こんにちは。ラジオっ子のあさよるです。つい深夜ラジオを聞いて朝寝坊をやめられません。今はradikoもあるのにね(;’∀’)
爆笑問題の深夜ラジオも面白くてついつい聞いてしまう番組の一つです。テレビでは、太田さんがフリーダムなキャラに感じますが、ラジオではむしろ田中さんの方がキワどい感じですね。意外と、常識的なのは太田さんで、常識があるからこそ、ちゃぶ台をひっくり返すようなことができるのかも……。
で、2018年は爆笑問題が結成30年の年だそうで、太田さんの書籍が出版されました。
照れと違和感がもたらす露悪趣味的な何か
『違和感』は爆笑問題の太田光さんが、爆笑問題結成30周年記念にまとめられたエッセイ。Amazonの紹介ページには「語り下ろし」とあるので、聞き書きみたいですね。「人間関係」「笑い」「世間」や「世論」を取り巻くニュースなど、身近な話題に関する「違和感」をテーマに話されています。
太田さんと言えば、テレビで毒舌キャラって感じでしょうか。ちょっと斜に構えて皮肉屋っぽいイメージ? あさよるは「シャイな人なんだな~」って印象でした。しかし本書『違和感』を読むと、太田さんって毒舌でもシャイでもなく、「素直にホントのこと言っちゃう人なんだ」と気づきます。それは「純粋」とも言えるけれども、「露悪趣味」とも言えるでしょう。
つまり、誰も思ってるけど言わないことを言っちゃう。例えば、本書では「〈いじり〉と〈いじめ〉は同じだ」という話題がなされています。太田さん自身も相方の田中さんを〈いじり〉ますが、結局のところ「みんな他人をバカにして笑っているんでしょ」と誰も言わないことを言っちゃいます。それが芸人の芸であれ、それを見ている人は「上から目線」がどこかにあって、何かを「笑っている」ことには変わりありません。「〈いじり〉と〈いじめ〉は違う」というのは、人を笑う方の理屈であって、笑われている側からすればそんなのどちらも同じでしょう。
芸人として、お笑いの持っている功罪というか、笑いの仕組みまで冷めた視線で語られているのが、意外に感じ驚きました。
たけしと談志のええ話
個人的に「ええ話や」と感じたのは、死にたいとこぼす談志が元気がないからと、ビートたけしに「談志師匠に会ってほしい」と頼み、太田さんが幹事役で、談志、たけし、そして太田の三人で食事をしたときの話。いばらく時間がたって、談志が言う。
「たけしがいて太田がいる。今日は最高にうれしい一日だ。ただひとつ俺にはおおいに頭を悩ませることがある。さっきからずっと小便がしたいのだが、行くべきか、行かざるべきか、それを悩んでいる」p.171-172
なにこの言い回し最高にオシャレじゃないっすか!あんまりどうのこうの言うのも野暮ですが、二人への称賛の言葉をこんな風にあらわせるんだなぁと。
そのあと、談志師匠が色紙を3枚取り出し、記念に3人でサインしてそれぞれを持ち帰ろうと提案します。そじてまず、色紙の真ん中にテレビでは放送できないマークをでっかく書く。太田さんにとっても宝物だけど、絶対にテレビでは放送できないw
底にあるのは「白け」なんじゃないか
本書『違和感』の冒頭で、日本のお笑いにあるのは「照れ」だと触れられています。太田さんの印象も照れ屋でシャイな人のイメージだったから、それも相まって納得しました。しかし本書を読んでいると、太田さんの人柄の底にあるのはどうしようもない「白け」なんじゃないかと思い至ります。
熱く情熱的になりきることができない。ブームに乗り切りことができない。マジョリティのお祭り騒ぎに便乗しきれない。だからといって、マイノリティに同情し、共感もしきれない。なんかそういう、どこか「冷めた視線」、前のめりになれず、引いてしか物事を見れない態度みたいのを感じました。それは太田さんの特性だけではなく、太田さんたち「新人類」と呼ばれた世代の持っている世界観なのかもしれません。実際に本書のレビューを見ると、同年代の方が「わかる」と共感なさっているのが印象的でした。
太田さんは破天荒なわけではなく、本当はとても常識的な人で、すごく冷静に物事を見ていて、なにかお祭り騒ぎやブームを冷ややかに傍観する視線を持っていて、だから「誰も言わないこと」をズバッと言っちゃう。その場のノリに乗りきれないのかもしれません。なんかその冷めた感じ、あさよるも「わかるかもなぁ」なんて。
もし、テレビでしか爆笑問題を知らない人は、本書を読むとイメージが変わるかも?
違和感
目次情報
はじめに
第一章 近づくほど難しくなる人間関係
■個性について
個性なんて出さないようにしても、出てしまうもんでしょ■生きづらさ
「生きやすい」って感じで、生きている人なんているの?■好き嫌い
そもそも愛と憎しみは、同じ場所にあると思っているから■人間関係
どうせ引きこもるなら、矢印を自分に向けて、孤独を感じたほうがいい■いじめ
「いじめ」と「いじり」は違うと言うが、俺はまったく同じだと思っている■格差社会
お金で階層分けしてくるなら、価値の置き方でひっくり返せると思う第二章 いつも、自分に問い続けている
■テレビ
なんで俺は、テレビの仕事にこだわるのか■ニュースと真実
自分なりの「真実」を探ることが、大切なんじゃないか■流行
流行を作りたいと思ったことは一度もない、かもしれない■毒舌
結局、毒舌は誰がそれを言うかということ■未来予想図
AIに対抗できるのは、人間は負けて悔しがれることだと思う第三章 「笑い」は、人を殺すことがある
■仕事(ワークワイフ・バランス)
「笑い」は俺の人生を圧倒的なまえに変えちゃった■権威
賞って、わかりやすく世間を変える力がある■才能と技術
「才能がないかも」と悩んでいるなら、そんなもん入り口でしかない■古典
古典芸能のすごみは、型を作って残しているってこと■立川談志
談志師匠は、ずっとずっと悩み続けていた第四章 「世間」というど真ん中にある違和感
■常識と田中さん
田中は“日本の常識”だけど、常識なんてあやふやなもんでしょ■モラルと道徳とルール
ルールそのものは、冷血であるべきだと思う■大衆
大衆は時として、怪物になる怖さがある■憲法九条
日本の常識は世界の非常識って、それのどこがダメなんだよ■テロと戦争
単なる悪の国っているのは、存在しないんじゃないか?■死生観
終わり方のかっこよさを教えてくれたのは、母親だったおわりに
太田 光(おおた・ひかり)
1965年5月13日埼玉県生まれ。1988年、同じ日本大学芸術学部演劇科だった田中裕二と漫才コンビ爆笑問題を結成。1933年『NHK新人演芸賞』で、漫才では初めて大賞を受賞。同年、テレビ朝日の『GAHAHAキング爆笑王決定戦』にて10週勝ち抜き初代チャンピオンに。以降、爆笑問題のボケ担当としてテレビ・ラジオで活躍。文筆活動も活発に行っている。主な著書に『爆笑問題の日本言論』(宝島)『カラス』(小学館)『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書)『マボロシの鳥』(新潮社)など
コメント
[…] 爆笑問題・太田『違和感』|肯定しきれない白けと、静かな憧れ […]