『イノベーターたちの日本史』|近代の日本をイノベーションしたサムライたち

こんにちは。幕末~近代史が好きな あさよるです。本書『イノベーターたちの日本史』はたまたま日本史・近代史の棚で見つけまして、次の瞬間手に取っていました。当初あさよるの予想では、戦後の本田宗一郎や松下幸之助やの伝記なのかと思って読み始めたのですが、内容が全く違って、面白い!近代の日本を動かした人々でありながら、あまり知られていないであろう人物が次々と紹介されています。昔も今も、スゴい人がいるもんだ!

日本史のイノベーターたち

本書『イノベーターたちの日本史』は、日本の近代に活躍したイノベーターたちを紹介します。本書で触れられるのは高島秋帆、大隈重信、笠井順八、三野村利左衛門、岩崎弥太郎、益田孝、高峰譲吉、大河内正敏など。知っている名前の方も、初めてお目にかかる方もいます。なかなか日本史の教科書には登場しない面々も、とんでもなく凄い人!

日本にも歴史の中にイノベーターはたくさんいるし、リーダシップを持った人もたくさんいました。「日本人はイノベーションを起こせない」「日本人にはリーダシップがない」というのは誤りであることがわかります。同時に、アヘン戦争の頃から新興財閥が成立するまでの激動の時代に生きたイノベーターたちの話が扱われており、激動のどうなるのかわからない時代だからこそ、優秀な人たちが群がり出てきたのかなぁとも思います。

アヘン戦争から新興財閥の成立まで

知られていない歴史的人物たち

先にも触れましたが、本書に登場する人たちはアヘン戦争から新興財閥成立の頃までのイノベーターたち。

高島秋帆は幕末の砲術家で、開国後、海防の重要性を説きました。膨大な西洋知識や物品を各藩に転売、コピーを販売するなどで利益を上げ、その利益でさらに新しい武器や洋書を輸入し、事業を拡大させた、企業家的な側面を持った人物です。大隈重信は貧しい士族階級に生まれ、蘭学・英学を学びます。ついに大隈は新政府の中枢に抜擢され、キリスト教をめぐる外交折衝を処理したことで、外務官僚へと姿を変え、更に外交から財政問題に着手しました。笠井順八は、小野田セメントという日本で初めての民間セメント企業を山口県に設立しました。当時のベンチャーだったセメント製造企業のリスク分散のため、株式会社形態を採用しました。デフレに見舞われながらも、小野田セメントは残ります。三井財閥を動かした三野村利左衛門、益田孝、三菱を創設した岩崎弥太郎、世界的科学者、起業家である高峰譲吉、大河内正敏は華族出身で理研の所長に就任し、理研の財政基盤の確立しようと、自由な研究ができる環境づくりをする。

登場する人々は近代のすばらしいイノベーターでありながら、あまり名前の知られていない人物が多く、多くの人にとって興味深い内容ではないでしょうか。

感想のようなもの

あさよるは、自称「幕末・明治維新ファン」だと名乗ることがあるのですが(たまにね)、存じ上げない方々が多く不勉強を恥じ入りました。あさよるが知っていたのは、岩崎弥太郎、益田孝、大隈重信くらいかな?

本書は偉大なイノベーターたちの経歴や仕事を丁寧に追ってゆき、日本が近代化されてゆく様子は、読んでいて非常にワクワクする。こんな大きな転換期に生まれた人たちもいたんだなぁなんて。同様に、現在とは社会が違いますから、同じことはなかなか起こらないのかなぁと、平穏であることを喜びつつ、非凡な存在に少しだけ憧れてみたり。

