こんにちは。あさよるです。こう毎日暑いとなんにも考えたくないですよね。ということで、ボーっとした頭であえて、頭がこんがらがるような哲学を扱った本を手に取ってみましたw といっても、本書は10代向けの本で、ページのほとんどはイラストで構成されています。
しかし、書いてある内容を理解しながら読むとなると、じっくり腰を落ち着かせて読まないと、前後の話がわからなくなるような読みごたえはありました。
「考える」ことはやめられない
本書『おおきく考えよう』はサブタイトル「人生に役立つ哲学入門」とあるように、はじめて哲学的な内容に触れる10代向けに書かれた本です。本と言っても、文字は少なくイラストが紙面のほとんどで、ビジュアルから「考え」をイメージできる工夫がなされています。
子ども時代の思考ってとことん具体的で、成長過程で抽象思考が身についていきます。大人に近づくステップとしてこの『おおきく考えよう』は役立つんじゃないでしょうか。
と言っても、大人が読んでも物足りなさはありません。というか、大人のほうがこんな本が好きかもね。
悩める若い人に語りかける
本書『おおきく考えよう』で問いかけられる哲学的話題は、「生きるってなんだろう」「社会ってなんだろう」「男と女って違うのかな」といった第一章「すべての生きもののなかで、いちばん幸せ」。
第二章「おなじ川に2度、入ることはできない」では、変わりゆくもののなかで「今、ここ」や「これ」「私」とはなんだろうと考えるきっかけに。哲学者ヘラクレイトスは「同じ川に2度、入ることはできない」と言いました。川はどんどん流れてゆきますから、さっき入った川の水は、次に川に入るときははるか河口へ流れ去っています。だから「同じ川には入れない」というワケ。同じような話で「ボートの板を1枚ずつ替えるとしよう。1枚のこらずべつの板と交換した場合、できあがったボートは、もとのボートと同じものかな?」とイラストが語りかけてきます。これは刻々と、新しい細胞が生まれ、死んで、細胞がすっかり入れ替わってしまっても「自分は自分」と言えるのか?という問いに繋がります。
ちなみにこの、ボートの板をすべて入れ替えても、最初と同じボート言えるか」あるいは「新しく組み立てたボートは元の同じボートと言えるか」という問いは、日本建築に当てはまります。例えば、奈良にある法隆寺の五重塔は世界最古の木造建築と言われていますが、修繕が重ねられ、本当に法隆寺建立当時から使われているオリジナルの木材はほんの一部分だけです。新しい材木にほぼ入れ替わっている五重塔を「世界最古」と言えるのか?
あさよるは先日、京都の平等院へ連れてもらったのですが、最近、平等院が修繕されてキレイになったんですよね。ほぉ~と眺めながら「これは〈新築〉に見えるなぁ~」なんて思ったりw 日本人的感覚だと〈リフォーム〉は、新築ではないから、「昔からここにあるもの」なんですね。これは、日本人的な感覚と、西洋哲学的考えの違いの例としてよく挙げられる話ですね。
話は戻って、第3章では、物事の本質を見ること。第4章は空想、創造の幅を広げること。第5章では、人生の意味について尋ねられます。
答えのない問に耐えられる?
本書『おおきく考えよう』は、疑問や考え方を提示されますが、答えらしい答えはなにもありません。そもそも答えのない問いだからです。もし、予め正解が想定された問題ばかりに慣れているのなら、最初から答えの存在しない問いは苦痛に感じるかもしれません。
「本書は10代向けで、若い人にオススメ!」と言いつつ、当のあさよる自身、10代の頃は本書を読めなかっただろうと思いますw まるで言葉遊びをして、からかわれているような気になったろうと思うから(苦笑)。
本書はイラストが大半で、絵本のような作りですが、意外と読み解ける子どもは少ないのでしょう。大人受けする本だと思います。その上で、本書に挑戦する10代の人がいるといいなぁと思います(`・ω・´)b
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おおきく考えよう: 人生に役立つ哲学入門
目次情報
1 すべての生きもののなかで、いちばん幸せ
思考の冒険
きみは存在する!
自分自身に慣れる
すべての生きもののなかで、いちばん幸せ
社会があるから選択肢が持てる
解釈と意味づけ
男らしさ、女らしさ
おままごとか、ラジコンか2 おなじ川に2度、入ることはできない
変わりつづけるけど、ずっとおなじ
記憶のはたらき
いまを生きる
いつまでも満足しない?
音楽は人を助ける
きみにとって、たいせつなものはなに?
いちばんだいじなのは、善い人間になること
真の人間じゃない人間3 なにがコーラをオレンジ・ソーダじゃなく、コーラにするんだろう?
人間の本質とは?
野生の馬とはたらく馬
どうあるか
勇敢であること
他人の目にどう映るのか
重要な選択4 空想の翼を広げよう!
人生について空想してみよう
空想世界のようす
似ているようでちがう
空想実験
予測する力
理想の社会を空想してみよう
公正さと財産5 人生の意味はなに?
きみにはほめられるだけの価値はある?
万人の万人に対する闘争
1人ぼっちで幸せ?
流れに身をまかせる
洞窟で鎖につながれている?
洞窟から出よう!
海岸の砂浜についたブーツの跡
2頭のペガサス
人生の意味はなに?訳者あとがき
ペーテル・エクベリ
1972年、スウェーデン生まれ。大学院博士課程で哲学、天文学、物理学、神経科学、思想史を学ぶ。2009年、『自分で考えよう』(翻訳は晶文社)で作家デビューし、スウェーデン作家協会のスラングベッラン新人賞にノミネートされる。著書にロボットや人工知能、宇宙についての子ども向けの優れたノンフィクション作品に与えられるカール・フォン・リンネ賞にノミネート。
イェンス・アールボム
1954年、スウェーデン生まれ。絵本作家。ムッレ・メック・シリーズをはじめとする人気作品で絵を担当している。邦訳された作品に『クマがくれたしあわせ』(イルマ・ラウリッセン文、廣斉堂出版)がある。
枇谷 玲子(ひだに・れいこ)
訳
1980年、富山県生まれ。2003年、デンマーク教育大学児童文学センターに留学。2005年、大阪外国語大学(現大阪大学)卒業。在学中の2005年に翻訳家デビュー。北欧の児童書などの紹介に注力している。主な訳書に、『キュッパのはくぶつかん』(福音館書店)、『カンヴァスの向こう側』(評論社)、『サイエンス・クエスト――科学の冒険』(NHK出版)、『自分で考えよう――世界を知るための哲学入門』(晶文社)などがある。
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