左近司祥子『西洋哲学の10冊(岩波ジュニア新書)』を読んだよ

哲学の道案内になる一冊

「なんでだろう?」「不思議だなぁ」と思うことは大概、既に昔の人も同じように悩み、考えぬいているものです。
先輩方の経験や考え、結論を教わる手段の一つが、本を読むことではないでしょうか。
この先輩たちは、いくら時代を遡っても先輩の先輩の先輩の……と果てしなく続きます。
『西洋哲学の10冊』では、10人の人生の先輩たちの考え抜いたテーマの、エッセンスが紹介されています。

分からないこと、知らないことに出くわしたとき、「ああ、自分はなんにも知らないんだなぁ」とほんの少しだけ落ち込み、しかしそれ以上に「なんだか面白そうな知らない世界を見つけたぞ!」とワクワクします。
ですが、知らない世界へ飛び込むには、右も左も分からりませんから、道案内が必要です。

道案内役になる書籍、というものにたまに出会います。
私にとっては、赤塚不二夫さんの本だったり、歴史小説だったり、旅日記やマンガだったりと、ジャンルは様々でした。
その時々、タイミングや必要に合わせて、道案内役は変わるでしょう。

最初は未知の世界だったジャンルも、次第に自分の力で見渡せるようになった時、道案内役は役目を終えます。
「ああ、今読むと、なんでこんな本を足がかりにしたんだろう」と不思議に思えることもあります。

本書も、西洋哲学という「未知の世界」へ飛び込む時の良いガイドになるでしょう。
そしていずれ、その分野について深く知識を身につけた時、読み返してみて自分の成長を感じてみるのも良いでしょう。

西洋哲学の10冊

  • 編著:左近司祥子
  • 発行所:株式会社 岩波書店
  • 2009年1月20日

目次情報

  • はじめに
  • 恋が求める究極のもの プラトン 饗宴…………左近司祥子
  • 人と関わりながらよく生きる アリストテレス ニコマコス倫理学…………左近司祥子
  • 自分の中の自分に出会う アウグスティヌス 告白…………中川純男
  • 「わたし」から出発する デカルト 方法序説…………杉山直樹
  • 理性の運命を物語ろう カント 純粋理性批判…………石川文康
  • 人間自然 ルソー 告白…………村山達也
  • だれでも読めるが、だれにも読めない書物 ニーチェ ツァラトゥストラはこう言った…………竹内綱史
  • 「自由に生きること」とは ベルクソン 時間と時間…………杉山直樹
  • 〈存在への問い〉を問い続ける ハイデガー 存在と時間…………関口 浩
  • ブタへの熱意を持ち続けること ラッセル 幸福論…………小島和男
  • おわりに
  • もっと読みたくなったら 主な翻訳一覧

執筆者一覧

中川 純男(なかがわ・すみお)

1948年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻は、西洋古代・中世哲学。主な著書に、『存在と知――アウグスティヌス研究』(創文社、2000年)、『初期ストア派断片集』(山口義久、水落健治と共役、京都大学学術出版会、2000-2006年)、『哲学の歴史3』(編著、中央公論新社、2008年)がある。

杉山 直樹(すぎやま・なおき)

1964年生まれ。学習院大学文学部哲学科教授。大阪大学大学院文学研究科哲学哲学史専攻単位取得退学。博士(哲学)。専門はベルクソンを中心とする近・現代フランス哲学。主な著書に、『ベルクソン 聴診する経験論』(創文社、2006年)、『ベルクソン読本』(共著、法政大学出版局、2006年)、『哲学の歴史』第8巻・別巻(共著、中央公論新社、2007・2008年)など。

石川 文康(いしかわ・ふみやす)

1946年生まれ。東北学院大学文学部教授。哲学博士。同志社大学大学院博士課程修了。ドイツ、ハイデルベルク大学、ボン大学に留学。ミュンヘン大学、トリアー大学で客員研究。専門はカントを中心とする近世哲学。主な著書に、『カント入門』(ちくま新書、1995年)、『カントはこう考えた――人はなぜ「なぜ」と問うのか』(筑摩書房、1998年)、『カント事典』(共著、光文堂、1997年)など。

村山 達也(むらやま・たつや)

1976年生まれ。慶應義塾大学、国士舘大学等で非常勤講師。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専門は近・現代フランス哲学・倫理学。論文に「人生の意味について――問いの分析の観点から」(三田哲学会編『哲学』第113集、2005年)、「ベルクソン「直接与件」における自由をめぐる四つのテーゼ」(実存思想協会編『実存思想論集』第23号、2008年)など。

竹内 綱史(たけうち・つなふみ)

1977年生まれ。日本学術振興会特別研究員(大阪大学文学研究科)。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。専門は宗教哲学。主な著書に、『ディアロゴス――手探りの中の対話』(共著、晃洋書房、近刊)、『ヨーロッパ現代哲学への招待』(共著、梓出版社)、『大学と哲学――近代の哲学的大学論の系譜学と人文知の未来』(共著、未来社、近刊)など。

関口 浩(せきぐち・ひろし)

1958年生まれ。早稲田大学社会学部非常勤講師。早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。専門は、現代哲学・美学。主な著書に『ハイデガー『哲学へのキヨ』解読』(共著、平凡社、2006年)、『ハイデッガー『存在と時間』の現在』(共編著、南窓社、2007年)。主な訳書として、ハイデッガー『芸術作品の根源』(平凡社、2008年)など。

小島 和男(こじま・かずよ)

1976年生まれ。学習院大学文学部哲学科非常勤講師。哲学博士(学習院大学)。専門はギリシア哲学。特にプラトンを中心に研究。著書に、『プラトンの描いたソクラテス』(晃洋書房、2008年)、『面白いほどよくわかるギリシア哲学』(共著、日本文芸社、2008年)がある。

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