『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』|AI苦節60年…

『図解でわかる 14歳から知っておきたいAI』イメージ画像 AI・人工知能

こんにちは。あさよるです。近年、「AI」や「ディープラーニング」「人工知能」という言葉をよく見聞きしますが、正直なころ「それ、なに?」と何度も聞き返してしまう あさよるです。あさよるネットでも「AI」「ディープラーニング」「人工知能」を扱った書籍を紹介していますが、実はまだ頭の中で上手く整理されていなかったりする(;’∀’)>

ということで「14歳から」という、好奇心旺盛な中学生の夢が広がるようなAIの話が収録された『14歳から知っておきたいAI』を手に取りました。目次や索引も含めて全96ページの薄い本ですが、内容は濃い。

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全ページカラーで、図解に多くの紙面が割かれています。本書のカラーの図解は、情報量が多く、読み込む面白さがあります。テキストと図解とを突き合わせて理解を深めましょう。学習の助けになるでしょう~。

あと30年でAIは人間を超える!?

本書『図解でわかる14歳から知っておきたいAI』は、その名の通り中学生以上なら誰でもわかるAIのお話。昔でいう「サルでもわかる」系でしょうか。

AIの歴史はまだ60年ほどのもので、90年代にはAIの冬の時代がありました。そして2000年代に入って「ディープラーニング」というコンピュータの学習方法が確立され、現在注目を集めています。そのAIは、あと30年もすれば人間の頭脳を超えると多くの知識人が予測しています。

さてこれは「もう30年で」なのか「まだ30年で」なのか微妙です。なぜなら、1965年アメリカの大学で科学者たちが「このままコンピュータのプログラム高度化すれば人間の頭脳を持つようなコンピュータが登場する!」と楽観的な予測をしたのですが、なかなか実現しない!

科学者は、人間の頭脳が持つ世界理解という無限の知識量の前に、茫然と立ち尽くすことになります。(p.9)

たとえば人間は、乳児でも「ねこ」を認識し、それが生き物で、どういうものなのか知り、猫についての概念を学んでゆきます。

同じことをコンピュータにさせたとします。「ねこ」という名称は記号化できても、それは実際の猫と関係ありません。コンピュータにネコという生物の概念をもたせるためには、生物としての猫に関するあらゆる属性を記憶させる必要があります。それは、この世界の全ての知識を与えることでもあります。そこには連綿とした知の網の目があり、枠(フレーム)がありません。それに対し、AIは枠名でしか処理できないため、これをAIの「フレーム問題」と呼ぶようになりました。人間なら乳児でも簡単にできることが、コンピュータには果てしなく困難であることを、AI研究者の名にちなんで「モラベックのパラドックス」とも呼び、現在にまで続くAI研究の難問として、いまだ解決していません。

p.8-9

1956年科学者たちの楽観的な空想から始まったAIの開発は、早々から暗礁に乗り上げます。AIの苦節60年の歴史を知り、これからのAIの展望を考えるのが、本書『14歳から知っておきたいAI』のテーマです。

AI苦節60年……冬の時代……

AIの歴史は順風満帆とは程遠いものです。「人間の知能を持たせるには道は長い……」判断され、まず、70年代にはコンピュータが得意な専門分野を伸ばそうと試みられました。それをエキスパートシステムと言います。コンピュータが得意なこと、それは「推論」と「計算」。

1980年代は、このエキスパートシステムの大ブームが起きます。全世界でエキスパートシステムを開発するベンチャー企業が誕生し、何千ものシステムが開発されました。事務計算、販売支援、建設管理、物流、天気予報、工場生産設備などなど、その応用も産業界全体に広がりました。
しかし、ここでも同じ問題が生じました。コンピュータはルール化された情報しか処理できないというAIの二度目のつまずきです。(中略)

人間の思考は、無数の例外の集積ともいえます。厳密なルールの外側に存在する多様な質問に、このシステムは有効な答えを返すことができません。産業界の期待が大きかった分、その失望も大きく、AI研究への反動も深刻なものでした。

p.10-11

コンピュータが産業業界での活躍を大きく期待されていたにも関わらず、人間のニーズに応えるコンピュータが思ったように作られず、失望されていしまいます。その後、1990年代はコンピュータの冬の時代を迎えます。1980年代後半から90年代にかけて、コンピュータ研究の実績をとにかく作ろうと、専門分野に徹して課題研究が始まります。このとき、画像認識、機械翻訳、ロボット工学、音声認識など、技術が進歩します。

パーソナルコンピュータが登場し、CPUの性能向上、低価格化により、個人がコンピュータを所持できるようになりました。1995年インターネットと接続できるWindows95がリリースされ、インターネットの利用者が増えることで、より多くの情報をコンピュータ開発に使えるようになりました。

