秋元康,鈴木おさむ『天職』|仕事の「運がいい」人、悪い人

今回読んだ『天職』は秋元康さんと鈴木おさむさんの対談集です。どちらも業界のトップを走る二人が考える「仕事」のこと。といっても難しい話をしているのではなく、純粋に、無邪気に仕事に打ち込むこと、やりたいことをやること、面白いことに打ち込むことなどが語られています。

今の仕事にやりがいがあり、打ち込んでいる人にとって、もっと元気になる内容だと思います。

もし今、仕事がうまくいかなかったり、なにか頭打ちをしているような人にとっては、そもそも「仕事」ってなんだろう、どんな働き方が理想なのだろうかと考えるきっかけになると思います。

本書では様々なテーマをお話になってるのですが、中でも印象に残った話題を紹介します。

夢は叶う!?

お二人が「夢は叶う」と断言しているのが印象的でした。だけど、夢の形は変わってゆくかもしれないし、夢のレベルは違うかもしれない。

例えば「女優になりたい」という夢だったら、小さな劇団に所属して、女優をやる人もいる。本人がそれを楽しんでいれば、「夢は叶った」と言える。「社長になりたい」なんかもそうだよね。自営業者はみんな小さな社長なんだから、なろうと思えば誰だってなれる。

それを「楽しんでやっている」ってところにフォーカスしているのが、二人の対談の見どころだと思った。年にいくら稼ぐとか、どれだけ人から評価されるとか、そこじゃなくて「楽しいか」が基準。これが本書の本質なんじゃないかと思う。

チャンスをつかむこと

鈴木おさむさんのエピソード。昔、とある写真集を買ってきてと頼まれたのに、忙しさにかまけて買わなかった。そのことを番組のディレクターから裏でえらい怒られたそうです。理由は、写真集が欲しいから買ってこいと言っているのではなく、話題の写真集を買ってくれば、それをみんなにプレゼントすることができる。すると、その写真集を買ってきた鈴木さんにみんなが注目してくれる。そういうチャンスを与えてくれているのに、それを棒に振ったのです。

そこで秋元さんがこんな話を続けます。

ここに運があって、反対側に夢があったときに、この二つを結ぶものがないように見えるよね。だけど目の前の小さな運をたどっていくと、夢のほうにいく場合がある

p.48

チャンスってわかりにくいものだけど、小さなチャンスをたどっていくと、夢に近づいてくことがある。夢に近づかなくても、幸せにつながっているかもしれない。

そのためには、小さなチャンスを見逃さないことが大事ですよね。そのためには、小さな約束だったり、人からのお願いだったりとか、忘れないことだったりするのかも。あと、どんないつチャンスが訪れても対応できるように「準備しておくこと」も大事ですよね。

苦境もおもしろがる

鈴木おさむさんのエピソードで、放送作家としてお金稼げるようになったころの話。ご両親が事業をなさっていて、その借金がかさんでいることを知った。その時は、それは良くないこととして仲間内に話すと、面白い話だとみんなが食いついて聞いてくれたエピソードが登場します。

または、鈴木おさむさんのお家に泥棒が入ったとき、まだ家の中に泥棒が潜んでいるかもしれず恐怖を感じながらも、とっさにビデオを回して空き巣の記録を残したというエピソード。

どちらも、ついていない嫌な経験ですが、だからこそ「興味深い」経験でもあります。それを面白がっちゃうんですね。

誰だって、生きていれば一度や二度は、大きな嫌な経験にぶちあたることもあるでしょう。そのとき、その経験を嘆いたり落ち込んだり、自暴自棄になるのではなく、これは面白いと、自分の糧にできるならば、その人は強いと思いました。

ちなみにわたしは……考え方はわかるんですが、いざ自分の経験にあてはめると、過去の出来事を面白おかしく話せる自分もいますが、だけどリアルにそのことを思い出すと、怒りや自己嫌悪など負の感情が強く大きく湧いてきます。まだまだ、鈴木おさむさんの境地には及ばないですね。

