木下あおい『美人はコレを食べている。~食べるほど綺麗になる食事法』を読んだよ

クレオパトラと果実のイラスト 読書記録

国立国際美術館(大阪市)にて2015年10月10日〜12月27日まで『クレオパトラとエジプトの王妃展』が開催されています。この夏は東京国立博物館にて開催されており、大阪巡廻を心待ちにしていました。平日の日中で、天気も思わしくなかったのですが、会場にはたくさんの人が訪れていました。

特別展のタイトルにも使われているクレオパトラは、ご存知「世界三大美女」の一人です。“絶世の美女”、“傾国の美女”として西洋絵画の世界でも頻繁にモチーフに選ばれています。『クレオパトラとエジプトの王妃展』では、クレオパトラを7ヶ国語を扱う才女としても紹介されていました。美しさには、知性も欠かせないものなのでしょう。

「美女」は時代によって違う?

「美女」と言っても、時代や地域によって美の基準は様々と言われていますが、ドミニク・パケ『美女の歴史』で紹介されていた古今東西の美人像は、現在とも共通する基準ではないか?と思われるものもありました。稀に例外はあるものの、端的に言うと、健康的で適度に引き締まった肉体が、時代や洋の東西を越えて美しさの条件とされていました。

現在の日本でも、同じように健康的な美しさは評価されているとは思いますが、女性たちの間で持て囃される「ダイエット」という名の「痩せ主義」も広まっています。「痩せていること」への執着は、時に病的です。食事を済ませた後トイレで食べたものを吐き出したり、一つの食品しか食べない、あるいは、ある栄養素を摂らないなど、食事を何らかの方法で制限することで体重を減らす行為を、「ダイエット」と称されている印象があります。
かくいう私も、ご飯や麺類、イモ類などの炭水化物を一切絶つダイエットをしていた頃もあります。確かに、最初の3ヶ月ほどで5kgとか8kgとか体重は減りました。しかし、すぐにリバンドしてしまい以前よりも体重が増えてしまう……。しばらくしてまた、炭水化物抜きダイエットをすると、また数kg減るのですが、またリバンドして以前より体重が増える……。それを何度かしている内に、炭水化物を抜いても体重がなかなか減らなくなり、しかもリバンドで、第一回目のダイエット開始時よりも10kg近く体重が増えてしまいました。「痩せにくい体質」の出来上がりです。

『美人はコレを食べている』の著者、木下あおいさんも、同じように無謀なダイエットの常習者だったようです。しかもどうやら、10代の成長期も終わらない頃から繰り返していたようで、痩せ主義も深刻な問題です。木下さんが特殊な女性には思えません。日本の多くの女性が、しかも成長期の子どもたちまで、体重計に乗り、体重の数値に一喜一憂しているのかもしれません。
無謀なダイエットから脱却しようと『美人はコレを食べている』では読者へ訴えかけますが、これもまた病的です。野菜を食べれば痩せられる。肉は血を汚す、科学の力で作られた調味長は身体を汚す……と、菜食を訴えます。これもやはり、食事を制限することでダイエットを目指すものです。また、肉食は血を汚す、という考えはどこからやってくるのでしょうか。

肉食のタブーは世界各地に存在します。有名ドコロでは、イスラム教徒が豚食を禁止していたり、ヒンドゥーでは神聖な生き物とされる牛肉を禁忌とされています。日本でも明治を迎えるまで肉食は一般的ではなかったようで、第十五代将軍・徳川慶喜は豚肉を食したことから「豚一公」と呼ばれていました。日本では肉食は禁忌ではなかったようですが、ゲテモノ食いのような扱いだったようです。

人は雑食性の生き物です。チンパンジーやゴリラなど、人に近いとされる類人猿の種にも雑食性のものがいます。しかし、恒常的に肉を食べているのではなく、普段は果実や種子を中心とした植物食です。人類も同じように元々植物食を行っており、時折肉食をしたのでしょう。植物では足りない分を、後付的に肉食を取り入れ始めた時、肉食のタブーも生まれたのではないでしょうか。

生物としてのヒトの生態を考えるに、菜食も肉食もする雑食性であることはおかしなことではなりません。そして、ヒトが文化を持ち、人間として歩み始めたとき特定の食物への禁忌・タブーの文化も生まれました。文化を持つ人間として、何らかのタブーを持っていることも当然です。我々、現在の日本の女性は、太ること、体重が増えることへの畏怖を抱いているのかもしれません。

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Information

美人はコレを食べている。~食べるほど綺麗になる食事法

  • 著者:木下あおい
  • 発行所:大和書房
  • 2014年5月1日

目次情報

  • はじめに
  • 第1章 綺麗な人はスキンケアより「食事」を大切にしている
  • 第2章 「肌トラブル」に効く野菜
  • 第3章 お金のかからない美容は「自炊」しかない
  • 第4章 食事で自分をコントロールする
  • 第5章 本当の美容液は「発酵調味料」
  • 第6章 リバウンドしない食べ方
  • 第7章 綺麗を維持するために大切なこと
  • 第8章 いい食事は心も整える
  • 付録

著者略歴

木下 あおい(きのした・あおい)

(社)日本インナービューティーダイエット協会代表。
インナービューティープランナー、管理栄養士として、女性が内側から美しくなるための食事を発信している。
自身が運営するインナービューティーダイエット専門料理教室 bejoou では、「腸」をキーワードに野菜中心・発酵調味料と用いたレシピを伝え、3ヶ月で-5kg、-10kg綺麗に痩せる生徒が続出している。
その他、TVや雑誌など多数出演している雑誌「美的」、「BODYプラス」、「anan」など、連載も多数もっている。

―木下あおい『美人はコレを食べている』(2014、大和書房)p.224

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