【書評】『あなたの職場のイヤな奴』|いじめ、いびり、パワハラ……

こんにちは。怒るのが下手な あさよるです。

「笑顔が何より大切」と思っていましたが、人間関係において上手に怒ったり意思表示をする能力って大事だなぁと思い至るようになりました。交渉として「怒り」を使えるといいのになぁと思います。

人とのトラブルは数あれど、『あなたの職場のイヤな奴』は、ズバリそのまま、職場でのトラブル。その中でも、上司が部下に対して行う「パワハラ」「いじめ」「虐待的行為」「いびり」を取りあげます。

ちなみに、原題は『The  No Asshole Rule』です。日本語訳では、タイトルこそ『イヤな奴』とお上品に(?)訳されていますが、本文はすべて「クソッタレ」と表記されています。「Asshole」っすなぁw

で、この本は「The  No Asshole Rule」。クソッタレを許さないルールづくりを呼びかける一冊です。

あなたの隣のクソッタレ

クソッタレの特徴は、まず自分より下の立場の人間を虐待すること。主に精神的苦痛を意識的にも無意識的にも加えます。

厄介なのは、無意識的に虐待するクソッタレ例です。クソッタレは、自分以外の人間を無能で役立たずだと考えています。ですから、悪いのは無能の役立たずであって、自分は悪くないのです。クソッタレは上司から指摘され指導されても、考えを改めず、会社のお荷物になってゆくこともあります。

そして、クソッタレは恐ろしいことに伝染する。類人猿のヒヒによる実験結果も掲載されていて興味深い……(人間の生態とどう関係するのかギモンもありますが、環境によって個体の性格や振る舞いも変わるそうです)。

そしてそして、一番気をつけておきたいのは、自分はクソッタレになっていないか?ということ。本書『イヤな奴』では、クソッタレが結果的に会社を追われることもある例が紹介されています。そう、自分にとっても、自分がクソッタレである事実は避けておきたい。人から嫌われ、疎まれるのも気分のいいものではありませんし、全力で回避しましょう。

クソッタレは損害を生む!

原題は『The  No Asshole Rule』。そう、本書はクソッタレの撲滅ルールなのです。クソッタレをどのように排除するのか。あるいは、どのようにクソッタレから身を守るのか。

実は、経営者も、クソッタレ従業員に気を揉んでいるようです。ある企業は、クソッタレがもたらした損害を計算すると年間16万ドルにも及びました。

その被害総額の内訳は、いじめの対象になった人物や周囲が、仕事に集中できず、ミスを恐れ、話し合いも上手くできなくなり、仕事への意欲がなくなる。虐待が横行することで人事異動が増える、人材が流出する、などなど。

クソッタレのせいで、上司、人事、役員にも仕事が増え、残業が増え、コストがかさみます。

そう、クソッタレは企業にとっても許せない存在。クソッタレに社会の雰囲気を支配されてはならないのです。

ぶっちぎるクソッタレは許される!?

クソッタレ撲滅ルールとして、抜きん出たクソッタレを許さないことを提唱されています。ぶっちぎり勝っている人物は、人格に難があっても許されます。クソッタレがもたらす損害よりも、収益の方が勝っていれば「仕方がない」と思われるのです。

まずは、ぶっちぎりのクソッタレを許さない。クソッタレは長期的な目で見れば会社に損害を与えます。クソッタレが一人いるだけでクソッタレは伝染し、「いじめ」や「いびり」が横行する雰囲気を生み出します。

ぶっちぎりクソッタレの例として、『イヤな奴』ではあの「スティーヴ・ジョブズ」の名前が挙げられていました。ジョブズの下で働きたいか否かという話しです。

ジョブズの癇癪と暴言は周囲のスタッフの神経をすり減らすし、なかには会社を去ってゆく者も多い。しかし、そうした激しい気性と強い意志――とくに、完璧を追い求める姿勢と、美しいものをつくろうとするあくなき欲望――があったからこそ、まの成功をつかんだのだともいえる。そのため、ジョブズを心から軽蔑している者さえもが、「クソッタレのなかには、性格の悪さを帳消しにするだけの才能のあるやつがいる。ジョブズがそのいい証拠じゃないか」というほどだ。

ロバート・I・サットン『あなたの職場のイヤな奴』p.237

はてさて、あなたは才能あふれるクソッタレの下で働きたいでしょうか。著者ロバート・I・サットンは、ジョブズの業績を認めながらも、それでも彼の下で働くのは嫌だと言います。あさよるは……あさよるも嫌かなぁw

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あなたの職場のイヤな奴

  • ロバート・I・サットン
  • 講談社
  • 2008/4/11

目次情報

はじめに

第1章 どんなやつをクソッタレと呼ぶか?

