「色」をとりまく人の知恵、すごい!『トコトンやさしい染料・顔料の本』

「色」をあつかう職業&趣味の方へ。

染料・顔料を取り巻く人類の技術。すごい!

DTP、イラスト、クラフト、陶芸…いつでも「色」は大切だ!

あさよるは元々「色」に関する趣味や仕事を持っていました。

印刷物を作成する仕事をしていたり、絵を書いたり陶芸をしたり、手芸も好きです。最近はちょっぴり色気づいたのか、ファッションについても興味があります。

どれも、インクやペンキ、染料や顔料で、塗ったり染めたり混ぜたりメッキしたり、「色」を扱う事柄です。

たまたま図書館で『トコトンやさしい染料・顔料の本』を見つけ、あさよるの仕事&趣味に必要な知識だなぁと思い、読み始めました。

『トコトンやさしい染料・顔料の本』が役立つトコロ

ナチュラル指向な方にお役立ち!

食品偽装や薬害などから、ナチュラル志向の方が増えていますね。天然素材のものにこだわり、ケミカルなものは遠ざけている方も多いかと思います。

ところで、「ナチュラル」ってなに?あるいは「ケミカル」ってなんでしょう。

きちんとした知識を持てば、不要に不安になる必要がなくなります。『トコトンやさしい染料・顔料』はその名の通り、小学校、中学校で習った理科を思い出しながら読めば、やさしく理解できるよう、噛み砕かれた内容です。

「ナチュラルかケミカルか」から「どんな使い方をするか」に

あさよるは、「ナチュラル」と「ケミカル」って、同じことなんだなぁと気付きました。すべての自然素材は「化学物質」ですし、科学や物理は自然そのものが研究対象です。

大切なのは、人体に害のある物質かどうか。また、その物質は、どんな使われ方をしたとき、害があるのか、です。

『トコトンやさしい染料・顔料の本』では、繊維や食品着色料、金属顔料についても細かに解説されています。十把ひとからげに「良い」「悪い」と分けるのではなく、一つ一つの染料の特性を見ていこうと思いました。

化粧品の働きも知っておきたい!

化粧品や日焼け止めクリームのしくみも解説されており、「ほぉ~」っと関心しました。

半透明の肌の上に、不透明の肌色を塗ったらおかしなことになります。役者さんたちが使うドーランも、あくまで舞台用。あれを普段も塗っているとヘンです。

ですから、ファンデーションも肌と同じ半透明に作られています。しかし、これがとても優秀!白い下地の上に塗ると白く反射し、黒っぽい下地の上に塗ると、赤く肌色に見えるよう、作られているんです。

要するに、肌の上では白っぽく反射し、シミやホクロなど肌の黒い部分では肌色にカバーをする。

ファンデーション賢い!顔料ってすごいなぁ!と思いました。

絵、イラストを描く人へ

あさよるも絵を描くのが好きなので、顔料は身近に感じます。

例えば、「絵の具」と一口に言っても、水彩と油絵の具は性質が違います。アクリル絵の具にはアクリル絵の具の特性があります。油性のマーカーを使うのか、墨汁を使うのか、ポスカで塗るのか。

絵の上手な人は、複数の素材をいろいろ研究しているので、見習いたいなぁと思います。

さらに『トコトンやさしい染料・顔料の本』では、液晶も紹介されていました。

現在、絵を描くと言えばパソコンでデジタル画を専門に書く人も多いですよね。液晶画面もまた、画材の一つですから「染料・顔料」として紹介されていて嬉しくなりました。

ステーショナリーファンも押さえておきたい顔料の話

染料・顔料と言えば、パッと思いつくのは、マーカーペンやスタンプ、特殊インクなどの文具かもしれません。毎日使うものですからね。

文具は、内蔵されているインクだけでなく、ボディーにもメッキや印刷など装飾が施されています。もちろん、それらも染料・顔料です。

近年では、消せるボールペンが話題で、広く普及しましたね。インクを特殊なカプセルに閉じ込め、こすった摩擦熱で透明になる仕掛けです。

何気なく使っているペンにも、面白い発想&すごい技術の粋が集まっているのが、文具の魅力ではないでしょうか。

『トコトンやさしい染料・顔料の本』に触れて、愛用している文具の魅力を、また違った角度から味わえました。

ハンドメイドやクラフト好きさんにはぜひ!

