夢枕獏『陰陽師』が巻き起こした陰陽師・安倍晴明ブームを総括!
陰陽師と言えば安倍晴明!となったのは、実は結構最近。それ以前は「晴明」よりも「安倍童子」という呼ばれ方の方がポピュラーでした。
「安倍童子」が登場する演目は、浄瑠璃や歌舞伎でも今でも人気があります。晴明の母は、実は「葛の葉」という名の狐。
しかし、狐であることがバレてしまい、このまま人間の世界では居られないと、夫と我が子を残し去ってしまいます。その去り際、我が子・晴明との「子別れ」のシーンは涙涙の名作なのです。
安倍晴明は「童子」であり、子供の姿が描かれ続けてきました。
帝都物語からブームが始まった!
陰陽師を再発見したのは、荒俣宏『帝都物語』でしょう。
ベストセラーになったことで、SFスペクタルを通じ、風水や陰陽道というような、オカルトめいた概念を一般に知らしめました。
安倍晴明が色白イケメンになった!
『陰陽師』では、源博雅が安倍晴明の相棒です。
博雅も、数々の不思議な伝説を残している実在の人物です。未だにお正月に耳にする箏曲『春の海』の作者でもあります。転生の音楽の才能により、鬼から楽器をもらったり、『今昔物語』に描かれます。
『陰陽師』は、なんと言ってもメディアミックスが成功したことで、陰陽師・安倍晴明を世間に広く知らしめました。メディアミックスについて触れたので割愛。
“陰陽師モノ”のジャンルができた!
ムック本「『陰陽師』のすべて」は、夢枕獏さんの『陰陽師』シリーズを中心に、陰陽師・安倍晴明に関する話題を網羅します。
陰陽師ブームよって登場した数々の陰陽師、安倍晴明を扱った小説、マンガを紹介する企画は今後の読書の参考になります。ブームがすでに「陰陽師」というジャンルにまで育っているのです。
『陰陽師』や『帝都物語』に影響を受けているものもあれば、全く違った世界を目指しているものもあります。実際に評論家の細谷正充さんが読み比べしており、いくつか読みたい作品がありました。
平成の奇譚モノ作家の座談会がウレシイ
さて、平成の奇譚モノと言えば……ということで、荒俣宏×岡野玲子×京極夏彦×夢枕獏。この4人の座談会が楽しい。
しかし、なんとも悲しいことにページ数がとても不足しています。もっともっと!と、いくらでも読みたい座談会です。
『陰陽師』のすべて
- 発行所:株式会社文藝春秋
- 2012年11月30日
目次情報
陰陽師の二十五年
[カバーギャラリー] 「『陰陽師』と村上豊の世界」
[熱烈ファン対談] 渡辺真理×夢枕獏
「哀しくて愛おしい、鬼という存在」
記事内コラム「『陰陽師』ベスト5」渡辺真理[ロングインタビュー] 夢枕獏「倒れるまで書き続けたい」
目で楽しむ『陰陽師』
[インタビュー] 岡野玲子「自我から一番遠いもの」
[登場人物開設] 『陰陽師』の人々
[新星インタビュー] 睦月ムンク「夢枕さんの背中を追いかけて」
[妖かしの都を歩く] 獏さんと歩く『陰陽師』京都案内
より深く楽しむために
[単行本未収録短編] 夢枕獏 絵・村上豊「花の下に立つ女」
[完全ガイド] 『陰陽師』エピソード総解説
記事内コラム 「陰陽雑譚」「夢枕獏が選ぶ『陰陽師』ベスト11」[座談会] 荒俣宏×岡野玲子×京極夏彦×夢枕獏
司会 晴明神社禰宜(現・宮司) 山口琢也
「今よみがえる陰陽師 安倍晴明」[日本文学と安倍晴明] 東雅夫「陰陽師たちの文学誌」
広がる『陰陽師』の世界
[インタビュー] 野村萬斎「FROM萬斎」
[徹底紹介] 細谷正光「陰陽師&安倍晴明ブックガイド」
[インタビュー] 結城光流「等身大の晴明を書き続けて」
[あとがき] 夢枕獏「二十六年目の『陰陽師』」
コメント
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