『AIとBIはいかに人間を変えるのか』|人類の新ステージ?

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『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

こんにちは。あさよるです。連休中に西洋音楽史の本を読みまして、「音楽」って普遍的で大昔から変わらないものだとばかり感じていましたが、今私たちが馴染んでいる「音楽」は意外と新しいものなんだと知りました。西洋ではかつて音楽は神様の世界のもので、禁欲的。今の私たちにとっては「全然楽しくない」感じです。ポピュラー音楽に至っては、20世紀、第一次大戦が終わってからのもの。もっと言えば、我々が慣れ親しんでいるのは「録音音楽」です。レコードとプレイヤーで楽しむことを「音楽」と呼ぶのは、歴史の中ではかなり特殊な環境です。

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

今当たり前すぎて疑うこともない価値も、意外と新しいもので、歴史が浅いものってあるんですね。「不変」だと「信じていた」というのは、もう信仰です。「ああ、私は近代を信仰しているのか」と気づき愕然としました(;’∀’)

今回紹介するのは『AIとBIはいかに人間を変えるのか』という、これから訪れる「人類の新しいステージ」を考える内容の本です。現在、先進国は軒並み伸び悩み、成長できずにもがいています。景気対策を打っても国内の格差は広がるばかりで、国の中が貧しくなっています。現状を打破するためには、今の社会の形を根本から変える必要があるのではないか? そこで注目されているのがBI(ベーシックインカム)です。

また、AI・人工知能の技術的な進歩により、人間の働き方の変化が期待されています。また、男女同権により女性の社会進出も進んでいます。後進国だった国々は経済発展しています。インターネット網は地球を包み込み、インフラのない土地にも等しく知識や教育が行き渡っています。世界は変わっています。さて「人類の次のステージ」はどのようなものなのでしょうか。

AI、BIとは

AI・人工知能もBI(ベーシックインカム)も、どちらも近年よく見聞きする言葉です。AIとBIについて触れつつ、このAIとBIが合わさって、もたらされる「未来」を考えます。

AI・人工知能とは

まずAI・人工知能とは。1930年代コンピュータの登場した当時からAIの登場が構想されていました。しかし二度ののAIブームは合ったものの、AIの冬の時代も長く、順風満帆とは言えませんでした。2012年にGoogleが「ネコを判断できるAI」を開発し、一躍有名となりました。その頃から「ディープラーニング」によるAIの進歩が注目され、現在は第三次AIブームといったところでしょうか。

近年、AIが飛躍的に進歩したのは、ビッグデータが扱えるようになったことと、インターネットの普及により膨大な数の写真や映像、データがインターネットにアップロードされるようになったことが影響しています。

今後、AIの進歩により、人間の仕事がAIに取って代わられると話題です。一方で、AIの進歩によって新たに生まれる仕事もあるでしょう。今の子どもたちの半分以上は将来、今は存在していない職業に就くと考えられており、感覚的にもなっとくできます。

コンピュータが人間の仕事の多くを引き受けるなら、人間はより「人間らしい」活動に集中することができます。

BI(ベーシックインカム)とは

BI(ベーシックインカム)は、経済成長が軒並み頭打ちしている先進国の、現状打破策として注目されています。先進国では、かつてのような経済成長が起こらず、経済対策を打っても国内の貧富の差が拡大してしまうジレンマに陥ってます。

BIは「健康で文化的な最低限の生活を営む」ために国民全員に現金で与えられる基礎的(Basic)給付(Income)で、政治学では“生存権所得”とも言われている。このBIは、様々な社会保障制度を一元化できる上に、給付漏れが起こらず、受給者にも理解しやすいシンプルな制度であることが評価されている。

p.104

BI(ベーシックインカム)は実験的に導入される例も登場し、貧しい人たちが前向きに人生設計を考え、豊かに生きようとし始めるなど良い結果があり、期待されています。

BI(ベーシックインカム)の良いところは「シンプル」。本書では、全ての国民に月8万円を現金で給付することが想定されています。すると、年金制度や健康保険、生活保護などの社会保障が一元化され、ムダなコストも削減できます。なにより、ややこしい手続きが不要になることで、役人の数を減らすことができます。