『トコトンやさしい染料・顔料の本』では、繊維の染色方法も詳しく紹介されています。

動物の毛が染まるのは、人間の髪の毛が染まるとの同じとしても、確かに、ポリエステルやナイロンのような、化学繊維も染められるのかなぁ?と、言われてみると不思議に思いました。

もちろん、化繊も専用の染料を使えば染められるそうです(実際、染められた繊維の服を着ていますもんね)。

繊維以外にも、人類が長く作り続けているものがあります。陶器です。果てのない釉薬の世界……そして、土自体にも色があります。

他のも、皮を染めたり、フェルトを染めたり、ハンドメイド好きには、「染め」は結構身近なものですよね。

ものが染まる仕組みを知ると、自分のやっていた工程の意味がわかり、今後は自分なりの工夫もしてみたくなりました。

自動車やバイクの塗装

自動車やバイクの塗装の技術も、とっても進歩していますよね。

家の壁にペンキを塗るのも同じですが、塗料そのものが自動車やバイクを守る役割を果たしています。

塗料の仕組みは、基本的には絵画の絵の具とも同じです。アルタミラ洞窟に描かれた絵や、卵の白身を使って描かれた“テンペラ画”(有名なのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』)など、塗料の歴史は長く、バラエティ豊かなんですね。

つや消し加工の方法や、偏光パールのしくみも理解できました。

デザイナーや、印刷に関わる人へ

特にDTP関連のデザイナーにとって、印刷についての理解はあって然るべきもの。

しかし、オフセット印刷やシルクスクリーンの違いはわかっていても、顔料の違いや、プリンタ、インクトナーの違いは、なんとなくしか知らなかったりします(あさよるのコトです(^_^;))。

コピー機のしくみも『トコトンやさしい染料・顔料の本』で紹介されていましたが、正直、あさよるには難しくて薄っすらとしかイメージできませんでした。分子の働きを利用して、コピーを取るそうで、「なんかスゴイことしてるだ…」ということだけわかりました。

アパレル、ネイル、ファッション好きにも

繊維や樹脂に関する知識が盛り沢山ですから、アパレル系やネイル、ヘアメイクなど、おしゃれ好きな人にも『トコトンやさしい染料・顔料の本』はとても関係のある内容です。

また、1章まるまるを使って「色」についての説明がなされています。

人間が目で見ている「色」って、すごく不思議で面白いんですよね。

カラーコーディネーター試験を受けるなら!

色彩検定やカラーコーディネーター検定を控えている人も、ぜひ一度『トコトンやさしい染料・顔料の本』を読んでおくといいんじゃないかなぁと思いました。

あさよるも、カラーコーディネーター検定3級を持っていて、色彩検定2級は勉強だけしました(試験受けてない^^;)。一応、試験範囲は知っているつもりです。

正直、『トコトンやさしい染料・顔料の本』を読んでも、試験で点数が取れるわけではありません。

しかし、ただ漠然と、試験対策として数値や固有名詞を覚えるのって面白くないし、大変ですよね。だったら、実際に、試験範囲の知識がどんなところで使われているのか知っておけば、イメージしやすいんじゃないかなぁと思います。

「色」に関わる仕事や趣味のある方へ

ちょっと特殊な本なので、誰でも彼でもにオススメ!とは言えません。

絵を書いたり、ハンドメイドなど、作品を制作する方。

陶芸やプラモデル、フィギュアなど、立体造形を制作する方。

自動車の塗装や、家の塗装、ペンキを使ってDIYされる方。

アパレルやネイル、美容師さんなど、特別な職業に就いている方などなど。

「色」に関わる仕事や趣味を持っている人にオススメです!

かなり駆け足でたくさんの染料や顔料の特性や性質が紹介されているので、これを入り口に、それぞれ専門の方へ進むと良い内容です。

関連記事

トコトンやさしい染料・顔料の本

  • 中澄博行、福井寛
  • 日刊工業新聞社
  • 2016/2/9

目次情報

はじめに

第1章 染料・顔料が彩る世界

1 この世界は色に満ちている[自然の色・人間社会の色]
2 赤の世界[情熱、血、紅花、柿右衛門]
3 青の世界[静的、空、ブルージーンズ、群青]
4 黄の世界[陽気、冨、ウコン、クチナシ]
5 緑の世界[自然、草木、クロロフィル、コバルトグリーン]
6 紫の世界[高貴、貝紫、紫根、モーブ]
7 白の世界[純潔、雲、雪、漆喰、酸化チタン]
8 黒の世界[陰気、お歯黒、カーボンブラック、黒錆]

第2章 染料・顔料って何?

9 染料と有機顔料の違い[染料と顔料の定義]
10 染料の基本的な性質[染料の化学構造の特徴と染色性]
11 有機顔料の基本的な性質[有機顔料の種類と微細化]
12 合成染料はいつごろできた?[合成染料の歴史]
13 色が出るもとは何?[色素の発色原理と見える色]
14 色をはかる[可視光の吸収成分の分析と色を表すものさし]
15 色の予測[コンピューターによる吸収波長や分光反射率の計算]
16 色の見える感度[周りの明るさによる視感度の変化と色覚異常]
17 顔料の性質[粒子の大きさと形状]
18 表面は別の顔[顔料の表面積、吸着、等電点などの性質]
19 顔料の触媒作用[顔料の酸点、塩基点、酸化、還元作用など]
20 顔料が油などに均一に混ざるためには[顔料の分散と濡れ]
21 機械の力で顔料を細かくする方法[顔料の解砕]
22 顔料の分散安定化[電荷の反発と浸透圧効果]
23 顔料の表面処理[表面を変化させるか他物質を被覆される方法]