「やる」と「やろうと思ってた」

鈴木おさむさんが小説を書いた時、方々から「自分も書こうと思っていた」と話をする人があらわれたそうです。

小説を「書く」ことと、「書こうと思っていた」には雲泥の差があります。

当たり前ですが、夢に近づくこと、面白い/楽しいことに近づけるのは「やる」ことです。「やろうと思っていた」はいくらそう思っていても、実際に何もやっていないのですから、なにも起こりません。

これって耳の痛い話です。

「運がいい」こと

本書では「運」ってものがあると話されていて、運のいい二人であることも対談からわかります。

運はもちろん努力だけではどうにもならない要素が多くはたらくんだけれども、小さなチャンスを見逃さなかったり、行動し続けたり、すべての時間を面白い/楽しいに傾けていたり、運をひきつけるような状態があるんだろうとわかります。

当ブログでもこれまで「運」について扱った書籍を紹介したことがありました。わたしの理解では、人から好意的に思われている人は、周囲の人から「よりよくなること」を願われているわけですから、チャンスのバトンも回してもらいやすくなります。反対に嫌われている人は、幸せになることを望まれていませんから、誰からもチャンスを回してもらえません。

運って、全くのランダムにめぐってくるのではなくて、やはり運の良い人ってのがいるんだと思います。

本書『天職』でも、天職だと思える仕事に就けることは「運」ですが、その運って、自分の行動次第だと二人は話しているんだと思います。

まずは「自分ってツイてるな」って思える小さなことを積み重ねていくことが大事なのかもしれません。

みなさんはご自身の仕事を「天職」だと思われているのでしょうか。小さな行動の積み重ねが、面白い/楽しいだったり、幸せにつながっていると言われれば、ちょっとだけ納得出来ちゃわないですか?

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天職

  • 2013年6月30日
  • 朝日新書
  • 秋元康、鈴木おさむ

目次情報

第1章 九八%は「運」で決まる

1 九八%の運と一%の汗、一%の才能
2 まずは「やりたい!」と口に出す
3 逆境ですらおもしろがる
4 運をたどっていくと、夢につながる

第2章 「好奇心」を育てる

1 運を手にするためのたった一つの方法
2 予定調和を壊していけ
3 スピードこそが時代を制する
4 「太陽」になれば企画は通る
5 おもしろがれるかがすべてだ
6 苦しみや悲しみを「ステキ」に変える
7 会議ではしゃべり惜しみをしない

第3章 「汗」をかくしかない

1 「やる」と「やろうと思った」のあいだの深い川
2 スランプをどう乗り越えるか
3 よくない仕事は、自分を追い詰めていく
4 四〇歳になったら働き方を変えてみる

第4章 「才能」は誰にでもある

1 おもしろい人生に嫉妬する
2 「やりたい」「なりたい」と言っているうちはダメ
3 独自の登山ルートを開拓すべし
4 仕事は自分の「七人の侍」と出会う旅

第5章 「夢はかなう」は本当か?

1 夢に諦めどきはあつのか
2 自分を信じる「イタさ」を持つ
3 夢がかなうイメージを持っている人は、強い

第6章 「天職」との出合い方

1 やりたいことの「種」を育てる
2 天職に就くとはどういうことか
3 次の世代に何を手渡せるか
4 運命の糸を見逃すな

あとがき

秋元 康(あきもと・やすし)

1958年東京都生まれ。高校在学中より放送作家として活躍。「川の流れのように」など作詞家としてヒット曲多数。2008年に日本作詞大賞、12年に日本レコード大賞・作詩賞を受賞。13年にはアニー賞長編アニメ部門音楽賞を受賞。テレビ、映画、CMなど多岐にわたり活躍中。AKB48の総合プロデューサーとしても知られる。

鈴木 おさむ(すずき・おさむ)

1972年千葉県生まれ。大学在学中の19歳でデビュー。「SMAP×SMAP」「お試しかっ!」「ほこ×たて」など数々の人気番組の構成を手がける。主な著書に、『ブスの瞳に恋してる』『テレビのなみだ~仕事に悩めるあなたへ77話~』『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』がある。

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