植物の分布で、人間の生態がかわる?
文化、歴史を知るにも…植物なんです!
(・∀・)/
照葉樹林文化って?
照葉樹林とは
「照葉樹林」とは、背が高く常緑で、葉っぱの表がテカテカしている木が集まった場所です。葉が分厚く光を通さないので、照葉樹林の地面は薄暗く、ジメジメしています。
日本人にとってなじみ深い照葉樹は、ドングリの木であるシイやナラ、カシ、クスノキ。ツバキやサザンカ、チャ(茶)もそうです。
↑写真はあさよる家に植わっているサザンカの葉です。表面はツルツルしていて、毛や棘などはありません。葉の表は濃い緑色で、裏はやや白っぽい。
テカテカしているのは、「クチクラ」という膜で覆われているためです。今では「キューティクル」って呼ぶ方が聞き慣れていますね。
サザンカのような特徴を持つ植物は、温かいところに生息しています。日本でも北へ行くほど減っていき、代わりにブナや寒い地域の植物が増えてゆきます。緯度が高くなるにつれ分布が減り、また標高の高い山では、寒いので照葉樹林は見られません。
日本は海と山が近く、狭いエリアで標高差も大きいので、照葉樹林はモザイク柄のように分布しています。
植物の生息地と、人間の文化
植物の分布「植生」に、人間の文化は密接に関係しています。
砂漠の広がる地域、熱帯雨林、針葉樹の森、サバンナの気候。
人間はその土地に根ざした生活をしています。
日本の多くの部分は「温帯」です。温帯の地域には照葉樹林が広がり、広く共通する文化が今でも残っています。
温帯の地域に広がる文化
照葉樹林が広がるエリアでも、独特な文化が伝承されています。
ヒマラヤの東側から太平洋へ続き、日本列島へ北上する、エリアでは、とても文化が似ている。特に、食文化は独特です。
例えば「納豆」。納豆を食べるのは、日本人だけではありません。ベトナムや、太平洋側のアジア地域で、納豆と同じような食べものがあります。
ドングリをアク抜きして食べたり、葛(クズ)を水に晒しデンプンを取り出す方法など、調理法が伝播しています。酒や茶の製法や、「竹」を使った竹細工も盛んです。
出版が古い…前知識がないと読めない?
『照葉樹林文化』が出版されたのは、昭和44年、1969年!
なかなか年季の入った本です。図書館等で探しても、かなり古い本が置いてあるかも……「古い本は読みにくい!」って方は、迷わず新品を購入しましょうw
歴史や文化、植物や環境について知りたいなどなど、必ず一度はあたる書籍らしいので、読んでおいても損はなし!
ただ、シンポジウムの形式で対話が進んでゆくので、最低限のとっかかりになるような知識を持っていないと、しんどいかも(^_^;)>
(あさよるの場合、植物と文化について大学で履修した経験アリ)
植生から文化を見る!
文化や歴史、産業や工芸など、伝統的な営みを見る時に、「植物の生態」という視点を持ってみるのはいかがですか?
あさよるは、はじめてこの「広葉樹林文化」に触れたとき、眼から鱗。これまで見えていたものから、視点がガラリと変わる経験をしました。
本書『照葉樹林文化』では、「神」についても語られます。そう、植生を見ることで、思想や信仰まで話が膨らんでゆく。
これって、博物学?
昔「博物学」という学問があった、となんかの本で読んだ気がします(覚えてない)。
が、植物学って、そのまんま博物学なんじゃないの?と発見&驚きです。
また、環境問題を始め、現在の問題を考える際にも、植生と文化を知っておいてもいいかも。人間は太古の昔から、自然環境に手を加え、人工の山、人工の森を作ってきました。
現在、自然破壊が問題になっていますが、一方で、山の手入れをする人の不在も問題になっています。昨今のニュースを考える際にも、まずはぜひ『照葉樹林文化』から始めてみませんか。
関連記事
- 『面白くて眠れなくなる植物学』|今すぐ誰かに話したい!
- 『図解 知識ゼロからの林業入門』|山の仕事って「謎」だった
- 『考古学の挑戦――地中に問いかける歴史学』を読んだよ
- 『タブーの謎を解く―食と性の文化学』
- 『「食」の歴史人類学―比較文化論の地平』|それ、食べる?拒否る?
- 土井善晴『一汁一菜でよいという提案』|豊かな「ふつうにおいしい」くらし
照葉樹林文化 日本文化の深層
- 上山春平
- 中央公論新社
- 1986/6/1
目次情報
はしがき
序説
Ⅰ 日本文化の深層分析
Ⅱ 照葉樹林文化と縄文文化
Ⅲ 縄文文化の担い手シンポジウム
Ⅰ 照葉樹林とは何か
生態学的見地 和辻の風土論と気候区分 非ヨーロッパ的な気候区分の試み 温度と湿度のインデックス 人間生活のための気候区分 標準的な環境区分システム 「照葉樹林」について 照葉樹林と硬葉樹林 ブナ科の世界 照葉樹林と落葉広葉樹林 照葉樹林の本場 照葉樹林のふるさと ヒマラヤの照葉樹林 日本の照葉樹林
Ⅱ 照葉樹林帯の農耕文化
照葉樹林の食用植物 半栽培 ポナペ島のイモ栽培 照葉樹林前期複合 水晒し技術 加熱処理法 照葉樹林の野生食糧 秋から冬にかけての食べもの 春から夏にかけての食べもの 動物性の食べもの 照葉樹林文化複合 日本とシナ 竹 茶 酒
Ⅲ 照葉樹林と縄文文化
縄文文化の成立条件 縄文初期の植生 土器の用途 縄文土器の起源 土器と農耕 半栽培の長期化 根栽文化の北方変形型 半栽培の考古学的裏づけ 穴貯蔵 焼畑農耕の渡来 石包丁 ヒョウタン 気候変化と花粉分析 五つのゾーン 植生の変化 気候変化の区分と考古学的時期区分の関係 生活の場の変化 照葉樹林とその後の運命
Ⅳ 照葉樹林帯の固有信仰
問題点 三つの神観念 神観念の進化 木や石に宿る神 森林の神と草原の神 客人信仰と神の降臨 モンゴロイドの同性質
上山 春平(うえやま・しゅんぺい)
1921年(大正10年),台湾に生まれる.
1943年,京都大学文学部卒
現在,京都大学人文科学研究所教授
専攻,哲学.
著書『歴史分析の方法』
『弁証法の系譜』
『明治維新の分析視点』
コメント
[…] 『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 記事リンク:『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 記事リンク:『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 記事リンク:『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 記事リンク:『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]
[…] 記事リンク:『照葉樹林文化―日本文化の深層』|これって博物学? […]