『「死」と向き合う「おくりびと」たち』|葬儀にまつわる死者のこと遺族のこと

こんにちは。実は「おくりびと」の仕事に就きたいと微かに考えていた あさよるです。映画『おくりびと』の影響で「おくりびと」志望の人が増えたそうです。結局全然違うことしていますが、未だに気になるようで『「死」と向き合う「おくりびと」たち』も、目にしてすぐ「読みたい」と思いました。

あさよるが想像している「おくりびと」も紹介されていますが、全く知らない仕事も紹介されており、最新の葬儀にまつわるあれこれを知るにも良い本です。また、自分の来し方行く末を考えずにはいられない本でもあり、何重にも意味のある本でした。

様々な「おくりびと」の仕事

映画『おくりびと』がヒットしたことで、葬儀に係る仕事が注目されるようになったそうです。もちろん、映画になるずっと前からある業界ですが、あまり表に出ない職業でしたが、映画の影響でこの業界を志望する人もいるそうです。

本書で紹介される葬儀に係る仕事は多種多様です。みなさんも知っている職業から、知らない職業もあると思います。

  • エンバーマー

まず、エンバーマーという、遺体を修復し生前の状態に近づける仕事。アメリカではメジャーな方法らしく、日本では資格も必要でまだ多くはない。遺体の損傷部や病巣を取り除き、血管に薬品を送り込み遺体の防腐をするそうです。従来の納棺士よりも、より遺体の修復が可能だそう。エンバーマーへのインタビューと共に、エンバーマー養成の学校へも取材がなされています。

  • 納棺士

次いで納棺士は、従来の「葬儀屋」と呼ばれる「おくりびと」の仕事です。映画のように華麗に遺体をきれいにすることもあれば、淡々とやることもあるそう。遺体をきれいにし、髪を整え化粧をし、死に装束に着替えさせます。「湯かん」を扱う業者も紹介され、単に遺体の状態を整えるだけでなく、宗教的な作法も含まれているように思いました。

  • 葬祭ディレクター

そして葬儀を取り仕切る葬祭ディレクター。近年では葬儀の形も様々で、簡略化したり、家族葬にしたりと、選択肢が増えています。遺族にとって必要な葬儀の形を提案します。

  • 遺品整理人

遺品整理人は、亡くなった人の荷物を片づける仕事。特に孤独死した世帯の整理は壮絶。都会であるほどすぐ側に人がいるのに、誰も通報せずに放置されることも多く、また大家と遺族が揉めることもあるそう。遺品整理人が近所や大家の間に入る様子も紹介されていました。若い人の孤独死は餓死が多いというのも、ゾッとした。

  • 火葬場職員

火葬場職員が、遺体を火葬する様子は、とても繊細な仕事をしてくれてるんだなぁと感心しました。少しでもきれいに骨の形が残るように手動で調整します。

  • お墓ディレクター

お墓ディレクターという職業もあるそうで、条件に合う墓地を選んだり、墓の引っ越し等、相談してくれます。

  • グリーフサポートバディ

グリーフとは悲しみ、苦悩という意味で、強い悲しみの中にいる遺族をサポートする仕事です。普段は気丈に振る舞っていたり、家族の前では涙を見せない人のなかにも、深い悲しみを抱いている人がいます。日本ではまだなじみのない仕事ですが、必要な役割です。

職業としての「おくりびと」

本書『「死」と向き合う「おくりびと」たち』では、おくりびとたちへのインタビューもなされているのですが、どの方も謙虚で、淡々と業務を語り、そしてご自身の職業の意義をきちんと理解してらっしゃる様子が印象的です。「死」を扱う仕事だけに、あまり普段は表立って話題にならない職業ですが、必ずなくてはならない職業です。

表舞台には立たないけれども、とてもカッコいい職業でもあります。本書では、最新の技術や伝統的な作法を踏まえつつ、遺族や亡くなった人を想い、最上のサービスを尽くしている様子が、まじプロフェショナルで超カッコいい。

実は……とここから自分語りですが、あさよるも昔、火葬場の職員募集の求人を見て応募しようと履歴書を書いていたところ、母に「あんたは向いてない」と止められました。向いてない理由は一つ「真面目な顔ができないから」という。父も同じ理由で祖母に止められたそうですw

飼い猫が死んだときも、火葬場でスーツ着て真面目に応対してくれる職員がカッコよかったのだ~。という、個人的に〈すごい職業〉の一つだった「おくりびと」の仕事が、こうやって書物で知るとなおさら「すごいなぁ」と憧憬。

弔いとは、やっぱり死者のためにあるのかも……

よく、葬儀は生きている人のためにやるもんだなんて言いますが、本書を読むと「やっぱり葬儀って死んだ人のためなのかもな」と感じました。おくりびとたちはみんな、もちろん遺族への思いやりもあるものの、やはり亡くなった人へ心づくしのもてなしをしているように思えました。

おくりびとたちが死者に対し大切に特別に接するからこそ、遺族たちも心の持っていきようが生まれているような。納棺士が、死に装束や湯かんをする仕事は、宗教色もあり、儀式としての弔いなんだなぁと感じ入る。

孤独死した人の部屋の片づけは、肉親でもできない仕事を引き受け、整理をしながら大事な書類やお金、遺言など残されていないかも探すそうで、「その人がどう生きたか」をまざまざと見る仕事です。ご近所や大家や遺族のゴタゴタにも見舞われるそうだから、いろんな意味での〈人間模様〉に直面します。

「おくりびと」のプロフェショナルな仕事ぶりを通じて、人の生き死にを見て、自分の〈この身〉の行く末も少し気になります。

「死」と向き合う「おくりびと」たち

目次情報

まえがきにかえて――葬儀業界最前線――

第1章 遺体トリートメントのエキスパート

エンバーマー(遺体衛生保全士とは)

思い出を蘇らせる 魔法の手
お別れの時間をエンバーミングでコントロール
日本で唯一のエンバーマー養成校

第2章 悔いのない最後のお別れのお手伝い

納棺士とは

納棺、化粧、修復・復元が仕事です
「納棺士のあるべき姿」を後世に伝えたい
「ありがとう」の言葉が糧となる
「お風呂に入れてよかったね」のひと言が励みに

第3章 人生最期の舞台を演出する仕事人

葬祭ディレクターとは

人に頼られて感謝される仕事をしたい
笑顔で送る それが理想の葬儀です
進路に悩んだ末に目指した道
葬儀業を志す若者たち

第4章 個人の思い出に寄り添いながら

遺品整理人とは/火葬場職員とは

亡くなられた方にも遺族にも役立ちたい
遺族の身になって遺品を整理する
火葬場の自分が悪魔に思えるときがある

第5章 家族の絆を確かめる空間づくりを

お墓ディレクターとは

お客様のニーズに合わせてお墓を提案
心のやすらぎとなるお墓づくりを

第6章 遺族の悲しみを癒すプロフェッショナル

グリーフサポートバディとは

地域密着! グリーフサポートで人助け
大切なのは悲しみを持つ方に寄り添うこと

あとがき

中村 三郎(なかむら・さぶろう)

フリージャーナリスト。企画集団Group21代表。放送作家としてTV番組の企画・構成にも携わる。主な著書に『肉食が地球を滅ぼす』(弊社間)、『リサイクルのしくみ』(日本実業出版社)、『霞が関の権力地図』(KKベストセラーズ)、『帰化動物たちのリストラ戦争』(角川書店)、『お墓なんていらない』(経済界)などがある。

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