宮本浩次『明日に向かって歩け!』|エレカシ宮本・あなたはどんな人なの?

こんにちは。軽くエレファントカシマシにハマっている あさよるです。今年(2017年)に発売されたベスト盤を聞いて盛り上がった勢いのまま、ライブのチケットまで取ってしまいましたよ(〃▽〃)> 楽しみでゴザル

そして、メンバーの宮本浩次さんのエッセイがあると知り、これは読んでみたいと入手いたしました。

といっても、2017年6月現在絶版になっているようで、価格が高騰しております。今、Amazonを見ると一冊19,500円でした。ひえっ~!ということで、あさよるは図書館で本を借りました。

エレカシ宮本浩次のエッセイ

2000~2001年に〈週刊プレイボーイ〉にて連載

本書はエレファントカシマシの宮本浩次さんが2000年~2001年にかけて雑誌「週刊プレイボーイ」にて連載していたエッセイ集です。

どういう経緯で週プレ連載が始まったのか、また、紙面ではどのように掲載されていたのか分からないんですが(と、ググると雑誌に見開きで連載されてたっぽい?)。章立てされているわけでもないので、どこからどこまでがひとまとまりなのか分からないまま読了してしまいました。

で、なんで週プレで連載なの?と不思議に思ったのですが(音楽誌とかじゃなく)、「週刊プレイボーイ」のwikiを見ますと、週刊プレイボーイの六カ条なるものがあるそうで…

『プレイボーイの名は、カッコいい魅力ある青年のイメージです。』
『プレイボーイは、青年の週刊誌です。』
『プレイボーイは、読者に楽しみを売る週刊誌です。』
『プレイボーイには、人生の知恵があります。』
『プレイボーイには、読者のみなさまの暮らしに直結した実用性に徹します。』
『国際感覚の雑誌、10月28日創刊です』

週刊プレイボーイ – Wikipedia

これを見ると、確かに「カッコいい魅力ある青年」とか「人生の知恵」とか、当時のエレカシや、宮本さんのイメージにあっているような気もする。ちなみに、連載時、宮本さんは35歳だ。「カッコいいお兄さんの連載」って感じだろうか(想像)。

ネットがなかった時代の情報源・娯楽

今の感覚で『明日に向かって歩け!』を読むと、やたら時事ネタで政治ネタが多用され、「新聞は毎日読んでいる」と言う宮本さんに、社会派な印象を持ってしまう。しかし、落ち着いて考えてみると、連載当時はまだインターネットは今のように普及しておらず、携帯電話(ガラケー)だって、持ってない人もいた頃です。情報源と言ったら、紙に印刷されたものしかなかった。時代が変われば変わるもので「毎日新聞を読む」というだけで、珍しく思えてしまう現代……。

自動車免許を取って、楽しくて自動車を運転しまくった話もあるが、これも今の感覚で「30代男性がポルシェを乗り回す」と言うのと、感覚が違う気がする。当時、どんな娯楽があったんだろうか。あと、NHKの中国語講座を見て勉強したって話があるが、ネットが普及した今の感覚とは違っているかも。

今よりもずっと、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌は、とても貴重な情報源だった(あさよるは、ネットがなかった時代どうやって自分が生きていたのかもう思い出せないから、定かではない)。

今新たに読む人や、特に若いファンの方たちなんかは、時代背景を頭に入れて読まないと、わかりにくいかもしれない。

時事ネタの間にチラ見する素顔

内容は、その時々の時事ネタ政治ネタに始まり、あれこれととりとめもないことが書き連ねてゆく感じ。読んでいてなんとなく、世紀の変わり目の我々はのんびりとしているような気がした。その後21世紀に起こる出来事や事件、災害を知っている未来の我々からするとね。

ネットリテラシー高いなぁオイ

実は、単行本一冊まるまる使っても、宮本浩次という人は素顔をほとんど見せてくれない。掴みどこがなくって、素顔を見てやろうと目を凝らすと逃げられてしまう。いや、宮本さんがどんな方なのか知らないから、実のところはわからないけれど。

