ヘタウマの世界へようこそ
今でも、思春期の“年頃”になる人たちは、深夜ラジオを聞くのでしょうか。
我が家は、母がラジオが好きで、朝から晩までラジオがついています。
朝、テレビでNHKのニュースを見ながら支度をする家庭が多いらしいですが、うちではAMラジオがその役をします。
私もラジオが大好きです。
時間さえあれば、ラジオを聞くともなしに聞いています。いつも楽しみに聞いているラジオ番組もありますし、なんとなく付けっぱなしにして、耳に入ってくる番組もあります。
ラジオはテレビと違って、夜中の1時から始まる“深夜番組”に人気番組が多く集まっています。昭和世代にとっては、10代の頃こっそり夜更かしをして深夜ラジオを聞いていた人が多いのではないでしょうか。
私は未だに「ラジオを聞いてから寝る」という習慣が続いています。
(最近は健康のために「早寝早起き」を心がけたいのですが……)
ラジオの面白いなぁと思う一つが「ハガキ職人」という存在です。ハガキ職人とは、ラジオ番組へ面白いネタハガキを送る人たちのことです。ラジオ番組内で、面白いネタハガキが読まれる番組がたくさんあるのです。
ちなみに、ラジオにメッセージをするには、昔はラジオ局宛にハガキで郵送しないといけませんでした(メールやFAXがなかった)。
ラジオで、プロの人気芸人さんが話しているのに、「ネタ」と言って、素人の書いた面白い話を読み続けてゆきます。プロが素人のネタを読んでくれる面白さもありますが、素人の投稿により番組が成立していて、「この番組の面白さは誰が作ってるんだ?」とわからなくなるところに「おかしみ」を感じます。
もちろん、たくさん届くハガキ(メール)の中から、何を選んで、どう読むのかは、プロの芸人さんの力によるものですから、やっぱりプロはすごいなぁと思うのですが。
深夜ラジオの面白さに、このような「素人芸」の要素があるように思います。
山藤章二『ヘタウマ文化論』を読むと、この「素人芸」のヘタウマを愛す要素なのかなぁと思いました。
天才・立川談志は、当然落語が上手い。しかし晩年の談志は下手な落語を追求していたそうです。
落語に「フラがある」という表現があります。落語家さんその人の人間味が滲み出し、それが憎めない、愛らしいおかしみ、みたいな感じでしょうか。下手な落語なのに、なんか面白い人、笑顔になってしまう人っていうのがいるんですね。それも、ある意味での才能なのかもしれませんね。
しかし、立川談志はもちろん、正真正銘の名人ですから、もちろんそんな「フラ」がないんです。芸で魅了させてしまうんです。どうやら談志さんは、それが気になっていて、「フラ」が羨ましく思っていたそうです。
天才には天才の悩みがあるもんだなぁとため息が出ます。
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ヘタウマ文化論
目次情報
- まえがき
- 1 オモシロいって何だ
- 2 ヘタに賞だと?
- 3 ヘタウマとの出会い
- 4 糸井重里という思想
- 5 江戸テインメント
- 6 駄句のこころざし
- 7 談志が出来なかった芸
- 8 ピカソは途中でやめなかった
- 9 昔の物真似
- 10 モノマネ維新
- 11 シンボーひまなし
- 12 伊東四朗のユウウツ
- 13 山口瞳を呼び戻したい
- 14 日本文化を括ってみた
- 15 「日本漫画」が消えた
- 16 「文春漫画賞」かけあ史
- 17 前衛ぎらい
- 18 ミスターヘタウマ・東海林さだお
- あとがき
著者紹介
山藤章二
1937年東京に生まれる。
武蔵野美術大学デザイン科卒業.広告会社をへて,64年独立.
講談社出版文化賞(70年),文藝春秋漫画賞(71年),菊池寛賞(83年)などを受賞,04年にh紫綬褒章を受章.
著書―『山藤章二のブラック・アングル25年 全体重』(朝日新聞社),『アタクシ絵日記・忘月忘日』1~8(文春文庫),『山藤章二イラストレーション 器用貧乏』(徳間書店),『山藤章二戯画街道』(美術出版社)『山藤章二の顔辞典』(朝日文庫),『対談「笑い」の構造』『対談「笑い」の解体』『対談「笑い」の混沌』(以上,講談社文庫),『山藤章二のずれずれ草「世間がヘン」』(講談社),『カラー版 似顔絵』(岩波新書),『まあ,そこへお坐り』『論よりダンゴ』(以上,岩波書店)など多数.
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