『スケッチは3分』|メモ感覚で絵を描こう

山田雅夫さんのスケッチ論は「工学」からの切り口だ。

アートやデザインから絵を描いている人にとっては刺激的だ。

日記のように描が描けたら…

山田雅夫さんといえば「15分スケッチ」のシリーズの著者だ。わたしも何冊か読んだ。本書はもっと短い、3分間でスケッチを完成させる。日記のように身近な記録を残すのにも最適な時間の長さだろう。メモ帳にちょちょっとメモを取るように、目に映った景色や人物、物も記録に残そう。

3分という短時間でのスケッチだから、細部まで精密に書き込むことが目的ではない。「そのものらしさ」の印象と、質感や雰囲気、気配なんかをササッと描いてゆく。このとき、写真には写りにくいデティールも、目視にて確認し、描いてゆく。記録として写真を撮るのは便利だけど(今はみんな高性能なスマホカメラを常に持ち歩いているし)、微妙や質感の違いや、細かな細工などは写真に収めにくい。カメラでは撮れない情報も、絵なら盛り込めるのだ。

本書『スケッチは3分』は、新書でさらっと描いてある本だけれど、前提となっている知識は膨大だ。本書を本当に読み解いてゆくには、結構勉強しないといけないんじゃないだろうか。ということで、絵を描き始めた初心者さんから、ベテランさんまで、それぞれのレベルに合わせて読み込める良い本だと思う。

あと、「写真に撮れば、絵なんて描く必要ないじゃん」と考えている人にも読んで欲しい。意外にも写真というのは、目で見えている像とは全く違うものが写っているものだ。そして、絵で描いた方が「そのものらしさ」を描きとれることもある。どっちが優れているわけでもなく、どちらも使いこなせるのが理想的だろう。

新書で軽く読める、だけど深く考えさせられる。そしてそれ以上に、すごく絵を描きたくなる! 良書でした(`・ω・´)b

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スケッチは3分

  • 山田雅夫
  • 光文社新書
  • 2006年11月20日

目次情報

はじめに

第1章 スケッチの威力

下描きなしで3分で完成
道具はありふれた3つのアイテムでOK
筆記具は時と場合に応じて使い分ける
〈線描写〉と〈面塗り〉の融合表現
写真には鮮明に写りにくい部分を表すことができる
写真よりもモノの特徴を表すことができる
影をもつ味わいを表現することができる
観察者の思いとこだわりが強く表れる
3次元的な世界を描く

第2章 線と円を使いこなす

定規で線を引かない
フリーハンドでまっすぐな線を描く練習法
90度に折れる線をフリーハンドで描く練習法
身の回りは円の要素で構成されたものばかり
円を描く場合は楕円のカーブに気をつける
フリーハンドで円を描く練習法
円と楕円の、とっておきの練習法
同心円を徐々に広げて描く練習法はNG
有機的な曲線はコンパスでは描けない
これぞ有機的な円
フリーハンドで有機的な形状を描く練習法
「面の集合体」としてのモノ
線で描いたものは、面の集合体を「記号化」したもの
1本の線で、見るひとに類推させる
グラデーションは線と面のコンビネーションで処理する

【コラム】線による表現のもつ根源的な意味

第3章 視点の置き方

「描く部分」と「描かない部分」をどう選別するか
「見えない」ものを「見えているように」描く
1本線で描写してしまいがちなことを2本線で描く
細部のちょっとした描写
影を使うときと使わないとき
描く描写は「右上がり」の構図になるように置く
奥行きの表現は、先がどの一点に集まるかに着目する
建物の遠近感の表現ではパラペットに注意
黄金比や正方形の形状のモノは少ない

【コラム】仕事でつかえるスケッチ

第4章 アイテムはこう使う

左右・上下にゆとりをもったスケッチ用紙を使う
ゲルボールペンと万年筆の使い分け
写実的なグラデーション表現は美しくない
ダーマトグラフの利点と欠点

第5章 描写には手順・法則

描きにくいモノは描かない
道警や模様の繰り返しは「省略画法」で
描くテーマは1つのテーマに絞る
下描きの描き方
下描き後に本書きする場合の手順
線の描き順
線と円の組み合わせの場合の描き順
下描き+本描きの手順
本描きから始める場合の手順

第6章 モノを描く

自分に見えない側を類推する
初心者は正面から描く
周囲の様子を取り入れて描く
自然なアングルと描きやすいアングルとの妥協点
1つのスケッチに複数のアイテムを盛り込むのは避ける
モノを手に持って描いてみる
手を描くのは難しい
丸みを帯びたモノを描く
乗り物を描く①
乗り物を描く②
模様を描く
文字は「白抜き」で処理する
文字のアンダーライン部分には補助線を引いておく

第7章 ひとを描く

ひとも短時間で描ける
座っているひとを描く
ビジネスシーンでの人物のスケッチ
その場の雰囲気を凝縮する
多くのひとを描く
動きのはげしいひとを描く
生活しているひとを描く
場所に応じて描く
人物描写における黒塗りの技法
顔を描く

第8章 風景を描く

海の風景を描く
水面を塗る際のコツ
部分描写だけで構図を伝える
奥行きはアウトラインだけで処理
暗示的な表現
思い切った「省略画法」で風景の特徴を際立たせる
バス停を描く
風景の中の1つの要素に絞って描く
動く風景を描くのは難しい

おわりに

山田 雅夫(やまだ・まさお)

一九五一年岐阜県生まれ。都市計画家。山田雅夫・都市設計ネットワーク代表取締役。自然科学研究機構核融合科学研究所客員教授。技術士・1級建築士。岐阜県IT顧問。東京大学工学部都市工学科卒。著書に、『ケータイ「メモ取り」発想法』(光文社新書)、『散歩しながら街をさらりと描く15分の裏技』『窓のそとに広がる夜景をさらりと描く15分の裏技』(以上、自由国民社)、『15分スケッチのすすめ』(シリーズ全5冊)『カラーで描く15分スケッチ』『色えんぴつで描く15分スケッチ』(以上、山海堂)など多数。

コメント

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