彼のことが知りたかったのに結局、彼がどんな人なのかはわからなくって、ああもう。見たいものが見せてもらえない。だから、もっと見たくなる。エンターテイナーだなぁ。

彼は、本が好きだ文学が好きだと言うが、本書では読書についてほとんど触れられない。ちなみに、あさよるは宮本さんがラジオのインタビューを受けているのを結構たくさん聞いたつもりなのだけれども、やっぱり彼はほとんど何も教えてくれない。

本書内では、政治の話題をたくさん扱うくせに、むちゃくちゃ上手に話を逸らす。いや「逸らす」っていうと嫌な感じがしてしまうけれども、ちゃんと「大人の」「良識ある」語り口なのです。言うべきことは言うが、余計な尻尾は掴ませない。

要は「書いていいことと悪いこと」をよく分かってらして、「ああこの人はTwitterやっても炎上しないんだな」って確信した(基準それ?w)。これは編集者が優秀だという説も拭えないが、他のインタビューを聞いていても宮本さんは「言っていいことと悪いこと」を絶対に踏み越えない。

ということは……

とても常識的で分別があって、だけども破天荒で子どもみたいな顔を持って……って!ギャップかっ!魅力的すぎるやろ!パーフェクトかっ!

普通の30代の男の子

で、で、で。ここまで書いて、それでも時折チラッと等身大の宮本さんの、横顔や後姿くらいが見えた(気がする)とき、もう、もう。もう!夢中ですよね~。ですね~。すいません、ニワカの癖にウダウダと書いておりますm(__)m

でね、やっぱ30代の男の子って、こんな感じなんだろうなぁ。憧れの車に乗ったり、ヨーロッパに建築見に旅出ったり、本人にとっては大事なコレクションを集めたり。

時折、恋の話や、両親の話、故郷の話、昔の話、今の話、仕事の話。とりとめもなく、つかむ間もなく過ぎ去っていく日々は、ボーっとしているとあっという間になくなってしまう。その〈時間〉〈人生〉〈老い〉を意識し始めるのもまた、その年頃なのでしょう。

世紀の変わり目、時代の変わり目、人生の変わり目の、30代の一人の男性の読み物として、リアル。

言文一致かよっ!

リアルな感じがドキドキしちゃう原因は、言文一致と言いますか、まるで本人が喋っているかのような文章がヤバイ。というか、あまりにも引っ掛かりがないのでスルスルと読み流しちゃいそうだけれども、「喋っているかのように書く」ってすごくないか?

聞き書きなのかな?と疑いたくなるが、原稿用紙に宮本さんが執筆されたものらしい。

ちなみに、あさよるはこんな風にブログを書いているけれども、もちろん喋り言葉はこんなんじゃない。あさよるはこんな人じゃないのだ。誰だって、書き言葉と話し言葉って違うものだと思っていたが、すごい。臨場感。

熱血文系サブカルエッセイ

『明日に向かって歩け!』は初っ端から妙なテンション。原付でいうところの、常に2速くらいで走り続けているようだ。ああ、ぜひもう一段ギアチェンジしたい。させてくれ!……と思う感じなのだ(変な喩え)。

で、宮本さんがテレビやラジオ等のメディアで、どちらかというと「面白おかしく」あるいは「おっかなびっくり」な扱いをされているのを見るにつけ「落語か!」と思っていた。落語の登場人物のようだし、あの声も喋り方もぴったりじゃないか。と、爆笑問題の太田さんが宮本さんに「落語をやって欲しい」と仰っていて、おお!と嬉しかった。そして、宮本さんは意外にも、落語は聞かない様子で、それが逆にますます落語の登場人物っぽかった。

こ、このテンション……

しかし!『明日に向かって歩け!』を読んで、この妙なソワソワ感がある作品を連想させた。それは!『燃えよペン』である!ちなみに、このブログを書くにあたり今さっき『燃えよペン』を読み返したところなので、あさよるのテンションもおかしい。

『燃えよペン』とは、マンガ家・炎尾燃が、ただマンガを描く熱血マンガである。続編に『吠えよペン』があり、さらに近年ドラマ化された『アオイホノオ』も同シリーズである。

これ以上『燃えよペン』について説明し始めるとこの記事の終わりが見えなくなるので今回は自粛しておくが、ぜひ一度は読んで欲しい一冊です、はい。

そうか、『明日に向かって歩け!』は熱血文系エッセイだったのか!ついでに言うと、サブカル的要素も見逃せない。宮本浩次は多くを語らない。宮本さん自身がなんらかの理屈があっての言動だろうが、多くを語らない故に、若き読者らのサブカル魂に火をつけてしまいかねない。熱い!熱いぞ!

