『阿修羅像のひみつ』|CTスキャンで3Dデータ化された阿修羅たち

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こんにちは。あさよるです。奈良国立博物館で現在開催中の「第70回 正倉院展」に行けたらいいなぁと思いつつ、時間的にビミョーなので悩み中です。奈良へ行くなら、中金堂が再建された興福寺にも行きたいんです。時期的にも今は行楽シーズンだし、行きたいなぁ~。

ということで、あさよるは興福寺の国宝館が大好きでして、ちょいちょい覗きに行きます。興福寺国宝館にはあの阿修羅像が展示されており、いつでも会えるのもたまりません。今回手に取った『阿修羅像のひみつ』も、そんなワクワクの中探し出しました。阿修羅像をCTスキャンし、科学的な目で、内部構造を解き明かすものです。オモロー!

阿修羅像をCTスキャンした記録

奈良県奈良市の興福寺の中金堂がいよいよ再建されました^^ あさよるも近いうちに見に行きたいです。興福寺で人気なのが、“あの”阿修羅像です。2009年、興福寺建立1300年記念として、東京上野の国立博物館で「阿修羅展」がとても話題になり、ご存知の方も多いでしょう。……というか、なんで阿修羅展がそんなに話題になったんや~と不思議に思うのですが、なんで奈良ではいつでも見れるのに話題にならないんでしょう(;^ω^)

阿修羅展が全国を巡回し、阿修羅像の修復と研究がなされました。その際、文化財のCTスキャナが設置されている九州博物館で、阿修羅像をCTスキャンし、内部の構造まで詳しく解明された記録が紹介されるのが本書『阿修羅像のひみつ』です。研究にかかわった研究者の方々が一章ずつ分担して執筆なさっています。

現在の阿修羅像は、両手を胸の前で合掌しています。しかし、二本の腕はかつて失われており、明治時期の修復で、合掌した形に修復されたと推測されていました。現在では、文化財保存の観点から、修復はしても、基本はそのままの状態をキープするのが原則です。「取れていた腕をつけなおす」というのは、現在では不可能な修復。明治期、まだ江戸時代までの雰囲気が残る中で、そのような修復がなされたのでしょう。と言っても、結果的に今の合掌の姿が人の心を打つわけで、ギリギリ時代に「間に合った修復」といったところでしょうか。

阿修羅像のつくりかた

阿修羅像が3Dデータ化され、モデリングされているのも面白いです。打ち込まれた釘の形を再現し、実際に釘を作り、同じように阿修羅像を再現されていました。

阿修羅像は「乾漆造」といって、木で骨組みを作り、その上から土で形を作ります。さらにその上に布を漆などの接着剤を使って張り、重ね、像の表面を作ってゆきます。完成したら、布に穴をあけ、中の土と骨組みを取り出します。そして再度、像の内側を木の骨組みで補強し、釘で固定し、布をふさぎます。

阿修羅像がどのように創られたのか、実際にレプリカを作る様子を写真で紹介されています。

あさよるも「乾漆造」という言葉は知っていましたが、実際にどのように作られるのか写真つきで知れて良かったです。立体の造形物を作ってる人なんかも、刺激になると思います。

阿修羅だけじゃないよ

ざざっと阿修羅像の話だけしましたが、興福寺のほかの像もCTスキャンされています。実際に興福寺の国宝館で見ると、阿修羅はもちろんなんだけど、阿修羅の周りにいるほかの八部衆もめっちゃカッコいいんですよね~。創作してる人とか、絶対一度は見て欲しい。迦楼羅像とか、すでにあんなモデリングの名人が1300年前にいたんですね。今でもめっちゃバリバリ参考になると思います。

内側から像を支える木材の特定も、CTスキャンすれば破壊せずにできます。文化財の研究家だけじゃなく、木材の研究の視点からも語られているのも面白く思いました。木の断面から、なんの木材が使われているのかAIに学習させる取り組みも試みられているそうです。

実際に阿修羅像を複製してみて制作過程を再現しているのですが、その際、当時使われていた道具も再現されています。阿修羅像が作られた時代は、木目方向に切れるのこぎりがなかったそうで、のみで叩いて割られていました。道具について、もっとページを割いて紹介して欲しかったなあと個人的に思いました。

信仰の対象として

一部、興福寺側はCTスキャンを拒んでいたという話が広まっていたそうなのですが、実際には興福寺側も九州博物館でのCTスキャンを早い段階で承諾なさったそうです。信仰の対象物ですが、CTスキャンされ3Dデータ化されたからって、価値が変わるものではありません。

むしろ、1300年前の仏師の仕事ぶりや、1300年間人々が大事に手入れしながら守り続けた事実が際立ち、理解が深まることでより大切な存在だと感じました。

興福寺に行くのが楽しみ^^♪

これまで興福寺の国宝館で数度、阿修羅像をまじまじと見ましたが、これまで「で、阿修羅ってなに?」ってことろからよくわかっていませんでした。

本書『阿修羅像のひみつ』では古代ゾロアスター教の神様の阿修羅が、インドの神様と壮絶な戦いに明け暮れ、ついに敗れ、悪神になり、一旦は邪悪な神となります。その後、ブッダと出会い、仏の世界へ入って善き神となります。阿修羅に歴史ありですね。そんな話もあやふやにしか知らなかったので、本書で改めてまとめられており勉強になりました。