財源として、まず国の社会保障をシンプル化することで浮いたお金を財源に回します。また税率を引き上げ、国の収益を増やします。本書では消費税を18%に引き上げても、毎月8万円ベーシックインカムを受け取る額の方が多く、貧しい世帯にもダメージはないと計算されています。

BI(ベーシックインカム)の導入を阻んでいるのは官僚たちです。ベーシックインカムが導入されると、社会保障に関わる官僚たちの仕事がなくなってしまいますから、「ベーシックインカム的」な制度は遠ざけられています。

より「人間らしい」活動を

AIの到来により、コンピュータが人間の代わりに働く未来では、人間は「より人間らしい」仕事に集中することができます。

またBI(ベーシックインカム)導入後の未来では、「死なないために働く」という労働から解放され、人々は「豊かに生きるために働く」ようになります。今、嫌々やりたくない仕事をしている人も、ベーシックインカムが導入されれば今の仕事にこだわる必要はなくなり、豊かに生きるための人生設計を考え始めるでしょう。それはつまり「より人間らしい」人生を生きようとすることです。

AIとBIの未来は「より人間らしい」世界がやってくると想定されます。これは、かつて農業革命や産業革命によって人類が「進化」したように、AIとBIが人類を「新たなステージ」へと導くものではないか?と考えられます。

『AIとBIはいかに人間を変えるのか』挿絵イラスト

「豊かに生きる」ことができますか?

はてさて、AIとBIの未来は明るい!みたいな感じがしますが、問題は命が保証され、お金も保証されたとき、ハッと気が付くのです。「豊かに生きる」ことってどんなこと? もしAIが面倒な仕事を引き受け、BIで最低限の生活の保障がなされているとして、あなたはどう生きますか?

今、「楽しむ」という言葉が乱用されているように感じます。スポーツ選手も、「試合を楽しみます」ってインタビューで答えていますし、学校の勉強も「楽しんで学ぶことが良いこと」のように語られます。プライベートな時間はまるで「楽しくないと生きている意味がない」くらいの勢いで、ライブやレジャーや、食事やショッピングなどの予定を詰め込んでいる人がたくさんいます。

みんな身づくろいも小奇麗で、清潔感のある爽やかな人ばかりになりましたね。

もしかしてすでに私たちの社会は「死なないように生きる」時代は終わり、「楽しく生きなければならない」という価値が到来しているのではないでしょうか。しかもそれは強迫観念的に執着して。AIとBIによって人類が新しいステージへ進んだなら、私たちは今以上に「豊かに生きる」ことこそが「人間らしさ」であり、「お金の価値ではない豊かさを生きなければならない」時代が到来するとも考えられます。

BIは単に「働かなくていい」「怠け者が増える」政策ではなくて、もしかして「結構キツい」時代が来るのかもしれません。今はほら、連休に海外旅行へ行ったInstagramドーン! 彼氏にプレゼント貰ったドヤァ。ママにバーキン買ってもらったFacebook投稿いいね! なんかをしてるだけで満足できるけど、「新しい時代」はそれじゃ豊かじゃない。「お金の豊かさじゃない豊かさ」をアピールできないといけない。

新しい時代は。「センス」とか「才能」とか「オシャレ」とか「ステキ」とか「可愛い」「美形」とか、そういう価値が重要になるんじゃないのかな? 「ダサイ奴」は生きにくい時代になってしまうのだ。はてさて、「ステキ」に生きられるように、生涯邁進し続けなければならない人生、〈楽勝〉な人と〈ムリゲー〉な人に、パッカリ分かれるんじゃないかしら。

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AIとBIはいかに人間を変えるのか

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  • 作者:波頭亮
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2018年02月26日

目次情報

まえがき

第Ⅰ章 AI……人工知能とは

第1節 AIとは……AIの発展の歴史

(1)第一次AIブームと第二次AIブーム

①第一次AIブーム
②第二次AIブーム
・第五世代コンピュータ開発プロジェクト

(2)第一次・第二次AIブームで明らかとなった課題

①言葉の理解……シンボルグラウンディング問題
②情報の選別……フレーム問題
③第三次AIブームへの道を開いた機械学習の発展

(3)第三次AIブームのブレイクスルー

①第三次AIブームの革新的技術……ディープラーニング
②ディープラーニングの母体……ニュートラルネットワーク
③人間の“分かり方”に近づいたAIの情報処理
④AIが「目」を手に入れたことの意義
⑤ハードウェアの進歩とビッグデータ

