料理はたのしい!『こまったさんのカレーライス』『こまったさんのサンドイッチ』

思い出は美しく補正される?

だけど……こまったさんはあの頃のままだった!

こまったさんとの再会!

『こまったさんのカレーライス』と『こまったさんのサンドイッチ』を手に取りました。

と言っても、初見ではありません。

こまったさんの登場する「おはなし りょうり きょうしつ」シリーズは昔、何度も繰り返し読んだ大好きなシリーズだったからです。

中でも、カレーとサンドイッチの本が大好きで、大人になってからも時折ふと、思い出していました。しかし、図書館の棚を覗いても見つけられなかったので(きっと書庫へ移動しています)、長い間読み返すことはありませんでした。

それが、地元の公民館の本棚に、こまったさんのシリーズがずらりと並んでいるのを発見して、嬉しくなって手に取りました。

こまったさんはお手本だった

「こまったさん」と言っても、知らない方は誰のことだかさっぱりでしょう。

こまったさんは、寺村輝夫さんと岡本颯子さんによる「おはなし りょうり きょうしつ」シリーズ(「こまったさんシリーズ」と言った方が分かりやすいかもしれません)という、児童書シリーズに登場する、主人公の女性の名前です。

いつも「こまった、こまった」が口癖の女性で、夫のヤマさんから「こまったさん」とニックネームをつけられました。

こまったさんは、どうやらウッカリ者で、ウッカリ忘れ物をしたり、ウッカリ間違えてしまうので、「こまった、こまった」と言っているようです。あさよるも、いつも忘れ物をしたり、物をなくしては困っているので、とても親近感が湧きますw

こまったさんはレシピ本になる!

こまったさんシリーズはレシピ本でもあります。児童書ですから、簡単なレシピではありますが、面白おかしく物語の中で材料や料理のコツが披露されてゆきます。

ただ、このシリーズでは、材料や作り方のリストは掲載されていません。ですから、この本と同じ料理をしようと思うと、物語すべてを何度も読み返す必要があります。

あさよるは幼いころ、本の内容をノートに書き写し、オリジナルの料理レシピ集を作っていました。料理の大事な手順は、九官鳥のムノくんが教えてくれるので、間違えることはありません。

今思うと、本の内容から料理レシピの部分だけ抜き出して、まとめて、要約する作業は、小学生ながらに大変な作業だったんじゃないかなぁと思います。メモを取りながら読むという習慣も、このへんからついたのかもしれません。

なにより魅力的なイラストと物語

と言っても、こまったさんは実用書ではなく、素晴らしい児童書です。

イラストは細部まで工夫され、ページの端から端まで何度見返しても、飽きることがありません。細かな仕掛けもたくさん施されており、コラムのページや、表紙の見返しまで見逃せません。

そして物語。

ただカレーやサンドイッチを作るだけなのに、どうしてこんなにも心躍るのでしょうか。

「さあ、つぎ、たまごをゆでるの。ヤマさん、やって、かたゆでにしてね。」

「十五分くらいだね。」

「そう、ゆだったら、すぐに、つめたい水に入れるのよ。そうすると、からが、きれいにむけるわ。」

「オーケー。」

バターがかたくては、うまく、パンにぬれません。こまかくきって、火のそばにおいて、すこしやわらかくなったら、ナイフでまぜる。ムノくんが、やかましいのです。

「トケルマデ、アタタメチャ、ダメ!」

『こまったさんのサンドイッチ』p.52-53

こまったさん、いつも「こまった、こまった」と言っていますが、いざお料理をはじめると、それはそれはとても頼もしい!

おとなになった今、こまったさんは何も変わっていなかった!

思い出は美しく補正されるものです。

正直、過去に大好きだった作品を大人になって見返しても、拍子抜けするものもたくさんあります。だから、子供の頃好きだった本を読み返すのは、ちょと怖かったりするんですよね。

ああ!だけど!こまったさんはあの頃のままだった!なにも色褪せず、得も言われぬトキメキも、あの時のまま真空パックされて本棚に収まっていた。

あさよるは水の中で泳ぐ魚が恐怖なのですが、こまったさんが水中でエビを捕まえるシーンは、今も変わらず恐ろしいw

今の小学生、そしてあの頃の小学生へ

「おはなし りょうり きょうしつ」シリーズは80年代に刊行された児童書です。

今、30代くらいの人たちの中には、子供の頃夢中で読みふけった方もたくさんいるでしょう。

そして今、小学生くらいの子供たちも、きっと同じように夢中になれるシリーズです。

反面、80年代と言えばもう30年以上前のことです。ですから、社会背景も今とはずいぶん違っているようで、どことなく世界観が不思議に感じました。こまったさんとヤマさんの夫婦感や、女性の仕事感が違うのかもしれません。

その辺りの時代の変化は、大人からアナウンスがあれば、より適切かと思います。

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おはなし りょうり きょうしつ

  • 寺村輝夫、岡本颯子(イラスト)
  • あかね書房
  • 1993/4/1

おはなし りょうり きょうしつシリーズ 全10巻

  1. こまったさんのスパゲティ
  2. こまったさんのカレーライス
  3. こまったさんのハンバーグ
  4. こまったさんのオムレツ
  5. こまったさんのサラダ
  6. こまったさんのグラタン
  7. こまったさんのサンドイッチ
  8. こまったさんのコロッケ
  9. こまったさんのラーメン
  10. こまったさんのシチュー

作者紹介

寺村 輝夫(てらむら・てるお)

1982年東京生まれ。早稲田大学卒業。文京女子短期大学保育科教授。毎日出版文化賞、国際アンデルセン国内賞、講談社出版文化賞絵本賞、巌谷小波文芸賞を受章。「寺村輝夫童話全集」をはじめ、「ぼくは王さま」「おしゃべりなたまごやき」「おおきなちいさいぞう」「寺村輝夫のとんち話・むかし話」「くりのきえんのおともだち」など著作は数多い。おとな向けの本に「王さまの料理読本」「子の目・親の目」その他がある。

岡本 颯子(おかもと・さつこ)

武蔵野美術大学芸能デザイン科卒業。絵本や挿絵の仕事を中心に、舞台装置・衣装デザインなどの仕事を手がける。自作の絵本に「おばけたんぽぽ」「りっぱなどろぼうというものは」「おもしろいことないかな?!」、挿絵を手がけた作品に「るなちゃんとたまごやき」「にんじゃやしきたんけん」「ふしぎなかぎばあさん」「おばけのおはるさん」「屋根の上のゆうれい」などがある。

コメント

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