「プラシーボ効果」について、私は軽く見ていたようで、徐々に考えを改めています。きっかけは『「無」の科学』を読んでからです。様々な分野の「無」や「ゼロ」にまつわる話が集められた書籍で、ブログでも紹介しました。
「プラシーボ効果」とは、効果のない偽薬を「薬だ」と思って飲むと本来の薬と同じ効果が現れたり、本来ならば効果のないはずの治療が効いたりする現象です。
反対に、本来効果があるはずの薬品でも患者に「効果がない」と思わせば効果が出ず、効果のあるはずの治療も効かなくなることを「ノセボ効果」や「ノーシーボ効果」と言うそうです。
思い当たることは私も体験をしています。
ひどい頭痛が続き、市販の鎮痛剤でしばらく過ごしても治らないので病院へかかると、「この頭痛はその市販薬では効かないでしょ」とお医者さん。「さぞ辛かっただろうに」とお医者さんは私を慰めてくださっているのですが、次から、同じような頭痛にはその市販薬が効かなくなったり。
寝付きが悪く病院で睡眠導入剤を処方してもらったものの、なかなか効かない。先生に「もっと強い薬を出して欲しい」と頼むと、「この薬は結構きついよ。これ以上は今は処方したくない」と先生。同じ薬をしばらく続けることになったものの、その晩から薬が効き過ぎ「朝起きれない」「日中もだるい」と難儀しはじめるハメに……昨日まで効かなかったのに。
私は結構、疑い深い割に単純なようで、服薬や病院での治療が下手なのです。段々歳をとるにるけ、自分の健康を自分で守らねばならないと思うようになり、意識改善の中で、プラシーボやノセボについても興味を感じます。
非常時でも、時代や立場が変われば行動が変わる
日頃の自分の考えや思想というのは、思った以上に大きな存在で、たとえ命がかかった非常時にも、平常時の思想や習慣が働くようです。
『天災から日本史を読みなおす – 先人に学ぶ防災』では、過去日本で起こった災害の記録を紐解きながら、今備えるべき対策についても考えさせられます。それは、インフラ整備や避難経路の確保など、物理的な対策もあれば、どうやら私達の非常時の「考え」や「価値観」も、事前に思案し、家族と決めておく必要があるようです。
私は幼い頃から母に、「母親というものは、自分の子どもを自分の命よりも大切に思っているものだ。子どものためなら自分の命を捨てても構わない」と繰り返し言い聞かされて育てられました。もちろん、母親から子への限りない愛を伝えてくれているのです。
しかし今は、これは愛の言葉であると同時に、呪いの言葉のようにも思えます。自分が子の立場であるときは、母が頼もしく、母の庇護のもとにあることで安心を感じます。しかし、女の子はいつしか大人になり、次は自分が母の立場にもなるのです。「自分の命よりも子どもが大事だ」と言う番になります。
私には子どもがいないので、母親の気持ちがわからないだけだと言われてしまうと、ぐうの音も出ません。しかし、妹が一児の母になり、すくすく育つ妹の子を見ていてふと、「妹はこの子のために命を投げ出してしまうのだろうか」と思うと、とても悲しく、やりきれない気持ちになります。どうか助かる命ならば、捨ててしまわないで欲しいと思います。
『天災から日本史を読みなおす – 先人に学ぶ防災』では、「孝」の考えの元行動する人たちが複数登場します。考とは、「親孝行」の「孝」で、親を敬い、忠実に従う考えです。自分の命よりも親の命を優先し、自分の子どもを投げ打ってでも親を守ることをよしとします。現在では、自分の子よりも親が大事とは、少し考えにくく思えます。時代や立場が変われば、考え方や価値観そのものが変わるのです。
本書では聞書きした記録の中でも、津波に遭い、年老いた母親を救うため、背中に負った幼い娘を捨て、母を救助する話が記されます。
緊急時の判断の良し悪しはわかりません。正解もありませんし、自分が非常時にどのように振る舞うのかはわかりません。
しかし、どうやら人間は、緊急事態でも、平常時の思考や思想に縛られ行動するようです。正解はありませんが、最善の行動を取るためには、日頃から自分の考えを見つめ、整理し、決意をしておかないといけない、ということです。
未来へ向けて書き記すこと
また、自分の考えや、行動、起こった出来事を書き残しておくことが、未来に生きる人にとって、こんなにも貴重な記録になるのかと知りました。
私達が歴史の中のできごとを知り、未来に備えられるのは、昔に生きた人たちが書物に書き残してくれたからです。
現在の私達の、誰が書いた記録が未来に残るかは見当もつきません。しかし、必ず誰かの書いた日記や記録は残ります。私たちはただ記録し、あとは時が勝手に篩いにかけるだけです。
まとめブログや情報系サイトなど、玉石混交ですが、中には未来の人にとって貴重な資料が混じっているんじゃないかなぁと思います。
天災から日本史を読みなおす – 先人に学ぶ防災
- 著書:磯田道史
- 発行所:中央公論社
- 2014年11月25日
目次情報
- まえがき
- 第1章 秀吉と二つの地震
- 1 天正地震と戦国武将
- 2 伏見地震が終わらせた秀吉の天下
- 第2章 宝永地震の招いた津波と富士山噴火
- 1 一七〇七年の富士山噴火に学ぶ
- 2 「岡本元朝日記」が伝える実態
- 3 高知種崎で被災した武士の証言
- 4 全国を襲った宝永津波
- 5 南海トラフはいつ動くのか
- 第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
- 1 土砂崩れから逃れるために
- 2 高潮から逃れる江戸の知恵
- 第4章 災害が変えた幕末史
- 1 「軍事大国」佐賀藩を生んだシーボルト台風
- 2 文政京都地震の教訓
- 3 忍者で防災
- 第5章 津波から生きのびる知恵
- 1 母が生きのびた徳島の津波
- 2 自身の予兆をとらえよ
- 第6章 東日本大震災の教訓
- 1 南三陸町を歩いてわかったこと
- 2 大船渡小に学ぶ
- 3 村を救った、ある村長の記録
- あとがき――古人の経験・叡智を生かそう
- 索引
著者略歴
磯田 道史(いそだ・みちふみ)
1970年,岡山県生まれ.慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了.博士(史学).茨城大学准教授を経て,2012年4月より静岡文化芸術大学准教授,14年4月より同教授.
著書『武士の家計簿』(新潮文庫,新潮ドキュメント賞受賞)
『近世大名家臣団の社会構造』(文春学藝ライブラリー)
『殿様の通信簿』(新潮文庫)
『江戸の備忘録』(文春文庫)
『龍馬史』(文春文庫)
『日本人の叡智』(新潮新書)
『無私の日本人』(文藝春秋)
『歴史の愉しみ方』(中公新書)
『歴史の読み解き方』(朝日新書)
など多数
コメント
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