もちろん「もっと知りたい!」と思うなら、本書じゃ満足できないでしょう。だからこそ最初の一冊にぴったりです。美術や造形物に興味のある方にもぜひおすすめしたいです。

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  • 作者:多川俊映,今津節生,楠井隆志,山崎隆之,矢野健一郎,杉山淳司,小滝ちひろ
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 発売日: 2018-08-10

目次情報

はじめに――文化財(仏像)の修補と科学調査をめぐって 興福寺貫首 多川俊映

一章 X線CTスキャナによる阿修羅像の調査 奈良大学 今津節生

二章 X線CT調査で分かったこと

1節 X線CTスキャナが見通した天平の超絶技巧 九州国立博物館 楠井隆志
2節 本格化する文化財のCT調査 奈良大学 今津節生

三章 阿修羅像に隠された三つの顔 懺悔と帰依の造形 愛知県立芸術大学名誉教授 山崎隆之

四章 阿修羅像は合掌していた 仏師・仏像修理者 矢野健一郎

五章 人工知能を使って心木の樹種特定に迫る 京都大学 杉山淳司・小林加代子

あとがき――阿修羅像CT調査を支えたもうひとつの科学 朝日新聞編集委員 小滝ちひろ

(図版展開)阿修羅像以外の八部衆・十大弟子像のCT調査の成果
(コラム)「古文化材」健康診断の広がり 朝日新聞編集委員 小滝ちひろ

多川 俊映(たがわ・しゅんえい)

1947年奈良県生まれ。法相宗大本山興福寺貫主首。300年ぶりの中金堂再興など天平伽藍の復興に取り組む。『唯識とはなにか 唯識三十頌を読む』(角川ソフィア文庫)、『合掌のカタチ』(平凡社)、『仏像 みる・みられる』(KADOKAWA)ほか著書多数。

今津 節生(いまづ・せつお)

1955年和歌山県生まれ。奈良大学教授。専門は文化財保存科学。1985年、青山学院大学大学院文学研究科史学専攻後期博士課程修了。学術博士(京都工芸繊維大学)。福島県立博物館学芸員、奈良県立橿原考古学研究所保存科学研究室長、九州国立博物館博物館科学課長を経て現職。『泉屋博古館蔵青銅器投射掃描解析』(中国科学出版)など。文化財保存修復学会賞受賞。

楠井 隆志(くすい・たかし)

1968年愛知県生まれ。九州国立博物館展示課長。専門は日本彫刻史。1991年、九州大学文学部哲学科(美学美術史専攻)卒業。福島県立美術館学芸員、福島県教育庁文化課主任技師、九州国立博物館展示課主任研究員を経て現職。

山崎 隆之(やまざき・たかゆき)

1942年東京都生まれ。愛知県立芸術大学名誉教授。専門は日本彫刻技法史。1967年、東京藝術大学大学院美術研究家(保存修復技術専攻)修了。同大学付属古美術研究施設勤務を経て、愛知県立芸術大学教授。現在は京都造形芸術大学客員教授。『仏像の秘密を読む』(東方出版)、『一度は拝したい奈良の仏像』(学研新書)、『魅惑の仏像・阿修羅』(共著、毎日新聞社)ほか著書多数。文化財保存修復学会賞受賞。

矢野 健一郎(やの・けんいちろう)

1948年宮崎県生まれ。仏師・仏像修復家。1975年、東京藝術大学大学院美術研究科(保存修復技術専攻)修了。東大寺学園教諭を経て(有)矢野造形技術研究所代表。広島市立大学芸術学部非常勤講師。興福寺中金堂(2018年10月落慶)の本尊・釈迦如来坐像などの修復を手がける。

杉山 淳司(すぎやま・じゅんじ)

1959年大阪府生まれ。京都大学生存圏研究所教授。専門は木材解剖学。1987年、京都大学大学院博士課程中退、農学博士(東京大学)。東京大学農学部助手、京都大学木質科学研究所助教授を経て、2006年より現職。第24-25期日本学術会議連携会員。2017年アメリカ化学会アンセルム・ペイエン賞受賞。『木材の構造』(共著、文英堂出版)、『木質の形成』(編者、海青社)などの著書がある。

小林 加代子(こばやし・かよこ)

1986年東京都生まれ。京都大学生存圏研究所特定研究員。2014年、東京大学大学院博士課程修了。2014年、農学博士(東京大学)。日本学術振興会特別研究員(SPD)を経て現職。2018年セルロース学会奨励賞受賞。

小滝 ちひろ(こたき・ちひろ)

1962年福島県生まれ。上智大学新聞学科卒。1986年朝日新聞記者となり、広島・呉市局員、奈良支局王子駐在、アエラ編集部員、奈良・橿原支局長などを経て、編集委員。専門は古社寺の文化財、考古・歴史学。『ご先祖様も被災した―震災に向き合うお寺と神社』(岩波書店)、『高田長老の法隆寺いま昔』(共著、朝日選書)などの著書がある。

阿修羅プロジェクト研究会メンバー(協力者含む)

今津節生、楠井隆志、鳥越俊行、赤田昌倫、金子啓明、岩佐光睛、丸山士郎、浅見龍介、神庭信幸、和田浩、山崎隆之、矢野健一郎、成瀬正和、岡田文男、杉山淳司、小林加代子

CT画像制作等協力者

輪田慧、吉永拓、杉山裕美、田中麻美、宮田太樹、安藤真理子、清水宏至

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