宮崎謙一『絶対音感神話 科学で解き明かすほんとうの姿』を読んだよ

音楽は気分を盛り上げる! バックトゥザフューチャー

2015年は映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』が話題になりました。

作中、科学者・ドクの発明したタイムマシン・デロリアン号で未来の世界へタイムスリップします。

その「未来」が、“2015年10月25日”でした。

その日を記念して、世界中で様々なイベントがあったようです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズ」3作通してお話も面白いですが、音楽もとても効果的に使われています。

テーマ音楽は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのパーク内でも効果的に使われており、USJの音楽として認知している方もいるかもしれません。

軽やかでスケールの大きな世界は、音楽だけで胸をワクワクさせてくれます。

音楽的知識が皆無な私にとっては、この「ワクワクする」「壮大な感じ」「軽やかな感じがする」という、「どう感じるか」が大切に思います。

そして「他の人も同じように感じているのではないか」「この音楽ではこんな気持ちを連想するだろう」と予想を立てて、他者と音楽を分かち合っています。

音楽はコミュニケーションのツールになりえます。

音楽はコミュニケーション

赤いものを見て赤と感じたり、冷たいものを触って冷たいと思うこととは、少し趣が違うのかもしれません。

宮崎謙一『絶対音感神話』では、「絶対音感」がもたらす弊害にスポットが当てられています。

今日では絶対音感を特殊能力として持て囃され、子育て中の親たちは我が子にも絶対音感を宿そうと音楽教育を施そうとします。まさに「絶対音感神話」です。

しかし、絶対音感が特別視されているのはごく一部の地域で、西洋音楽の本場のヨーロッパでは、音大生の中を探しても絶対音感を持っている者は少ないようです。

「絶対音感」の特性について耳にするにつけ、その能力はあまり良いものではないのではないかと感じていました。

特定の周波数の音と音階名が一致しているようなのですが、その音階はあくまでピアノの鍵盤のものです。

しかも厳密に言うと、自宅やピアノ教室にあるピアノの周波数かもしれません。

どこまで厳密に調律してあるのかによって、聞こえ方に差があるかもしれません。

『絶対音感神話』でも日本からヨーロッパへ留学し、オーケストラが微妙に違う周波数のキーで演奏しなければならず戸惑った、という奏者の話が掲載されていました。

そして、あくまで「絶対音感」は「西洋音楽の音階が分かる」というものです。

他の音階はどのような扱いになるのでしょうか。

日本でも伝統的な音楽、雅楽や、三味線や、浪曲などたくさんあります。

日本の音楽は、「ピッチがずれると気持ちが悪い」と感じる人にとっては、どのような扱いになるのでしょうか。

先の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の音楽を聞くと、ワクワクしたり楽しい気持ちになったり、音楽によって様々なイメージが沸き起こるのは、誰もが同じです。

美しい旋律に感動したり、厳かな音色に圧倒されたり、コミュニケーションや情報伝達にも音楽は大きな役割を果たします。

さて、「絶対音感」という能力は、生活に何をもたらすものなのでしょうか。

関連記事

Information

絶対音感神話

  • 著者:宮崎謙一
  • 発行所:化学同人
  • 2014年7月10日

目次情報

  • はじめに
  • 第1章 絶対音感とは何か――絶対音感の概念をめぐる神話
  • 第2章 音楽的ピッチ――音楽を構成する基本要素
  • 第3章 絶対音感の事実――実験から明らかになったこと
  • 第4章 絶対音感を持つ人はどのくらいいるのか
  • 第5章 絶対音感は音楽をするうえで役に立つか――〈絶対音感=音楽的才能〉という神話
  • 第6章 絶対音感を持つ音楽家――モーツァルトの絶対音感の神話
  • 第7章 絶対音感を持つ人の相対音感
  • 第8章 絶対音感はどのように生じるのか――遺伝と経験をめぐる神話
  • おわりに
  • 巻末注

著者略歴

宮崎 謙一(みやざき・けんいち)

1950年、新潟県生まれ。79年、東北大学大学院文学研究科博士課程(心理学専攻)で単位を取得後、山形女子短期大学幼児教育科講師、新潟大学教養部講師、同助教授、新潟大学人文学部助教授を経て、現在、新潟大学人文学部教授。
専門は認知心理学、聴覚心理学、音楽と心理学。おもな研究テーマは、音楽の知覚と認知、とくに絶対音感。絶対音感を持つ人たちが音楽をどのように認知しているのか、絶対音感がどのようにして成立するのか、絶対音感の音楽的意味と問題点を明らかにする実験的研究を行っている。
訳書に、『音楽の心理学(上・下)』(西村書店)、『ロールシャッハ・テストはまちがっている!』(北大路書房)などがある

―宮崎謙一『絶対音感神話』(2014、化学同人)p.247

コメント

  1. […] 記事リンク:『絶対音感神話』を読んだよ […]

  2. […] 『絶対音感神話』を読んだよ […]

  3. […] 『絶対音感神話』を読んだよ […]

タイトルとURLをコピーしました