だからというわけではないが、宮本さんは『巨人の星』を愛読しており、周りの人にも読ませて布教活動までしていると書かれている。熱血スポ根マンガを読んだ世代の文系オタは、熱血文系オタクになるのは当然ではないか

……と思ったが、はてさて、宮本さんが「オタク」と称されているのはあまり見た/聞いたことがない(気がする)。あさよるの友人に大のエレカシファンがいたが「ミヤジの凄さ」を語ることはあっても、「ミヤジのオタク性」の話は聞いたことなかった。だからニワカファンにとりましては、本書はとても意外な内容だった。ファンの人たちの間ではどんな語り方をされているんだろう。

週プレ読者の青年よ!

当時の「週刊プレイボーイ」の読者層がどんなだったか あさよるは知らないが、青年向け誌でこの連載は、なかなか熱いものだったんじゃなかろうかと思う。

だって、連載の最中、著者はコルビュジェの建築を見ようとヨーロッパ旅行に出かけるのだ。これは取材なのだろうか?と気になりつつ、コルビュジェ建築の前でたたずむ宮本さんの姿はどことなくほほえましい。ル・コルビュジェは「モデュロール」という、人の体の規格を考えた人だ。その規格をもとに建物や家具を考える。

「〈規格化されない才能〉持つ宮本浩次がぁ!何、コルビュジェ建築って!嫌味かぁ!」と、凡人あさよるは僻んでさえもしてしまいそうだ。ああ、なんか、いろいろ考え始めると止まらないじゃないか。

……当ブログでもコルビュジェ扱っております。あさよるも好きなんです。コルビュジェのソファーに座っている宮本さん、羨ましいです。

『もっと知りたいル・コルビュジエ 生涯と作品』を読んだよ
ル・コルビュジエは20世紀に活躍した建築家です。 私たちに馴染み深いル・コルビュジエ建築といえば、東京・上野の国立西洋美術館でしょう。東京へ出向いた際には、一度はじっくり見て回りたい建築の一つです。 2016年5月には、ル・コルビュジエ設計...

2000年当時って、まだ「オタク文化」が今ほど市民権を得ていなかった時代だ。宮本さんの趣味や嗜好って、当時はまだ珍しかったんじゃなかろうか。だから、この連載って、読む人が読めば刺激的だったろうと思う。少なくとも、当時高校生だったあさよるがもし週プレを読んでいたら、絶対に毎号スクラップして集めていただろう。

追記:『東京の空』も読みました

続編として、宮本浩次さんの『東京の空』も読みました。こちらは音楽誌で連載されていたものだそうで、雰囲気がまるっきり違っていて驚いた!

合わせてどうぞ・

宮本浩次(エレファントカシマシ)『東京の空』|ロッキングオンジャパン連載・日本語ロックのふるさと
こんにちは。先日、エレファントカシマシの宮本さんのエッセイ本『明日に向かって歩け!』を当ブログで紹介しました。図書館で予約をしていた『東京の空』も届いたので、折角なのでレビューを。前回は結構熱くなってしまったので、今回は淡々といきますw 音...

明日に向かって歩け!

目次情報

序文

二〇〇〇年六月~九月

二〇〇〇年六月
二〇〇〇年七月
二〇〇〇年八月
二〇〇〇年九月

二〇〇〇年十月~十二月

二〇〇〇年十月
二〇〇〇年十一月
二〇〇〇年十二月

二〇〇一年一月~三月

二〇〇一年一月
二〇〇一年二月
二〇〇一年三月

二〇〇一年四月~六月

二〇〇一年四月
二〇〇一年五月
二〇〇一年六月

あとがき

宮本とめぐる東京・武蔵野三十三景全図

コメント

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