私は絵が描くのが好きで、図書館の芸術、美術の棚に必ず立ち寄ります。
先日は図書館で、『「日本画」用具と描き方』という本を見つけ、読みました。
「初級技法講座」とも表紙に書かれているので、全くの日本画初心者へ向けた、最低限必要な用具と使い方と、技法の紹介です。
筆の種類、紙の種類、岩絵の具や顔料の種類、それらを使った描き方の種類がよくまとまって紹介されていました。
未知の存在「日本画」
日本画は描いたことがありませんし、用具も触ったことすらありません。
全くの未知の世界です。
いちいち色の顔料をすりこぎで擦り、「膠(にかわ)」と呼ばれる接着剤の役割のものと混ぜあわせ、濃さを調節し、やっと紙の上に色が塗れます。
未経験だと、なんだか面倒くさそうだなぁと思ってしまいますね。
ですが、日本画独特の色彩や雰囲気は、この手間をかけてこそなんですね。
面を描く西洋、線を描く東洋
日本画を日本画たらしめているものはなんなのか。
本書でも冒頭で日本画の特徴に触れられています。
西洋では絵を面で描くのに対し、東洋では線を使って描きます。
例えば、同じリンゴを描くとき、リンゴの表面の色の濃淡や光や影、模様を描くことで、リンゴを表現するのが西洋の絵画です。
一方、リンゴの輪郭線を描きとるのが東洋的な手法です。
そのものらしい輪郭線だけを描き、リンゴの表面の影や凸凹は省略されます。
水墨画はその典型ですね。
日本画の日本画らしさは「余白」?
中国では、絵の上手下手で評価し、評価をした人が絵の空白に落款を押すそうです。
日本画では、そんなことは起こりえません。
日本画では空白になっている「余白」も絵の一部と考えるので、無闇に手を加えられないのです。
「余白」に意味がある。
これが、日本画の日本画らしいところなのかもしれません。
目に見えない輪郭線
ところで、絵を描く時、まるで“ぬりえ”の絵のように、輪郭線をくっきりと引いた絵を描こうとしてしまいませんか?
何気なしに線を使い、物を描こうとしていますが、考えてみれば、なかなか興味深いことを我々はしています。
リンゴでも玉ねぎでも、ペットの生き物でも自分の掌でも、なんでも構いません。
よくよく観察してみてください。
色や光と影、凸凹や質感がありますね。
ですが、輪郭線なんてものはありません。
存在しない物でイメージする
目には見えないはずの輪郭線なのに、私達はその線を見れば、何が描かれているのか判断できます。
存在しないものを使って、実在するものをイメージする。
線で描かれた絵を見て理解するって、なかなかフクザツなことをしているのかもしれません。
存在しない物をさらにデフォルメする
「線で描く」と言えば、私は真っ先にマンガの絵を思い浮かべます。
マンガで描かれる絵は、デフォルメされ、本来の姿とは全く違うフォルムをしているものもたくさんあります。
存在しない“輪郭線”で描いた上、更にそれをデフォルメし、本来のフォルムとは似ても似つかないはずなのに、何が描かれているのか分かる。
マンガの場合はそれが、小さなコマが連なり、物語を紡いでるんですから、とんでもなく難しいことをしているように思えますね。
それを、すんなりと理解できている私達の頭のなかはどうなっているんでしょう。
興味がつきません。
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「日本画」用具と描き方
堀川えい子
美術出版社
(1995)
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