イノベーターたちの日本史

目次情報

はしがき

第1章 近代の覚醒と高島秋帆

1 イギリスの大英帝国建設とアヘン戦争

アヘン戦争勃発の背景
アヘン戦争の勃発
林則徐の内憂外患

2 情報感受性--アヘン戦争をめぐる情報と認識

林則徐の見えざる功績
中国の対応
韓国の対応
日本におけるアヘン戦争
幕府の情報収集と検証力

3 高島秋帆の情報感受性

フェートン号事件と海防
企業家としての高島秋帆
「天保上書」と高島平での演習
長崎事件と幽閉
「外国交易の建議」の先見性と開国

第2章 維新官僚の創造的対応
――大隈重信 志士から官僚へ

1 志士たちにとっての外交

藩士から志士へ
攘夷から外交折衝へ

2 隠れキリシタンが国を創る

隠れキリシタンという奇跡
外交課題としてのキリシタン問題
列強外交と大隈の自負

3 外交から財政へ

偽造贋造と銀貨の流出
貨幣問題と国立銀行制度
社会経済的自立が真の独立

第3章 明治政府の創造的対応
――身分を資本へ

1 財政再建と秩禄処分

版籍奉還・家禄奉還・徴兵制度
財政悪化と士族解体

2 秩禄処分と士族授産

秩禄処分の展開
大久保利通と士族授産

第4章 士族たちの創造的対応
――ザ・サムライカンパニーの登場

1 笠井順八とセメント事業

萩藩下級士族・笠井順八
官吏としての限界と萩の乱
セメント事業との出合い

2 小野田セメントの創業と公債出資

「士族就産金拝借願」に見る士族の想い
革新的な株式会社形態
技術移転と官営工場

3 苦難の創業期――デフレ、第二工場建設、三井物産

松方デフレの終焉と需要拡大
ドイツ人技師、新工場建設、販路開拓

4 最新鋭設備の苦悩と人材投資

第5章 創造的対応としての財閥
――企業家が創り出した三井と三菱

1 組織イノベーションとしての財閥

戦前日本における財閥の役割と重要性
解体直前の財閥
官営工場払下げと財閥

2 三井財閥――人材登用と多角的事業体

三井の起源
明治維新と外部経営者の登用
三野村左衛門の登用
益田孝と三井物産の設立
井上馨と先収会社
中川彦次郎・団琢磨の登用
銀行の不良債権処理を断行
人材登用と工業化路線
「ヒトの三井」の形成

3 三菱の創造的対応――反骨精神と関連多角化

反骨の青年・岩崎弥太郎
吉田東洋と土佐藩海運業
国際競争、士族の乱、政商
岩崎弥太郎の人的資源投資
アドホックな事業展開と学習
明治一四年政変と関連多角化
岩崎弥之助の「海から陸へ」

4 財閥という創造的対応

第6章 科学者たちの創造的対応
――知識ベースの産業立国

1 世界的科学者・企業家として高峰譲吉

イギリス留学、役人、ベンチャー
アメリカ出張での三つの成果
東京人造肥料会社の設立
渋沢栄一の非難と再渡来
ウイスキー製造とタカジアスターゼ発見
研究開発ベンチャー「タカミネ・ファーメント・カンパニー」
上中啓三とアドレナリンの発見
凱旋帰国と三共株式会社、そして理化学研究所
理研創設期の日本の人材
ラスト・サムライとしての高峰譲吉

2 大河内正敏と理研コンツェルンの形成

理化学研究所の苦難のスタート
第三代所長 大河内正敏の人物像
組織イノベーションとしての研究室制度
自由が持つパワー
危機を救った発明とビジネス
理研コンツェルンの形成と範囲の経済
理研コンツェルンの崩壊と戦後への遺産
理研の歴史的意義の歴史的意義

終章 近代日本の創造的対応を振り返る

あとがき

米倉 誠一郎(よねくら・せいいちろう)

1953年東京都生まれ。一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(Ph.D.)。1995年一橋大学商学部産業経営研究所教授、1997年より同大学イノベーション研究センター教授。2012~14年はプレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。2017年4月より一橋大学イノベーション研究センター特任教授、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。現在、Japan-Somaliland Open University 学長mアカデミーヒルズ日本元気塾塾長、『一橋ビジネスレビュー』編集委員長を兼務。イノベーションを核とした企業の経営戦略と組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。主な著書に The Japanese Lron and Steel Industry, 1950-1990: Continuity and Discontinuty(Palgrave Macmillan)、『経営革命の構造』(岩波新書)、『経営史』(共著、有斐閣)、『戦後日本経済と経済同友会』(共著、岩波書店)、『創発的破壊――未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『オープン・イノベーションのマネジメント』(共編、有斐閣)など多数。

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