岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』|オタク仲間探しの旅に出よう

わたしはとてもオタクっぽいと、自分でも思うし、たぶん周囲の人にもそう思われているだろう。だけど、わたしはアニメは見ないし、マンガも読まないし、ゲームもしないし、ネットもブログを書くくらいでどっぷり浸っているわけでもない。「いわゆるオタク」要素を持っていないのだ。だから、自称オタクの人と話をしても、まったく話が合わなかったりする。だけど、わたしは自他ともに「オタクっぽい」のだ。

このかみ合わなさの理由を、『オタクはすでに死んでいる』を通じて、少しわかった気がする。

古き良きオタクはもういない

本書によれば、ひらがなの「おたく」という名称は、周囲から勝手に名付けられた。しかも悪い意味で。それまではそれぞれの分野の「ファン」や「マニア」でしかなかったのが、「おたく」とまとめて呼ばれるようになったんだ。ここにはもちろん、アニメやマンガのファンもいれば、鉄道ファンやミリタリー好きもいる。それぞれ違った分野のファン/マニアたちをひっくるめて「おたく」とされたのだ。

時が経ち、電車男や「萌え」の流行、クールジャパンの登場で、ネガティブな意味は払拭されて、カタカナの「オタク」が登場する。しかし、ここでオタク界で変化が起こる。「おたく」時代は、ジャンルの違うおたく同士、お互いに「おたくだから」と認めあっていたが、「オタク」は排他的になってしまった。例えば、アニメオタクは、アニメオタク以外は仲間とみなさない。同じ趣味、同じジャンルでなければ仲間ではなくなってしまった。つまり、「オタク」がバラバラに分かれてしまったのだ。だから、オタクを観測できなくなってしまったのだ。

著者の岡田斗司夫は、自らの「オタキング」という呼び名もやめる、とも書いている。それくらい、オタク界が見えなくなってしまったのだった。

ここまで書くと、わたしがオタクっぽいのに、いまいちオタクじゃない理由がわかる気がする。わたしはたぶん、昔のひらがなの「おたく」時代だったら間違いなく「おたく」なんだろう。だけど、カタカナのオタクっぽくないのだ。アニメも見ないし、ゲームもしないし、マンガも読まないし、アイドルのことも知らないし、わたしは「オタク」に排除されてしまうのだ。ああ、わたしの仲間よ、どこにいる。

わたしと同じようなオタクを見つけるためには、「ここにいるぜ」と発信し続けないといけないのかもしれない。同人誌でも作るか……。

オタクはすでに死んでいる

  • 岡田斗司夫
  • 新潮社
  • 2008/4/15

目次情報

はじめに

第1章 「オタク」がわからなくなってきた

アキバ王選手権 普通の兄ちゃんだった「アキバ王」 一番のファンでありたい 出来合いのお宝 真剣10代しゃべり場 終わりの予感

第2章 「萌え」はそんなに重要か

「萌え」がわからない ミリタリーオタクと萌えオタクの差 差別する人たちのメンタリティ アトランティスとバベルの塔 終焉への予感

第3章 オタクとは何者だったのか

オタクの定義 ネット上の定義 今の世間の定義

第4章 おたくとオタクの変遷

カタカナになった オタク以前のおたく時代 M君の存在 オタク学入門 イメージの好転 オタクの拡大 オタク原人と第一世代 第一世代はテレビっ子 第二世代と世間 純粋培養の第三世代 アカデミズムによる定義 東京だけが日本ではない

第5章 萌えの起源

日本社会の特殊性 少年マガジンの変遷と日本人の変化 変化はすべての男性誌に水着は無敵 アニメファンの変容 アニメファンの断絶 「萌え」の誕生 「萌え」の浸透 多民族国家としてのオタク 女オタクの問題 女子という生き物 男オタクの女性化 オタク評論の限界

第6章 SFは死んだ

先例としてのSF 移民が増える SFファンの変容とSFの死 死の実情 少年ファンの時代 世代間論争のはじまり 世代間闘争へ 運動と闘争の果て SFの崩壊

第7章 貴族主義とエリート主義

映像がSFを滅ぼした 「萌え」はオタクを滅ぼすのか? オタク貴族主義 オタクエリート主義 貴族とエリートの反目 第三世代はセンシティブ 中心概念の不在 それぞれの壁 民族のアイデンティティー 努力が消えた 魂の本音

第8章 オタクの死、そして転生

オタクからマニアへ 自分の気持ち至上主義 日本とオタク 平成型不況の影響 個人の時代に 大人は損を引き受ける 大人の仕事

あとがきに代えて――「オタクたちへ」

岡田 斗司夫(おかだ・としお)

一九五八年(昭和三十三)年大阪生まれ。八五年、アニメ・ゲーム制作会社ガイナックスを設立。著書に『オタク学入門』『いつまでのデブと思うなよ』『「世界征服」は可能か?』など。

コメント

  1. […] 岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』|オタク仲間探しの旅に出よう […]

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