには「豊かな語彙力」は不可欠っすなぁ。

九十歳。何がめでたい

目次情報

こみ上げる憤怒の孤独
来るか? 日本人総アホ時代
老いの夢
人生相談回答者失格
二つの誕生日
ソバプンの話
我ながら不気味な話
過ぎたるは及ばざるが如し
子供のキモチは
心配性の述懐
妄想作家
蜂のキモチ
お地蔵さんの申子
一億総評論時代
グチャグチャ飯
覚悟のし方
懐かしいいたずら電話
思い出のドロボー
思い出のドロボー(承前)
悔恨の記
懐旧の春
平和の落とし穴
老残の悪夢
いちいちうるせえ
答は見つからない
テレビの魔力
私なりの苦労
私の今日この頃
おしまいの言葉

佐藤 愛子(さとう・あいこ)

大正十二年大阪生まれ。甲南高等女学校卒業。昭和四十四年『戦いすんで日が暮れて』で第六十一回直木賞、昭和五十四年『幸福の絵』で第十八回女流文学賞、平成十二年『血脈』の完成により第四十八回菊池寛賞、平成二十七年『晩鐘』で第二十五回紫式部文学賞を受賞。エッセイの名手としても知られ、近著に『孫と私の小さな歴史』や『役に立たない人の人生相談』がある。

コメント

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