(4)AIに残された課題

①技術的課題
②ハードウェアの課題
③電力・エネルギー問題

第2節 AIと人間

(1)AIの強み/弱み

①AIの強み
②AIの弱み
・「壺を持ち上げるとチャイムが鳴る」のは因果関係か?
・確率論的合理性から離れたひらめき
・本音と建て前を読み取れるか
③AIはあくまで人工の“知能”である―人間は知能だけではない

(2)AIは人間の仕事を奪うのか

①AIに代替される仕事
②AIが苦手とする仕事の特徴
ⅰ.身体性ベースのマルチタスク要素
ⅱ.直観/直感の要素
ⅲ.クリエイティブ要素

(3)感情労働という仕事……情緒と身体性

①AIが「他人の感情」を扱うことは難しい
・ペッパー君の感情的反応は感情に根差しているか
②人間は情緒的環境の中で成長する

(4)汎用性AI実現に向けた社会的課題

①AIの倫理・責任問題
②人間の能力低下リスク

第Ⅱ省 ベーシック・インカム(BI)の仕組みと効力

第1節 BIの仕組みとメリット

(1)そもそもベーシック・インカムとは

(2)BIの制度的長所

①シンプルである
②運用コストが小さい
③恣意性と裁量が入らない
④働くインセンティブが失われない
⑤個人の尊厳を傷つけない

(3)BIの経済的メリット

①マクロ経済のメリット……景気対策としても有効
②企業・産業界も活性化させる

(4)BIの思想的意義

①民主主義の正義
②3つの経済思想からの合理性
ⅰ.コミュニタリアンのBI支持の理由
ⅱ.リバタリアンのBI支持の理由
ⅲ.ネオリベラリストのBI支持の理由

(5)BIが変える働くことの意味

第2節 BIの実現可能性

(1)BIの制度的懸念点

①フリーライダー問題……働かない人を増やす
②財源問題……そもそも財源が足りない
ⅰ.国民負担率60%
ⅱ.格差解消に不可欠な資産課税

(2)BI導入の障壁

①官僚の抵抗
②「働かざる者、食うべからず」の社会通念

(3)BIの導入事例

①ミンカムの実績
②近年の導入実験とスイスの国民投票
ⅰ.政府・公的機関によるBI導入実験
ⅱ.民間企業/団体によるBI導入実験
ⅲ.スイスの国民投票否決
③イギリスでホームレスにお金を与えたらどうなったか

第3節 民主主義・資本主義とBI

(1)格差の弊害

①日本の格差の現状
②教育格差と「欠乏の心理」
③格差は富める人をも不幸にする
④現行の社会保障制度の限界

(2)日・米・欧、それぞれの対応

(3)民主主義・資本主義とBI

第Ⅲ章 AI+BIの社会で人間はどう生きるのか

第1節 AIとBIが導く“新しいステージ”

(1)AIがもたらす豊かな世界

①技術開発が生活を豊かにするための2つの条件
②AIがもたらす豊かさのスケール

(2)AIがBIと結びつく必然性

①2つのディストピア
②再分配というキーワードで結びつくAIとBI

(3)これからの民主主義と資本主義を支えるBI

①「働かざる者、食うべからず」の進化論的合理性
・「寡婦と孤児は庇護すべし」
②豊かになっても「働かざる者、食うべからず」が維持されてきた理由
・「働かなくても、食って良し」で共産主義は破綻したのか
③技術発明は社会形態と規範を刷新する
・“新しいステージ”の3つの歴史的成果

第2節 AI+BIの社会で人間はどう生きるのか

(1)AIとBIが労働と経済にもたらすインパクト

・労働量は減り、仕事の価値は再構成され、経済のウェイトは低下する
・生きるための労働が無くなる
・労働なき時代の仕事と活動
・「遊びをせんやと生まれけむ」

(2)AI+BIの世の中で豊かに生きるための条件

・「退屈の不幸」と「人生、不可解なり」
・豊かになるための能力
・経済と修練
・人間らしさを守ること

あとがき

波頭 亮(はとう・りょう)

経営コンサルタント。
1957年、愛媛県生まれ。
東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経営コンサルティング会社(株)XEEDを設立。
幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方、明快で斬新なビジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。

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