『オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで』|オノマトペなくして語れない

こんにちは。オノマトペで会話するのが好きな あさよるです。自分でその場にふさわしかろうオノマトペを組み合わせて作るのも楽しいですね。今回『オノマトペの謎』なる書籍を読書メーターで見つけまして、気になって取り寄せました。

オノマトペとは、

実際のおとを真似て言葉とした語。「さらさら」「ざあざあ」「わんわん」など。擬声語。広義には擬態語も含む。オノマトペア。オノマトペ。

p.4

みなさんも会話の中で使っておられますよね?日本語はオノマトペが多い言語だそうです。オノマトペなくして会話が成り立たないと言っても過言ではないっ!

なくてはならないオノマトペ

  • 「クスクス」と「スクスク」はなぜ違う?

「シクシク」と「クスクス」はs、k、uの組み合わせであり、同じ音を使っていますが、意味が全く違います。クスクスは笑っているようで、スクスクは伸びやかに成長している様子です。何が違うのでしょうか?細かに例を挙げながら、音の印象が語られます。

二つ目の音「ク【ス】クス」と「ス【ク】スク」のsとkの印象の差が、オノマトペの印象を変えているようです。二つ目の音というのが、意外でした。

  • オノマトペは変化する

オノマトペは時代とともに変化することがあります。「キンキン」というオノマトペは「キンキン高い声」と少々不快なニュアンスで多く使われていました。しかし、「キンキンに冷えている」と冷たい様子の表現に使われます。オノマトペも言葉と同様に、時代によって変わってゆきます。

  • オノマトペの方言

オノマトペにも方言があります。牛を「ベコ」と呼ぶ地域に印をつけると、見事に地域ごとに分布しているのが分かります。スズメの鳴き声が「チュン」「チュー」などのチュ類と「チチ」「チュッチュ」などのチ類、「ツーツー」「ツンツン」のツ類などあるそうです。これらは周圏的分布をしているようです。

  • 日本語はオノマトペ大国?

たまに「日本語はオノマトペが世界一発達した言語である」といった発言を見聞きすることがありますが、事実ではありません。オノマトペはどの言語にもありますし、特にアジア圏の言語では多いようです。理由として、アニミズム信仰が関係しているのではないか?との考えもあるそうです。

日本語は身体感覚と感情を表すオノマトペが多く、反面、味・匂い・色に関するオノマトペはありません。言語によってオノマトペに偏りがあるんですね。

  • 外国語のオノマトペを習得する

外国語を勉強するとき、オノマトペに手こずるようです。日本語を習う外国人もオノマトペが難関だそうですが、面白い特徴があります。全く日本語を知らない人に日本語のオノマトペを聞かせると、音の印象から何のオノマトペなのか当てられることがありますが、日本語を習った人では正解率が下がります。音の印象ではなく、知っている言葉の中から似ているワードを探してしまうのではないかと紹介されていました。もちろん、日本語以外のオノマトペで同じことが起こります。

また、ある言語から言語に翻訳をする際、オノマトペをどのように訳すかによって、雰囲気が変わります。その言語のオノマトペを理解するって大事なんですね。

  • オノマトペを使った教育

赤ちゃんに話しかけるとき、オノマトペを多用します。子ども向けの絵本もオノマトペが多く使われています。

言語を習得前の赤ちゃんも、音の印象を持っているようで、トゲトゲしたオノマトペと、丸っこいオノマトペを理解しているようです。人間の言語の習得とオノマトペの関係も興味深いですね。

オノマトペを交えながら、親は子に言語を教えてゆきます。言葉とオノマトペの両方を使って私たちは言葉を身につけるのです。

  • 「モフモフ」は新しいオノマトペだった

最終章は「モフモフ」というオノマトペについて。ネットで検索すると、モフモフが溢れています。モフモフで画像検索すると幸せになれます。モフモフとは近年よく使われるようになった言葉で、ウサギやネコの毛がフカフカしている様子を言います。どうやらパンの触感や特徴をを表すオノマトペとして使われ始めたようで、動物に使われるようになったのは2003~2004年ごろ、2ちゃんねるで使われるようになったそう。