“クソッタレ”の正しい定義とは?
クソッタレのふたつの基準
誰でもときにクソッタレになる
クソッタレ上司はいたるところに
軟弱な事なかれ主義でもダメだが
データが示す「どこの職場のクソッタレでっぱいだ」
各国の職場いじめの実態

第2章 被害に苦しむ人々

目に見えない傷
「わたしは無能です」と言え
自分が少しずつ死んでいく
まわりの人たちにも被害はおよぶ
クソッタレ自身も痛い目にある
パワハラがもたらす損害
全方位的クソッタレ
ミスの隠蔽と自己保身
会社の備品を盗む人々
ときには株価にまで
クソッタレ被害総額を計算してみよう
あるベンチャー企業の例
〈クソッタレ被害総額試算リスト〉

第3章 クソッタレ撲滅ルールを導入するには

常に勝っていれば文句をいわれない?
グーグルの例――「嫌なやつだが優秀」は認めない
「クソッタレにならない」契約書
口先だけでは逆効果
“嫌なやつ”を雇わないための四つのステップ
人は「自分に似ている人間」を採用しがちである
クソッタレなクライアントには?
偉くなると人は変わる
ヒヒの群れの教訓
企業内賃金格差
インテルが社員に教えるケンカ術
意見と批判は紙一重
ひとりぐらいならクソッタレがいてもいい?
ちょっと待て! 人にレッテルを貼るまえに考えよう
〈クソッタレ撲滅ルール実践のための10ステップ〉
業績が悪化したとき真実がわかる

第4章 あなたのなかにもクソッタレはいる

感情感染
人は周囲に影響される
ダ・ヴィンチ・ルール――予防法1
逃げろ、無理なら近づくな――予防法2
同僚を敵とみなすのは危険なゲーム――予防法3
ささいな言葉の違いが人を変えてしまう
世界をどんなフレームから眺めるか
ドラッカーの言葉
「もうこれでじゅうぶんだ」と言ってみよう
ヴォネガットの教え
他人の目で自分を見てみよう――予防法4
自分の過去に目を向けよう――予防法5
いじめっ子は大人になるとクソッタレになる?
クソッタレ・バッジ
クソッタレ自己診断テスト
〈あなたのクソッタレ度は?――自己診断テスト〉

第5章 イヤなヤツだらけの職場をサバイバルするには

会社はなかなか辞められない
急流下り(リバー・ラフティング)策略
リフレーミング――ものの見かたを変えてみよう
クソッタレが変わるなどと期待しない
「なにも期待しない」という方法
無関心を心がけ、感情を遮断してみる
距離をおいた関心
“小さな勝利”を積み重ねよう
顔を合わす時間をできるだけ減らそう
安らぎを得られる場所を見つけよう
“他人に相談”はリスクも
できることなら相手をやさしく再教育
復讐のすすめ
我慢のしすぎは危険

第6章 クソッタレ成功者たちの教訓

グーグル・ヒットNo.1はスティーヴ・ジョブズ
攻撃やいじめを戦略的に使う――成功の理由1
威嚇もときには効果的――成功の理由2
恐怖を鞭に、飴も使う――成功の理由3
やる気のない人間を動かす――成功の理由4
でも勘違いは危険
〈きっちり結果を出す有能なクソッタレ〉になるには?
社員を尊重する会社
三つの錯覚
〈クソッタレ特別料金〉

第7章 生きかたとしてのクソッタレ撲滅ルール

七つの教訓

親愛なる読者のみなさんへ

訳者あとがき

ロバート・I・サットン [Robert I. Sutton,Ph.D.]

スタンフォード大学工学部教授。専門は組織行動論、組織管理論、イノベーション理論。ミシガン大学で組織心理学博士号を取得。
「イヤな奴=クソッタレ」体験について《ハーヴァード・ビジネス・レビュー》に寄稿したエッセイが大反響、それがきっかけで本書を執筆。刊行されるやアマゾンUSA、NYタイムズ、ウォールストリート・ジャーナルなどでベストセラーに。全米6000人の書店員と図書館員が選ぶ「クイル賞」ビジネス書部門賞も受賞。
著書に『実行力不全』(J・フェッファーとの著書、ランダムハウス講談社)など。

矢口 誠(やぐち・まこと)

1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て翻訳家に。
おもな訳書にA・ファウアー『数学的にありえない』、T・ウイルキンソン『バチカン・エクソシスト』(ともに文藝春秋)、B・S・バリンジャー『煙で描いた肖像画』(創元社推理文庫)など。

コメント

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