第3章 衣食住を彩る役者たち

24 化粧は神代の昔から[メーキャップと顔料・色素]
25 美しい肌の演出[自然なファンデーション]
26 髪の色を染める[ヘアカラーの仕組み]
27 紺屋の白袴[藍はなぜ染まるのか]
28 美味しい色[食と着色料]
29 土と炎の芸術
30 ジャパンの色[漆に使われる顔料]
31 アルタミラの色彩[絵の具の歴史、種類]
32 グーデンベルグの贈り物[印刷と印刷インキ]
33 家もカラフル車もカラフル[塗料と顔料]
34 標識[色により区分される]

第4章 いろいろな合成染料とその特性

35 綿やナイロン繊維を着色する[直接染料]
36 化学結合して染色する[反応染料]
37 羊毛やナイロン繊維を染色する[酸性染料]
38 アクリル繊維を染色する[塩基性染料]
39 ポリエステル繊維を染色する[分散染料]
40 セルロース繊維を染色する[建染染料]
41 白い布を輝く白さに[蛍光増白剤]
42 発ガン性のある染料やアミン類[染料の安全性]

第5章 代表的な顔料とその扱い方

45 顔料の分類[有機顔料、無機顔料の種類と特徴]
44 着色顔料[チタンと鉄の酸化物の特徴]
45 ジェルから作る顔料[ゾル-ゲル法による合成]
46 金属顔料[金属光沢、導電性を特長とする顔料]
47 真珠光沢顔料[干渉色によってパール感を持つ顔料]
48 液晶の鮮やかな色[コレステリック液晶で色を出す]
49 蛍光・蓄光顔料[エネルギーを吸収して光る顔料]
50 紫外線防御顔料[透明なのに紫外線をカット]
51 ナノ粒子の不思議[表面プラズモンと量子ドット]

第6章 色素の機能と先端技術のなかの用途

52 光エネルギーを熱に変える[CD-RやDVD-Rに使われている色素]
53 光の進む方向を制御する[偏光フィルムに使われている色素]
54 光で電荷が発生する[コピー機に用いられるカラートナー用色素]
55 電荷を中和する[レシートや切符などに使われている色素]
56 熱で拡散する[熱転写フィルムに使う色素]
57 温度によって発色、消色する[消せるボールペンに使われている色素]
58 熱で拡散する[熱転写フィルムに使う色素]
59 紫外線で光る[偽造防止のためのセキュリティ技術用色素]
60 電気を流すと発光する[有機ELに使われる発光する色素]
61 光で発色する[光で発色するいろいろな色素]
62 溶媒の極性をはかる[溶媒で色が変わる色素]
63 会合や凝集[会合や凝集状態で色が変わる色素]
64 紙に印字する[インクジェットプリンタに使われているいろいろな色素]
65 樹脂を選択的に着色する[液晶テレビのカラーフィルターに使われている色素]
66 電極を染める[有機太陽電池に使われているいろいろな色素]
67 ガラスを着色する[ブラウン管やガラスびんの着色皮膜用色素]
68 生体成分を染める[臨床検査で使われる色素]

【コラム】
●虹色の世界
●青いバラ
●色の変わる動物
●染料の思わぬリスク
●セレンディピティ
●記憶メディア革命

参考文献
索引

中澄 博行(なかずみ・ひろゆき)

1973年 大阪府立大学大学院工学研究科中途退学。同年 大阪府立工業技術研究所 研究員、1976年 大阪府立大学工学部 助手、1980年スイス工科大学博士研究員、1991年 大阪府立大学工学部 講師、1994年 大阪府立大学工学部 助教授。1995年より大阪府立大学大学院工学研究科 教授、2010年 大阪府立大学21世紀学研究所 機能性有機材料開発研究センター所長。工学博士。色材協会理事、副会長、近畿化学協会理事を歴任。
【主な著書】
「機能性色素の最新技術」シーエムシー出版(共著)、「機能性色素のはなし」裳華房、「顔料の事典」朝倉書店(共著)、「色彩化学ハンドブック 第3版」東京大学出版会(共著)、「機能性色素の化学」化学同人(共著)、「化学便覧 応用化学編 第7版」丸善(共著)など

福井 寛(ふくい・ひろし)

1974年 広島大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 (株)資生堂入社、工場、製品化研究、基礎研究〈粉体表面処理〉などの研究に従事。香料開発室長、メーキャップ研究開発センター長、素材・薬剤研究開発センター長、特許部長、フロンティアサイエンス事業部長、資生堂医理化テクノロジー㈱社長などを歴任。
現在、福井技術者事務所代表。工学博士、技術士(科学部門)、日本化学フェロー、東北大学未来科学技術共同研究センター客員教授。また、山梨大学、近畿大学、千葉工業大学にて非常勤講師として勤務。
【主な著書】
「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」日刊工業新聞社(共著)、「おもしろサイエンス美肌の科学」日刊工業新聞社、「トコトンやさしいにおいとかおりの本」日刊工業新聞社(共著)、「トコトンやさしい界面活性剤の本」日刊工業新聞社(共著)、「トコトンやさしい化粧品の本」日刊工業新聞社など
“Cosmetic Made Absolutely Simple”Allured books

コメント

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