AIの研究者たちは、それぞれの現場でAIの推論ロジックの高度化を模索していました。彼らを導いたのは、アメリカの計算機科学者ジューディア・パールが提唱した確率論的AI推論ロジックでした。極めて大雑把にいえば、正しい結論に至るために論理的に思考するのではなく、確率的なグループ分けを繰り返し、その分類の課程で正解に最も確率的に近い結論に絞り込んでいこう、というものです。
このAIの推論ロジックは「機械学習」と呼ばれています。

p.12-13

ついに機械学習をするAIの登場します。医療、株式、銀行、音声認識、財務管理など、コンピュータは活躍しています。そして「ディープラーニング」の登場により、AIが再び社会の注目を集めます。人間の脳のネットワークが発見され、脳細胞のニューロンを模したネットワークをコンピュータでつくられました。

ディープラーニングの研究が促進される頃、爆発的にインターネット上にビッグデータが集積されはじめました。ついに2012年GoogleのAIがYouTubeの動画から「ネコ」の認識に成功します。2014年にはGoogleが独自開発した自動運転車が実用段階に入ります。2017年にはFacebookのAI同士が会話を始めました。

日本では静かにロボット革新が起こっていた

一方、日本では70年代から静かに変革が起こっていました。1970年代から、産業用ロボットとともに、人間型のヒューマノイドロボットの開発が進んでいたのです。日本では1980年代には、物作りロボットの最盛期を迎えます。2000年には二足歩行ができるロボットASIMOをHONDAが発表し世界を驚かせました。

それを受け欧米では、人間型の「二足歩行ロボットでは日本に敵わないだろう」と、別の道を模索され始めます。欧米ではソフトウェアの開発に重点が置かれました。こうして、日本の人間型ロボットと欧米のソフトウェアが合わさって、新しい技術の到来が待たれます。

ディープラーニングの研究はアメリカ発でした。これから日本が世界でどんな活躍をするのでしょうか。

鉄腕アトムとターミネーター

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日本では人間の形をしたヒューマノイド型ロボットの研究がなされて。2000年HONDAが二足歩行ができるロボットASIMOを世界に発表します。ASIMOの開発はたった一言「アトムをつくれ」というものだったそうです。1986年に下半身のみの歩行ロボが完成し、1996年にやっと人間の形になります。そして2000年にASIMOが登場し、その後も精度は上がっています。しかし、ASIMOはAIロボットではありません。

日本ではASIMOのモデルにもなった手塚治虫『鉄腕アトム』を筆頭として、ロボットは人類の友だち、仲間として描かれます。藤子・F・不二雄『ドラえもん』もそうですね。しかし、欧米では「ロボットは敵」に描かれることが多かったっそうです。その典型が『ターミネーター』。ターミネーターは、未来の世界でロボットたちが人類をしようと反乱を起こし、過去の歴史改ざんのために送り込まれるのがアーノルド・シュワルツェネッガー演じる「T-800」なのです。ということで、欧米のロボットはメカが剥き出しでおどろおどろしい姿をしてることも多いのです。

日本と欧米の違いは、信仰の違いによってもたらされているのではないかと紹介されています。

アメリカの研究者が、危険な作業を行うロボットが開発なされますが、アメリカでは導入が進みませんでした。が、日本では大歓迎されます。この違いは何でしょうか。

 アメリカの人々が産業用ロボットに拒否感を露わにしたのは、欧米社会の規定にあるキリスト教の影響がありました。神を絶対の善とし、この世の全ては神に創られた被造物であり、人間は神との契約との中でこの地上の主人として、他の生物を管理する役割をもつ。このような世界観をもつ人々にとって、被造物である人間が、命に等しいものをつくことは最大の罪悪です。この世界観は、欧米社会に古くから、人間とロボットが敵対する物語を生み出しました。

p.36

古くはフランケンシュタイン、近年ではターミネーターが欧米のそれでした。人は、この世の主人としてロボットと戦う使命があると考えるのです。

一方で、東洋的な思想では、この宇宙には様々な命があり、それらに優劣はありません。命は等しく尊いので、ロボットも大切にされるのが、東洋的ロボットの描かれ方です。

西洋と東洋の思想の違いが、ロボットの姿かたちや役割まで変えているとは、面白いですね。

未来はこれから作られる

さて、人工知能、AIの技術の展望は明るいのでしょうか。あさよるの感想は「想像よりも難しそうだなあ」というものです。現在、人工知能が持て囃されていますが、流行はその内忘れ去られてしまうでしょう。しかし、一歩一歩着実に技術革新が起こっているのは事実です。

本書は『14歳から知っておきたいAI』とタイトル通り、10代の人が読んで、自分の進むべき道を知るきっかけになる本だと思います。コンピュータの技術は、意外過ぎるくらいに歴史は浅く、冬の時代も長く、実用化されたのは意外と最近。コンピュータがなかった時代、人々がどうやって生きていたのか知ることも、また未来を考えるヒントかもしれません。

以下余談ですが、あさよるが子どものころ、NINTENDOの初代ファミコンのその名も「ロボット」という玩具で遊んでいた記憶があるのですが、これはAIだったの? なんともレトロな風貌だなあw

