桜が咲き、ヒラヒラと舞おり、ほろほろと酒を飲む。
なにもかわらない、『陰陽師』100作目。
1986年から連載30年。100作目の物語り
『陰陽師』はこれまでの短編、長編をあわせて、2015年4月に100作目を越えたそうです。
そうか、もう100作も一緒に時間を過ごしたのだなぁ。
一作目「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」が書かれたのは、なんと昭和61年(1986)年だと言いますから、長い連載ですね。
だけど、なんにも変わっていない。晴明も、博雅も、あいかわらず縁側で酒を呑む。
今回のお話では、蘆屋道満が、やっぱりいつもと同じように、ふらりとクライアントの前に前に現れ、仕事をしては報酬に酒をもらう。
いつもと同じ。
ずっと延々、30年間、彼らは縁側で酒を飲み、話すともなく話している。
それが嬉しい。
『今昔物語』からはじまる物語り
はてさて、今回のお話。宇治の妙法寺の僧。
この僧の鼻が、顎よりもしたに垂れ下がってる。ときおり痒くなって、湯につけ、弟子たちに踏みつけてもらい、汁を出す。しばらくは鼻が小さくなるけれど、すぐに元に戻ってしまう。芥川龍之介の『鼻』で有名なお話ですから、みなさんあらすじをご存知のはず。
芥川『鼻』は、『今昔物語』『宇治拾遺物語』の古典を芥川流にアレンジしたもですから、今回の『陰陽師 鼻の上人』は「陰陽師」版の物語りです。
『陰陽師』シリーズ第一話「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」も、『今昔物語』に着想を得た話です。初期の頃は元ネタのあるお話がほとんどでしたから『陰陽師 鼻の上人』も、今昔物語にあたり、初期の頃を思わすお話です。
村上豊さんのイラストが愛しい
『陰陽師 鼻の上人』は、村上豊さんのイラストもたくさん挿入され、これがコミカルでおもしろい。そして愛らしい。異形の物でさえもキュートに見えちゃう。
村上豊さんが装丁のイラストを書いてらっしゃるから、「陰陽師」はおどろおどろしくなく、いつもどことなく飄々と物語が進んでゆくんだと思います。
過去の「陰陽師」シリーズでのお話もちょこっと絡んでいたり、以前からのファンも嬉しい一冊です。
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