〈オノマトペが表す印象を数量化するシステム〉なるものがあるらしく、「フワフワ」と「モコモコ」の数値の違いが現れていました。フワフワよりモコモコの方が弾力があって温かい感じらしいです。だいたいあってるw

新しいオノマトペが生れる様子を見てゆくのも面白いですね。

オノマトペへの8つの視点

本書『オノマトペの謎』は序章から8章まであり、8人の執筆者によって書かれています。それぞれオノマトペに関する話題を扱いながら、さらに専門分野に分かれて解説がなされます。お一人に付き1章分ですから、あくまで入口の部分しか触れられていないのだろうと思いますが、8つの視点から「オノマトペ」について知れて、入門編にはぴったりでしょう。

平易な文章で誰でも読めるもので、多くの人に馴染みのあるテーマです。どなたが読んでも興味深く面白いものでしょう~。

オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで

目次情報

序 日本語にはオノマトペが欠かせない……窪薗晴夫

1 「スクスク」と「クスクス」はどうして意味が違うの?……浜野祥子

2 オノマトペの意味は変化するの?……小野正弘

◆コラム 俳句とオノマトペ

3 オノマトペにも方言があるの?……竹田晃子

4 外国語にもオノマトペはあるの?……秋田喜美

◆コラム オノマトペとアニメの効果音

5 外国人は日本語のオノマトペを使えるの?……岩崎典子

◆コラム オノマトペと翻訳

6 オノマトペはことばの発達に役立つの?……今井むつみ

7 どうして赤ちゃん言葉とオノマトペは似ているの?……窪薗晴夫

8 「モフモフ」はどうやって生まれたの?……坂本真樹

◆コラム 医療とオノマトペ

あとがき
執筆者一覧

窪薗 晴夫

鹿児島県薩摩川内市出身.大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)英語科卒業.名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程,イギリス・エジンバラ大学大学院博士課程修了(言語学Ph.D.).南山大学助教授,大阪外国語大学助教授,神戸大学人文学研究科教授を経て,2010年より国立国語研究所教授.
専門は,言語学・音声学.著書に,『日本語の音声』『新語はこうして作られる』(ともに岩波書店),『数字とことばの不思議な話』(岩波ジュニア新書)など.

浜野 祥子(はまの・しょうこ)

ジョージ・ワシントン大学教授.専門は,言語学・音韻論,日本語教育.著書に『日本語のオノマトペ』(くろしお出版)など.

小野 正弘(おの・まさひろ)

明治大学教授.専門は,日本語の史的研究.著書に,『感じる言葉オノマトペ』(角川選書),『オノマトペがあるから日本語は楽しい』(平凡社新書),『日本語 オノマトペ辞典』(編著,小学館)など.

竹田 晃子(たけだ・こうこ)

立命館大学専門研究員.専門は,日本語方言学.著書に,『方言学入門』(共著,三省堂),『まんがで学ぶ方言』(共著,国土社),『日本語オノマトペ辞典』(共著,小学館)など.

秋田 喜美(あきた・きみ)

名古屋大学准教授.専門は,オノマトペの認知言語学.著書に,『オノマトペの認知科学』(今井むつみ氏との共著,新曜社,近刊)など.

岩崎 典子(いわさき・のりこ)

ロンドン大学SOAS Senior Lecturer(准教授).専門は,応用言語学(第二言語習得,外国語教育など).共著に,The grammar of Japanese mimetics(共編著,Routledge)など.

今井 むつみ(いまい・むつみ)

慶應義塾大学教授.専門は,認知心理学,発達心理学,言語心理学.著書に,『学びとは何か』『ことばと思考』(ともに岩波新書),『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマ―文庫)など.

坂本 真樹(さかもと・まき)

電気通信大学教授.専門は,感性情報学.著書に,『女度を上げるオノマトペの法則』(リットーミュージック),『坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本』(オーム社)など.

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