これ!これ!アマゾンで売られてたwあさよるの初ロボット体験は、この任天堂のロボットでした。

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図解でわかる 14歳から知っておきたいAI

目次情報

はじめに

大図解
AIの現在地を知る

5つの時代の試行錯誤を経て 人工知能が見せる明日とは

第1部 AIとロボットの時代

1 人工知能の実現を夢見た4人の科学者の楽観論とその挫折
2 冷静になった科学者たちはエキスパートシステムで再起を図った
3 AI冬の時代に機械学習が地味に進化しビジネスでの実用化が始まった
4 ディープラーニングの登場がAIを再び表舞台に立たせる
5 人間の脳のコンピュータ・モデル化 その先にあるのが「強いAI」
6 進化するAIは、私たちの明日にどんなインパクトを与えるのだろうか

第2部 AIの基礎知識

1 機械学習
大量のデータを分類・整理するそれがAIの「機械学習」のスタート

2 ディープラーニング
人間の脳の仕組みを真似た「ディープラーニング」の時代へ

3 言語の認知
コンピュータが人の言葉を理解する「音声・言語認識」こそAI研究の基本

4 ビッグデータ
AIの実力は、スーパーコンピュータと「ビッグデータ」の結合で発揮される

5 車の自動運転
車はAIの目をもつことで「自動運転車」の道を進み始めた

6 車のAI化の未来像
自動車のAI化完全自動化は電気自動車化と共にやってくる

7 スーパーコンピュータ
ビッグデータの解析には必須「スーパーコンピュータ」の宇宙規模の進化

8 スーパーセンサ
AIは高精度「3Dセンサー」を得て一気に生活シーンに登場し始めた

9 ロボット
日本の欧米の「ロボット」開発は異なる思想からスタートした

10 ヒューマノイド
日本の「ヒューマノイドロボ」の象徴ASIMOの進化と限界

11 戦闘ロボと平和ロボ
ロボットがAIの頭脳を持つと日本とアメリカは再び別の道を行く?

第3部 AIで変貌する仕事

1 会社の変貌
AIとロボットの導入によってお菓子会社はこう変わる?

2 AIが得意な仕事
AIは人間の仕事領域を脅かす? 消える職業と消えない職業

3 医療①
病院はこう変わる 医療ビッグデータとサービスをAIが統合的に結び付ける

4 医療②
個人と地域医療、高度医療サービスをAIが統合的に結び付ける

5 自治体
ミニ国家の役所から地域サービスユニットへ地方自治体もようやくAIに注目

6 農業
AIの導入で最も変化するのは農村? 加速化するスマート農業

7 土木・建築①
土木・建築の現場はAIの助っ人でスマート建築に

8 土木・建築②
土木現場の人手不足と技術継承はAIによる自動化・ロボット化で解消

9 工場
産業用ロボットの導入からAIによる無人工場への流れは止まらない

10 サービス業
飲食・小売りなど接客サービス業はAI化で人手不足や行列を解消

11 金融①
AIが1秒で実行する小口融資決算システムの明日

12 金融②
最もAIに置き換えやすい仕事として金融があげられるのは

13 物流
物流業界のAI化は3K解消以上の構造変化を招く

14 介護
高齢者介護の現場で切実に必要なのはAI排泄支援ロボットではないか

15 セキュリティ
AIセキュリティ社会と監視社会の境目はどこに?

第4部 AIと人間の未来

1 シンギュラリティの到来により人間はAIと一体化する?
2 AIは人類を滅亡させる? シンギュラリティの危険性
3 AIの未来を描いたフィクション①古代の人造人間から、働くロボットまで
4 AIの人間を描いたフィクション②人間とAIとの対立から共存、そして融合へ
5 映画に描かれたロボットやAIは現実のテクノロジーを先取りし続けた
6 AI進化への警鐘は何に対して鳴らされているのか
7 IAによる自立兵器とサイバー攻撃が戦争のあり方を変える
8 ジェイムズ・P・ホーガン『断絶への航海』を読み解く
地球的権力思考とAI的自由人「ケイロン」との出会い

おわりに
索引
参考文献

インフォビジュアル研究所

2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、新しいビジュアル・コンテンツの開発を目指し、編集者、グラフィックデザイナー、CGクリエイター数名により活動を開始する。これまでに制作しに携わった作品に、『週刊ポスト』誌上での連載をまとめた『だから売れた!』(東京書籍)、『家族を守る!! 放射線物質を除く食事』『超図解でよくわかる! 現代のミサイル』(ともに綜合図書)、『イラスト図解 戦闘機』『イラスト図解 イスラム世界』(ともに日東書院本社)、『超図解 ニッポンの産業をつくった8人のカリスマ経営者』(ファミマ・ドット・コム)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、『図解でわかる ホモ・サピエンスの秘密』『図解でわかる 14歳からのお金の説明書』(ともに太田出版)などがある。

コメント

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